
なぜ今ライブハウスを? 吉祥寺NEPOが語るこれからの場所作り
ライブハウス「NEPO」- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:田中一人 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)
kilk recordsによる新たなライブハウス「NEPO」が、3月21日に東京・吉祥寺でグランドオープンを迎える。kilk recordsの代表である森大地は、自らのバンドTemple of Kahnでも活動しつつ、埼玉県宮原でライブハウス「ヒソミネ」やカフェ「bekkan」を運営。昨年12月までは東京都神楽坂でライブハウス「神楽音」の共同運営も行っていた人物だ。
「NEPO」は「OPEN」を逆さにした造語で、「閉鎖的な空間を開放的な空間にする」という意味がある。これはフェス文化が浸透し、サードプレイスの意義が広く知られるようになった現代において、ライブハウスという「場所」の価値を更新する試みだと言えよう。森とともにNEPOの創設メンバーとなったのは、KAGEROなどのバンドで活躍する白水悠と、LAGITAGIDAやSuiseiNoboAzで活動し、今回NEPOの店長を務める河野岳人。3人の理想とする「場所」について話を聞いた。
(NEPOでは)原点に戻ってアイデアを大事にしたい。(森)
—森さんは約6年前にヒソミネを立ち上げて、昨年は神楽音の共同運営もされていたわけですが、ライブハウスの運営を通じて、どんなことを感じられていますか?
森:ヒソミネは当時としては新しかったと思うんです。異常なまでの低予算でスタートしたので、とにかくアイデアが重要。壁を白くしたり、照明をプロジェクターにしたり、分煙にしたり、お金をかけずにできることに挑戦したライブハウスでした。
白水:当時のヒソミネは破格に新しかったんじゃないですか? ただ、「ちょっと遠いな」とは思ったけど(笑)。
森:遠いよね(笑)。ライブハウスは音楽好きな人しか来ないから、それを変えるべくヒソミネの近くでbekkanというカフェを始めて、カフェのお客さんにライブを見せたりもして。
そのあとの神楽音に関しては、ヒソミネのシステムをほぼそのまま持っていきつつ、予算も余裕があったので、スピーカーや内装にもよりこだわりました。NEPOでは原点に戻ってアイデアを大事にしたい。リストバンド(NEPOはQRコード付きのリストバンドを使ったキャッシュレスのシステムを導入)とかフェス的な開放感とか、核となるアイデアをもとにスタートする感じですね。

森大地。音楽家。Aureole / Temple of Kahn、ヴォーカル兼ソングライター。株式会社キルク代表取締役社長。2010年に音楽レーベル「kilk records」を設立。2013年には埼玉県さいたま市宮原にライブハウス「ヒソミネ」を、2016年にはカフェラウンジ「bekkan」を、2017年には神楽坂にライブハウス「神楽音」をオープン。現在は新バンド「Temple of Kahn」でギターヴォーカル兼ソングライターとして活動中。作曲家やプロデューサーとしても多数の仕事を手がけている。
「フルで働けるのは残り何年だろう?」って考えていたんです。(河野)
—もともとは白水さんにライブハウス事業の話があって、結果的に森さんと一緒にやることになったそうですね。
白水:もし森さんに「やらない」って言われていたら、もっとライトにやってたか、場合によってはやってなかったかもしれないです。でも、森さんとだったら自分のセンスとも合うだろうし、ストレスなくできるだろうっていうのは、ヒソミネや神楽音を見てわかっていたことだったので。

白水悠。KAGERO、I love you Orchestraのメインコンポーザー、ベーシスト。I love you Alone名義でノイズミュージック、ilyons名義で即興アンビエントも作曲。FABTONE INC.内に自身主宰のレーベル「chemicadrive」を創設。海外アーティストとの親交も広く、NEPOの創設に伴い株式会社キルクの社外取締役に就任。
—そして、店長として河野さんに声がかかったと。
河野:森さんとはもともとバンドマンとして知り合ったんですけど、ヒソミネに初めて行ってみたら、周りに本当になにもなくて、正直「よくここでライブハウスやろうと思ったな」って(笑)。でも、なかに入ったらものすごくオシャレで、その時点で森大地という人に興味が湧いたんです。そしたら今度はbekkanを作るとか言い出して、そのバイタイリティに驚きました(笑)。
白水:僕らの知ってるライブハウスの店長とかオーナーって、結構カツカツだったり、疲れて見える人が多かったからね。
河野:そうこうしてたら今度は神楽音の話が出てきて、「3つ目?」っていう(笑)。森さんがやり手なのはわかってたけど、すごい楽しそうにしながら、とんでもないバイタリティで動いてるんですよね。
—でも、まさか「4つ目」に自分が関わることになるとは、思ってもいなかったですよね? 長く勤めていた会社を辞めて、店長になることを決めたとか。
河野:15年以上勤めて、会社のなかでの自分の未来も見えてきて。そんななかで去年は仕事的にも区切りの年で、「フルで働けるのは残り何年だろう?」って考えていたんです。もっと自分の好きなことに関わる時間を増やしたいと思ったし、ちょうどそのタイミングでNEPOに誘われたので、あのときじゃなかったらどうなってたかわからないですね。
イベント情報
- 『NEPO KICHIJOJI OPENING SERIES』
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会場:東京都 NEPO
3月17日(日)
出演:LAGITAGIDA / KAGERO / Temple of Kahn3月21日(木)
出演:SuiseiNoboAz / 快速東京 / MASS OF THE FER-MENTING DREGS3月22日(金)
出演:Gecko&Tokage Parade / バスクのスポーツ / sundrain3月23日(土)
出演:Piano Shift3月24日(日)
出演:染脳ミーム3月25日(月)
出演:marucoporoporo / 湯川潮音3月26日(火)
出演:Luv-Enders / BARBARS3月27日(水)
出演:H mountains / NENGU / arko lemming3月28日(木)
出演:MINAKEKKE / 太田ひな quintet3月29日(金)
出演:skillkills / JABBA DA FOOTBALL CLUB3月30日(土)
出演:MUSIC FROM THE MARS / Gateballers / んoon3月31日(日)
出演:RED EN COMRADE / I love you Orchestra Swing Style
プロフィール
- 森大地(もり だいち)
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音楽家。Aureole/Temple of Kahn、ヴォーカル兼ソングライター。株式会社キルク代表取締役社長。2008年Nature blissよりAureoleのデビュー作『Nostaldom』を発売。2010年に音楽レーベル「kilk records」を設立。2013年には埼玉県さいたま市宮原にライブハウス「ヒソミネ」を、2016年にはカフェラウンジ「bekkan」を、2017年には神楽坂にライブハウス「神楽音」をオープン。自身の音楽活動も変わらず精力的に行なっており、現在は新バンド「Temple of Kahn」でギターヴォーカル兼ソングライターとして活動中。作曲家やプロデューサーとしても多数の仕事を手がけている。
- 白水悠(しろみず ゆう)
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KAGERO、I love you Orchestraのメインコンポーザー、ベーシスト。I love you Alone名義でノイズミュージック、ilyons名義で即興アンビエントも作曲。FABTONE INC.内に自身主宰のレーベル「chemicadrive」を創設。海外アーティストとの親交も広く、NEPOの創設に伴い株式会社キルクの社外取締役に就任。
- 河野岳人(こうの たけひと)
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ベーシスト。2005年結成のマヒルノより本格的に音楽キャリアをスタート。様々なアーティストサポートを経て、現在はLAGITAGIDA / SuiseiNoboAzにて活動中。