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Momが退屈を歌う理由。今が息苦しくても、未来に期待していたい

Momが退屈を歌う理由。今が息苦しくても、未来に期待していたい

Mom『Detox』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:伊藤惇 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)
2019/05/22

22歳の現役大学生、高校1年生のときに出会ったチャンス・ザ・ラッパーに衝撃を受けてヒップホップにのめり込んだという、シンガーソングライター / トラックメイカーのMom。楽曲制作には音楽制作アプリ「GarageBand」を使い、作詞作曲を始め、トラックメイクやアレンジ、ミックスの全てを彼自身が担当。またアートワークもiPhoneを使って自作しているという。そうした手のひらと宇宙を直結させるような制作環境だけを見ても、このMomという才能が、音楽の新しい時代と自由を体現していることは伝わってくるだろう。

そんな彼が、5月22日に2ndアルバム『Detox』をリリースした。このアルバムは、Momの精神の浄化のドキュメントであると同時に、このインターネット時代を生きるひとりの若者の、尊くもちっぽけな告白である。恥ずかしげもなく「正しさ」を振りかざす大人に怒り、怯え、期待と諦めが入り混じった眼差しでバリケードの向こう側を見つめている……そんな、どこにでもいる、でもたったひとりしかいない若者の追憶と、「君」への疾走。これは間違いなく、今、誰かが描かなければいけなかった物語であり、それをMomは描いた。その無邪気な表情の奥に満ちた強い意志を、少し覗いてみた。

ヒップホップは誰もが本来持っている、不思議ちゃんとしてのセンスを殺すことなく表現できるジャンルだと思う。

―(テーブルの上に置かれたMomのスマホケースを見て)それ、Instagramで見ましたよ。

Mom:これはAnimal Collectiveと、小松菜奈と、一番イケてた頃のエミネムのマッシュアップです。文脈は別にないですが(笑)。

―かっこいいですね(笑)。そうした小物ひとつとっても、非常にヒップホップ的な自由さを感じさせますが、Momさんは、ご自身の音楽性を「クラフトヒップホップ」と称されていますよね。

Mom:ヒップホップは大好きですし、自分の根幹にあるものだと思います。高校1年生の頃にチャンス・ザ・ラッパーを聴いて、衝撃を受けたんです。ヒップホップって、楽器ができる / できないの問題ではないじゃないですか。だからこそ、他の誰かが真似しようと思ってもできない、「センス」の生々しさがダイレクトに出るジャンルなのかなって思うんです。

Mom(まむ)<br>シンガーソングライター / トラックメイカー。現役大学生の22歳。様々なジャンルやカルチャーを遊び心たっぷりにDIYで混ぜこぜにした、手触り感のある独自のジャンル「クラフトヒップホップ」を提唱。アートワークも自身でこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせるニューエイジ。すべてのトラックをGarageBandで制作しているにもかかわらず、一度聴くと頭の中を支配する楽曲たちには、サウンド構築の緻密さや、あくまでポップスフィールドからはみ出ないメロディセンスが光る。
Mom(まむ)
シンガーソングライター / トラックメイカー。現役大学生の22歳。様々なジャンルやカルチャーを遊び心たっぷりにDIYで混ぜこぜにした、手触り感のある独自のジャンル「クラフトヒップホップ」を提唱。アートワークも自身でこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせるニューエイジ。すべてのトラックをGarageBandで制作しているにもかかわらず、一度聴くと頭の中を支配する楽曲たちには、サウンド構築の緻密さや、あくまでポップスフィールドからはみ出ないメロディセンスが光る。

Mom:生まれたときって、みんな不思議ちゃんじゃないですか。誰もが、赤ん坊の頃は変な癖とかを持っているものだと思うんです。だけど、成長して、いろんなコミュニティに属していく中で、どんどんとそれを殺していくわけですよね。「これが正解ね?」みたいな感じで。

―言葉を覚え、「常識」みたいなものの存在を肌で感じながら、人は社会に適合していきますよね。

Mom:でも、ヒップホップは誰もが本来持っている、不思議ちゃんとしてのセンスを殺すことなく表現できるジャンルだと思うんです。だから、僕はヒップホップにめちゃくちゃ食らったんだと思うんですよね。

今回のアルバム『Detox』には“シングストリート”という曲が入っているんですけど、この曲は全体を通してヒップホップのことを歌っていて。ヒップホップとの出会いから、自分で音を鳴らす立場になった今のこと、そして「この先どうする?」っていうところまでを歌っているんです。

Mom“シングストリート”を聴く(Apple Musicはこちら

―『シング・ストリート』って、ジョン・カーニー監督の映画のタイトル(『シング・ストリート 未来へのうた』、2016年公開)でもありますよね?

Mom:そうですね。あの映画って、学校の冴えないやつらが、バンドという表現を使って周りを見返していく話じゃないですか。自分はあくまでヒップホップシーンの「外」の人間だっていう感覚もあるし、今の自分の状況は、『シング・ストリート』とリンクする部分もあるのかなと。

ジョン・カーニー監督、2016年公開

―Momさんは、ご自身のことを「ラッパーでもバンドマンでもないです」と紹介されることがありますよね。もはやジャンルで音楽を語ることが大きな意味を持たなくなった今の時代感を、すごく真っ直ぐに受け止めて活動されていると思うんですけど、それゆえの疎外感や孤独感がある、ということですかね。

Mom:単純に性格が頑固でプライドが高いので、「俺を縛んな!」っていう気持ちがあるだけだと思います(笑)。

でも、例えばレックス・オレンジ・カウンティみたいなシンガーソングライターを見ると、今この時代にトラップを聴きながら生きていれば、自然に持ち得るリズム感覚や譜割りがあるとわかるじゃないですか。ああいう人を見ると、自分に近い感覚があるのかなって思うんですよね。もうジャンルに捉われる必要はないのかなって思う。

その反面、「ヒップホップ警察」と呼ばれるような、厳しい人たちもいて(笑)。ああいう人たちを見ていると、矛盾しているような気がするんですよね。「広まってほしい」と言うわりには、ヒップホップを知らない人たちに伝える努力はしていないように見えてしまう。

Mom
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リリース情報

『Detox』
Mom
『Detox』

2019年5月22日(水)発売
価格:2,484円(税込)
LIC-002

1. Spike Jonze
2. 6
3. 卒業
4. プライベートビーチソング
5. Boys and Girls
6. talkaboutmyteacher
7. スーパースター
8. ブルー
9. Good Thinking
10. シングストリート
11. Anonymous
12. ひみつのふたり
13. Mr.Lonely
14. フリークストーキョー
15. 冷たく燃える星の下で

イベント情報

『Mom 2nd album RELEASE PARTY』

2019年6月14日(金)
会場:東京都 渋谷WWW
ゲスト:chelmico

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume121』

2019年5月30日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
JABBA DA FOOTBALL CLUB
パブリック娘。
Mom
lyrical school
and more!!!!!

料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール

Mom(まむ)

シンガーソングライター / トラックメイカー。現役大学生の22歳。様々なジャンルやカルチャーを遊び心たっぷりにDIYで混ぜこぜにした、手触り感のある独自のジャンル『クラフト・ヒップホップ』を提唱。アートワークも自身でこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせるニューエイジ。すべてのトラックをGarageBandで制作しているにもかかわらず、一度聴くと頭の中を支配する楽曲たちには、サウンド構築の緻密さや、あくまでポップスフィールドからはみ出ないメロディセンスが光る。2018年初頭よりMomとしての活動を本格化。同年11月、初の全国流通盤『PLAYGROUND』をリリース。今春5月、1stよりわずか半年のハイスピードで2nd ALBUM『Destox』を発売。

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