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YAJICO GIRL四方が明かす、野心 変わらずにいられなかった理由

YAJICO GIRL四方が明かす、野心 変わらずにいられなかった理由

YAJICO GIRL『インドア』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:今井駿介 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2019/08/28

変化というのは、いつだって刺激的だ。そこに不安や揺らぎが伴おうと、行く先にたしかさなんてなくても、人が変化する瞬間には刹那的な美しさが宿る。大阪を拠点に活動する5ピースバンド、YAJICO GIRLは、今そんな瞬間を迎えているバンドだ。彼らがリリースした新作『インドア』は、バンドの魅惑的な変化の瞬間を捉えたドキュメントのようなアルバムといえるだろう。

2016年に『未確認フェスティバル』や『MASH FIGHT』といった大型オーディションでグランプリを獲得して話題になった彼らは、その時点では蒼さが光るギターロックの新星として認知されていたが、2017年リリースの前作『珍百景』のあたりから、同じ場所に留まることができない、自らの衝動と野心に自覚的になっていったようだ。

フランク・オーシャンやChance the Rapperが作る名作の存在やリスニング環境の変化も含めて、この数年の間に世界中で巻き起こったポップミュージック大革新の波をその身に感じながら、前作以降、YAJICO GIRLは自らの音楽をアップデートしようと試みた。『インドア』は、その試みのなかから生まれたピュアに輝く宝石のような作品集だ。サウンドは刷新され、言葉はより生々しさを増した。

素晴らしいのは、本作が海外のトレンドをまとうだけの空虚な音楽ではない、ということ。この音楽の中心にはあくまでも「歌」があり、その歌はあまりにも正直に、コンポーザーである四方颯人の心象風景を伝えている。伝えるべきことがあるから、変わらざるを得なかった――そんな必然性を、今作からは感じることができる。バンドとして、恐らく最初のエポックメイクなタイミングを迎えた今、四方颯人にその想いを聞いた。

耳が変わってしまったんですよ。なにもかも今までと違った。そうなるともう、あとには戻れない。

四方颯人(YAJICO GIRL)
四方颯人(YAJICO GIRL)

―新作『インドア』には、世界で鳴っている音楽を積極的に吸収するバンドの好奇心が反映されているように感じました。この作品を聴くと、YAJICO GIRLは非常に実直に、正直に、そのとき自分たちがやりたいことに向き合いながら音楽を作っていくバンドなんだなと感じます。サウンドも歌詞も、前作『珍百景』から、大きな変化を遂げていますよね。

YAJICO GIRL『インドア』を聴く(Apple Musicはこちら

四方:そうですね。リスナーとして僕は世界で流行っている音楽を聴いているので、自分が聴いている音楽とやっている音楽との差が大きくなっていくことに違和感があって。前のアルバムの『珍百景』が出たのが2017年でしたけど、その前の年に、Chance the Rapperの『Coloring Book』、フランク・オーシャンの『Blonde』、Solangeの『A Seat at the Table』が出たじゃないですか。

―2016年はすごかったですよね。他にもカニエ・ウェストの『The Life Of Pablo』があったり、ビヨンセの『Lemonade』があったり、大作がバンバン出ました。

四方:その前後にケンドリック・ラマーがアルバム出していたり(2015年リリースの『To Pimp A Butterfly』と2017年リリースの『DAMN.』)。全体的にブラックミュージックが盛り上がっていく流れもあったし、僕個人としてはそういうものを聴いて刺激を受けていたんですけど、当時の日本のロックシーンを全体的に見渡すと、自分たちも含めて、全然そこにアジャストしていない感覚があったんですよね。

ceroとかは世界に目を向けて、その流れに素直に向き合いながら新しい音楽を作っていたと思うんですけど。そういうなかで、「自分たちも変わらなきゃいけない」っていう意識が出てきたんです。

YAJICO GIRL(やじこ がーる)<br>5人編成で自身の活動スタンスを「Indoor Newtown Collective」と表現する。結成してまもない2016年、全国38局ネットのラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』が企画する10代アーティスト限定ロックフェス『未確認フェスティバル』、そしてロックプロダクション「MASH A&R」が手がけるオーディション『MASH FIGHT』でグランプリをW受賞。2019年夏、自分たちの音楽の同時代性に向かい合った作品群としてアルバム『インドア』を発表。
YAJICO GIRL(やじこ がーる)
5人編成で自身の活動スタンスを「Indoor Newtown Collective」と表現する。結成してまもない2016年、全国38局ネットのラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』が企画する10代アーティスト限定ロックフェス『未確認フェスティバル』、そしてロックプロダクション「MASH A&R」が手がけるオーディション『MASH FIGHT』でグランプリをW受賞。2019年夏、自分たちの音楽の同時代性に向かい合った作品群としてアルバム『インドア』を発表。(過去記事:YAJICO GIRLはなぜ評価される?『未確認』などで勝ち抜いた理由

―世界の動きと、そこにアジャストできていない大半の日本の音楽……その間にはどんな違いがあり、なぜ四方さんはフランク・オーシャンやChance the Rapperの作品に惹かれたんだと思いますか?

四方:たとえば、ストリーミングサービスを使うようになると、そこに適している音楽があることに気づくじゃないですか。当時、自分もストリーミングサービスで音楽を聴くようになり、リスナーとしての環境も変わっていったんですけど、海外のラップミュージックなんかは、そこにすごくマッチしていたんだと思うんです。

ただ、「フランク・オーシャンのどこがいいんですか?」ってよく訊かれるんですけど、ぶっちゃけ、簡単に言葉にできない(笑)。だから素晴らしいんですけど、あのアルバムは未だに僕にとっては謎だらけなんですよ。

フランク・オーシャン『Blonde』を聴く(Apple Musicはこちら

―たしかに、フランク・オーシャンの『Blonde』は「永遠の謎」ですよね(笑)。だからこそポップだし、素晴らしい。僕は、あのアルバムによって「耳が変わった」くらいの感覚があったんです。四方さんもきっと、フランク・オーシャンやChance the Rapperが作る革新的な作品、あるいはそれらがリリースされている状況を、「他人事」ではなく「自分事」として受け止めたわけですよね。

四方:そう。ファッションとして受け止めたわけじゃなくて、本当に、彼らの作品を聴いて、耳が変わってしまったんですよ。なにもかも今までと違った。そうなるともう、あとには戻れない。

僕らも、「これ以降」の音楽表現をしないといけないなって感じざるを得ないくらいに衝撃が大きかったんですよね。……でも正直、「今の音楽をちゃんと聴いてたら、その音にはならんやろ」っていうようなミュージシャンも日本には多いなと思っていて(苦笑)。

四方颯人(YAJICO GIRL)

四方:もちろん、海外に合わせたらなんでもいいわけでもないし、世界の動きを知ったうえで、あえて「合わせない」表現をしている人たちもいると思うんです。そういう人たちの音は聴けばわかるし、闘っているなって思うんですけど……。

―そうですよね。でも、「知らない」「知ろうともしない」というのは、土俵にすら立っていない、という感じがしてしまう。

四方:うん、そうなんですよね。

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リリース情報

YAJICO GIRL『インドア』
YAJICO GIRL
『インドア』

2019年8月7日(水)発売
価格:2,000円(税込)
MASHAR-1007

1. NIGHTS
2. ニュータウン
3. 汽水域
4. ニケ
5. indoor
6. 熱が醒めるまで
7. CLASH MIND
8. IMMORTAL
9. 2019

イベント情報

『ヤジヤジしようぜ! vol.3 ワンマン編~やじこの番です~』

2019年9月20日(金)
会場:大阪府 心斎橋Pangea

プロフィール

YAJICO GIRL
YAJICO GIRL(やじこ がーる)

5人編成で自身の活動スタンスを「Indoor Newtown Collective」と表現する。結成してまもない2016年、大学在籍中に日本最大級音楽フェスティバル『SUMMER SONIC』の登竜門『出れんの!?サマソニ!?』を通過。その後『eo Music Try』や『十代白書』など地元関西コンテストでの受賞を重ね、同年全国38局ネットのラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』が企画する10代アーティスト限定ロックフェス『未確認フェスティバル』、そしてロックプロダクション「MASH A&R」が手がけるオーディション『MASH FIGHT』でグランプリをW受賞。翌2017年、タワーレコード内のインディーズレーベルから初の流通作品『沈百景』をリリース。その後も音源制作、ミュージックビデオの撮影から編集、その他全てのクリエイティブをセルフプロデュースし、2019年夏、自分たちの音楽の同時代性に向かい合った作品群としてアルバム『インドア』を発表。

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