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吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る

吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る

『全裸監督』
インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:沼田学 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

1980年代の倫理観をアップデートする、『全裸監督』に見られた現代のリテラシー

―今回、豪さんには先行して『全裸監督』を見ていただきましたが、率直な感想を教えてください。

吉田:とにかく予算の違いがひと目でわかりますよね。こういうVシネぐらいでしか扱えないようなテーマでも、予算と時間をかけて作るとちゃんと面白くなるんだなって。そして、アクションシーンも激しいし、想像以上にスプラッターですよね。

―物語の展開上必要なシーンであれば、削除せず描くことができるNetflixならではですよね。

吉田:あと、フィクションの混ぜ方がうまくて、ファンタジーに昇華してますよね。ボクは原作(『全裸監督 村西とおる伝』本橋信宏著 / 太田出版 / 2016年)も読んでるんですけど、あれをそのまんまやっちゃうと現代ではアウトになる部分も多いと思うんですよ。そのあたりをうまくこの時代のリテラシーに合わせて作っているのが流石だなと。原作で引っかかった部分がほとんどクリアされてました。

『全裸監督』場面写真
『全裸監督』場面写真

―山田孝之さん演じる村西監督はいかがでしたか?

吉田:完璧ですよね。山田孝之さんが白ブリーフになった瞬間に「きた!」と思える。もともと憑依型の役者さんではありますけど、ここまで村西とおるをちゃんとやり切れるのかと驚きました。眼力スイッチが入っていないときの村西監督の得体のしれない凄みみたいな部分も、ちゃんと再現してるんですよね。あと森田望智さんが演じる黒木香も、顔は全然違うのに完全に黒木香なんですよ。

黒木香役を演じた森田望智
黒木香役を演じた森田望智

―他のキャストで印象に残っている方はいますか?

吉田:石橋凌さんも素晴らしかったですね。ボクの中で石橋さんはA.R.B.というロックバンドの人なんですけど、パンクスとしては乗り切れなかったんですよ。その後、松田優作さんの遺志を継ぐってことで役者に転身してからもモヤモヤしてきたんですけど、年齢を重ねて風格も出て、黒っぽいアダルト業者がハマりすぎでした。

石橋凌
石橋凌

―石橋凌さんは業界最大手の社長役として登場し、ことあるごとに村西監督を妨害しようとしますよね。そのあたりのAV業界黎明期の光と闇も本作では描かれています。

吉田:思った以上にアウトローの世界だったらしいですからね。そもそもエロ自体がアウトローというか、1980年代にビニ本を作っていた人に話を聞くと、ここではいえないようなことばかりですし(笑)。ヒッピー上がりの人が多かったせいか、薬物が当たり前みたいな。

―そういう時代だったんでしょうね。

吉田:AVにしても黎明期のスターである代々木忠監督が元闇社会の人ですからね(笑)。1990年代前半、『宝島』というサブカル雑誌がエロ本化していった流れがあって、そこにこの仕事を始めたばかりだったボクも少し加担していているんですよ。当時所属していた編プロで引き受けていたエロ特集の評判が良くて、次第にヘアヌード雑誌になっていったから。ボクは風俗特集とかAV特集とかを担当したんですけど、まあいかがわしいアウトローな人ばかりでしたからね。

風俗取材に行ったら、そこの店長さんが「『宝島』か、懐かしいなー」とかいってて、実は某ハードコアパンクバンドの人だったりとか、ヤクザの事務所みたいなところに通されたりとか、アポを取った時間にカメラマンが遅刻したら「こっちが頼んで取材してもらうわけじゃねえんだよ、コラ!」ってブチ切れられたりとか。某AV女優を取材したときも「私のバックには●●がついてるから」とか突然いわれたりで、これはスリリングな世界だと思ってましたね。そのときクリスタル映像にも行って、「ここが村西とおるの城だったのか!」とか感慨深い思いをしたのも、よく覚えてます。

吉田豪

―でも、どんな体験をしてもネタとして昇華できるのが豪さんらしいですよね。最後にお伺いしたいのですが、『全裸監督』の舞台にもなった1980年代のカルチャーは豪さんにどのような影響を与えていると思いますか?

吉田:時代としていちばん好きなのは1970年代なんですけど、10代を過ごしたのが1980年代だから、思い入れはそこにありますよ。ボクが18歳になって最初に借りたAVが、大好きだった岡田有希子さんにそっくりな女優さんが出ている企画ものだったんです。その後、編プロに就職してエロ本の仕事をするようになったときに、そのAV女優さんがVシネマの主演に選ばれてインタビューをすることになって。これは感慨深いなと思って取材に行ったら、その女優と映画プロデューサーの距離感がものすごく近くて、どうにも愛人関係のニオイがするんですよ(笑)。あからさまにいかがわしい状態で。

低予算だから写真撮影もボクが担当したんですけど、思い入れもあるから頭の中でフリッパーズ・ギターの“カメラ!カメラ!カメラ!”が流れるようなキラキラした感じもありながら、隣には愛人っぽいプロデューサーもいて、彼女は多いっきりパンチラしている(笑)。これはなんなんだろうと思ったんですけど、やっぱりボクの柱になる部分を作ったのが1980年代の文化なので、そうやって当時の人を取材できる機会があれば喜んで行っちゃうし、一生引きずり続けるんだと思いますよ。

吉田豪
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作品情報

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』

Netflixにて全世界独占配信中
総監督:武正晴
監督:河合勇人、内田英治
原作:本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)
音楽:岩崎太整
出演:
山田孝之
満島真之介
森田望智
柄本時生
伊藤沙莉
冨手麻妙
後藤剛範
吉田鋼太郎
板尾創路
余貴美子
小雪
國村隼
玉山鉄二
リリー・フランキー
石橋凌

プロフィール

吉田豪(よしだ ごう)

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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