特集 PR

BLUE ENCOUNT×住野よる 今の自分が痛い過去の意味を変える

BLUE ENCOUNT×住野よる 今の自分が痛い過去の意味を変える

BLUE ENCOUNT『ユメミグサ』
インタビュー・テキスト
矢島大地
撮影:新保勇樹 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

僕は「自分を含めてみんな嫌いだ」っていう気持ちと、人を好きになれたらいいのにっていう願望を同時に持って生きています。(住野)

―その主題歌である“ユメミグサ”は、おおらかなビート感にしても、ストリングスを土台にしたアレンジにしても、一心不乱さとはまた違うフェーズを感じさせる楽曲になっていると感じたんですが、ブルエンとしては、どういう手応えを感じている曲ですか。

田邊:この曲自体は、7年前――自分達がまだインディーズで活動していた頃から存在していたものなんですよ。当時はまだ“sakura”っていうタイトルだったんですけど、できた時から、僕ら自身もチームとしても大きな愛を持って温めてきた曲なんです。で、この映画の主題歌のお話をいただいた時にすぐ「“sakura”しかない」って思ったくらいだったんですよ。

左から:田邊駿一、江口雄也
BLUE ENCOUNT『ユメミグサ』MV

―それは、“ユメミグサ”――そもそもの“sakura”という曲にどんな力を感じていたからなんですか。

田邊:住野先生が僕らの音楽に対して「一心不乱なパワー」と言っていただいたように、インディーズの頃の僕らは特に、右も左もわからない中でガムシャラにやるしかなかったんですよ。その時に僕から出てきた楽曲だったから、『青くて痛くて脆い』に込められている、何もかもわからなくなってしまうくらいの一直線さに共鳴すると思えて。

専門学校に通っていた僕らからすると『青くて痛くて脆い』で描かれる大学生活やサークルのカルチャーは未知のものだったんですけど、よくよく『青くて痛くて脆い』の本質を考えてみると、一見わかりやすい青春群像劇に見えて、実は人間の持ってる複雑さとか、人からすれば「なんでそんなに怒ってるの?」って思っちゃうところにそれぞれの正義や意地があるとか、それを貫くことに必死で周りが見えなくなってしまう感じとか……タイトルの通り、人間の痛さとか、それゆえの愛しさが全部詰め込まれている作品だと思ったんですよ。

『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会<br>人付き合いが苦手な大学生・田端楓(吉沢亮)と、空気の読めない発言ばかりで周囲から浮いている秋好寿乃(杉咲花)は「世界を変える」という目標を掲げる秘密結社サークル「モアイ」を作る。しかし秋好は「この世界」からいなくなってしまい、モアイは社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした就活サークルに成り下がってしまう。楓は秋好の夢を取り戻すために親友や後輩と手を組み「モアイ奪還計画」を企む。
『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
人付き合いが苦手な大学生・田端楓(吉沢亮)と、空気の読めない発言ばかりで周囲から浮いている秋好寿乃(杉咲花)は「世界を変える」という目標を掲げる秘密結社サークル「モアイ」を作る。しかし秋好は「この世界」からいなくなってしまい、モアイは社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした就活サークルに成り下がってしまう。楓は秋好の夢を取り戻すために親友や後輩と手を組み「モアイ奪還計画」を企む。

―まさにそうですね。

田邊:で、“ユメミグサ”の原型を作った7年前とは違う、大人になった僕たちはその若さや青さを「痛いもの」として捉えるんじゃなく、抱きしめてあげたいと思ったんです。だから、さっき言ってもらったような、おおらかな曲にできたんだろうなって思いますね。なので僕の中では、『青くて痛くて脆い』は、人間の中身の危うさや不安定さにドキドキハラハラしてしまう作品なんですよね。

江口:そうだよね。原作を最初から最後まで読んだ後に、より一層このタイトルが刺さったんだよな。映画を観終わった後にも、「青くて痛くて脆いわあ」って言うしかない感じ。

田邊:はははははは! でも、わかる(笑)。

江口:人間誰しもが持っている危うさを突きつけられる感じがして。一度気づいたら一生気になってしまう自分の内面の部分に向き合わされるのが、『青くて痛くて脆い』っていう作品なのかなと。だからBLUE ENCOUNTが7年前から大事にしてきた曲を“ユメミグサ”っていう形にできたのも、7年前の若くて何も知らなかった自分たち自身がこの作品の中にいると思えたからなんだと思いますね。

左から:江口雄也、田邊駿一

―まさに『青くて痛くて脆い』を拝見して感じたことのひとつとして、自分の理想を自分で貫けない弱さゆえ、自分の理想が叶わないことを世界と人のせいにしてしまう人間の脆さがあったんですが。住野さんご自身は、改めてどんな作品になったと感じていますか。

住野:『青くて痛くて脆い』の原作を書いていた頃は、ちょうど『君の膵臓をたべたい』の映画が公開された時期だったんですね(2017年)。それでいろんな方からの反応を見ていて、『君の膵臓をたべたい』がキラキラした青春の物語として捉えられてると感じて。

それもありがたい感想なんですけど、僕個人は、『君の膵臓をたべたい』には煌めいている以外の側面も多く込めたつもりだったんですよ。それもあって、『青くて痛くて脆い』では、感動してしまうような気持ちよりも、それぞれにとっての一種の傷を呼び覚ますようなものを描きたかったんです。で、そもそも僕はいつでも、「目に見えない側面を大事にしたい」っていうテーマを持って作品を書いている気もしていて。

『青くて痛くて脆い』予告編

田邊:それは、どうしてなんですか?

住野:……僕は基本的に、「自分を含めてみんな嫌いだ」っていう気持ちで生きてきたところがあって。だからこそ、人を好きになれたらいいのにっていう願望を同時に持って生きていて。まさに『青くて痛くて脆い』の田端楓と重なるところがあるんですけど、壁を作って自分を守りながら、でも人への期待も消せないっていうか。だから『青くて痛くて脆い』では、自分自身の青春時代の独りよがりな感じを掘っていく感覚があったんですよ。

僕はいつも、一緒に成長していける人として物語の登場人物を描いている気がします。「目に見えない側面もある」ということを描きたいのはきっと、嫌いだと思ったり、自分には合わないと思ったりする人でも、実は嫌な部分だけではないんじゃないかっていう期待が表れてるのかもしれないですね。

吉沢亮演じる、田端楓 / 『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
吉沢亮演じる、田端楓 / 『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会

田邊:ああ、なるほど……なんか、やっぱりマインドが似てるなあと思いました。僕は高校生の時にBLUE ENCOUNTを結成したんですけど、どうやったらデビューできるのかもわからないくせに、自分をなんとか前に進ませたいがあまり、「俺はすぐにデビューする」みたいなブラフを周りの友達にかまして自分を誇張しちゃってたんですよ。

でもオオカミ少年みたいなもんで、自分を誇張した結果、どんどん自分自身の居心地が悪くなっていって。結局は自分に自信がないから強く見せようとしてたんだと思うし、どんどん嘘つきになって夢を笑われるようになった状況から逃げるために、俺は高校を中退したのかなって思うことがあって。言ってみれば、過去を丸ごと「嫌いだ」って言って切り離すことで、今の自分を肯定しようとしてた気がするんですよ。

左から:江口雄也、田邊駿一
Page 2
前へ 次へ

リリース情報

BLUE ENCOUNT
『ユメミグサ』初回生産限定盤(CD+DVD)

2020年9月2日(水)発売
価格:1,950円(税込)
KSCL-3255~3256

[CD]
1. ユメミグサ
2. 1%

[DVD]
2019月11月21日にZepp Tokyoにて行われた<BLUE ENCOUNT TOUR2019「B.E. with YOU>のライブパフォーマンスとツアードキュメンタリーを収録
1. #YOLO
2. HALO
3. 声
4. ポラリス
5. HANDS
6. Making of TOUR2019「B.E. with YOU」

BLUE ENCOUNT
『ユメミグサ』通常盤(CD)

2020年9月2日(水)発売
価格:1,250円(税込)
KSCL-3257

作品情報

『青くて痛くて脆い』
『青くて痛くて脆い』

全国東宝系にて公開中

監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
原作:住野よる『青くて痛くて脆い』(角川文庫 / KADOKAWA刊)
主題歌:BLUE ENCOUNT“ユメミグサ”
出演:
吉沢亮
杉咲花
岡山天音
松本穂香
清水尋也
森七菜
茅島みずき
光石研
柄本佑
配給:東宝

プロフィール

BLUE ENCOUNT(ぶるー えんかうんと)

田邊駿一(Vo,Gt)、辻村勇太(Ba)、高村佳秀(Dr)、江口雄也(Gt)よる4ピースロックバンド。2004年に活動開始。2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。2015年7月に1stフルアルバム『≒』(ニアリーイコール)をリリースし、2016年10月には日本武道館公演を開催。2017年1月には2ndフルアルバム『THE END』を、2018年3月に3rdフルアルバム『VECTOR』をリリース。最新シングルは、2020年9月2日リリースの『ユメミグサ』。

住野よる(すみの よる)

高校時代より執筆活動を開始。小説投稿サイト「小説家になろう」にアップした『君の膵臓がたべたい』(初出時は『君の膵臓を食べたい』)が編集者の目にとまり、2015年6月に同作で作家デビュー。著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』『麦本三歩の好きなもの』がある。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 荘子itが執筆 『スパイの妻』の「軽さ」が持つ倫理的な意味とは 1

    荘子itが執筆 『スパイの妻』の「軽さ」が持つ倫理的な意味とは

  2. あがた森魚が引退を発表、渋谷CLUB QUATTROで100人限定ワンマンライブ開催 2

    あがた森魚が引退を発表、渋谷CLUB QUATTROで100人限定ワンマンライブ開催

  3. 曽我部恵一と語る、個に還れない時代のリアル 人はなぜ踊るのか? 3

    曽我部恵一と語る、個に還れない時代のリアル 人はなぜ踊るのか?

  4. 山崎賢人&土屋太鳳W主演 Netflix『今際の国のアリス』場面写真公開 4

    山崎賢人&土屋太鳳W主演 Netflix『今際の国のアリス』場面写真公開

  5. 『ハリー・ポッターと賢者の石』初の3D上映が全国の4D劇場82館で実施 5

    『ハリー・ポッターと賢者の石』初の3D上映が全国の4D劇場82館で実施

  6. 星野源、長谷川博己、新田真剣佑、橋本環奈、浜辺美波が先生役 ドコモ新CM 6

    星野源、長谷川博己、新田真剣佑、橋本環奈、浜辺美波が先生役 ドコモ新CM

  7. のん×橋本愛が7年ぶり共演『私をくいとめて』予告編&ビジュアル公開 7

    のん×橋本愛が7年ぶり共演『私をくいとめて』予告編&ビジュアル公開

  8. 表層的なのは嫌。市川渚が重んじる本質と、こだわり抜かれた生活 8

    表層的なのは嫌。市川渚が重んじる本質と、こだわり抜かれた生活

  9. シム・ウンギョンが日本映画に挑戦したわけ。韓国人気女優の素顔 9

    シム・ウンギョンが日本映画に挑戦したわけ。韓国人気女優の素顔

  10. 『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される 10

    『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される