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ポエトリーリーディングとは他者との交流。人生が変わるその魅力

ポエトリーリーディングとは他者との交流。人生が変わるその魅力

『KOTOBA Slam Japan 2020/2021』
インタビュー・テキスト・編集
宮原朋之(CINRA.NET編集部)
撮影:豊島望

聴衆の前で詩を朗読するポエトリーリーディングという表現がある。創作した詩を声に発する以外には特に決められたルールがなく、この上なく自由で気軽な表現である反面、日本では未だマイナーな印象は拭えない。

ただこのコロナ禍、いろいろな自粛と情報消費ばかりの毎日に辟易している多くの人たちにとって、内に秘めた気持ちを創作に昇華できるポエトリーリーディングほど今の時代にマッチした表現はないだろう。今回新たに『KOTOBA Slam Japan』というポエトリーリーディングの大会を立ち上げたジョーダン・スミスと三木悠莉の2人に、ポエトリーリーディングをはじめとする「言葉による表現」について、いろいろと質問を投げかけてみた。

ポエトリーリーディングってどういうものか? 日本のポエトリーリーディングを取り巻く現状

―まずは日本におけるポエトリーリーディングというジャンルについて、伺っていければと思います。

ジョーダン:日本のポエトリーリーディングのシーンには「流れ」をすごく感じます。ニューヨークのインスピレーションを受け継ぎながら、日本の文化にフィットするように生まれ変わりながら少しずつ進化している。

特に東京のポエトリーリーディングシーンは活発だと思う。「詩の世界のキャピタル」と言ってもおかしくないくらい。盛んなのはニューヨーク、東京、パリ、あとはベルリンかな。

ジョーダン・スミス<br>翻訳家、詩人、比較文学・文芸翻訳を教える准教授。2018年BBC Radio 4の詩作冒険番組に出演。『Tokyo Poetry Journal』編集長として、日本のポエトリー世界の「今」を紹介する特集等を担当した他、翻訳者として吉増剛造、最果タヒ、古川日出男、三木悠莉、三角みづ紀、文月悠光などの英訳も行う。『ポエトリー・スラム・ジャパン』2017年準優勝、2018年全国大会ファイナリスト。UCLA、高麗大学、上智大学、早稲田大学などで教鞭を執った経験を持つ。
ジョーダン・スミス
翻訳家、詩人、比較文学・文芸翻訳を教える准教授。2018年BBC Radio 4の詩作冒険番組に出演。『Tokyo Poetry Journal』編集長として、日本のポエトリー世界の「今」を紹介する特集等を担当した他、翻訳者として吉増剛造、最果タヒ、古川日出男、三木悠莉、三角みづ紀、文月悠光などの英訳も行う。『ポエトリー・スラム・ジャパン』2017年準優勝、2018年全国大会ファイナリスト。UCLA、高麗大学、上智大学、早稲田大学などで教鞭を執った経験を持つ。
2018年9月15日、16日開催『ウエノ・ポエトリカン・ジャム 6』会場:上野水上音楽堂 / オープンマイクとライブショーケースの複合イベント
2018年9月15日、16日開催『ウエノ・ポエトリカン・ジャム 6』会場:上野水上音楽堂 / オープンマイクとライブショーケースの複合イベント

―日本ではメジャーな表現ではないイメージがあるので、世界的に見て東京が活発だというのは意外でした。

ジョーダン:まだメジャーではないからこそ、完全に自由なんです。例えば音楽だったら売れようとして自分の表現スタイルを変えたりする人もいるけれど。

三木:いわゆるセルアウト(売れることだけを目的に、自分のスタイルを曲げる行為)みたいにね。

ジョーダン:そうそう。ポエトリーでセルアウトできる可能性はないし、そもそも意味がない。みんな自分が伝えたいことに没頭していて、自由に言葉を駆使していますね。

三木:それぞれが自由に表現を追求している、そのよさを今私たちは体感しているし、それを大事にしていきたいって気持ちがありますね。

三木悠莉(みき ゆうり)<br>2012年よりポエトリーリーディングを始める。『ウエノ・ポエトリカン・ジャム』5、6代表。『ポエトリー・スラム・ジャパン2017』秋大会、同2018大会で全国優勝。パリで開催された『ポエトリースラムW杯』に日本代表として出場。同会期中開催の俳句スラム優勝。
三木悠莉(みき ゆうり)
2012年よりポエトリーリーディングを始める。『ウエノ・ポエトリカン・ジャム』5、6代表。『ポエトリー・スラム・ジャパン2017』秋大会、同2018大会で全国優勝。パリで開催された『ポエトリースラムW杯』に日本代表として出場。同会期中開催の俳句スラム優勝。

ジョーダン:「言葉のよさで知られたい」とか、そういった野心はあるかもしれないけど、言葉の表現が大好きな人たちが集まっている。そういう人同士が仲良くしながら「えー! そういう表現もあるんだ」とかお互いの詩に驚かされたり影響を受けあっていて、面白いことが本当に多いですよ。

―コミュニティーはどんな雰囲気なんですか?

ジョーダン:イベント同士で繋がりがあるし、イベントに行くとだいたい知り合いがいるんです。全く会ったことのない人でもみんなすぐ仲良くなれる土壌がありますね。

三木:個々が新しくイベントを立ち上げていて、参加する人も増えています。ライブショーケースを見せるイベントもあるけど、ポエトリーリーディングの重要な特徴として「オープンマイク」という、すべてが自由参加のイベント形式があるんです。お金を払って見に来て、なおかつ自分が出演もできる、例えば1人3~5分程度のステージに自由にあがることができるんです。

活動歴30年近い方からその日始めたばかりの方まで集まる代表的なオープンマイクイベント『SPIRIT』 / 毎月第一月曜、渋谷RUBY ROOMで開催している
活動歴30年近い方からその日始めたばかりの方まで集まる代表的なオープンマイクイベント『SPIRIT』 / 毎月第一月曜、渋谷RUBY ROOMで開催している(サイトを見る

ジョーダン:東京のポエトリーシーンでおもしろいのは、大学が主催するようなアカデミックなイベントのシーンとナイトクラブやカフェで開催されているポエトリーリーディングのシーンで同じ人が出てたりすること。すごい有名な詩人、作家でもあっても友人が主催するイベントに出演していたりする。強いコミュニティー意識や流派があるというよりは、1つの動きのなかにいろんな渦があるような、なめらかなコミュニティーがある感覚。

三木:例えば現代詩の賞を受賞されているような著名な方も出演してくださったり。ウエノ・ポエトリカン・ジャムには谷川俊太郎さんもご出演頂きました。分断されていないことが、日本のポエトリーリーディングの特徴ですね。

―『KOTOBA Slam Japan』というイベント名称にもある「スラム」って、なんでしょうか?

ジョーダン:「スラム」という概念は、ニューヨークのポエトリーシーンから生まれた言葉なんですけど、もともとプロレスのボディースラムとかの、「ひっくり返す」という意味。なので、「ポエトリースラム」というと「ポエトリーリーディング」というよりも、衝突とか斬新さとか、そういう強い印象があるイベントです。

『KOTOBA Slam Japan 2020/2021』 / illustration by Mad Dog Jones
『KOTOBA Slam Japan 2020/2021』(サイトを見る) / illustration by Mad Dog Jones

三木:日本でもそういうスラム形式のイベントでは、例えば『詩のボクシング』というイベントは歴史が長くて、一時期はNHKで放送されたりして知られていますね。

―ステレオタイプですが、詩の表現活動はニューヨークで活発な印象があります。

ジョーダン:ニューヨークのスラム文化としては、Nuyorican Poets Cafeという場所があるんです。

三木:いわゆるオープンマイクの発祥の地。世界中のポエトリーをやっている人にとって、聖地みたいなとても有名な場所です。今、Nuyorican Poets Cafeはオンラインのオープンマイクをやっていて、日本からも参加できるんですよ。

ジョーダン:ニューヨークで生まれる詩は、ヨーロッパから受け継いだものというより、黒人やプエルトリコ人、いわゆるマイノリティーの文化から生まれたのが特徴です。階級やフェミニズム、人種の問題とか、幅広い意味で政治的なポリティカルな詩が多かったんですね。

日本の場合は、政治的なものや、フェミニスト的なもの、ユーモアのあったり滑稽なもの、個人的な怒りとかストレスを吐き出すようなものもあるし、アブストラクトで示唆的な詩も出てくる。様々なスタイルがあるから私はすごく好きですね。

ジョーダン・スミス

ジョーダン:そういうものが全部混ざっていてすごくいいバランスがあるんですよ。アメリカのスラムのシーンでは、「ザ・詩人」みたいな人がいて、「若い奴らが政治的なことを吠えたりしてるな」とちょっと見下してることもたまにあるんです。

三木:5~6年、ずっと日本のスラムのシーンを見てきていますが、どれかに偏っていることがない。階層みたいなものも全く感じないですね。

ジョーダン:反面、例えばアメリカだと19歳の大学生がはじめて政治学とか歴史を授業で知って、「えー、過去にこんな出来事があったの? じゃあ今自分が作っている詩に入れとくわ」とか、そのくらい身近に詩があるんですよね。

―身近な表現手段として詩があって、表現活動が日常生活にとても近くで存在している。そういった土壌が果たして日本はあるのかというと、まだそこまで世間的にポエトリーリーディングが「イケてる表現」だという認識はなさそうです。

三木:今、それができ始めているところなのかもしれないな、と私は思っています。今はポエトリーリーディングっていうシーン自体を知らない人が大半ですけれど、ヒップホップを始めとして、音楽的観点から新たに興味を持つ人が出てきています。今は感度のいい人に注目されはじめている段階ですね。

『ポエトリースラムジャパン2017秋』でリーディングする三木悠莉
『ポエトリースラムジャパン2017秋』でリーディングする三木悠莉
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イベント情報

『KOTOBA Slam Japan 2020/2021』

12月5日(土)群馬大会
12月13日(日)大阪大会
12月19日(土)東東京大会
12月20日(日)名古屋大会
2021年1月23日(土)全国大会

プロフィール

ジョーダン・スミス

翻訳家、詩人、比較文学・文芸翻訳を教える准教授。2018年BBC Radio 4の詩作冒険番組に出演。『Tokyo Poetry Journal』編集長として、日本のポエトリー世界の「今」を紹介する特集等を担当した他、翻訳者として吉増剛造、最果タヒ、古川日出男、三木悠莉、三角みづ紀、文月悠光などの英訳も行う。『ポエトリー・スラム・ジャパン』2017年準優勝、2018年全国大会ファイナリスト。UCLA、高麗大学、上智大学、早稲田大学などで教鞭を執った経験を持つ。

三木悠莉(みき ゆうり)

2012年よりポエトリーリーディングを始める。『ウエノ・ポエトリカン・ジャム』5、6代表。『ポエトリー・スラム・ジャパン2017』秋大会、同2018大会で全国優勝。パリで開催された『ポエトリースラムW杯』に日本代表として出場。同会期中開催の俳句スラム優勝。

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