人間本来の姿に立ち返った「自然なお産」を通して、生命の神秘のあり方を映し出したドキュメンタリー『玄牝 ―げんぴん―』が、渋谷ユーロスペースほか全国で公開されている。
愛知県・岡崎市にある産婦人科、吉村医院。半世紀にわたって自然なお産に取り組んできた同院が併設する古民家では、臨月を迎えた妊婦たちが颯爽と壁や柱を米ぬか袋で磨き、煮炊きや暖をとるための燃料の薪を割る。すべてはお産のための自然な体づくりの一環として考案された「古屋労働」だった。
同作は、これまで2万件以上のお産に立ち会ってきた自然分娩の第一人者・吉村正と、彼が医院長を務める吉村医院の日常を追ったドキュメンタリー。「不安はお産の大敵。ゴロゴロ、ビクビク、パクパクしないこと」と繰り返す同医院長のもとには、「自然に子を産みたい」と願う妊婦たちが全国からやって来る。
監督は『萌の朱雀』『殯の森』の河瀬直美。デビュー以来、家族や近しい人々のなかに自分を見つめてきた河瀬が、その原点を彷彿とさせつつ、吉村医院長の視線の先にあるものと真摯に向かい合い新境地を切り開いた。音楽は、オーケストラグループ「パスカルズ」を率いるロケット・マツが手掛けている。
『玄牝 ―げんぴん―』
2010年11月6日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
監督・撮影・構成:河瀬直美
音楽:ロケット・マツ(パスカルズ)
出演:
吉村正
吉村医院に関わる人々
企画・製作・配給:組画
配給協力:東風
(『玄牝 ―げんぴん―』©Kumie)