スターリン体制下で逞しく生きる人々の日常を捉えた『DAU.』日本版予告編

映画『DAU. ナターシャ』の日本版予告編が公開された。

『第70回ベルリン国際映画祭』銀熊賞を受賞した同作は、「ソビエト連邦」の記憶を呼び起こすために「ソ連全体主義」の社会を再現するという、「史上最も狂った映画撮影」と呼ばれたプロジェクトの第1弾作品。ソ連の秘密研究所に併設されたカフェで働くナターシャは、研究所に滞在していたフランス人科学者と肉体関係を結び、互いに惹かれ合っていくが、やがてKGB職員にスパイ容疑をかけられ、厳しい追及を受けるというあらすじだ。2月27日から公開。

スターリン体制下の1952年の日常を捉えた日本版予告編では、ナターシャが慌ただしそうに働く姿や、閉店後に同僚ウェイトレスのオーリャと酒を飲みかわす場面、研究所に関わる人々が繰り広げる宴の様子、ナターシャが叫ぶシーンなどが映し出されている。

イリヤ・フルジャノフスキー監督はこのプロジェクトに取り組んだ理由について「私はユダヤ人の家系です。母はウクライナ出身で、故郷のユダヤ人は全員殺害されました。もし母が戦争の初めの頃に逃げていなかったら、私は今ここに座っていなかったでしょう。ドイツ兵たちはただの普通の男性だったことを理解する必要があります。『DAU』を通じて人間の本性が非常に複雑であることが分かるでしょう。この虐殺を伝える言語をどうすれば見つけられるでしょうか? それについてどのように話し、その記憶をそうやって新しい世代に引き継ぐことができるでしょうか。『DAU』は、ソヴィエトのトラウマについて語ります。バビ・ヤール(1941年に、ホロコーストにおける1件では最大の犠牲者を出したと言われる虐殺が起こったウクライナの地名)もグラーグ(ソ連時代の強制労働収容所・矯正収容所の管理部門の名称だが、ソ連の奴隷労働システムそれ自体を表す言葉としても使用される)も、最近起こったことです。ソヴィエト連邦以降の世界には、犠牲者または加害者、あるいはその両方がいない家族は存在しません。それこそがソヴィエトのトラウマです。ソヴィエトが残した病は記憶喪失です。誰もが覚えておきたいことだけを覚えています。この記憶喪失を克服しない限り、それは何度も何度も繰り返されます。意識的に覚えていないのかもしれませんが、魂は覚えています。反省し二度と繰り返さないための努力をしない限り、何度でも同じ経験をすることになるでしょう」とコメント。

また、当初はメイクスタッフとして参加し、後に編集も担当することになる共同監督のエカテリーナ・エルテリは、撮影現場から作品に関わっていたことについて「大きなアドバンテージがあったと思います。私は少なくとも500時間の映像を乗り越えて、ナターシャについての伝えたいストーリーを見つけました。彼女は困難な生活を送ってきました。彼女が発する言葉の全てにそれを感じることができます。とても孤独で傷つきやすいように見えるにも関わらず、とてもタフな行動をした彼女にとても感動しました。その硬い殻の中に隠された憧れ、希望、絶望、そして強さの層を見て、これを共有したいと思ったのです」と語っている。

作品情報

『DAU. ナターシャ』

2021年2月27日(土)からシアター・イメージフォーラム、アップリンク吉祥寺ほか全国で公開
監督・脚本:イリヤ・フルジャノフスキー、エカテリーナ・エルテリ 出演: ナターリヤ・ベレジナヤ オリガ・シカバルニャ ウラジーミル・アジッポ 上映時間:139分 配給:トランスフォーマー
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