香港の政治的状況、社会の変化を描いた香港インディペンデント映画18本上映

上映イベント『2021年香港インディペンデント映画祭』が6月19日から大阪府・シネ・ヌーヴォで開催される。

2014年に「雨傘運動」、2019年に逃亡犯条例修正に端を発するデモが発生し、昨年に香港国家安全維持法が施行された香港。同イベントでは、香港の政治的状況、社会の変化を描いてきた香港のインディペンデント映画から、日本初公開となる長編5作品、短編13作品が上映される。

長編映画には、香港本土派の政治活動家エドワード・レオンのドキュメンタリー『僕は屈しない』、「雨傘運動」の影響を受けたある家族の物語『逆さま』、若者の上の世代に対する絶望と反乱を描くサスペンス『逆向誘拐』、時代に翻弄されながらもお互いの愛を確かめ合うゲイカップルを映し出す『あなたを思う』、2019年に港理工大学で繰り広げられた警察と学生との攻防を記録した『理大囲城』がラインナップ。

短編作品は『2019年香港民主化デモ傑作短編集』『「香港、アイラブユー」短編集』の2つのプログラムを用意。『2019年香港民主化デモ傑作短編集』は『立法会占拠』『私たちのやり方』『仲間たち』『試行錯誤』『誰も見捨てない』の5作、『「香港、アイラブユー」短編集』は『暴動の後、光復の前』『尋ね人』『ラブレター』『初めての夜』『1944年の秋』『ホワイトナイト』『町へ出よう』『レモン、牛乳』の8作で構成される。

イベントは6月25日までシネ・ヌーヴォで行なわれた後、6月25日から京都・出町座、7月中旬から愛知・名古屋のシネマスコーレを巡る。

リム・カーワイ(『2021年香港インディペンデント映画祭』)のコメント

2017年、東京、名古屋、大阪の3都市で開催された第1回「香港インディペンデント映画祭」は好評をもちまして終了となった。本映画祭で、日本初上映された、雨傘運動を描いたドキュメンタリー映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』(チャン・ジーウン監督)、北京近郊の芸術村で起きた、政治がいかに芸術家を監視し、追い詰めた事件を描いた『アウト・オブ・フレーム』(ウィリアム・クォック監督)はそれぞれ山形国際ドキュメンタリー映画祭と福岡アジア映画祭で作品賞を獲得した。映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』は劇場でも公開され、話題を呼んだ。本映画祭では多種多彩な作品を通じて、2014年に香港ではなぜ雨傘運動が起きたか、直接の政治的な原因以外に間接的な原因として、例えば香港人のアイデンティティの形成、返還後中国との関係や日常生活における問題など、様々な要因を提示することで、日本の観客に考えるヒントを提供することになった。
雨傘運動の5年後の2019年6月から誰も予想だにしなかった、雨傘運動よりも大規模で激しい抗争運動が起き、それは新型コロナウイルスが流行し始める時期まで長期間続いた。そして、コロナ禍の真っ最中、23年目の返還記念日に、なんと中国政府が香港で国家安全維持法の実施を採決し、香港の中国返還で約束された一国二制は事実崩壊したのではないかと世界各国から懸念されることになった。本映画祭が開催された2017年からコロナ禍が起きるまで、この数年間の社会と政治状況の激変に対応して、誠実に描く劇映画とドキュメンタリー映画も数多く作られたが、その殆どが映画会社が作った商業映画ではなくて、自主映画だった。映画業界の自己検閲もあって、残念ながら、そういう映画は香港の劇場で一般公開までにされることはなかった。2020年のロッテルダム国際映画祭では、香港で上映されなかった政治的なテーマを持った自主映画の特集が組まれ、国際的にも大きな反響を得た。残念ながらそのような映画は日本ではまだ一本も紹介されていない。「2021年香港インディペンデント映画祭」は、そのような映画を精選して上映する予定ですが、必ずしも抗争をそのまま描く映画ばかりではなく、雨傘運動の失敗後から2020年まで香港の若者がいったいなにを考えていたのか、そしてなぜ彼らが死を覚悟しながら、抗争に命懸けで積極的に参加したのか、多種多彩の映画を通じて日本の方々に理解していただく助けになればと考えている。今回紹介する映画はもう一つ特徴がある。それは雨傘運動が起きてから、特に自主映画の分野では突然沢山の新人女性監督が現れたことだ。これらの作品を鑑賞していただければ、日本の観客も香港の女性監督の勇気と才能、社会へ関心の深さに感服するだろう。

イベント情報

『2021年香港インディペンデント映画祭』

2021年6月19日(土)~6月25日(金) 会場:大阪府 シネ・ヌーヴォ 2021年6月25日(金)~7月8日(金) 会場:京都府 出町座 2021年7月中旬 会場:愛知県 名古屋 シネマスコーレ
上映作品: 『僕は屈しない』(監督:ノーラ・ラム) 『逆さま』(監督:ルーサー・ン) 『逆向誘拐』(監督:アモス・ウィ) 『あなたを思う』(監督:サイモン・チュン) 『理大囲城』(監督:香港ドキュメンタリー映画工作者) 『立法会占拠』(監督:香港ドキュメンタリー映画工作者) 『私たちのやり方』(監督:カナス・リウ) 『仲間たち』(監督:カナス・リウ) 『試行錯誤』(監督:カナス・リウ) 『誰も見捨てない』(監督:カナス・リウ、サム・ツァン) 『暴動の後、光復の前』(監督:イウ・チョンホン) 『尋ね人』(監督:ジュ・カーシェン) 『ラブレター』(監督:ジョミン・チャン) 『初めての夜』(監督:サム・イップ) 『1944年の秋』(監督:フィッシャー) 『ホワイトナイト』(監督:チョウ・キンカン) 『町へ出よう』(監督:ジェイソン・イウ) 『レモン、牛乳』(監督:ワイリー・チャン)
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