フラワーカンパニーズが30周年の始まりに発した、3つの熱い言葉

冒頭で声を上げた、「とりあえず、辿り着いたぞ30年!」

今年、結成30周年を迎えるフラワーカンパニーズ(以下、フラカン)が、2月2日、浅草公会堂にてワンマンライブ『フラカン30周年のはじまりはじまり』を開催した。会場の浅草公会堂には「スターの広場」という前庭があり、そこには、渥美清、淡谷のり子、勝新太郎、萩本欽一、黒柳徹子、北島三郎、植木等、ビートたけし……等々、往年のスターたちの手形とサインが刻印されたプレートが設置されている。MCで本人たちも言っていたのだが、「平成」が終わろうとしている今、こんなにも色濃く「昭和」の香りが漂う浅草公会堂を30周年のはじまりの場所に選ぶところが、なんともフラカンらしい。

フラワーカンパニーズ / 撮影:新保勇樹

冒頭、“恋をしましょう”“マイ・スウィート・ソウル”“チェスト”“星に見離された男”と、アグレッシブな曲の連打で幕を開けたステージ。“星に見離された男”が終わると、鈴木圭介(Vo)が、「とりあえず、辿り着いたぞ30年!」と声を上げる。

鈴木圭介 / 撮影:新保勇樹

この「とりあえず」に、とてもグッときた。この言葉には、本当にいろんなものが込められているように思えたのだ。30年という歴史の中で積み上げてきたものの重み、貫いてきたものの強さ、「続く」ことの幸福、消えることのない傷や疲労、「まだまだ行くぞ」という力強さ、そして「未来のことなんかわからねえよ」という「諦め」と似て非なる覚悟……。そのすべてが混ざり合ったような、「とりあえず」。

今年32歳になる自分にとって、「30年間、ロックバンドを続けること」がどのようなことなのかは、想像がつくものではない。しかしながら、「30年」という月日がどのような質量や濃度を持つのか、ということに関しては、自分の生きてきた年数を考えれば多少の想像はつく。そこで思い至るのが、「とりあえず」という言葉が持つ生々しい実感だった。

メンバーチェンジなし、活動休止もなしで、30周年を迎えたフラワーカンパニーズ / 撮影:新保勇樹

30年もあれば、得るものも、失うものもある。本当に大切だとわかったものがあるし、大切だと思っていたけど、そうでもなかったものもある。なにかひとつを正解だと言い切るよりも、昨日の正解が明日には不正解に変わるかもしれない……そんな不安定さに身を任せることのほうが、よっぽど生きやすかったりもする。この先、40代、50代と歳を重ねていくことで自分はなにを思うのか、想像もできないが、そんな未来に対する「わからなさ」もひっくるめて、「とりあえず、今、ここにいる」。それだけが、自分が安心して、ゆっくりと身をもたげることができる実感だったりする。今年、30歳になるフラカンも、もしかしたらそんなことを感じているのかもしれないと、鈴木の発した「とりあえず」を噛み締めながら思う。

撮影:新保勇樹

未だに1stアルバムの曲を「最高傑作」と語る

この日はレアな曲も披露されたが、特筆すべきは、1995年にリリースされた1stフルアルバム『フラカンのフェイクでいこう』の1曲目、“むきだしの赤い俺”だろう。おそらく、今のフラカンからは出てこないであろう、刺々しいヘヴィネスを響かせるこの曲の演奏後、鈴木はこう語った。「この曲は24歳くらいの頃に作った曲で。今までフラカンでボツ曲も含めて300曲以上は作ったけど、この“むきだしの赤い俺”が、俺は最高傑作だと思ってます。未だに、この曲を超える曲は作れていない」。

フラワーカンパニーズ“むきだしの赤い俺”を聴く(Apple Musicはこちら

それを聞いたとき、「30年目にして、なんてすごいことを言うのだろう!」と驚いた。この2019年に、「“むきだしの赤い俺”がフラカンの最高傑作である」と断言する人が、この世界に一体、どれほどいるのだろうか。「いい曲だ」と思ったり、深い思い入れを持ったりする人はいるだろうが、「最高傑作」と言い切る人は、そうはいないのではないだろうか。30年来、一緒にステージに立っているグレートマエカワ(Ba)、竹安堅一(Gt)、ミスター小西(Dr)の3人も、「いや、いい曲だとは思うけど……」というような雰囲気で鈴木の発言を聞いている。

この日は、鈴木とマエカワが中学時代の修学旅行で一緒に浅草に来たというMCでじゃれ合うように盛り上がったり、メンバー紹介で鈴木が他の3人を「親友」なんて呼ぶ場面もあって、30年間保たれ続けてきたバンドの純粋な絆の深さを感じさせもしたが、同じくらい、この「“むきだしの赤い俺”最高傑作」発言は、30年間、あるいはもっと長い間、どんな熱心なファンでも、スタッフでも、評論家でも、バンドメンバーですらも、わかち合うことのできない鈴木圭介の孤独が、唐突にニョキッと顔を出した瞬間のようだった。

撮影:新保勇樹

フラワーカンパニーズが発する「なんとかなる」の言葉の重み

中盤、“春の手前”から“あったかいコーヒー”“ハイエース”、そして“なんとかなりそう”へと、ゆったりとしたテンポ感を基調とした楽曲が続いた場面も素晴らしかった。“春の手前”や“あったかいコーヒー”の柔らかな旋律に導かれるようにしてはじまった、オリジナルアルバムとしては最新作となる『ROLL ON 48』に収録された“ハイエース”は、「どんぶらこ~、どんぶらこ~」と川を流れる大きな桃のように、長き道のりをゆらゆらと進んでいくバンドの「これまで」と「この先」を、穏やかに、雄大に描いているように響いていた。

そして“なんとかなりそう”は、1996年発表の3rdアルバム『俺たちハタチ族』の最後に収録された曲で、鈴木曰く「この頃から、今のフラカンの形ができ上がってきた」という。

フラワーカンパニーズ“なんとかなりそう”を聴く(Apple Musicはこちら

撮影:新保勇樹

この日、本編の最後に演奏されたのは最新作『ROLL ON 48』に収録された“最後にゃなんとかなるだろう”だった。「なんとかなる」――ずっと変わらず、フラカンはこの一言をいろんな人たちに伝えたり、自分たちに言い聞かせたりしてきたのだと思う。なんとかなる。そんな言葉を胸に、忘れそうになったら、また手繰り寄せて。そうやってフラカンというバンドは、進んできたのだと思う。

本編が終了したあと、アンコールで再びステージに上がった際、鈴木はメンバーに向けてこんなことを言っていた。「まだまだ、これからだけど、まぁまぁやってきたほうじゃない?」。そして、最後に演奏された“サヨナラBABY”のあと、「今日からがはじまりです。このロクでもないバンドを愛してやってください!」と、客席に向けて力強く叫んで見せた。それに応える大きな拍手に包まれて、フラカンの30周年がはじまった。

撮影:新保勇樹
『フラワーカンパニーズ30周年幕開けワンマンライブ「フラカン30周年のはじまりはじまり」』

2019年2月2日(土)
会場:東京都 浅草公会堂

イベント情報
『フラワーカンパニーズ presents DRAGON DELUXE DELUXE ~30周年スペシャル~』

2019年10月4日(金)
会場:愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
出演:
フラワーカンパニーズ and more

『フラワーカンパニーズ・ワンマンツアー「30年のキセキ」』

2019年4月11日(木)
会場:大阪府 十三FANDANGO

2019年4月13日(土)
会場:熊本県 熊本Django

2019年4月14日(日)
会場:宮崎県 宮崎SR BOX

2019年4月16日(火)
会場:香川県 高松DIME

2019年4月20日(土)
会場:山梨県 甲府CONVICTION

2019年4月21日(日)
会場:新潟県 上越EARTH

2019年4月23日(火)
会場:京都府 京都磔磔

2019年5月13日(月)
会場:東京都 新代田FEVER

2019年5月16日(木)
会場:北海道 札幌COLONY

2019年5月18日(土)
会場:岩手県 盛岡CLUB CHANGE

2019年5月19日(日)
会場:岩手県 盛岡CLUB CHANGE

2019年5月25日(土)
会場:石川県 金沢AZ

2019年5月26日(日)
会場:徳島県 徳島club GRINDHOUSE

2019年6月8日(土)
会場:栃木県 HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2

2019年6月9日(日)
会場:茨城県 水戸LIGHT HOUSE

2019年6月14日(金)
会場:宮城県 仙台enn 2nd

2019年6月20日(木)
会場:兵庫県 神戸太陽と虎

2019年6月22日(土)
会場:福岡県 小倉FUSE

2019年6月23日(日)
会場:広島県 広島SECOND CLUTCH

2019年6月29日(土)
会場:鹿児島県 奄美大島ASIVI

2019年6月30日(日)
会場:鹿児島県 奄美大島JUICE

『鈴木圭介 50歳お誕生日企画「鈴木圭介、40代最後の夜」』

2019年4月29日(月・祝)
会場:愛知県 名古屋 Electric Lady Land
出演:
フラワーカンパニーズ
EARTHSHAKER

『鈴木圭介 50歳お誕生日企画「平成ラストと鈴木圭介誕生日」』

2019年4月30日(火)
会場:愛知県 名古屋 Electric Lady Land
※ワンマンライブ

リリース情報
フラワーカンパニーズ
『フォークの爆発第1集 ~29~』(CD)

2018年8月1日(水)発売
価格:3,000円(税込)
XQNG-1002

1 夕焼け
2 涙よりはやく走れ
3 元気ですか
4 MY LIFE WITH A DOG
5 夏に生きる
6 29
7 宙ぶらりんの君と僕
8 ヒコーキ雲
9 はじまりのシーン
10 帰り道

プロフィール
フラワーカンパニーズ
フラワーカンパニーズ

名古屋が生んだ「日本一のライブバンド」フラワーカンパニーズ。通称フラカン。Vocal:鈴木圭介、Bass:グレートマエカワ、Guitar:竹安堅一、Drums:ミスター小西の4人組。1989年、地元の同級生によって結成され、95年メジャーデビュー。6枚のアルバム&12枚のシングルをリリース後、2001年メジャーを離れ、インディーズレーベル「TRASH RECORDS」にて活動。「自らライブを届けに行く事」をモットーに活動、大型フェスから小さなライブハウスまで日本全国津々浦々…メンバー自ら機材車に乗り込み、年間で100本を超える怒涛のライブを展開(機材車走行距離は年間軽く40000kmを超え、その距離は地球1周分に相当する)。2008年11月、12枚目のアルバム『たましいによろしく』を7年8か月振りにメジャーよりリリース。以降、コンスタントにライブとリリースを重ね、「メンバーチェンジ&活動休止一切なし」4人揃って結成26周年目の2015年12月19日、自身初となる日本武道館公演『フラカンの日本武道館 ~生きててよかった、そんな夜はココだ!~』を開催、チケットをSOLD OUT させ、大成功を収めた。2017年再びメジャーを離れ自分たちのレーベル「チキン・スキン・レコード」を設立、9月6日に16枚目となるフルアルバム『ROLL ON 48』を発売。そして2019年結成30周年を控えた2018年夏、初のアコースティック・セルフカヴァーアルバム『フォークの爆発第1集 ~29~』を発売。



フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • フラワーカンパニーズが30周年の始まりに発した、3つの熱い言葉

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて