レビュー

2012年の日本において、鳴らされるべき「パンク」

金子厚武
2012/03/14
2012年の日本において、鳴らされるべき「パンク」

パンクの象徴といえば、真っ先に名前が挙がるのはジョン・ライドンだろう。言わずと知れたSEX PISTOLSのフロントマンだが、彼がパンクなのはSEX PISTOLSからの脱退後、PUBLIC IMAGE LTD(PIL)を結成し、自らが作ったパンクのイメージを真っ向から否定したからこそである。そして、本作のモチーフとなっているのが、まさにこのPILなのだ。

まずは何と言ってもメタルボックス仕様のスペシャルパッケージ。これはPILのセカンド『METAL BOX』をそのまま再現したようなものである。また、PILは『METAL BOX』の発表後、ベーシストが脱退しているのだが、残されたメンバーのみで最高傑作の呼び声も高いサード『FLOWERS OF ROMANCE』を完成させている。そして、ヨルズもまた、セカンドにあたる前作『IONIZATION』の発表後、ベーシストが脱退し、残されたメンバーのみで本作を作り上げた。つまり、『DESINTERGRATION』は、ヨルズにとっての『METAL BOX』であり、『FLOWERS OF ROMANCE』でもあるというわけだ。



彼らは元々ポストパンクやノーウェイブ、NYパンクを軸にしつつ、クラウトロックやミニマルテクノも参照点とした雑食性の高いバンドだったが、本作は3曲で約45分と、これまで以上に突き抜けた作品となっている。正直初めに何となく聴いたときは、45分間続く不穏な空気のグラデーションにやや引き気味だったのだが、集中力を高めて2周目に挑むと、この45分間の中で起こっていることの密度の濃さに度肝を抜かれてしまった。

もはやビートは完全にロックバンドのそれではなく、ポストミニマルなダンスミュージックと同化しているし、“FAST CAR DRIVE”の終盤に顕著なダブ処理は、『METAL BOX』はもちろん、XTCのアンディ・パートリッジによる『TAKE AWAY』のようなクラシックからの影響も感じられる。また、様々な音色やフレーズのレイヤーが現れては消えるギターを追っているだけでも、サイケデリアの彼岸に連れて行かれるかのようだ。初期作品の個性を決定付けていたハイトーンボイスは、ここではあくまで楽曲を構成する一要素となり、この3人で作り得る音世界が完全に確立されたと言っていいだろう。

結果として、『DESTINTERGRATION』というアルバムは、不穏な空気が漂い続ける2012年の日本をそのまま音像化したような作品となり、そんな現代に「パンク」の意味を改めて突き付ける作品となった。言うまでもなく、SEX PISTOLSのように鋲のついた革ジャンを着て中指を突き立てることがパンクではない。PILが示したように、パンクとは一言でいえば「拒絶」であり、本作の突き抜けたオリジナリティは社会を牛耳る巨大なシステムに対しても、こう宣言しているのだ。「誰がお前らの言うことなんか聞くか」と。

リリース情報

YOLZ IN THE SKY
『DESINTEGRATION』

2012年3月14日発売
価格:3,500円(税込)
felicity / PECF-1041〜2

[DISC1]
1. FAST CAR DRIVE
2. C'MON
3. WAVER WAVER
[DISC2]
・disk2
※CINRA.STOREではアルバム購入特典として“Live at Shibuya (CINRA ver.)”がダウンロードできます

YOLZ IN THE SKY

2003年結成。Less Than TVから1stアルバムをリリース後、Fuji Rock、SXSWなどに出没。2009年にはfelicityより2ndアルバム『IONIZATION』を発表。その後もライブ活動を中心に、多種の音楽性を吸収しながら進化を続ける。無機質であるがゆえに揺り動かされるビート。テクノかと思えば、カオティックなノイズがカタルシスを感じさせるギター。いつ落ちるか分からない雷のようなハイトーン・ヴォイス。言うならば、一心不乱に踊り狂うためのミュージックである。

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