レビュー

DE DE MOUSEがゲーム音楽のレジェンド「田中宏和」にリスペクトを捧げた夜

タナカヒロシ
2014/10/07
DE DE MOUSEがゲーム音楽のレジェンド「田中宏和」にリスペクトを捧げた夜

年に数回しかプレイしないChip Tanakaが、DE DE MOUSEや、Seiho、Licaxxx、Carpainterら、若手DJたちと共演した貴重な一夜

9月18日、東京・表参道のOMOTESANDO Galleryで、音楽イベント『SOTIRED―ソータイアド―Supported by aDanza』が行われた。同イベントはiPhoneのミュージックライブラリの曲を再生すると、楽曲に合わせて様々なキャラクターがダンスを踊るアプリ『aDanza』のリリースを記念して企画されたもの。クラブでもライブハウスでも変幻自在のパフォーマンスで活躍するDE DE MOUSEを筆頭に、Seiho、Licaxxx、Carpainterといった新世代のクラブシーンを引っ張る若手勢、そして『aDanza』をリリースする株式会社クリーチャーズの代表取締役である田中宏和がChip Tanaka名義で出演。田中は1980年代から任天堂の名作ゲーム音楽の数々を手がけたことで知られ、「たなかひろかず」名義でアニメ『ポケットモンスター』関連の名曲をいくつも生み出した作曲家。年に数回しかイベントに出演しない彼の貴重なプレイを見るために駆けつけた人も多かった。

『SOTIRED』の様子
『SOTIRED』の様子

フロアでは、網戸にプロジェクションされた『aDanza』のキャラクターと、オーディエンスが共に踊り続ける

会場のOMOTESANDO Galleryに入ると、頭上には惑星が回っているかのようなドデカいミラーボールが現れ、表参道の喧騒から一瞬にして非日常に。フロアには至るところに『aDanza』のキャラクターたちがスタイリッシュにデザインされたピンナップが貼られ、さらに奥に足を運んでみると、「網戸に投影中!」と書かれたスクリーンで『aDanza』のデモムービーを上映。アルパカ、カエル、カブトムシといったキャラたちが、人間からモーションキャプチャーされた動きでダンスを踊り、新作キャラの相撲力士とビキニ、パイナップルも思わず吹き出してしまうシュールな動きで来場者を楽しませる。このほかにも、アルパカの着ぐるみ(首から上のみ)をかぶって、男性もののワイシャツを着た2人の女の子と一緒に写真を撮れるスペースもあり、ちょっとしたお祭り気分が味わえるフロア内は大盛況だった。

網戸スクリーンに投影された『aDanza』
網戸スクリーンに投影された『aDanza』

アルパカの耳を模したカチューシャを着用した女性との撮影コーナー
アルパカの耳を模したカチューシャを着用した女性との撮影コーナー

世代や出自を超越した出演者が揃ったこともあってか、ゲームファンや若い女性、そしてスーツを着たサラリーマンの姿も目立った場内。初めこそ様子見をしているようなオーディエンスが多かったものの、Carpainterがトップバッターらしい絶妙なさじ加減でフロアをあたため、続くLicaxxxが硬派なテクノで骨太なビートを響かせると、次第に熱気を帯びた雰囲気に。3番手のSeihoは、アッパーなダンストラックに動物の鳴き声やアフリカ原住民の叫び声のようなサウンドをかけあわせ、野性味あふれながらもときおりジャジーな要素も盛り込む洒落たプレイで魅了。自身もブース内で「音楽に身を委ねる」という言葉がふさわしいプリミティブなダンスを見せて盛り上げると、最後には大きな歓声が湧き起こった。

Licaxxx
Licaxxx

Seiho
Seiho

音のレンジの広さが特徴的なChip Tanakaのプレイは、第六感が呼び起こされるような体験

そしてお待ちかねのChip Tanakaの出番になると、場内の視線が一気に彼のもとへ注がれる。Macを使い、さまざまなビートを繰り出しながら、効果音のようなメロディーを聴かせていくスタイルは、長年ゲームミュージックを生み出してきたゆえだろうか。何より驚いたのは、音のレンジの広さ。高音も低音も、日常ではなかなか耳にしない音域が多用され、それでいてどこか人間的な情緒を漂わせるメロディーは、第六感を呼び起こすような刺激にあふれていた。場内のスクリーンでは『aDanza』の映像も流れ、キャラクターが人間的なダンスを踊るというコンセプトとも見事にマッチング。最後はDE DE MOUSEからのリクエストだったという名曲『ドクターマリオ』のBGMをアゲアゲのMIXでプレイしてフロアは大興奮。ちょっとした伝説を目撃したような瞬間だった。

Chip Tanaka(田中宏和)
Chip Tanaka(田中宏和)

ゲーム音楽界のレジェンド・田中宏和(Chip tanaka)へのリスペクトがぎゅっと詰まった、DE DE MOUSEのプレイ

イベントのラストを締めたのはDE DE MOUSE。なんと1曲目から田中宏和が作曲した『メトロイド』のオープニング曲をプレイし、訪れたゲームファンの胸をアツくさせる。宇宙空間を舞台にした『メトロイド』のディープなサウンドと巨大なミラーボールの相性も完璧だ。その後は徐々にペースを上げ、ここぞというところでマイク片手にアジテーションをしていくと、場内はあれよあれよという間に熱狂の渦に。圧巻だったのはラストの展開で、DE DE MOUSEの代表曲“Baby's Star Jam”をチップチューン風味のアレンジでプレイした流れから、これまた田中が作曲した『スーパーマリオランド』のエンディング曲(これが泣ける名曲!)を経てフィニッシュ。フロアをきっちりと盛り上げながらも、田中へのリスペクトが込められた見事な60分だった。

DE DE MOUSE
DE DE MOUSE

なお、この日は『ポケモン』界隈では著名な「イマクニ?」も観客として来場。胸に『aDanza』のロゴをあしらった全身タイツ姿で誰よりも踊りまくってフロアを盛り上げ、「握手して下さい」というファンからの要望にも笑顔で応えていたことも付け加えておこう。

イマクニ?
イマクニ?

終演後、Chip Tanakaこと田中宏和に話を聞くと、今回は「ゲームとテクノの間」をいく楽曲で構成したとのこと。ちなみにライブでは世に出ていないオリジナルのトラックをプレイしているそうで、音源化を熱望したところ、「ああいうのは部屋で聴くものではない気がするんだよね。こういうクラブでワーッと流すにはいいけど」とかわされてしまった……残念! できれば家でもじっくり正座しながら楽しみたいけれど、やっぱり現場に足を運ぶことが大事だと、あらためて感じさせられた夜だった。

イベント情報

『SOTIRED―ソータイアド―Supported by aDanza』

2014年9月18日(木)OPEN 18:20 / START 18:30
会場:東京都 表参道 OMOTESANDO Gallery
出演:
Carpainter
Chip Tanaka
DE DE MOUSE
Licaxxx
Seiho
料金:当日2,000円 フライヤー割引1,000円

プロフィール

田中宏和(たなか ひろかず)

株式会社クリーチャーズ代表取締役社長。作曲家。1980年、任天堂に入社。ゲーム&ウオッチやファミコン、ゲームボーイなどの企画及びゲームプログラム、サウンドデザインや、音源開発などに携る。ゲーム音楽の代表作としては、『メトロイド』『スーパーマリオランド』『テトリス』『ドクターマリオ』『MOTHER』(鈴木慶一との共作)『MOTHER2 ギーグの逆襲』(同)『ポケットカメラ』などがある。作曲を手がけた、テレビアニメ『ポケットモンスター』主題歌“めざせポケモンマスター”は180万枚というセールスを記録。クリーチャーズでは、蛍光灯や白熱電球、リモコン受信部など、日常の光を使って遊ぶコンピュータゲーム『ちっちゃいエイリアン』の他、『ポケパーク』シリーズ、『ポケモンレンジャー』シリーズを企画・開発。他に『ポケモンカードゲーム』シリーズのエグゼクティブプロデューサーも務める。

DE DE MOUSE(でで まうす)

アシッドハウスからアーメンブレイク、ヒップホップからフュージョンまで、様々なキーワードをリンク、融合させ、新たな可能性を体現するエレクトロニック・シーンの異端児。ファッション、ゲーム、グラフィック等、あらゆるジャンルとのコラボレーションも積極的に行っている。2012年には新たに立ち上げたレーベル「not records」の第1弾リリース作品として、アルバム『sky was dark』を発表。

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