レビュー

2015年の音楽シーンの動向を考える。プロデューサーの立場に変化あり?

金子厚武
2015/03/02
2015年の音楽シーンの動向を考える。プロデューサーの立場に変化あり?

インターネットが変えた「作り手」のポジション

2010年代の音楽シーンのトレンドの1つとして、「作り手が前に出る時代」というのがある。ここで言う「作り手」とは、プロデューサー、コンポーザー(作曲家)、DJなどであり、もちろんこれら全てを兼ね備えている人も数多くいる。そして、この流れの契機となったのは、言うまでもなくインターネットの浸透である。

ニコニコ動画への投稿を契機に人気に火が点いたヒャダインこと前山田健一は今やタレントとしてもお茶の間を賑わせているし、kz(livetune)、じん、米津玄師といったボカロP出身のクリエイターも、現在はさまざまな分野で活躍。また、2013年にメジャーデビューを果たした24歳のDJ / トラックメイカーのtofubeatsが、昨年テレビやフェスといった舞台で森高千里と並んだ姿は、非常にインパクトのあるものだった。

そして、この流れは日本のバンドシーンとクラブミュージックシーンを代表する2大プロデューサー、亀田誠治と中田ヤスタカの昨年末以降の動きにも反映されているように思う。

CAPSULECAPSULE


亀田誠治とflumpoolの刺激的な融合

昨年11月にファーストシングル『It's Alright!』を発表したTHE TURTLES JAPANは、flumpoolのYAMAMURA(山村隆太)とSAKAI(阪井一生)が、「バンドの枠を取り払って何か新しいことをしたい」という想いから、ラジオでの共演で意気投合したKAMEDA(亀田誠治)に声をかけて結成したスペシャルユニットである。

亀田は東京事変のメンバーとしても長く活動していたが、今再び表立った活動を始めたというのは、時代性を感じさせる。“It's Alright!”ではYAMAMURAの声にエフェクトをかけ、普段は禁じ手にしているというライブでの再現性を度外視した楽曲制作を行うなど、このユニットならではのチャレンジを行っていて、4月に発表されるアルバムではさらなる進化を遂げている。flumpoolでは見ることのなかったメイクを施したインパクト大のアーティスト写真からして遊び心が感じられ、今後flumpoolの二人の新たな魅力もより引き出されていくことだろう。

THE TURTLES JAPAN
THE TURTLES JAPAN


EDMの流行が背景? 初のワンマンライブツアーが決定したCAPSULE

一方、中田ヤスタカは今年2月に、ライブを意識したCAPSULEのアルバム『WAVE RUNNER』を発表。さらには、キャリア初となるワンマンライブツアーの開催も発表され、大きな話題を呼んだ。前作『CAPS LOCK』はライブを意識しない、リスニング仕様のアルバムだったので、『WAVE RUNNER』はその反動と言えるが、やはりここにも時代性が関連しているように思える。

特に、DJとしての活動も多い中田ヤスタカの場合は、海外においてEDMの人気が爆発し、それに伴いDJの地位が向上したことの影響も大きいはず。日本でも昨年、世界最大級のEDMイベント『ULTRA MUSIC FESTIVAL』が初開催されるなど、EDM系のフェスも増えてきたし、SEKAI NO OWARIの“Dragon Night”のアレンジをオランダの人気DJのニッキー・ロメロが務めたことも話題となった。つまり、中田ヤスタカがこのタイミングでライブ活動を活発化させて前に出るというのは、日本と海外のそれぞれの音楽シーンの流れが融合してのものだと言えるかもしれない。

オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの交流に期待

バンドのコンポーザーがアイドルに曲提供をして注目されることなども含め、楽曲の作り手に注目が集まるというのはとても健康的なことだと思うし、意識的かどうかは抜きにしても、今の流れとリンクする動きを同時期に示した亀田誠治と中田ヤスタカの二人は、さすが時代を読む目を持っていると思わざるを得ない。

そして、今後に対する期待を述べるなら、より若いプロデューサーを、大物アーティストが積極的に起用する流れに期待したい。例えば、日本よりもプロデューサーの存在が大きいアメリカでは、カニエ・ウェストが2013年に発表した『Yeezus』で、まだ20代前半ながら、インターネットを通じて話題を呼んでいたエレクトロニックミュージックの新星Arcaを招聘するなど、近年オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの積極的な交流から、刺激的な音楽が生まれている。

個人的に今国内で期待しているのは、活動休止中のバンド・Ovallのメンバーで、現在30歳のmabanua。昨年からかなり活発なプロデュースワークを行っていて、1月に発売された大橋トリオの新作をはじめ、3月に出るCharaの新作、4月に出る期待の新人Awesome City Clubのデビューアルバムにも参加。また、ドラマーとしても、昨年のGotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤のソロプロジェクト)に続き、くるりの過去作再現ライブへの参加も決定するなど、多方面に活動の幅を広げている。より面白い音楽は、きっとこういうところから生まれてくるはずだ。

リリース情報

ELECTRONIC HUMANITY
HE TURTLES JAPAN
『ELECTRONIC HUMANITY』(CD)

2015年4月8日(水)発売
価格:2,484円(税込)
AZCS-1044

・It's Alright!
・JAPANESE SPIRITS pile-up
ほか全8曲収録

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