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デジタルコミュニケーションが社会を変える

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Vol.2 中村勇吾×杉山知之(デジタルハリウッド学長)対談

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MUSIC

菊地成孔×佐々木敦『ゴダールシンポジウム』レポート

菊地成孔×佐々木敦『ゴダールシンポジウム』レポートをdel.icio.usに追加 このエントリーをはてなブックマークに追加 菊地成孔×佐々木敦『ゴダールシンポジウム』レポートをlivedoorクリップに追加 菊地成孔×佐々木敦『ゴダールシンポジウム』レポートをlivedoorクリップに追加 (2010/08/17)

早稲田大学小野梓記念講堂で文化構想学部表象・メディア論系主催として開催された『ゴダールシンポジウムvol.2』は、昨年同様に映画専門家以外が映画作家ジャン=リュック・ゴダールを語ることによって、広がりをもった見識を可能にする新しい試みだった。今回は「10年代に来るべき音楽のためのゴダールレッスン」をテーマに、著書『ユングのサウンドトラック』の中で音楽の観点から新たに映画を語り直すことに挑んだ菊地成孔と、著書『ゴダール・レッスン』で卓越した映画論を説いた佐々木敦が登場。映画作家ジャン=リュック・ゴダールの「つねに最も新しい」映画における「映像と音楽」の関係はいま我々に何を示すのか、独自の視点で語っていただいた。本稿では、第一部に菊地氏、第二部に佐々木氏それぞれによるプレゼンテーション、第三部で両氏によるディスカッションというイベントの構成そのままでレポートする。この貴重な対談が、テン年代を切り開くための重要な指針となることは間違いないだろう。

(テキスト:松井一生 撮影:小林宏彰)

PROFILE

菊地成孔

1963年生まれ。音楽家、文筆家、音楽講師。85年にプロデビュー。デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン、SPANK HAPPYなどでジャズとダンス・ミュージックの境界を往還する活動を精力的に展開。現在は菊地成孔ダブ・セクステット、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールを主宰して活動中。主な著書に『スペインの宇宙食』(小学館文庫)、『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール 世界の9年間と、新宿コマ劇場裏の6日間』(小学館)など。


佐々木敦
1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌エクス・ポ/ヒアホン編集発行人。BRAINZ塾長。早稲田大学および武蔵野美術大学非常勤講師。『ニッポンの思想』『批評とは何か?』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。

第一部 菊地成孔によるプレゼンテーション
ゴダールは、見ることと聴くことの間に揺さぶりをかけた


菊地:ジャン=リュック・ゴダールという映画作家は、これまで社会主義(YMOなど)、お洒落カフェ文化(ピチカート・ファイヴなど)をはじめとし様々な観点から語られてきた人ですが、私は最新著書『ユングのサウンドトラック』の中で「ゴダールが音楽と女と資本主義を同一視してしまっているのではないか」という仮説を立てました。

ここで言う「女」とは、つまりアンナ・カリーナ(デンマーク出身のフランスの女優。ヌーヴェルバーグ時代に活躍し、ゴダール初期作品の代表的ヒロインであり前妻でもある)、「音楽」とは、つまりミシェル・ルグラン(フランスの作曲家。これまで多くの映画音楽を担当してきた)のことを指すのですが、ゴダールという作家の歴史は、映画音楽家と組んだ時代、そして組めなくなった時代に分けることができるように思います。


菊地成孔×佐々木敦『ゴダールシンポジウム』レポート
菊地成孔

また僕は、大谷能生君との著書『アフロ・ディズニー』の中では「視聴覚の齟齬」を切り口に20世紀文化史を語ろうと試みています。「視聴覚の齟齬」とはつまり、見ることと聴くことは元来全く別のものだということです。

映画を例にとれば、キャメラは我々の眼球のメカニズムを模範にし、見えているものを映し取ることができる。しかし、マイクというものは鼓膜のメカニズムと異なり、我々が普段耳から音を聴くようには現実世界の音を選択して録ることができないという、テクノロジーとしての「視聴覚の齟齬」があります。

このことを語るに際し、今からいくつかの映像を見てもらいましょう。


―アメリカのTVドラマ『グレイスアナトミー』上映


菊地:どうでしょう? 日本語吹き替え版で観ていただきましたが、俳優の唇の動きと台詞が自然に一致しているよう思えませんか?

お次はこちら。


―韓国のTVドラマ『私の名前はキム・サンスン』上映予定、が失敗


菊地成孔×佐々木敦『ゴダールシンポジウム』レポート

菊地:実際に観ていただくとわかるんですが、ここでは異様な現象が起こっています。韓国人俳優の唇の動きと日本語の台詞が、驚くほど一致してないのです。先ほどのアメリカのドラマと比べると、より明確です。

この差は、韓国人と日本人の顔立ちが近すぎるだとか、英語の発音が日本語に似ているだとかの問題ではなく、我々が欧米人俳優の口の動きと、日本語吹き替え間の音声の「齟齬」を修正する能力を手に入れていることを証明しています。

それでは、次のファッションショーの映像をご覧ください。


―パリコレクション2010春夏『ランバン』のショーの様子を上映


菊地:モデルたちのウォーキングに注目していただくとおわかりになるでしょうが、みんな音のリズムと足を動かすリズムがズレていますよね。ゼロ年代後期のモデルの傾向として挙げられるのは、音楽に合わせて歩くことも、外して歩くことも可能な人が増えたという点です。以前のモデルは自分が美しく見える歩き方をしていたわけですが、それが変わってきました。

では、こちらはいかがでしょうか。


―ミラノコレクション2010春夏『ミッソーニ』のショーの様子を上映


菊地:これは画期的なショーです。見ればはっきりとわかりますが、音楽に合わせモデルたちの動きがほぼ完全に一致している。まさに行進状態なわけです。

続けて、これを観てください。


―ウォルト・ディズニー長編映画第一作『白雪姫』(1937)上映


菊地:こちらでは、音と映像中のキャラクターの動きがピッタリ合っています。この現象をミッキーマウシングと呼びます。

本来、視覚と聴覚は全く別の世界を知覚しています。それが「視聴覚の齟齬」なのですが、我々は成長するにつれ、見ることと聴くことを同期する修正能力を獲得していく。このミッキーマウシングの状態は、その同期の極致です。ミッキーマウシングが、我々に、まるで幼児期に戻ったような万能感をもたらしてくれるのはそのためです。

以上をふまえ、このような「視聴覚の齟齬」を意識化させ、我々の現実に揺さぶりをかけるべく映画の固定概念を破壊し、新たな概念を導入したのがゴダールという映画作家である、という仮説を立て、私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。

2/4ページ:ゴダールは、本当に映画を終わらせてしまったのかもしれない(佐々木)

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