レポート

BOMI、HOWL BE QUIETらの、時を経ても響き続ける音楽と物語

テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一
BOMI、HOWL BE QUIETらの、時を経ても響き続ける音楽と物語

若さを感じさせない存在感と、スケールの大きさを見せつけたA11yourDays

人それぞれに人生があるように、音楽にも、それぞれの物語がある。2016年最後のCINRA×Eggs共同主催イベント『exPoP!!!!!』は、この日TSUTAYA O-nestに集った5組のアーティストの音楽人生と、彼らの鳴らす音楽が背負う物語が交錯する場所だった。

トップバッターは男女混成5ピースバンド、A11yourDays。スケールの大きなバンドサウンドを鳴らす彼らの武器は、誰もがシンガロングできる高い求心力を持ったメロディーと、「どんな聴き手も自分たちの物語に巻き込んでやる!」と言わんばかりの衝動的なエナジーを隠さないその佇まい。

A11yourDays
A11yourDays

バンドのダイナミックな演奏と、韓国出身のボーカリスト・SOGYONの、ときにアグレッシブに聴き手を鼓舞し、ときに美しく朗々と歌い上げる姿には、若いながらも確かな存在感がある。今の日本にはONE OK ROCKやUVERworldのようなメガバンドがいるが、彼らは自分たちが負った傷も含めて、そのすべてを曝け出し、聴き手と共有することで圧倒的な支持を得た。この先、A11yourDaysはどれだけのことを曝け出し、共有できるだろうか。その可能性をもっと見てみたい――そう思わせるバンドだった。

SOGYON
SOGYON

クールに、だが切実に音楽を鳴らすlowtideの佇まい

続いては、松坂勇介(QUATTRO)、映像作家でありPILLS EMPIREのメンバーでもある加藤マニ、さらにmorishige shinpei(FOXPILL CULT)、CANVAS、Veni Vidi Viciousで共に活動するオオヤヒロシと松田ゆうすけというメンバーによって構成された5ピース、lowtide。1曲目“if”から、波のように空間を覆うギターノイズと、松坂の気怠くも甘い歌声が、フロアに陶酔感をもたらす。しかし、根底を支えるリズム隊はファンキーで陽気な気分もはらんでいて、そのゆる~く、でもロマンチックな昂揚感がとても心地よい。

lowtide
lowtide

メンバーの加藤マニが撮影・監督を務めている

メンバーを紹介する際に名前を挙げたQUATTROにPILLS EMPIREにVeni Vidi Viciousといったバンドたちは、2010年代に突入する頃、日本の音楽シーンに海外由来の新たな価値観をもたらした。彼らは音楽をもっとクールに鳴らそうとし、何より「音楽と共に生きる」ということを切実に追い求めていたが、それはlowtideも変わらない。そのメロディーやリズムにさりげなく心つかまれて、深く引きずり込まれていくようなステージングだった。

lowtide

進化していくバンドの物語を見せつけたRAMMELLS

3番手に登場したRAMMELLSは、2016年2月に続き、2回目の出演。前回出演時はオープニングアクトだったが、今回はメインアクトのなかの1組。実際、この10か月の間にRAMMELLSは、正式なドラマーとして彦坂玄を迎え入れ、10月には初の全国流通盤『natural high』をリリースするという躍進を遂げている。

RAMMELLS
RAMMELLS

ひとつのイベントを通してバンドが進化していく物語を共有できるのはとても幸福なことであるし、実際、RAMMELLSはこの10か月でかなり変わった。まず、2月の時点では穏やかに楽曲を彩っていた真田徹のギターは、攻撃性や陰鬱さといった、より感情的な表情も見せるようになった。そんなギターと、彦坂が加入したことで強固になったリズム隊とが相まって、アンサンブルは格段にダイナミックになり、それに呼応するように、黒田秋子のボーカルもよりソウルフルに力強く響く。

黒田秋子
黒田秋子

“Holiday”や“tower”といった『natural high』収録の進化したRAMMELLSサウンドで序盤を攻めながらも、最後を飾ったのは、2月の出演時にも最後に演奏された“Blue”。その光のような音像は、バンドにとっての大きな10か月を経て、より眩く強く光っていた。

BOMI、孤独と痛みを引き換えに表現者として覚醒した

続いてはBOMI。彼女が去年リリースしたアルバム『A_B』は、「産みの母親に出会う」という経験を発端にBOMIが自身の半生を振り返った、かつてないほどにパーソナルな作品だった。小袋成彬率いる「Tokyo Recordings」をプロデューサーに迎え、BOMIは自らの人生と存在そのものを、どこまでも強度の高いポップスへと昇華させてみせた。

この日は、そんな『A_B』リリース後初のライブで、バックバンドを従え、セットリストはすべて『A_B』からの選曲。“ロンリーロンリー”に始まり、アルバムでは1曲目の“ハロー・ザ・ワールド”で締める、次第に開放感を増す流れのなかで、BOMIの歌声も次第にエモーションを肥大させていく。

BOMI
BOMI

生まれた場所、家族、今生きている場所、そして今の自分……「自分とは一体何者か?」というBOMIが自らに問いかけた根源的な問いは、その音楽を通して聴き手にも向けられた問いになる。「あなたは一体誰?」と。一個人の人生の深い孤独から生まれた音楽が、不特定多数に届くポップスへと変貌する、その痛みと覚醒感に溢れた瞬間に立ち会っている……そんな感覚を抱かせる素晴らしいパフォーマンスだった。

BOMI

HOWL BE QUIETの物語を肯定した、熱くてあたたかなフロアからの眼差し

そして、トリを飾ったのはHOWL BE QUIET。インディーズ時代から大きな存在感を放っていた彼らは、2016年3月にメジャーデビューを果たした。そもそも「ロックバンド」という枠組みに囚われない柔軟な感性と素養を持ったこの四人にとって、2016年はとても大きな転機だったはずだ。

HOWL BE QUIET
HOWL BE QUIET

ライブは“From Birdcage”“ライブオアライブ”というバンドのダイナミズム溢れる流れで始まり、“Higher Climber”や“レジスタンス”では、EDM的アッパーなダンスフィールで一気にフロアの興奮を沸点にもっていき、メジャーデビュー曲“MONSTER WORLD”で更なる爆発へ。まさにHOWL BE QUIETの現在までの物語そのものに飲み込まれていくようなセットリストの流れは、素晴らしかった。

そしてこの日、フロアを見渡して強く感じたのが、「本当に、愛されているバンドなんだなぁ」ということ。フロアがかなりの熱気に包まれているなか、涙を流しながらバンドを見つめている人もいて、HOWL BE QUIETがいかに聴き手と共にこれまでのキャリアを歩んできたかが証明されているような、「熱さ」と「あたたかさ」が同居した空間が広がっていた。

竹縄航太
竹縄航太

「音楽と共に生きる」。音楽と物語の交差点となった『exPoP!!!!!』

そもそも、『exPoP!!!!!』はメディア主催のイベントだけに、まだ世界に発見されていない新たな逸材や最先端の価値観に出会えることが大きな醍醐味だが、この日はそれだけではなかった。バンドが背負う物語の重みと、それを分かち合う喜びを全力で見せたHOWL BE QUIETを始め、今まさに物語を紡ぎ始めたA11yourDaysに、それぞれがそれぞれのキャリアを背負って集ったlowtideや、「人生」と「ポップ」を直結させたBOMI、そして、見事に進化した姿を披露したRAMMELLSと、この日の『exPoP!!!!!』には、「音楽と共に生きる」ことの醍醐味が詰まっていた。

RAMMELLS

音楽が産み落とされたとき、時代との関連性や意義を考えることはもちろん大事だが、音楽は時代と共に消えてなくなりはしない。音楽は、人に聴かれ、演奏され続けることで、様々な想いや歴史を抱え、響き続ける。この日の最後を締めくくったHOWL BE QUIETの“A.I.”の美しいピアノの音を聴きながら、音楽は人の深い部分で繋がっていくものなのだと強く感じいった。普遍的な音楽愛に満ちた一夜だった。

イベント情報

CINRA×Eggs presents
『exPoP!!!!! volume92』

2016年12月22日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
HOWL BE QUIE
BOMI
RAMMELLS
lowtide
A11yourDays
料金:無料(2ドリンク別)

CINRA×Eggs presents
『exPoP!!!!! volume93』

2017年1月26日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
arko lemming
For Tracy Hyde
トレモノ
馬喰町バンド
and more
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール

BOMI
BOMI(ぼーみ)

2012年6月に日本コロムビアよりミニアルバム「キーゼルバッファ」でメジャーデビュー。リード曲「キューティクル・ガール」が、スペースシャワーTVが主催する、その年最も輝いていたミュージックビデオ"Music video award50"にノミネートされる。ファーストアルバムからは、楽曲「エクレア」を映画「今日、恋をはじめます」に提供し、好評を博す。これまでにフルアルバム2枚、ミニアルバム4枚(デビュー前のタワーレコード限定版を含む)、昨年にはお面(グッズ)での配信シングル「Y.O.U」を発表している。2015年はOTOSATA ROCK FESTIVAL、ROCK IN JAPAN、SUMMER SONICなどのフェスへ出演。

HOWL BE QUIET
HOWL BE QUIET(はうる びー くわいえっと)

竹縄航太(Vo,Gt,Pf)、黒木健志(Gt)、橋本佳紀(Ba)、岩野亨(Dr)の4人から成る神奈川県出身4人組。2010年結成。圧倒的な曲の世界観と歌詞で多くのリスナーからの支持を得ている。2016年ポニーキャニオンよりメジャーデビュー。メジャーデビューシングル『MONSTER WORLD』はSSTV「POWER PUSH!」、FM802ヘビーローテーション等、全国ラジオ/CS46局でパワープレイを獲得、大型音楽番組へも多数出演する。2ndシングル『Wake We Up』はTVアニメ『DAYS』の主題歌に抜擢。12月14日、3rdシングル『サネカズラ』をリリース。

lowtide
lowtide(ろうたいど)

東京を拠点に活動する5人組オルタナティヴ・ロックバンド。2014年、QUATTROの松坂勇介(Vo,Gt)を中心に、映像作家としても活動している加藤マニ(PILLS EMPIRE)、オオヤヒロシ(CANVAS / Veni Vidi Vicious)、morishige shinpei(FOXPILL CULT)により結成。当初は一時的な企画バンドとして結成されたが2014年末に活動を本格化、2016年にベーシストとして松田ゆうすけ(CANVAS / Veni Vidi Vicious)が加入し現在のメンバーが揃う。松坂の朴訥としたボーカル、歪んだギターと繊細なアルペジオが織りなすサウンドは、サイケデリック、ネオアコやシューゲイザー、更にはUSオルタナをも飲み込んだローファイなアシッド・フォークの趣。現在までライブ会場限定でdemo音源を2枚発売。その後OTOTOYにて2016年5月に1st single"Beach"を、7月に2nd single"if"を配信限定にて発売。2016年11月に1st album『Beach』が発売された。

RAMMELLS
RAMMELLS(らめるず)

ギターの真田徹がSuchmosのYONCEらと組んでいたOLD JOEの解散後、自分の求める最高の音楽を実現させるために大学時代の先輩である黒田秋子(Vo,Key)、村山努(Ba)を誘って2015年8月に結成したバンドがRAMMELLS。2016年、彦坂玄をドラムに迎え、ライブ活動を本格的にスタート。変幻自在のボーカルで表現される中毒性たっぷりのメロディーと個性溢れるリリックに、ロック、ファンク、ソウル、ジャズ、シューゲイザーなど様々な音楽性が絡み合った新世代オルタネイティブサウンドを響かせる。2016年10月19日デビューミニアルバム『natural high』をリリース。

A11yourDays
A11yourDays(おーる ゆあ でいず)

全ては「あなた」の日々を彩るため。日本、韓国、アメリカの血が混ざり合う多国籍ピアノロックバンド。ポップスとロックを根底に各個性が彩る楽曲たち。のびやかで綺麗な声と3か国で描く唄を武器に活動を開始する。前任ドラマーとJohn(Gt)の前身バンドの解散から1か月。かつてからの仲間UK(Key)、Masaya(Ba)を誘い活動を開始。「すれちがった時に気になった」という理由だけでバンド活動をしたことのなかった韓国出身のSOGYONをボーカルに抜擢。

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