バイきんぐ小峠英二インタビュー。音楽愛と『映画クレヨンしんちゃん』最新作の裏話を熱く語る

歌や踊りなど、音楽が生活に根強く紐づくインド。

そんなインドを舞台にした『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』が8月8日から公開される。

いつも穏やかなボーちゃんがとあるきっかけで「暴君(ボーくん)」に変わってしまうというストーリーで、ダンスや音楽をはじめとした、さまざまなインド文化が登場する。

今回は、ゲスト声優の1人としてウフンアハーン役を務める小峠英二にインタビュー。

インドを旅する本作や『クレヨンしんちゃん』の面白さに加えて、パンク好きとしても知られる小峠が考える「音楽の力」について話を聞いた。

「伝わらないんじゃないか?」をあえて入れる『クレヨンしんちゃん』の面白さ

─『クレヨンしんちゃん』シリーズはこれまでご覧になってきたでしょうか? 小峠さんが感じる面白い部分があれば教えてください。

小峠英二(以下、小峠):ギャグやフレーズが面白いですよね。緊張するひりついたシーンでも笑いをねじ込んでいますし、子供向けの部分と、明らかに大人を意識したワードを使う部分があるのも面白いと思いますね。

今作だと「おかえリーマンショック!」ってセリフが僕は面白くて、子供はわからないと思うんですよ(笑)。でも、僕の世代やお父さんお母さんは笑うと思うんですよね。

─インドを舞台にした今作ですが、全体を通しての感想はいかがでしたか?

小峠:本当にインドという巨大な国土を観光しているような面白さがありました。僕もインド映画を何本か見ましたが、音楽やダンスなど、インドという国やインド映画の雰囲気が上手くしんちゃんの世界に落とし込まれていると思います。アニメらしからぬしっかりとしたインドの情報が入っているのも面白いと思いました。

ボーちゃんが暴君(ボーくん)になるという設定も面白いですよね。子どもたちに伝わるのかな?と思いました。そういうところもだいぶ攻めていると思います。もし僕が監督や作り手側になったとしたら、「ボーちゃんが暴君になるってフレーズはいいけど、伝わらないんじゃないか」みたいなことを言うと思うんですよ。それをあえて入れていくスタイルが面白いですよね。

─ウフンアハーン役としてゲスト声優として出演されたご感想を教えてください。これまでにも何度かアニメの声優をご経験されていますが、違いはあったでしょうか?

小峠:今回はこれまでに比べて明確な抑揚や感情を入れる必要がありました。以前はもう少し淡々とした演技でした。監督さんにも「そこはもう少し感情を入れてください」「ここはもうちょっと抑えてください」とアドバイスをいただきながら収録したので、求められるものは今回のほうが多かったような気がします。

─同じくゲスト声優を務める相方の西村さんの演技はいかがでしたか?

小峠:あいつはもう役者志望の人間ですからね。僕がどうこう言える立場じゃないですね。役者とキャンプのことしか考えてないですから(笑)。上手いんだと思います。

お笑いと音楽は似ている? 小峠のパンクとの出会い

─今作はインドが舞台ということもあり、音楽から登場人物がパワーをもらうシーンも多くありました。小峠さんは音楽に対してどんなパワーを感じていますか?

小峠:ガキの頃からパンクやロックばっかり飽きずに聴いてきましたが、勇気づけて、奮い立たせてくれるものだと思います。

─パンクに最初に惹かれた瞬間はいつだったのでしょうか?

小峠:最初に聴いたのは中学ぐらいのときですね。パンクやロックが持っているエネルギーやひりつく感じに惹かれました。リズムや歌詞、ファッションも含めてすべてがかっこいいんですよ。すごく単純な理由ですが、そこからのめり込むのは早かったです。

─小峠さんはバンド「TRAP」としてもステージに立たれていますが、お笑いと音楽でステージに立ち、感じる違いはどんな部分でしょうか?

小峠:むしろ音楽とお笑いは似ていると思いますね。 曲を作ることとネタを作ること、スタジオで練習することと公園で練習すること、どちらもステージに立って、お客さんを乗せることができるか、お客さんを笑わせることができるか。で、どんどんお客さんを増やして有名になっていく。音楽はお笑いほどやっていないですが、それでもすごく似ていると思っています。

─違いがあるようなイメージだったので意外でしたが、確かに似ていますね。

小峠:いかに人と違うことをやるか、という部分は同じだと思います。音楽もたぶん、人と同じことをやっても駄目だと思うので。あと、「自分の人間性を出す」という部分も近いですね。真面目な人が不良っぽい音楽を奏でているとわかるんです。「無理してるな」とか、そういう生き方してきてないだろうなって。

小峠:生き様を出すっていうんですかね。お笑いも毒舌じゃないのに毒舌を言ったってウケないですし、根底からそういう人間じゃないとパフォーマンスでしかないというか。

どう生きてきたか、どうそれを自分の表現に落とし込むかっていうことな気がしますね。そこがずれていたら、人の心は動かせないんじゃないですか。やっぱそこは似てますよ、お笑いと音楽。

─小峠さんはネタ作りでも言葉づかいなどで「人との違い」を追求されていますが、子どものころからパンクな生き方だったのでしょうか?

小峠:僕は小学生ぐらいのころからお笑いをやると言っていたんですが、「そんな無理だよ」って言われていたんです。

でも、絶対に新しいお笑い芸人が毎年出てくるじゃないですか。なのに、なんで俺が無理って言い切れるんだろう、とは思っていましたね。前例がないなら受け入れたかもしれないですが、お笑い芸人という仕事はちゃんとあるので。

─選んだ音楽がパンクという部分にも共通していると感じました。

小峠:生やさしい歌詞ではないので、クソッタレ根性みたいなものがついたかもしれないです(笑)。

小峠英二にとって、音楽の存在とは?

─今作では登場人物が「本当の自分とは何か」を問う場面もありますが、小峠さんが本当の自分になれる、解放される場所はどこですか?

小峠:ライブハウス行って、バーって音楽聞きながらライブ見て、酒飲んで飯を食べているときは解放されているような気がしますね。本当の自分なのかどうかわかんないすけど、一番好きな空間かもしれないですね。

─ステージ上では、解放されているのでしょうか?

小峠:笑わせなくちゃいけないっていう責任があるので、解放ではないかもしれないですね。ライブハウスで酒飲むのは完全プライベートなので何の責任もないし、ただ楽しめばいいだけなんで。

─最後に、小峠さんにとって音楽がどんな存在か教えてください。

小峠:もちろんお笑いが一番好きですが、その次は音楽だと思うんです。 僕が好きな単車や革ジャン、車、ブーツも大元は音楽につながっているんです。

僕がパンクもロックも聴いてなかったら、革ジャンは着ていないかもしれないし、単車も乗ってないかもしれないですね。全部音楽から生まれた趣味で、好きなものすべてが音楽ありきだと思います。

作品情報
『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』

2025年8月8日(金)から全国公開
監督:橋本昌和
脚本:うえのきみこ
声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、真柴摩利
ゲスト声優:賀来賢人 バイきんぐ(小峠英二・西村瑞樹)
主題歌:Saucy Dog“スパイス”(A-Sketch)
配給:東宝
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2025

【スタイリスト】
大瀧彩乃
AYANO OTAKI

プロフィール
小峠英二

1976年6月6日生まれ。福岡県出身。1996年5月、西村瑞樹とともにお笑いコンビ・バイきんぐを結成。パンクロックバンド「TRAP」としても活動している。



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