台湾の美食作家・Hally Chen(ハリー・チェン)がオススメする、台北の老舗喫茶店 その2

台湾の美食ならこの人! と台湾の人々に信頼されるハリー・チェンさん。台湾の古き良き「かき氷店」や「喫茶店」についての著書があり、本業はグラフィックデザイナーでもあるハリーさんは、味も佇まいも良い店を見つける達人。そんなハリーさんによる台北の老舗喫茶店の紹介、その2です。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

象牙紅(シャンヤーホン)

台北の南北を結ぶ、青々とした街路樹も美しい道路、中山北路。昔から台北で最も重要な通りの一つです。私はこの街で一番美しい道だと思っています。

日本統治時代の1923年に、当時の裕仁皇太子が台北駅と円山神社を繋ぐこの真っすぐな道を北上して円山神社に向かったことから、中山北路は「御成街道」と呼ばれるようになりました。当時、各国の大使館もこの周辺に位置していて、1949年に中山北路という名に変わった後も、今も変わらず台北の中心地であり続けています。そして中山北路は台北市の東西の境界線でもあり、中山北路と交差した道の名前は(―たとえば民生東路と民生西路のように)、ここを境に東と西に分けられています。

その中山北路と長春路の交差点の周辺(中山駅と雙連駅の間)には、台北屈指の高級ホテルであるリージェントホテルや一流店がひしめいています。そんな一等地に、開業34年の老舗コーヒー店『象牙紅(シャンヤーホン)』があります。外観はとても明るく、美術品が飾られていたりして、まるでギャラリーのよう。食事の時間になると、常連さんが集まり、いつも同じ席に座り、メニューも見ずに注文をします。

カウンターの中にある古いコーヒーミルは、創業当初から使っている、34年選手。店内には、オーナーの李さんの好きな絵画や美術品が所々に飾られていて、革張りのソファの ゆったりした座りごごちに、自宅のような居心地の良さを感じます。

食事のメニューは主に台湾の家庭料理。メインとサイドメニューが三品、スープや果物もつきます。中でも、「蘿蔔燉肉(大根と肉の煮込み)」と「紅燒牛腩(牛肉の煮込み)」が私のお気に入り。大根は旨みがよく染みていて、味わい深い美味しさです。自家製の切干大根からは、台湾の家庭の味を感じます。

コーヒーは、8種類の中から選ぶことができます。4種類の豆を合わせたブレンドコーヒーがおすすめです。

象牙紅 (シャンヤーホン)
住所:台北市中山區長春路6號
営業時間:8:00~00:00
定休日:無休
最寄り駅:中山駅4番出口より徒歩8分
TEL:02-2536-8827/02-2537-2067

珍蜜咖啡坊(ジェンミーカフェファン)

台北アリーナに近い八徳路にある「臺灣電視公司(台湾テレビ)」は、台湾で最初に開局したテレビ局です。その角にあるのが、コーヒーよりもランチのお弁当が有名な老舗コーヒー店『珍蜜咖啡坊(ジェンミーカフェファン)』。

私の友達の間では、ここの看板メニュー「炸大排骨飯(ジャンボスペアリブ揚げ弁当)」はすごく人気で、来客や友達の集まりがある時はいつも、ここのお弁当が食べたいというリクエストが出ます。

1980年に創業した『珍蜜咖啡坊』は、今もオーナーの洪美鑾(ホン・メイルァン)さんと旦那さんである邵清龍(シャオ・チンロン)さんが忙しく切り盛りしていらっしゃいます 。息子で二代目オーナーの邵彥文(シャオ・イェンウェン)さんも、週末になるとお店を手伝いにやって来ます。

場所柄もあってか、『珍蜜咖啡坊』は食事をするためだけでなく、商談や打ち合わせなど、テレビ局のスタッフや芸能人にも愛用されているお店。かつて「ラヴ・イズ・オーヴァー」で一世を風靡した台湾人歌手の欧陽菲菲 (オウヤン・フィーフィー)さんも、この店の常連のひとりでした。

『珍蜜咖啡坊』は、それまでも多くのメディアで紹介されていましたが、2008年にテレビで紹介されたのをきっかけに、一気に有名に。当時リーマンショックの影響で多くのサービス業が経営に苦しんでいる中、『珍蜜咖啡坊』は逆に売上が伸びて、常連客に人気の「炸大排骨飯」は今や店の看板メニューになりました。

そこまで人気の『珍蜜咖啡坊』ですが、テイクアウトとイートインで価格が異なります。食事のメニューは揚げ物と煮込みの二種類で、揚げ物はスペアリブと鶏もも肉、煮込みはスペアリブと角煮があります。スベアリブに添えられた自家製の高菜もとても美味しいです。

1日に200食ほど出るという「炸排骨」のスペアリブは、近くの中崙市場で自ら食材を見て仕入れることにこだわっています。それは、他の食材や調味料も同じ。自分の子供に食べさせるのと同じように、材料を厳選し、毎日心を込めて丁寧に作っているのです。

珍蜜咖啡坊(ジェンミーカフェファン)
住所:台北市松山區八德路3段2號
営業時間:11:00~20:30
定休日:日曜日
最寄り駅:小巨蛋駅2番出口より徒歩7分
TEL:02-2577-3463
プロフィール
Hally Chen (ハリー・チェン)

台北生まれのグラフィックデザイナーで、美食本の著者。長年CDのデザインを手がけていて、その作品は台湾のグラミー賞とも呼ばれている金曲奨やIMA音楽賞にノミネートされたことも。2008年より多くの雑誌でコラムを持つようになり、デザインと絵(デザイナー)、カメラとペン(著者)の二つの観点から日常生活を観察する。著書に「遙遠的冰果室」、「人情咖啡店」がある。



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