LAMAが打ち出した「ポップ」の理由

元スーパーカーのフルカワミキとナカコー、元NUMBER GIRL/現blood thirsty butchers、toddleの田渕ひさ子という、ある世代にはたまらない組み合わせの3者に、agraphとして活動する気鋭のエレクトロニック・アーティストである牛尾憲輔を加えたLAMAが、初のフルアルバム『New!』を完成させた。シングルで断片的に見えていた4人の個性がはっきり見えると同時に、14曲というボリュームの中でLAMAというバンドの全体像も浮かび上がる、手応え十分の作品だ。

そこで、意気揚々と取材の場に臨んだわけだが、そこで待っていたのは全く自然体のお2人。「これまでになく楽しい現場だった」「悩みは全くなかった」と、飛び出す言葉も軽妙で、LAMAというバンドの風通しの良さを感じるには十分な取材だった。もちろん、この場所を手に入れることができたのは、それぞれがこれまでキャリアを積み重ねてきたからこそであるということも、決して忘れてはならないだろう。

全員が全員のことを知って、見えない役割分担も出てきて…仲が良くなったっていうことだよね(笑)。(ナカコー)

―ナカコーさんと牛尾さんはLAMA以前からのお付き合いですよね? まずはお互いに対する印象から話していただきたいのですが。

牛尾:僕がセカンド・アルバムを出したときに、マスタリングの最終チェックをしてたスタジオにフラッと遊びに来てくれて、2人で一緒にアタマから聴いたんですよ。で、終わった後に俺の方振り返って、「蕎麦屋だね、これ!」って(笑)。「なんでだろう?」って聞かれて、心の中で「知らないっすよ…」っていう(笑)。

ナカコー:牛尾君が蕎麦好きだっていうのは聞いてて、それは多分「様式美」にこだわりがあるってことだと思うんだけど、音楽を聴いても実際そうだと思って。だからきっと、蕎麦の味も好きなんだろうけど、システムが好きなんだよ。

―牛尾さんは実際食べ方もこだわったりとかするんですか?

牛尾:こだわりますね(笑)。まずはめんつゆをつけずにざるを1本食べるところからなんですけど、「食う」っていうか、「たぐる」っていう感じの(笑)。フェチなんですね、そういう。

―それが音フェチな部分とも通じてると。牛尾さんから見たナカコーさんの印象はいかがですか?

牛尾憲輔
牛尾憲輔

牛尾:会う前は「ギターを弾く人」、「ロックバンドの人」っていう漠然としたイメージしか持ってなくて、「怖かったらどうしよう」とか「話合わないんだろうな」って思ってたんですけど、会ってみると、どこかに帰属してるような人じゃないんですよね…、変なんです(笑)。

―一言でいうと、変(笑)。

牛尾:ライブ中でも大体ギターを腰の方に回して、シンセとかCDJでノイズを出してたりして、「面白いな、この人」って。とはいえ一緒にレコーディングしてみると、意外とプレイヤー然としたところもお持ちで、そのバランス感覚が独特だなって。

―では、そんなお2人が所属するLAMAの初のアルバムが完成したわけですが、LAMAって基本的に誰か1人がコンセプト立てて作品に向かうわけではなくて、4人で作っていくバンドなんだと思うんですよね。でも、そうなるとアルバムの全体像が見えるまでには時間がかかったんじゃないかと思うのですが、実際いかがでしたか?

ナカコー:楽曲として1曲1曲は成立させるんだけど、アルバムとして曲が繋がったときにどう聴こえるかっていうのは、実際中盤ぐらいまであんまり考えてなかった。ホント後半の方に何曲か並べた時点で、「あ、繋がるね」「妙な統一感あるね」って。

―どこかでポイントが見えたとかっていうよりも、自然と形になっていったと。

ナカコー
ナカコー

ナカコー:4人で会う時間が多くなればなるほど、会話とかで空気を4人で作れるから、そういう4人の空気感が作品にフィードバックするし、だんだんやりやすくなるっていうか。全員人見知りだから最初の方は探り合って会話をしてたけど、後半の方は結構ガーッと会話してたし、それが良かったんだと思います。

牛尾:段々突込みが激しくなってきたんですよね…良いことだと思いました(笑)。


―プロジェクト的に始まったものが、バンドになってきたという言い方もできますか?

ナカコー:バンドっぽいっていうのはよくわからないけど…簡単な言葉で言うと、全員が全員のことを知って、見えない役割分担も出てきて…仲が良くなったっていうことだよね(笑)。

2/3ページ:4人とも作品を作ったことがある人たちだから、一緒にやるのであれば現場は楽しくやりたいっていうのがあって。

たまたまこの半年間ほど4人でキャッキャやって、楽しいLAMAの場を具現化したら、この14曲になったのかなって。(牛尾)

―じゃあ、アルバムの青写真があったわけではないんですね。

ナカコー:全員の個性が上手く配置されたものになればいいなとは思ってて、民主的なバンドになろうと思ってたというか、全員の色がバキッとあるものにはしたいと思ってた。でも、それはあんまり意識せずに、自然とそうなっていったのがすごい良かったなって。

牛尾:「こういう方向で、こういう音を鳴らすのがLAMAです」っていうのがあるわけではないと思うんですよ。LAMAはあくまで「場」だから、その「場」で何をやるかっていうのが重要で。だから、たまたまこの半年間ほど4人でキャッキャやって、楽しいLAMAの場を具現化したら、この14曲になったのかなって。

―そういう中で、この4人の共通点は見えてきました?

牛尾:具体的に「ここが共通点」っていうのはなくて、ミキちゃんがよく言ってるけど、冗談が通じる関係性っていうか、そっちの方が大事だったりすると思うんですよね。

―感性の部分?

牛尾:よく言えば(笑)。僕の「ゲッツ!」っていうので、ミキちゃんがすごい笑ってくれるとか、そういうのだから(笑)。

―何より場を楽しむっていうことにプライオリティがあったと。

牛尾:それしかなかったような(笑)。楽しかったんですよ、すごく。スタジオに入って最初の3時間はお茶してるだけなんですけど、僕はこれまでソロでやってきたから、そういうのが初めてだったんですよね。だから余計に「楽しい」っていうことが大事だったのかもしれないですけど。アルバムの制作が終わってスタジオに入んなくなっちゃったら、すごく寂しくて。

ナカコー:前提として、4人とも作品を作ったことがある人たちだから、一緒にやるのであれば現場は楽しくやりたいっていうのがあって。楽しくやるコツを知ってる人たちだから、実際すごくいい現場だったと思います。

―これまでにLAMAみたいな現場って他にありました?

ナカコー

ナカコー:これだけ自由な現場はあんまりないかも。音を出して、その都度判断していくっていうのは。必ず音の方向性とか制約があって、それを決めた上で作っていくっていうのが多かったけど、今回はそうじゃなくて、「みんなどんな音出すんだろう?」っていうところから作っていくから、それは多分初めてじゃないかな。


―これまでやってこなかったことをやる喜び、新鮮なことをやるっていうのもLAMAの重要な要素だと言えますか?

ナカコー:何を出してくるかわからない中で、リアルタイムで「じゃあ、こうしよう」って決めていくのは、作ってるって感じはしますよね。他の現場でも共同作業感のある現場はあるんだけど…それって普通表立って見えない部分で、LAMAはそれを表立って見せてるっていうのは面白いですけどね。

―そこはある程度意識的な部分だった?

ナカコー:うん、それはちょっと思ってたかな。全員Twitterやってるから、「今日はこういうことやろう」っていう内側の話をTwitter上でやり合って、それを俯瞰して見てる人もいたら面白いじゃん? っていう。そういう「場」だと思うし。

―そういう見せ方自体が、メディアアート的だと言えるかもしれませんね。

ナカコー:でも、「メディアアートだよね」って自分で言ってる人たちだったら、上手く行ってないと思う(笑)。そうじゃなくて、ただ楽しい、見てて面白いって思える4人だからいいんだと思います。

3/3ページ:奇跡の高速道路が通っちゃったんですよ(笑)。(ナカコー)

全然畑の違う4人が集まってキャッキャ言ってる現場っていうのはポップスだと思うし、それを見てる人、引き籠ってる人とかも、つながろうって思ってくれればありがたいし。(ナカコー)

―以前のインタビューでナカコーさんが「LAMAはポップスだと思ってる」っていう趣旨の発言をされていたのがすごく印象的だったんですけど、どういう文脈において、そうおっしゃっていたんでしょうか?

ナカコー:期待されることというか、この4人が集まって、「どマニアックな、ものすごい変なことをやりました」でもそれはそれでいいと思うんですけど、せっかく4人で集まって何かを作るってなって、「それがポップスだったら幸せじゃないですか?」っていう。作ってるときはポップスにしようと思ってるわけではないですけど、全然畑の違う4人が集まってキャッキャ言ってる現場っていうのはポップスだと思うし、それを見てる人、引き籠ってる人とかも、繋がろうと思ってくれればありがたいし。

―ああ、なるほど。

ナカコー:あと、ミュージシャンが最近あんまり楽しそうに見えないなって思って(笑)。楽しそうなのがいいじゃんって思うんだけど、「CDが売れない」とか、そういう暗い話が多かったから、そうじゃなくて、楽しいと思うものをやっていきたいし。

―CDが売れないから、「これからはライブで…」とかって話になりがちですからね。

ナカコー:音楽の雑誌見てても全員悩んでるでしょ?

牛尾:悩まなかったなあ(笑)。

ナカコー:バンドはほとんど悩んでるよ。「苦悩する」見出しが多い。

―牛尾さんは、ポップスっていうものをどう考えていますか? agraphとして作ってる音楽の中に、ポップスっていう意識は入ってますか?

ナカコー

牛尾:自分のフェチとして、自分だけの音楽をやってるときは、ファインアートに対する相対的な位置を計るので、結果的に自分がポップスかとか、大衆にコミットするとか、そういうことを考えなくもないんですけど、それとLAMAの意識は全然違うなって。ソロはコンセプトを根っこから作るので、(ファインアートは)そういうときに必要なツールっていう感じなんですけど、LAMAはホントに「場」だし、共有、コミュニケーションっていうのがすごく重要なタームになってくるので、それと個人的な意識は別だと思うんですよね。

奇跡の高速道路が通っちゃったんですよ(笑)。(ナカコー)

―今日話をしてきたLAMAのあり方、全然畑の違う人たちが目に見える形で場を共有して楽しんでる、それは見え方としてポップであり、そこから生まれる音楽もポップであるっていうのは、今だとアニメとかアイドルの世界で起こってることに近いような気がして、それをバンドのフィールドでやってるような印象も受けました。

ナカコー:それは僕たちがそうしたいと思ってるわけではなくて、見てる人たち、聴いてる人たちの意識の中にそういう視点があるから、そういうポイントを見つけちゃうっていうことじゃないかな? 僕らが意図してないことをクローズアップされることもあれば、そこをクローズアップしてほしいっていう部分をついてくる人もいるし、視点はそれぞれあっていいと思うけど。もちろんアニメとかアイドルっていう視点に特化して研究するのも、それはそれでありだけどね。

牛尾:評論とか批評って作ってるときは意識しないし、一次創作の部分とは関係ないんですよね。

ナカコー:うん、だからこっちは批評を意識して作ることは全くないんだけど、作ってると段々「あ、これはああいう風に見られるかな?」っていうポイントもあって、そこをどう面白がるか、あるいは意識しないか、その両方かな。個人的に、多角的に見て面白い、突っ込まれるものの方が好きっていうのはあるけど。「突っ込み待ち」な作品もあるし、作ってて何か引っかかるものがあった方が面白いんじゃないかとは思う。どんな角度で見ても、何か別角度の解釈ができる方が面白いなって。今の作品物は結構そうで、表はこうだけど、実は裏テーマはこうみたいな、それを狙ってやってる作品が多いかもね。

―その中にあって、LAMAの作品は?

ナカコー:これは4人で集まってる時点で、そんな感覚を吹っ飛ばしてるから。4人でやれば見られ方は4方向、もっと違う方向からも見れる。そういう場所を作ったわけだから、そこに何かを持ち込む必要は全くない。それぞれのキャリアが証明してるっていう。

―では最後に、アルバムを作り終えたことによって発見したことがあれば教えてください。

ナカコー:それぞれの世界の風通しの良さが一番大きいかな。場所を作って、風通しが良くなったおかげで、行き来がしやすくなるっていうか。それは自分たちもそうだし、聴く人たちの意識にも言えることだと思う。田渕さんの世界に興味を持ってた人が、牛尾くんのような打ち込みにハッとなるような。単純なことだけど、結果「そうなるのが一番いいんじゃない?」っていう。だってブッチャーズとagraphだからね(笑)。

牛尾:この前ラジオの収録でそれぞれ1曲ずつかけたときに、田渕さんがブッチャーズをかけて、その後に僕が卓球さんをかけて、「この差!」っていう(笑)。その、「エクストリームとエクストリームを曲げたらつながった」みたいのが面白いんじゃないですかね。それが結果的に生まれたものかもしれないです。

ナカコー:これまではその両者が互いに行き着くまでの道がなかったじゃない? でも、奇跡の高速道路が通っちゃったんですよ(笑)。それだけでも、だいぶ面白いですよね。

写真左から:ナカコー、牛尾憲輔

―それを見て、通りたいって思う人がいたり、俺も通したいって思う人がいたり。

ナカコー:うん、それを見て「やろう」っていう人たちが出てきたら嬉しいし、「こんなのあり?」って思う人がいてもいいし、それは選択肢として増やしたいと思いますね。

リリース情報
LAMA
『NEW!』初回限定盤(CD+DVD)

2011年11月30日発売
価格:3,360円(税込)
KSCL-1881/KSCL-1882

1. Warning
2. Night Telepathy
3. Rockin' Your Eyes
4. Spell(Alternative ver)
5. Tune On, Tune In, Surf Out
6. Cupid(So Far...ver)
7. Blind Mind
8. doudou
9. Soul Diving
10. Silver Spring
11. Fantasy(The Room ver)
12. Don't Go Back
13. Ane Mone
14. Dreamin'
[DVD収録内容]
・Spell(Music Clip)
・Fantasy(Music Clip)
・Cupid(Music Clip)

リリース情報
LAMA
『NEW!』通常盤

2011年11月30日発売
価格:3,059円(税込)
KSCL-1883

1. Warning
2. Night Telepathy
3. Rockin' Your Eyes
4. Spell(Alternative ver)
5. Tune On, Tune In, Surf Out
6. Cupid(So Far...ver)
7. Blind Mind
8. doudou
9. Soul Diving
10. Silver Spring
11. Fantasy(The Room ver)
12. Don't Go Back
13. Ane Mone
14. Dreamin'

プロフィール
LAMA

ナカコー(iLL/ex.supercar)、フルカワミキ(ex.supercar)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers / toddle)、牛尾憲輔(agraph)による新バンド。メンバーそれぞれがソロ、他バンドで活躍する中で結成。4月27日にUstreamライブストリーミングチャンネル「DOMMUNE」で生配信された初ライブは約8万が視聴。8月3日にフジテレビ"ノイタミナ"アニメ「NO.6」オープニング・テーマに起用されたファーストシングル「Spell」をリリース。その後、フジテレビ"ノイタミナ"『UN-GO』のエンディング・テーマ『Fantasy』を、10月26日「Cupid/Fantasy」のDouble A-sideシングルとして発売。そして11月30日には待望のファーストアルバム『New!』(読み:ニュー!)をリリースし、今後の活動に注目が集まっている。



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