素の自分で歌いたかった 安田レイインタビュー

今年7月、シングル『Best of my Love』でデビューした20歳の女性シンガー、安田レイ。しかし、そのキャリアは驚くほどに長い。10歳のときに宇多田ヒカルを聴いて歌手を志し、早くも13歳のときには水口哲也と玉井健二による音楽プロジェクト、元気ロケッツのボーカルのLumiというバーチャルの存在のビジュアルや歌を担当し、シンガーへの道を着実に歩き出した。それから7年。アメリカ人と日本人のハーフである抜群のスタイルを生かしたモデル活動など、多彩な活動を積み重ねて、ようやく彼女は念願のソロデビューを果たしたのだ。そしてこのたび、彼女がずっと歌いたかったという冬のラブバラードとなった配信限定EP『Let It Snow』がリリースされる。

一聴して耳に残るのは、等身大の恋愛を歌い上げる、伸びやかな歌。美しい容姿や、日本語と英語のどちらも堪能な語学力、そして運に恵まれたシンデレラガールという、特別な才能に彩られていながら、ちっともスレた印象がない。切ないメロディーと、洗練されたサウンドから浮かび上がってくる、歌が大好きな20歳の女の子という彼女の素顔。これから同世代の女性に、大いに支持を集めていくだろう。小春日和に撮り下ろされた、等身大の彼女の美しい写真と共に楽しんでいただけたら幸いだ。

安田レイではなく、Lumiっていうバーチャルなキャラクターをずっと演じてきたけど、素の私として歌いたい気持ちがずっとあった。

―まず、元気ロケッツのオーディションに合格したのは、まだ13歳のときだったんですよね。

安田:そうですね。小学校6年生のときに、元気ロケッツのPVのオーディションの話をいただきました。国籍が不明な、ミステリアスな雰囲気を持った女の子を探していたらしくて。それで、オーディションに行って、歌とちょっとしたダンスと、自己紹介をしたら合格したっていう。

安田レイ
安田レイ

―そこから20歳でソロデビューなので、実は下積みは長いですよね。

安田:そうですね。安田レイではなく、Lumiっていうバーチャルなキャラクターをずっと演じてきたんですけど、素の私として歌いたい気持ちがずっとあったので、こうやってソロデビューさせていただいて、ほんとにほんとに……幸せに思います。

―よくブレずに夢を追い掛けてきましたね。ビジュアルも綺麗だし、バイリンガルだし、いろんなものを持っている方のように見えるんですけど……。

安田:いやいや、私には歌しかないので。元気ロケッツのオーディションの前に少しモデルのお仕事をしていたんですけど、音楽に関わりたかったので、オーディションを受けたんです。


―10歳のときに宇多田ヒカルさんを聴いて歌手を志したそうですね。

安田:それまでも音楽が好きで、歌ったり聴いたりしていたんですけど、お母さんが宇多田ヒカルさんのファンで、それでCDを聴かせてもらったのが、シンガーになりたいと思ったきっかけです。私も歌うほうに行きたいって強く思ったというか、絶対にシンガーになるんだっていう気持ちになったんですよね。

―宇多田さんのどんなところに惹かれたのでしょう?

安田:宇多田さんは若いときにデビューしたじゃないですか? こんなに若くて、私ともそんなに歳も離れていない方が、どうしてこんな大人びた歌詞や声で歌うことができるんだろう、何てかっこいいんだろうって。こういうかっこいいシンガーになりたいなって。

―それで13歳で早くも行動に移すバイタリティーが素晴らしいですよね。

安田:どうですかね……。でも、最初の元気ロケッツのオーディションは、PV出演者を選ぶものだったので、まさか自分がバンドに加わって、歌えるチャンスがすぐにくるとは思っていなかったので驚きましたね。

―PVだけのはずが歌うことになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

安田:オーディションのときに、ダンスは用意していたんですけど、歌は用意していなかったんですね。でも、適当に思い付いた歌でいいから歌ってって言われて、私も小学校6年生で、初めて受けたオーディションだったので、どうしよう!? って思っていたら、プロデューサーの玉井(健二)さんが“ハッピーバースデイ”ならわかるでしょ? って言ってくれて。<Happy Birthday Dear>の後に名前を言うところで、とっさに「mommy」って歌ったんですよ。そうしたら玉井さんに、それいいね! って言われて(笑)。そのおかげで、無事合格したのかな(笑)。

やりたいことはいつも全部口にしていましたね。やっぱり口に出すことによって、夢に近付けるのかなって。

―シンガーを志したときに、既に理想像みたいなものはあったんですか?

安田:私は日本とアメリカのハーフで、日本語も英語も喋れるので、すごく大きい夢なんですけど……。

―どうぞどうぞ、話してください。

安田:日本だけじゃなく、世界からも安田レイってかっこいいって思ってもらえるような、日本と世界の懸け橋になれる、ワールドワイドなアーティストになりたいって思っていました。

―最初から大きい夢を掲げていたんですね!

安田:そうですね。夢はでっかく! って考えなので(笑)。安田レイのプロジェクトのため、と言ったら変ですけど、安田レイとして歌える日のために、ずっと活動してきたと思います。

―2つの国籍の間でアイデンティティーを求めて悩む方も多いと思うのですが、そのような部分はいかがですか?

安田:確かに、ハーフであることをコンプレックスに思っている子が私の周りには多くて。私の弟もそうなんです。「何で日本人と結婚しなかったの!?」ってちっちゃい頃に親に言っていたくらい、「自分は他の子と違う」っていう点で悩んでいて、それはどちらかと言えば日本的な考え方なのかなと思います。でも、私は人と違っていたほうが楽しいと思うし、アメリカンな考えなんですよね。自分がハーフだということについて、悩んだことがなくて。ポジティブなのかな?(笑)

安田レイ

―でも、アメリカには3歳までしかいなかったんですよね?

安田:福生の米軍基地で育ったので、日本だけどアメリカみたいな環境だったんです。小学校6年生まではアメリカンスクールに通っていましたし。でも幼稚園は日本の幼稚園で、中学校と高校も日本の学校でしたね。

―そこで、日本とアメリカの違いみたいなところを目の当たりにしたんじゃないですか?

安田:カルチャーショックはかなり受けましたね。何でみんな同じことをしているんだろう? って思ったし、一番びっくりしたのは、何で集団でトイレに行くの? って(笑)。

―(笑)。そこで安田さんも一緒に行ったんですか?

安田:まあ、付いていきましたけど、意味あるのかな? って(笑)。

―思春期にそれまで育ってきた環境と異なる場所に身を置いたことで、自分自身がどういう人間なのかはっきりしたのかもしれないですね。

安田:そうですね。アメリカンスクールには、アメリカ人や中国人、韓国人、アフリカン、メキシカンもいて、その中で育ったので、他の人と違っていて当たり前だし、それが個性だって思えたんです。そのおかげで今の自分があると思いますね。

―宇多田さんに共鳴したのは、そういうところで育った影響も大きいのかもしれませんね。

安田:そうですね。宇多田さんの考え方は日本人だけの視点ではないと思うので、そういう点では私も同じだなって思いますね。日本とアメリカ、両方のいいところを知っているので、もっともっとそういうところを伝えていきたいとも思いますし。

―安田さんは中学生の頃から夢に向かって踏み出したわけですけど、13歳って、まだ何にでもなれる年齢じゃないですか? だから夢を語ることはあっても、実際に夢に向かって踏み出す子はまだ少ないですよね。

安田:そうでしょうね。でも、私はやりたいことはいつも全部口にしていましたね。友達と将来の夢を話すのも好きですし、家族とも夢について語り合っています。それは今も変わりません。やっぱり口に出すことによって、夢に近付けるのかなって。だからソロデビューは、周りのみんなも自分のことのように喜んでくれています。

―そんな中で、元気ロケッツでの日々は、安田さんにとってどんな思い出として残っているんでしょうか。

安田:うーん……長かったですね。今思うと、かなり勉強になりましたし、でも元気ロケッツのLumiは、バーチャルな存在で、宇宙にいるという設定なので、ライブをすることが一度もなくて。基本的にはホログラムを使って、私がそこにいるように見せて、DJが曲を流すっていう。だから、私がメインにしていたことは、レコーディングで歌うのと、PVやジャケットの撮影だったので、ライブをすることに関しては未知の世界だったんです。

―バーチャルな存在のもどかしさってあったんじゃないですか?

安田:そういう時期もすごくありました。Lumiっていうのは私の本来の姿ではないので、本当の安田レイはこうなのに! って思ったり。でも今年、ソロデビューしてから、初めてライブをやったんです。私の中でアーティストっていうのは、いい曲を携えて、ライブで素敵なパフォーマンスをするものだと思っているので、ずっとライブをしたい気持ちが強かったんですよね。

安田レイ

―とは言え、安田レイという素の自分でステージに立つことは、やりたかったこととはいえ、緊張したんじゃないですか?

安田:そうですね。ずっと想像して練習もしていましたけど、初めてのライブがさいたまスーパーアリーナで、いざステージに立ってみたらガタガタに震えてしまって。人の数もすごいし、ほとんどの方が私を知らない中で歌うことに対して、必要以上にプレッシャーに感じてしまって。やっと夢が叶ったんだから最高のパフォーマンスを見せなきゃ! って身構えてしまったんですよね。でも、その反省を踏まえて、2回目の代々木体育館のライブではリラックスしてやったら、お客さん一人ひとりの顔が見られる余裕もできました。

―1回のライブでそんなに変わることができたんですね。“Let It Snow”を聴いていても思ったんですけど、歌ってるときが一番気持ちいい人なのかもしれないな、って。

安田:そうですね。ライブはまだ緊張しますけど、歌っているときが一番自分らしくいられるのかなって。

―歌が上手いとか声が綺麗とか、そういうところももちろんあるんですけど、それ以上に気持ち良さそうなんですよね。元気ロケッツも、モデルも、いろいろやってきたからこそ、改めて「歌ってるときが一番自分らしい」って思えるんじゃないですか?

安田:そうですね。歌うために生まれてきたんだなって。

安田レイの曲に英語のワードが多いのは、グローバルなシンガーになりたいっていう思いがあるから。

―“Let It Snow”は、元気ロケッツ時代からタッグを組んでいるagehaspringsのプロデュースですけど、特に玉井さんには音楽的に育てられたんじゃないですか?

安田:そうですね。私にとっては、音楽のパパというか。いろいろ教えてもらって、そのおかげで安田レイとして歌うことができて、これからたっくさん恩返ししていかなきゃいけない、大切な師匠です。

―玉井さんに言われた言葉で印象的だったものってありますか?

安田:玉井さんは、個性を生かすのが上手で、ああしろこうしろって言うよりは、私が持っているものをそのまま伝わるようにしてくれる方なんですよね。

―“Let It Snow”に関して、安田さんもアイデアを出したのでしょうか?

安田:そうですね。いつも玉井さんと話しながら決めていくんですけど、元気ロケッツのときは冬のバラードがなくて、私はずっと歌いたかったので、玉井さんに言ってこの曲ができたんです。

安田レイ

―歌詞にも安田さんの思いが反映されていますか?

安田:実体験も話して言葉を決めていきました。あとは、英語のフレーズを入れたかったので、最後に<So silent night Thank you for you and love / Lonely night without you>って入れて。これって、日本語だとちょっとクサいと思うんですけど、英語にすることによって、もっと伝わりやすくなるのかなって。安田レイの曲に英語のワードが多いのは、グローバルなシンガーになりたいっていう思いがあるから。海外の人が聴いても聴きとれるフレーズがあったほうが面白いと思うんですよね。あとは、日本語の歌詞より、英語の歌詞のほうが気持ちが込められるのもあって。

―でも、この曲は日本語のほうが多いですよね。

安田:そうですね(笑)。この曲自体が、今まで歌ってきた中で一番難しいです。スタジオに入って練習したときに、なかなか自分のイメージに近付かなくて……。でもアップテンポの曲と比べるとバラードのほうが好きだし、楽しんで歌うことができました。

―実体験とおっしゃっていましたが、安田レイとして歌うなら、歌詞に実体験が入ってるほうがいいということなのでしょうか? バーチャルな存在だったからこそ、その反動で、より生身の自分で歌いたい気持ちが強いというか。

安田:そうですね。もっと曲を通して、素の安田レイをたくさんの人に伝えていきたい。今回のPVも、普段の生活をInstagramで撮影したものを使っているんですけど、今までのジャケットやPVだけを見ている人は、私のことを相当クールな人だと思ってるみたいで(笑)。でも、実際の私は全然そうじゃなくて、とぼけているところが多いので、そういうところをみなさんに知ってもらいたいなって。

―そういう方向性だと、いずれ歌詞も全て自分で書きたいんじゃないですか?

安田:そうですね。ちょこちょこ書いているので、いつか曲として出したいと思っています。曲調としてはバラードが好きですけど、今後はジャンル問わずいろんな安田レイに変身したいし、1つに絞るより、いろんな自分を見せていきたいと思っています。

安田レイ

―欲張りですね(笑)。

安田:そう、ホント欲張りでわがままなんです(笑)。

―どんな場面で欲張りになるんですか?

安田:なかなか納得いかなくて、何回もやり直したりとか。

―それ、欲張りなんじゃなくて、自分に厳しいんじゃないですか? ストイックなんじゃないのかなあ。

安田:でも、適当なところはすごく適当なので、そこでバランスがとれているんだと思います(笑)。

―当面の目標は、ライブですかね。

安田:そうですね。来年はたくさんたくさんライブをやりたいです!

―ゆくゆくはワールドツアーとか?

安田:うわあー!(笑) そうですね、世界中で歌いたいです!

リリース情報
安田レイ
『Let It Snow』

2013年12月4日から配信リリース

1. Let It Snow
2. Best of my Love -Genki Rockets Remix-
3. Best of my Love -DJ DECKSTREAM Remix-
4. Let It Snow -Instrumental-

プロフィール
安田レイ(やすだ れい)

1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州生まれ。3歳で日本へ。10歳の頃、母親が聴いていた宇多田ヒカルに衝撃を受けてシンガーを志す。モデルとしての活動を始めたことをきっかけに、13歳で元気ロケッツのオーディションに合格し、ヴォーカリストとしての才能を開花させる。20歳を迎えた2013年、「自身の歌声をもっともっとたくさんの人々の心に直接届けたい」という強い想いを 胸に、ソロシンガーとしてデビュー。



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