ORESAMAが語る再起の物語、葛藤し再デビューを果たすまで

ボーカルで作詞担当のぽんと、トラックメーカーの小島英也による2人組のユニットORESAMAが、アニメ『アリスと蔵六』のオープニングテーマとなる『ワンダードライブ』で再メジャーデビューを果たした。彼らは2014年に一度メジャーデビューをしているものの、CD1枚のリリースで契約が終了。その後、インディーズで活動を続けるなかで、ぽんと小島それぞれが自らの個性を掴み直し、今ようやく新たなスタートを迎えた。

ぽんは音楽アプリとの出会いによって、歌に対する気持ちを再確認し、小島は今回のシングルを通じて、楽曲制作におけるソフトウェアとの距離感を再構築したという。今、世の中に溢れるたくさんの便利なツールは、ときに両刃の剣となり、人間味を奪いかねないが、二人はそういったツールがあったからこそ、再起することができたと言っていいだろう。ここに至るまでのストーリーを、じっくりと語ってもらった。

私の歌を愛してもらうためには、もっと自己開示をしないといけないと思った。(ぽん)

―新たな始まりとなるシングルの完成、おめでとうございます。本作に至るまでにはさまざまな葛藤や試行錯誤があったのではないかと思うのですが、それぞれにとってどんな期間だったと言えますか?

ぽん:私は一時期、自分の歌にあまり自信が持てなくなっていて、「私の歌じゃダメなんじゃないか?」ってすごく悩んでいました。小島くんは楽曲提供を始めたりもしていて、それなのにORESAMAが上手く進まないのは、「私のせいなのかな?」って。そういうなかで、「nana」っていう音楽アプリのことを教えてもらって、「何者でもない私の歌を聴いてもらえるのか?」っていう挑戦をしたいと思って、正体を隠して投稿を始めたんです。2015年の末から1日2~3曲上げていたので、半年間で400曲くらい。

ぽん
ぽん

―すごいペースですね。

ぽん:当時は思うように歌えなくて泣いたりしながら1日中歌っていたんですけど、そうしたら、私のことを知らない人が、「声かわいいね」とか「歌上手いね」って言ってくれて、そういう素朴な感想がすごく嬉しかったんです。それで、やっぱり私は歌うのが好きなんだなって再確認できたし、好きだからこそ、もっと歌いたいし、ORESAMAのぽんとしてみんなにこの歌を聴いてほしいっていう気持ちがどんどん強くなってきて、ブログに「ORESAMAのぽんでした」っていうことを書いたんです。

―去年の6月の「わたしのこと。」という投稿ですね。

ぽん:「なんだ、プロだったのか」とか、厳しい意見もあるかなって不安だったんですけど、みなさん「これからも応援する」って言ってくれて、すごく嬉しかったんです。それで、この気持ちを何か形にしたいと思って、小島くんと相談して作ったのが“ねぇ、神様?”という曲なので、それを再メジャーのシングルに入れることができて、ホントによかったなって思います。

―“ねぇ、神様?”には、<愛して欲しいだけなのに 壁にぶつかるばかりで だけど僕は諦めがつかずに 今日もうたうよ>という歌詞があったり、ストレートに自分の心情をさらけ出していて、これは表現者としても非常に大きな経験だったのではないかと思います。

ぽん:これまでは「ORESAMA=楽しい音楽」っていう自分のなかのイメージがあったので、私の葛藤みたいな部分はあんまり見せていなかったんです。でもファンの方からすると、どうして名前を隠していたのかとか、やっぱり気になると思うんですね。「私の歌を聴いてほしい」ってことは、「私の歌を愛してほしい」ってことで。そのためにはもっと自己開示をしないと、愛してもらえないと思ったので、ブログもそうだし、この曲でも自分の想いを歌詞に込めました。

―一方で、小島くんにとって2016年はどんな期間だったと言えますか?

小島:僕としては、他のアーティストに楽曲提供をさせていただくなかで、「ちゃんとぽんちゃんの声を活かしきれてるのかな?」っていう葛藤があったんですよね。今の音楽性でいいのか? もっとバラードのほうが、もっとロックなほうが……っていうことを考えているときに、ぽんちゃんから“ねぇ、神様?”の歌詞をもらったんです。僕は、「この歌詞でいい曲を書きたい」と思いました。

小島英也
小島英也

小島:なので、ぽんちゃんの歌声を最大限に活かして、それでいてORESAMAっぽく、僕の理想とする音楽の要素も盛り込んだ曲を、と思って作ったのが“ねぇ、神様?”なんです。もちろん悩んだからって物事が上手く進むかっていうと、そんな甘い話ではないと思います。でも1年間悩んで、試行錯誤したからこそ、今があるっていうのはすごく感じますね。

―具体的には、ぽんさんの声をどう活かそうと考えたのでしょうか?

小島:ぽんちゃんはnanaにすごくいろんなジャンルの曲をアップしていたんですけど、1曲1曲外さないんですよね。曲調とか歌詞とか、その曲の時代背景……まで考えてたかはわからないけど(笑)、とにかくその曲に合わせて、歌い方をコントロールしているのがすごいなって思ったんです。

「アニソン」と「J-POP」を比べたとき、曲そのものに差があるのかって考えると、僕はないと思うんです。(小島)

―400曲を歌いこなすなかで、ぽんさんのシンガーとしてのポテンシャルに気づいたというか。

小島:そう。だから、僕がどんな曲を書いたとしても、ぽんちゃんなら歌いこなしてくれるんじゃないかと思って。それで“ねぇ、神様?”の歌詞には思い悩んでいる部分もあるけど、明るく踊って笑い飛ばせる曲にすることに決めて。ぽんちゃんならこの歌詞でこの曲調でも歌い切ってくれるはずだって、ある意味頼った部分も大きかったですね。

―ぽんさんはこの曲調で返ってきたときはどう思いましたか?

ぽん:すごくORESAMAらしいなって思いました。結果的に、今この曲をライブでやると、みんな踊りながら笑顔で歌ってくれて、それがすごく嬉しくて。悲しいまま終わるんじゃなくて、ホントにいい曲だなって思っています。

左から:ぽん、小島英也

―表題曲の“ワンダードライブ”は前作『オオカミハート』に続いてアニメのテーマ曲になっていますが、そのことについてはどう受け止めていますか?

小島:「アニソン」と呼ばれている曲と、「J-POP」と呼ばれている曲とを比べたとき、曲そのものに差があるのかって考えると、僕はないと思うんです。アニメで使われているか、ドラマやCMで使われているか、その違いだけ。大事なのはみんながその曲を気に入るかどうかだと思うので、僕はただORESAMAとして、いい音楽を作りたいなって思います。

ぽん:“ワンダードライブ”に関しては、『アリスと蔵六』という作品と、今の私たちの境遇に、すごく重なって見える部分があったので、運命的なものを感じています。主人公の紗名ちゃんと蔵六さんがドライブをするシーンがあるんですけど、そのシーンの「今まさに、何かが始まろうとしている」っていう感じと、再メジャーデビューしようとしてる私たちとが重なるんです。<鏡よ鏡、わたし世界を変えたいの>っていう歌詞もそうなんですけど、いろいろ重なる部分が作品に散りばめられてあったので、それをすくいあげながら制作しました。

―楽曲自体はどのように制作したのでしょうか?

小島:原作を読ませていただいて、瞬時に頭のなかに浮かんだ疾走感とか、キラキラしたシンセのイメージを軸にしつつ、3~4パターン作ったなかで、結果的に今のバージョンが一番ハマって、自分のやりたいことを詰め込めたなって感じています。

―前半はアニメの曲らしく89秒を駆け抜けて(アニメのOPの尺はほとんどが89秒となっている)、一方で2Aや間奏ではまさにやりたいことを詰め込んでいるなっていう印象を受けました。

小島:89秒にハメるのは苦労しましたね。僕はBPM130前後で曲を作ることが多いんですけど、今回は160くらいで作ったので、パズルみたいに構成を入れ替えながら89秒にハメていきました。その後にフル尺を作るときは、何かスイッチが入ったのか、やりたいことが溢れ出してきて、それをガッと詰め込んだので、2番以降はかなりフリーダムな感じになってますね(笑)。

個性って作るものじゃなくて、自分のなかに既にあるものなんですよね。(小島)

―ORESAMAの楽曲はエレクトロテイストのディスコ / ファンクが基調になってるわけですけど、その音楽性をBPM160で表現するのは難しいですよね。

小島:その難しさはかなりありました。“ワンダードライブ”はグルーヴ感でディスコっぽさを出すのが難しかったので、コード感や音色で表現していて。テンションの入ったコードやアナログシンセを使うことで、涙腺にくるサビの感じとか、そういうディスコ感も表現できればなって考えていました。ぽんちゃん的にもこのBPMは初?

左から:小島英也、ぽん

ぽん:小島くんの曲でこのBPMは初めてだったので、いろいろ研究して歌いました。たとえば、2番の曲調が変わるところは、ここだけちょっと不安が垣間見えるところなので、ウィスパーボイスを重ねたり、逆に<わたし世界を変えたい>って、1か所だけ歌詞が変わるところは、強い決意というか、「届いてほしい」っていう気持ちを込めたり。

―半年間の間、いろんな曲を歌ったからこそ、引き出しが増えたんでしょうね。

ぽん:そうだと思います。アニメ『ACCA13区監察課』(2017年1月より放送)のためのユニット「ONE III NOTES」でも歌わせてもらっているんですけど、それも半年間の経験があったからこそできたことだと思うので、いろんなことにつながっていてすごく嬉しいです。

―以前のインタビューで、「軸があったうえで、トレンドに目配せをすることも重要」ということを話してもらったかと思うのですが、今回のシングルに関しては、どんなことを意識しましたか?

小島:実は、この2~3か月新しい音楽を全然聴いてなくて、というのも、一度リセットしたかったんです。僕は影響されやすいタイプなので、再メジャーデビューっていうこのタイミングで、何でもかんでも吸収するんじゃなく、一回リセットしたい気持ちがあって。真っさらな自分から何が出てくるのかを、今ちょうど試しているんです。なので、パソコンのDAWソフト(デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来るように構成された一体型のシステム)の設定も全部消して、再インストールして、構築し直してるんですよ。

小島英也

―ホントにイチから再構築してるんですね。

小島:そういうなかで、自然と自分から出てくるフレーズとか、無意識にやってしまう音作りをもう一度見つめ直して、自分らしさをもう一度再確認したいなって。まあ、自分はもともとチャートに入るような音楽が好きだから、シーンとそこまで感覚がずれることもないと思っているので、自分らしい音作りが確認できたら、もう一度新しい音楽を聴き始めようかなって。

―なるほど。

小島:個性って作るものじゃなくて、自分のなかに既にあるものなんですよね。ただ、それをちゃんと自分でわかってないといけない。そうじゃないと、どんどん周りに影響されて、自分の個性じゃないものが表に出ちゃうんで、一度ちゃんと自分を知ろうと思ったんです。

「生きているなかでつらいときはここに戻ってきて」って言える場所を、ORESAMAのライブで作りたくて。(ぽん)

―ぽんさんで言うと、カバーもオリジナルも含めて400曲以上も歌ったことで、逆に自分の個性を再確認することになったのではないかと思います。

ぽん:ボカロも含めてホントにいろんな曲を歌ったんですけど、特に楽しかったのが男性アーティストの曲を歌うことで、その曲を自分のものにしていくことによって、自分を見つめ直す機会にもなったと思います。

聴き慣れている女性アーティストの曲だと、自然とその人の歌い方に寄せちゃったりするけど、男性だと寄せようにも音域的に厳しいじゃないですか(笑)。なので、キーを変えたり、かわいく歌ってみたり、逆に消え入りそうな感じで歌ってみたり、そうやって創作しながら歌う時間はすごく楽しかったですね。

ぽん

―その経験は間違いなく“ワンダードライブ”にも活きているし、バラードの“SWEET ROOM”にも活かされていますよね。

ぽん:“SWEET ROOM”はライブのことを書いた曲で、詞先で作ったんです。私はライブが「また明日から頑張ろう」って思わせてくれる場所だったらいいなと思っていて。生きているなかで嫌なことやつらいことは誰にでもあるけど、「そういうときはここに戻ってきて」って言える場所をORESAMAのライブで作りたくて、その想いでこの歌詞を書きました。ORESAMAのライブがみんなにとってのスウィートルームになったらなって。

小島:去年1年間『FLAT NIGHT CARNIVAL』っていうイベントをやっていて、それは平日に開催して、「明日からまた仕事なり学校なり頑張ろう」って思ってもらえるようにやっていたんですけど、そのコンセプトにすごく近い歌詞だなって思います。

左から:小島英也、ぽん

―楽曲自体はどのように作っていったのでしょうか?

小島:テーマとしてあったのは「人間味」で、ソフトウェアで音楽を作ることが普通な時代で、どう人間味を表現できるか、それを自分なりに構築していきました。リズム補正をせずに、ソフトシンセもあまり使わず、生の質感を出したくて、でもそれをやるにはソフトウェアだと限界があったんです。

だから、今回のピアノはORESAMAの曲では初めてピアニストの方に生で弾いてもらって、ギターもほぼ編集なしで、ソフトウェア時代の人間味を表現してみました。日が経つごとにいい香りがしてくる、ビンテージの生楽器を意識して、10年でも20年でも歌っていけたらいいなって想いも込めて。

―ブレスの感じとか、歌そのものも人間味に溢れていますよね。

ぽん:“SWEET ROOM”では鳴っている音自体が人に寄り添うものになっているので、歌い方も、包み込むような感じを意識してレコーディングしています。聴いている人と一瞬だけでもシンクロできる瞬間があったらいいなって思って歌いました。

音楽って生まれた国それぞれで違う、唯一無二で、オンリーワンなものだと思う。(小島)

―最後に、今後のことも訊かせてください。「アニソン」であることを特別意識しているわけではないという話でしたが、もちろん、アニメと関わることで生まれる可能性もあると思います。そこに関してはどうお考えですか?

小島:僕らが普段活動している渋谷のシーンに、アニメとORESAMAがもっと進出してもおかしくないというか、むしろ、そういうことをやってみたいです。今だったら、渋谷の若者も「アニメっていいものだな」って思ってくれると思うし、アニメをもっと音楽シーンの中心に持って行けたらなっていう、そういう野望も生まれてきましたね。

―一昔前の「アニメ好き=オタク」っていう感覚はもはやないし、きっとそれは可能なはずですよね。ぽんさんはいかがですか?

ぽん:今回オープニングでアニメーションをつけていただいて、そのなかで紗名ちゃんがクラップをしているんですけど、視覚的にもサビへの盛り上がりが生まれて、曲の可能性を広げてくれたなって思ったんです。

もちろん、「アニソンだから」といっても、曲そのものがよくないと聴いてくれないと思うので、ちゃんとORESAMAの音楽で、私の歌と小島くんの曲で勝負しつつ、外部の方と一緒に作業をすることで、可能性をさらに広げて行けたらいいなって思います。

ぽん

―ORESAMA自体の今後の展望に関してはいかがでしょう?

小島:ORESAMAとしてのJ-POPをより追求して海外でライブをしたいなって思っています。昔は洋楽への憧れが強かったんですけど、今はどちらかというと、「日本の音楽を作りたい」っていう気持ちの方が強くなっていて。

それに比例して、「僕たちの音楽を聴いて海外の方はどんな反応してくれるんだろう?」って想いが強くなっているんですよね。未だに「日本の音楽は洋楽の真似だ」って言う人もいますけど、僕は全然そうは思ってなくて。音楽って生まれた国それぞれで違う、唯一無二で、オンリーワンなものだと思うので、そこを追求していけたらなって思っています。

ぽん:私もとにかくもっとライブがしたいですね。ORESAMAのポップスを、今までのファンの方とも、再メジャーデビューをして、これから出会う方とも楽しんで、一緒に踊れて、一緒に遊べるライブっていうのを、もっともっと追究していきたいと思います。

左から:ぽん、小島英也

リリース情報
ORESAMA
『ワンダードライブ』(CD)

2017年5月24日(水)発売
価格:1,296円(税込)
LACM-14609

1. ワンダードライブ
2. 「ねぇ、神様?」
3. SWEET ROOM
4. ワンダードライブ-Instrumental-
5. 「ねぇ、神様?」-Instrumental-
6. SWEET ROOM-Instrumental-

イベント情報
CINRA×Eggs presents
『exPoP!!!!! volume97』

2017年5月25日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
evening cinema
ORESAMA
PELICAN FANCLUB
ササノマリイ
indischord
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール
ORESAMA
ORESAMA (おれさま)

渋谷から発信する、ボーカル・ぽんとトラックメイカー・小島英也の2人組ユニット。ラブコメやディスコといった「バブル」カルチャーを「憧れ」として取り込み、80sディスコをエレクトロやファンクミュージックでリメイクしたダンスミュージックを体現。その新感覚はイラストレーター「うとまる」氏のアートワークやミュージックビデオと相乗効果を生んで新世代ユーザーの心を捉えている。



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