世は空前のハンドメイドブーム。仕掛け人minneの狙いと本音に迫る

作家が手作りした作品を販売・購入できるハンドメイド市場が盛り上がりを見せている。2016年の同市場における流通額は190億円を突破。2014年の35億円と比較すると約6倍だ。作り手と買い手のやりとりは、主にネットやアプリを通じて行われてきたが、テレビCMが放映され、書店では関連書籍が並び、人気作家と対面できるイベントともなれば、ファンが長蛇の列を作ることも珍しくない。

かつては「お母さんの手芸」「素人の作品」といったイメージが強かったハンドメイドだが、市場の拡大とともに「オリジナリティーのあるもの」「人のぬくもりを感じる丁寧に作られたもの」といった新たなイメージが定着しつつある。

今回、そんなハンドメイドブームを牽引する、GMOペパボが運営するminneの発案者・阿部雅幸、デザイナーの木坂名央に加え、深津貴之(THE GUILD)、アートディレクターの櫻井優樹(METAMOS)の4名に集まってもらい、市場の盛り上がりについて話を訊いた。2012年にサービスを立ち上げ、わずか2年で作家数、作品数ともに業界トップになり、作家の発掘・支援を目的としたコンテスト『minne ハンドメイド大賞』や、作家に向けて販売ノウハウなどを伝える勉強会やワークショップを行う「minneのアトリエ」を主宰するなど独自の取り組みを行ってきたminne。

実は、今年の9月にはじめてブランドメッセージを打ち出したという。ブームを作り出し、利用者数も認知度も業界No.1であるminneが、なぜ今ブランディングをはじめたのか? ハンドメイド市場の移り変わりと今後の可能性について、本音で語ってもらった。

コアなユーザーほど、ものの来歴、後ろにあるストーリーが重要になってくる。(深津)

―minne立ち上げのきっかけは、社内公募に阿部さんが企画を出したことなんですよね。阿部さんは、もともとハンドメイドに興味があったんですか?

阿部:そうなんです。作家さんが直接作品を販売する手づくり市や蚤の市によく足を運んでいて。作家さんがもっと気軽に作品を販売できて、それをインターネット上で見ることができたらいいのに……という思いが募ってきたんです。その思いからminneを立ち上げました。

左から:深津貴之(THE GUILD)、木坂名央(minne)、櫻井優樹(METAMOS)、阿部雅幸(minne)
左から:深津貴之(THE GUILD)、木坂名央(minne)、櫻井優樹(METAMOS)、阿部雅幸(minne)

―2012年にスタートして以降、ハンドメイド市場は盛り上がりを見せていますが、その移り変わりをどのように見ていますか?

阿部:企画していたときからminneを大きくしたいと思っていたので、マーケットに対する期待はもっていたんですけど、2012年にスタートさせてから2年間くらいは本当にじわじわと、ゆるく右肩上がりという感じでしたね。ハンドメイドに対する世の中のイメージも、「お母さんの手芸」でとまっていたりとか。

だけど、2015年からのプロモーションでminneが市場を牽引していく中で、ハンドメイドの価値も徐々に変わっていきました。市場が拡大していく可能性はまだまだあると思います。

阿部雅幸(minne)
阿部雅幸(minne)

―買い手として参加する方たちは、ハンドメイドの何に反応していると思いますか?

阿部:他では手に入れることができない唯一無二の作品を作る作家さんがいて、そういう作品に出会えることが一番大きいのかなと思います。

木坂:ハンドメイドのプラットフォームって、自分好みの作家さんに出会えるんですよね。実は私も、もともとは「ハンドメイド=バザーで売られているようなもの」をイメージしていたんですけど……、大量には作れない、個人でやっているからこその良さがあって。一度そういうものに出会うとハマる世界なのかなと。

木坂名央(minne)
木坂名央(minne)

―それは、作品に感じる「ハンドメイド感」が重要なんでしょうか? それとも、ハンドメイドという「過程」に特別感を見出しているのでしょうか?

深津:ユーザーによると思うんですけど、コアなユーザーほど、ものの来歴、後ろにあるストーリーを重要視している気がします。

深津貴之(THE GUILD)
深津貴之(THE GUILD)

木坂:単純にその作品が自分の好みにぴったりだから欲しくなるのと、作家さんがどんなところにこだわったのかを知って欲しくなるのと、両方のパターンがありますね。

櫻井:僕も今回のリニューアルの一環で全国の作家さんの作業場を訪ねたのですが、横で話を聞いていると欲しくなってくるんですよね。ハンドメイドの領域を超えているというか。ハンドメイドというより、職人といっていいレベルで丁寧なお仕事をされているのに驚きましたし、加工手法や厳選されたマテリアルのエピソード等を聞くと、つい買って帰りたくなるんです(笑)。

櫻井優樹(METAMOS)
櫻井優樹(METAMOS)

木坂:見たり聞いたりすると、ハンドメイドって見え方がすごく変わりますよね。

阿部:僕の名刺ケースはパンツをはいたおしりの形をしているのですが(笑)。これも実は、minneの作家さんの作品で。昨年のハンドメイド大賞で、大賞を受賞された作家さんの作品なんです。minneのスタッフがオーダーして作ってもらってるのを見て、同じものをオーダーしました。社内にも5人くらい同じケースを持っている人がいますよ。実際に見て触ってみることで、よさが伝わって、連鎖していったんだと思います。

阿部の名刺ケースと同じ商品『Panty Minaj《C》feat...WARM』
阿部の名刺ケースと同じ商品『Panty Minaj《C》feat...WARM』(minneで見る

「ハンドメイド=かわいい」というイメージが先行してしまって。(阿部)

―今回のブランディングでは、ロゴを手描きにされたり、ブランドサイトとタグライン(「手が生んでいるから、あたたかい。」)を新設されましたよね。なぜ、今だったのでしょう?

阿部:2014年に国内で一番大きなハンドメイドサービスに成長できて、その勢いを加速させるために、2015年はテレビCMを打ったり、雑誌を創刊したりと様々な方法で認知度アップを狙いました。その甲斐あってマーケットは一気に広がったのですが、minneの認知のされ方や、「ハンドメイド=かわいい」というイメージが先行してしまって、我々の考えとどんどん乖離してしまったんです。

「ハンドメイド」とひとことで言っても、さまざまな作風がありますし、人が作ることでうまれるぬくもりもある。僕らは、作品そのものだけではなく、作品ができるまでの「ストーリー」も含めてハンドメイドの魅力を様々な角度から伝えていきたいと考えていました。

深津さんには2015年からUI/UX顧問としてminneをはじめ、弊社のサービスを見ていただいていて、「ブランドの整理をしましょうよ」って、ご提案いただいたことも大きかったです。

深津:僕が参加した2015年の時点では、「ものがこんなにありますよ」という数を強みとする見せ方だったんです。

木坂:たしかに作家や作品の数を前面に出していましたよね。

深津:でも、それじゃあAmazonには勝てないという話になるじゃないですか。minneには、いい作品がいっぱい出品されていて、実際に触るとそのすごさがより伝わってきます。なので、minne独自の価値を見せることが大事だと思ったんです。

認知度をあげるために、「こんなにたくさんの商品があるんです」と打ち出すことが間違いとはいえないんですけど、どうしてもブランドイメージが濁ってきてしまう。

阿部:そういった経緯があって、今回のリニューアルにつながっていきました。

阿部雅幸

―まずはロゴについてお話を聞かせてください。前回のロゴと比べてみても、大きな違いが見当たらないのですが、かつてのロゴを生かすというアイデアは櫻井さんのアイデアなんですか?

これまでのminneロゴ
これまでのminneロゴ

櫻井:今回携わってみて、minneは特殊だなと思ったんです。多くのサービスの場合、サービス提供者対ユーザーという図式になりますが、minneの場合は、minneチームと作家さんとが一緒に世界感をつくっているといっても過言ではないと感じました。なのでユーザーが、これまでのロゴやイメージにも愛着を持っていらっしゃる感じがしたんです。

ロゴデザインも、全く違うものを突然ドンッと出すよりは、みなさんが大事にしているものをしっかり受け継ぎたいと思いました。ただ、これからのサービスの広がりを考えると、現状では難しい部分もあったので、リサーチと検証を繰り返しながら今回のロゴに向けて舵をとりました。

―リサーチと検証というと?

櫻井:例えば、過去のロゴは抑揚が少なく幾何学的な書体だったのですが、ハンドメイドを表現するなら、人の温もりや抑揚をより感じる形状が良いと思いました。そこで、様々なサンセリフ書体でジオメトリックからヒューマニスト、ソフトからシャープと振り幅を持ったマッピングを行い、次に目指す場所を定めました。一見すると以前のロゴと近しく見えるのですが、実は骨格レベルからの改変を行っています。

「minne」ロゴの特徴ごとのマッピング
「minne」ロゴの特徴ごとのマッピング

深津:前回のロゴは「n」を書くときに筆を特殊に動かさないと描けないものだったのですが、実際の書法に近く描ける形状の方がいいんじゃないかとかも考えました。

櫻井:人の手わざ感のあるエレメントも重要な要素です。最終的にベースにしたのはアーツ&クラフツ運動(19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリスに興った工芸革新運動)の精神を継承した、エリック・ギルという彫刻家が作った書体です。手から生まれるもののすごさ、強さを体現している人が作った文字を基にすることでminneの精神を表現できると思いました。

minneのロゴはやはりハンドメイドでなければならないと考えていたんです。小さな点(様々な作家さんと作品)を重ねて線に仕立て上げる手法を採用しました。それをみなさんにお伝えしたところ、阿部さんが「僕も描きたいな」と。それがすごくおもしろいと思ったので、「i」のドットを、minneに関わる全ての方に重ねていただいたんです。社長をはじめ、みなさんにも筆をとっていただくことで、PCからだけは生まれない、minneならではのあたたかみを持ったハンドメイドのロゴが完成しました。

「minne」ロゴの原画
「minne」ロゴの原画

阿部:総勢70名で、点を打っては入れ替わり立ち替わり。作家さんと一緒にminneを作ることもそうですが、minneに直接携わる人間も一緒に作ることが大事だと思っています。

作家さんからの手紙を読むのも、写真に撮ってSNSにアップしたり、友達に自慢したりするのも購入体験の一部ですよね。(深津)

―今後、ハンドメイド市場はどのように変わっていくと思いますか?

深津:やっぱり全体のテーマとしては、「ものを売る」ところから、「もの以外のものも売る」ところにどう移動していくかじゃないですか。

阿部:購入者目線と作家目線のふたつの目線があると思うんですけど、作家さんは、より個が際立っていって、その人自身がブランド化していくと思います。そうなるとアプリやウェブ上だけでなく、自分の場所が必要になる。そういう場を提供できたらいいですよね。

深津:minneの今後でいえば、ものを並べるよりも、それ以外を並べた方が明らかに素敵だと思っています。例えば、作品に同封された、作家さんからの手紙を読むのも、作品を写真に撮ってInstagramにアップするのも、友達に自慢したりすることも購入体験の一部ですよね。そういった、「もの」の手前、後ろも全部minneの世界として見せることができたらと考えています。

木坂:作品にはたいてい手書きのお手紙がついてくるんですよ。他のサービスだとなかなかないことだと思うんですけど、minneではあたりまえと言ってもいいくらいで、カルチャーになっているんです。作家さんが自分の作ったものをホスピタリティーをもって販売する場所というのは、minneらしさのひとつです。minneは私たちが立ち上げたものではあるけれど、何をするにも作家さんの目線で考えていかないと成長もできないと思います。

木坂名央
木坂名央

阿部:作品を買うだけじゃなくて、人とつながれる場所。そこを大事にしていきたいです。minneをはじめて最初の数年は、「もの」を目当てにminneに訪れる方が多かったのですが、だんだん興味が「人」に移っていって、今は作家個人に熱狂的なファンがつきはじめている。そういった流れが加速していく中で、僕らはやっぱり作家を応援する影武者でいたい。

櫻井:ハンドメイドの製品って、人となりが出ますよね。これだけのものを作る人が言うんだから興味がわく、信頼できる、というのは大いにあると思います。

阿部:だからやっぱり作家さんの声はつねに聞き続けていきたい。いろんな場所で作家さんの座談会を開催したり、オフラインのイベントもいろいろと打ち出していく予定です。

世田谷区ものづくり学校内にあるminneのアトリエ
世田谷区ものづくり学校内にあるminneのアトリエ

サービス情報
minne(みんね)

minneは、アクセサリーや、雑貨、家具、食品など、手作りの作品をだれでも販売・展示・購入できる、国内最大級のハンドメイドマーケットです。手が生んでいる、あたたかく、アイデアが詰まった作品はプレゼントにも喜ばれます。作品が生まれるストーリーも公開中。

プロフィール
阿部雅幸 (あべ まさゆき)

minne事業部部長。2006年にpaperboy&co.(現GMOペパボ株式会社)に入社。「カラーミーショップ」でカスタマーサポート、「JUGEM」でマーケティング、「カラメル」で企画を担当した後、2012年に「minne(ミンネ)」を立ち上げる。現在は、minneの事業統括とminneの想いを広めるべくminneのザビエルとして活動中。

木坂名央 (きさか なお)

minne事業部プロダクトチームデザイナー。2013年にpaperboy&co.(現GMOペパボ株式会社)に新卒入社。「ムームードメイン」でwebデザインを担当した後、2015年から「minne(ミンネ)」事業部へ配属、印刷物からモバイルアプリのUI設計まで様々なデザイン業務に携わっている。

深津貴之 (ふかつ たかゆき)

インタラクション・デザイナー。株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。2009年の独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、株式会社Art&Mobile、クリエイティブユニットTHE GUILDを設立。日経新聞電子版アプリの基礎設計監修や、日本最大のハンドメイドマーケットminneのスマホUI顧問などを務める。執筆、講演などでも勢力的に活動。

櫻井優樹 (さくらい ゆうき)

2009年METAMOS™を設立。ADFESTグランプリをはじめ、国内外で受賞ぼちぼち。タイポグラフィ・スクール朗文堂新宿私塾講師なども従事。7名からなるクリエイティブユニットmokuvaのメンバーでもある。



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