鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

2020年、7度目の開催を迎えるはずの『VIVA LA ROCK 2020』。ここで「はずの」と書いたのはなぜか? 言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大によって音楽イベント、ライブがことごとく中止に追い込まれ、自粛要請だけが繰り返されて一向に補償がなされない状況も含め、エンターテイメントの存在そのものが脅かされている最中だからだ。特に、音楽イベントやライブハウス、クラブといった場所が感染場所のメインとして一方的に挙げられ続けている今は、音楽文化そのものが殺されかねない状況だとすら思う。

しかし、自粛に伴う補償を求める署名が大きなムーブメントを生んだり、当分の間ライブで収益を上げられない音楽家のためにトラックを無償で提供するプロダクションの活動があったりと、新たな苦しみに立ち向かうための新たなユニティによって、音楽はまだまだ未来を見据えながら今も歯を食いしばっている。

そんな中、大規模な春フェスも今まさに開催有無の瀬戸際に立たされている。昨年までで言えば、『VIVA LA ROCK』を通じて、カルチャーとして定着したフェスのいい部分と悪しき部分、フェス自体が先天的に持っている批評性とメディア性、そして何より日本の音楽の動向をフェスを通じて語り合ってきた鹿野淳とのインタビューだが、今年の取材は今まで以上にシビアにならざるを得ない。

ここから音楽とエンターテイメントはどんな変化をして、どう生存していけるのか? アーティスト、観客とフェイストゥフェイスで物語を作ってきた鹿野と『ビバラ』だからこそイメージできる未来の話。そして現在の、胸が痛くなるほどのドキュメントを訊いた。

小規模のライブハウスでコロナウイルスの感染が確認されたときから、エンターテイメント業界が復興していくプロセスをフェスの中でストーリー化して、世の中に訴えなきゃいけないという気持ちが生まれた。

―まず、今日このインタビューが3月20日の20時に行われていることを明言してから始めたいんですけど。

鹿野:そうだね。昨日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会見があって、「今、大規模イベントを開催してメガクラスターが発生すると、一瞬にして今までの努力が水泡に帰す」という発言がありました。実は、その会見の前にとあるテレビ局の報道番組から「専門家会議の会見を受けて、ウチの番組で『VIVA LA ROCK』(以下、『ビバラ』)を開催するかしないかを決めてコメントしてもらえますか?」という連絡がきて。

―本気で言ってるのかな? クソですね。

鹿野:それは本当にびっくりした。で、5分かけてお説教させてもらいました(笑)。「今から行われる専門家会議の会見で何が語られるのか、あなたは裏を取れてるんですか? 完全に裏を取れてるのであれば、今教えてください。それであれば番組の生放送前にいろんなことを時間をかけて考えます」って言ったら「いや、そこまでは……」って言うわけ。さらに「そもそも、本気で僕がひとりで『ビバラ』の開催有無を決められると思ってるんですか? 僕がひとりで会見後1時間もしないうちにそれを決められるほど、チンケなフェスをやっていないんですよ」と。

プラス、その専門家会議の会見で大規模イベント開催に対して白か黒かを明言してくれるならいいけど、自粛要請以上でも以下でもないんだろうし、期限的にもGWまで言及しないだろうし、僕らは参加者の危険を犯してまでフェスをやりたいのではないし、参加者の危険を犯すこと自体が、そのまま参加者から不参加者への危険に繋がることも知っている。だけど同時に簡単にモラルだけに安易に従いたくないし、今、音楽とかライヴとかエンターテイメントが世の中の矢面に立たされていて、そのことに対して何を考え何を示すべきか、そこまで考えてこっちはやっているのに、なんでテレビ局やテレビ番組のためにフェスをやるかやらないかの判断をここで下さなきゃいけないんだって話で。

2019年の模様。昨年は4日間開催に拡大され、さいたまスーパーアリーナのスタジアムモードを用いて82,000人(屋外フリーエリアのVIVA LA GARDENを含むと163,600人)を動員した。

―しかし『ビバラ」くらい大きな規模のフェスの主催者にそんな連絡がくるとは、世間で音楽イベントがいかに軽んじられてるかが皮肉にもよく伝わってくるエピソードですね。今日は本来、昨年の取材(鹿野淳が語る、ロックフェスの信念と『VIVA LA ROCK』の真実)を踏まえて鹿野さんのフェス論がいかに更新されてるのかを切り口にしたかったんですね。なぜか昨年のインタビューは多くの人が読んでくれたみたいだし(笑)、今回も疑問に思ったことをストレートに訊くような内容にしたかったけど、もはやこの状況にあっては──。

鹿野:イジりにくいでしょ? どれだけ元気に対応しても、もう存在自体が痛々しいんでしょ?

―というか、応援するしかないじゃん。

鹿野:あはははははは! そうだよね。ありがとうございます。

―ラインナップにおけるジャンルの偏りがどうとか、他のフェスとの差別化がどうという話をしたところで、「今年は開催できないかもしれない」というリアルな難題と向き合ってるフェスの主催者に対して、どんな提言をしても意味がないなと。シンプルに開催して成功してほしいとしか思わない。

鹿野:うん、そうだろうね。それが本音だよね。とにかくライブやイベントやフェスが今一度再開できる環境が欲しいよね。それはつまり、世の中からウイルスというテロが取り払われた、もしくは取り払われそうだということと直結するわけだから。

『ビバラ』最大級を誇るSTAR STAGE 撮影:釘野孝宏 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
『VIVA LA ROCK 2019』STAR STAGEのグランドフィナーレ 撮影:小杉歩 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved

―それを踏まえて、年明けから徐々に中国の武漢で新型コロナウイルス感染症が拡大していって、1月24日から30日までの春節(中国における旧正月)を最初のピークとして、「水際で感染拡大を阻止しなければならない」という認識が各国に広がりました。それでも僕を含めて日本の多くの人はまだ楽観的だったと思うし、結果的に各国が水際で阻止できなかったから今の混沌とした世界の状況があるわけですけど。あの時点で鹿野さんは『ビバラ』の主催者としてどれくらいの危機意識を持ってましたか?

鹿野:やはり身の丈に合わないほどデカいフェスをリスクを被って主催していると、あらゆることに対して楽観的ではなかったよ、いちいちビビリまくって生きているからね。まずは1月中旬から末にかけて、コロナウイルスの影響でフェスが開催できなくなった場合に興行中止保険が下りるか調べておこう、結構まずいかもしれないからという打ち合わせをして。これは僕らだけじゃないと思うけど、みんなうっすらしか知らなかったんですよ、ウイルスで保険が降りるか降りないかってことを。

だからウイルスが「免責」に含まれるかどうかを確認したところ、「あー……やっぱり下りないですね」ってなりました。ちなみにテロ、戦争、原発事故関係も補償の対象に含まれないんです。その時点でまず、これはヤバいとなった。で、2月26日に安倍首相が専門家会議を受けて、イベントの自粛を要請する会見を開いたよね。あの時点から本格的にエンタメの危機が始まった。その時点ではまだ「クラスター」という言葉は広がってなかったけど、「このままライブ会場での感染が認められていくようであればマズいな」と思っていたところで、残念ながらそれが大阪で複数、現実になってしまった。

そのときにフェスの主催ではなく音楽ジャーナリスト的な視点で率直に思ったのは、このままでは音楽やライブが目の敵にされてしまうし、それは本当に深刻なことだなと。ライブやライブ会場自体がいけないわけじゃないのに、現実的にそこがウイルスの巣窟だと総称され、エンターテイメント自体に加害者意識を押し付けられる事態が起こるんじゃないかということで。

―本当に。もともと真っ先に槍玉に挙げられやすいジャンルではあるけど。

鹿野:そうだね(笑)。だから最初にライヴが槍玉に挙げられた時はむしろこちらが被害者だとさえ思った。ただ、小規模のライブハウスで感染が確認され、残念ながら広がりを見せたときには、さすがに被害者であるという気持ちは消えましたよね。とにかく今大事なことは、ライブの復権でなければ音楽の復興でもなく、そういったことが再開できるような環境を率先して作ることだなって。だからこそ予防や事態の収束を呼びかけて、しかもこちら側ではエンターテイメント業界が復興していけるプロセスを踏んで、それをストーリー化して世の中に訴えなきゃいけないという気持ちが生まれました。だからまず、新型コロナに勝とう、新型コロナに勝つためのルールを守ることを徹底しようとなった。そのうえで3月4日に音制連、音事協、ACPCの音楽系3団体をはじめとするエンターテイメント関連各社が新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた共同声明を発表して、「#春は必ず来る」という合言葉を発信しましたよね。幸い、あのメッセージと思いは一般層に広まった。

我々のフェスのような民間団体は、事業体に対してどれだけ負荷をかけずにエンターテイメントを維持していけるのか? そういうポイントにも『ビバラ』は向き合っている。

―その時系列と、一向に突破口が見えない状況を踏まえてストレートに訊きます。この3月20日時点で、『ビバラ』を開催する可能性はどれくらいあると思ってますか?

鹿野:あー、ね(笑)。難しいですよね、選択するのも難しいし、何よりも開催の見通しを想像するのが難しい。これ、ロックフェスだからね、単純にどういう状態でも開催すればいいってもんじゃないんですよ。だから僕はこれだけは再確認しました、「声を上げるな、盛り上がるな、手を挙げるな」っていうことをオーディエンスに課したら、それはロックフェスとは言えないってこと。

―間違いない。

鹿野:だからそれを唱えることが条件で開催できるということなら、開催は断念すると思います。そもそもダイブとかモッシュとかに対してもずっと同じスタンスだから。僕はダイブとかモッシュとかを禁止するというルールを明記しながら、それでも最前にはセキュリティが大挙して、しかも場合によってはヘラヘラ笑いながら「ダイブは禁止ですよ~」ってなんちゃって風にMCするフェスを見たことが複数あって。それが本当に嫌だと思ったんです。だからルールを掲げるならそれをこちら側がまず守れって思うし、中途半端なスタンスでいるくらいなら、このフェスは覚悟を決めてルールを取っ払って楽しもう、それがロックフェスだって信じているし、そのスタンスをフェスとして愚直に守りたい気持ちが強いんですよね。

だから、今回もそういった縛りがない状態で、5月2日から5日の4日間にかけてロックフェスティバルを開催するために何をしたらいいのか? ということを、これから4月に入る前までにさらに詰めて考えようと思ってます。…………このインタビュー記事を読んでる人は「本当にこいつは脳みそがたりないな」と思うかもしれないけどさ、「館内で感染を防ぐためにマスクを二重にしたら効果は上がるのか」とか、「オーディエンスにマスクを1枚してもらったうえで来場してもらい、我々がもう1枚渡したうえで楽しんでもらうことはできないのか?」とか「口や鼻だけじゃなく、両手を守るためにビバラのロゴを入れた軍手を作って配布して、退場時には指定の場所に捨ててもらって、それをこちら側で廃棄するのはどうだ? これも完全防止に役立たないか?」とか、イチイチそういうことから確認していて。「そんなの無意味に決まってるじゃん」って言われるかもしれないけど、そこから考えたいんだよね。

鹿野:そこから考えたうえで「ここまでいったら効果があるのか?」という領域を見つけていきたい。その上でとことん会場側とも話し合いたいし、埼玉県ともコミュニケーションをとっていきたい。それほど多くはないけど、まだ残された時間はあるからね。ただ、もしこれからまたライブやイベントでオーバーシュート(爆発的患者急増)が起こったら、開催中止を決断せざるを得ない可能性はありますよね。現状、4月10日前後くらいまでには開催するか無念の判断を下すか、悩めるんじゃないかと思ってます。…………思うんだけどさ、これ、ライヴやフェスが開催できる状況になるって、それ自体が「収束宣言」のようなものだよね。開催できれば、ある意味コロナに勝ったという象徴のようなものになると思うんだよね。

―なるほど。

鹿野:ちなみに付け加えますけど、さいたまスーパーアリーナって換気はめちゃくちゃいい会場なんですよ。会場の身長もやたら高いし、優秀な換気システムを構築してる場所なんです。

―それは言っておきましょう。サウンドシステムの素晴らしさをはじめ、『ビバラ』は屋内メインのフェスのストロングポイントを押し出してきたと思うから。

鹿野:ありがとう、音楽に夢中になれる空間としてクオリティの高い屋内フェスを目指してやってきてます。

―音響もお客さんの導線も1年ごとにブラッシュアップしてきたと思うんですけど。ただ、まさか屋内フェスであることがこの状況でかえってウィークポイントになるとは、という苦悩も抱えてると思うんですよ。

鹿野:あー。屋内フェス…………屋外フェスということで話しておくとーーこの数日で僕は『METROCK』さんとも『JAPAN JAM』さんとも偶然レベルで接触しましたよ(どちらも春フェスとして同タイミングにあるもの)。話の内容的には割と濃厚接触でしたけど。

―おお(笑)。それはどんな趣旨で?

鹿野:同時期に開催される『METROCK』さんも『JAPAN JAM』さんも両方とも野外フェスで、我々は屋内フェスであると。この状況の中、『ビバラ』の分が悪いのは明白で。それは実質的な環境面としても、風評としてもね。ただ、『ビバラ』が一番分が悪いのは前提として、どこが開催したけどどこが中止になって、どこか延期になったか、という印象が生まれるのは個々のフェスにとってとてもデリケートな問題だと思うんです。足並みを揃える必要もないけどね。だからそういう意味でもお互いが最終的にどういう判断を下すのか情報共有しましょうというお願いや確認をしました。

―承知しました。それこそ今日3月20日に『ビバラ』が屋内フェスである強みを活かした『All Night Viva!』(ライブ終演後のたまアリ内で行われるオールナイトイベント。アリーナ内で朝まで休むことも可能)の開催中止を発表しましたよね。この時点で相当な煩悶があったと思います。

鹿野:はい、悔しかったなあ。『All Night Viva!』の開催中止を決断した理由はふたつあるんですけど、まずは一度お客さんに会場を出てもらって全体的な大きな換気をしようと。清掃、消毒作業も含めて今までと違うレベルでやらなくてはいけないからね。

CAVE STAGE。『All Night Viva!』同様、ライブハウスそのままの熱気を味わえる空間が同フェスの特色となっている。 撮影:小宮山峻 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved

―もちろん、それは『ビバラ』自体を開催するための前向きな決断でもあったわけですよね。

鹿野:もちろん、もちろん。あとは、『All Night Viva!』を開催すると、自分を含めて開催中に睡眠をとれないスタッフがたくさん出てくるのね。それでも、今までフェスの期間中はナチュラルハイの状態でい続けられたからよかったけど、今年はさすがにそれじゃマズい。僕は社会的に偉くもなんともないけど、まず主催者として僕の体力が弱って感染するのが一番マズいでしょ。

―一発アウトですよね。

鹿野:そう、完全レッドだし、僕だけではなく『ビバラ』のスタッフが感染したら、出演してくれるアーティストやアーティストのスタッフのみならず、その先にいる事務所やレーベルのアーティストやスタッフにも検査や待機の必要が出てくる。そうなったらもう、我々は生きていけませんよ。だって主要スタッフが感染すれば、それだけで『ビバラ』がクラスターになったと言われ、「だからやっぱライブはさ」って言われるんだから。

そんなことになったら、一番かわいそうなのは『ビバラ』というこのフェスだよね。フェスだって感情もあるし生きてるって本気で思いながらプロデュースしていますから。そういう意味でも、開催することによっていろんな十字架をビバラが長い間背負うことになるよね。そう考えたときに『All Night Viva!』を中止して、スタッフみんなが毎日毎日ちゃんと帰って休んで寝て、体力を回復してから次の日に臨もうと決めました。

―感染防止において免疫力の維持も本当に重要なポイントですからね。

鹿野:そうなんです。あと今回、『All Night Viva!』と併せて『ティーネイジサイタマ2020』の開催中止も発表しました。埼玉県内在住の10代に向けたオーディション企画だったんだけど、こちらはさらに現実的な問題にぶつかったんです。埼玉の公立高校は1週間くらい前に3月中の部活動を一切禁止にしたと、埼玉の軽音連盟(埼玉県高校軽音連盟)からご連絡を頂いて。要は3月25日と26日に予定していたオーディションに生徒たちを連れて行けませんと。そこで延期する方向性をお互いが探るのもいいけど、4月になったら行政が部活動禁止を解除するかもわからない。それであれば埼玉の軽音連盟にご迷惑をかけるわけにもいかなので、今回は中止を決めました。

説明しておくと、大きな体系として行政と事業体と民間の3つがあるじゃないですか。自粛要請も含めていろんなジャッジを下すのが行政で、軽音連盟は事業体で、我々フェス側は民間。我々民間はこうやってエンターテイメントでビジネスをしている。そして、事業体に対してどれだけ負荷をかけずにエンターテイメントを維持していけるのか。このご時世の中で考えなくちゃいけないそういうポイントとも今、『ビバラ』は向き合っていると思ってます。

『ビバラ』内で行われる、埼玉県在住の10代限定オーディション『ティーネイジサイタマ』。「高校軽音楽部門」を創設するなど、新たな試みも予定していた。

たとえどんな決断をし、その結果うちの会社がどんな危機と負債を背負おうとも、必ず2年かけてV字回復するビジョンをイメージしている。音楽業界の中でリタイアする人が少なくなるようにするためにも、『ビバラ』を開催するか・しないかは重要な事項だと思ってる。

―あとはもちろん、『ビバラ』が中止になれば鹿野さんが代表取締役を務める株式会社FACTも莫大な損失を被るわけで。

鹿野:余計なお世話、ありがとうございます!

―いやいや、僕も小さな会社の代表でもあるので本気で心配していて。

鹿野:その本気が嬉しいと共に、一番嫌なんだよ(笑)。そうだね……きっと中小企業のいろんな代表が「決算時期になんでこんな事態になってるんだ」って感じてると思うけど。ウチも御多分に洩れず『ビバラ』がこういう状態になっているから、会社としては来年の予算がなかなか組めなくて。正直、会社の決算とか予算繰りがすごくハードです。というか、ヤバい。それを自分のこととして不安に思ってる会社の人間もいるのかなあと思って、先日みんなにメール打ったわ。

―誰に?

鹿野:会社の全員に。「なかなかしんどいわ」と、素直に。ただ、「しんどい」というのは今、コロナ関連で業務が2倍、3倍に増えちゃってるからしんどいだけで、会社は潰れないし、潰しませんからと。「『ビバラ』が無念の判断を下しても、みんなの給料は払うから大丈夫よ」って稚拙なメールを送りました(笑)。どう考えてもこの規模の会社であんなフェスの負債を背負って、いや、背負えないでしょうってみんな思ってると思ったから。まあ、みんなからはノーリアクションですけど(笑)。要はそういう感じです。

……経営もフェスもね、本質的に「リスクフェチ」じゃないと上手くできないんじゃないかなって思うんですよね。だからね、どうなったとしても、フェスも会社も2年かけてV字回復するビジョンをイメージしてるし、それは決めたことだからやるんですよ。今後リタイアせざるを得ない会社や経営者も出てくるだろうし、願わくば音楽業界の中でひとりでもそうなる人が少なくなるようにするためにも、『ビバラ』を開催するか・しないかは重要な事項だと思ってます。だって何千人もの人が関わって成り立っているフェスだからね。その中にはこの仕事の究極のプロフェッショナルでありながら、今、そのスキルを使えなくて困ったり窮地に立たされたりしている人がいっぱいいるんだ。面白いプロばかりでね……いろんなことを含めて本当に難しいんだよね。

―ただ、今こうして話していて鹿野さんからそこまで悲壮感を感じないのが不思議ですけどね。

鹿野:だって、俺がここで悲壮感出したら負けでしょ。

―今、初めてカッコいいと思った。

鹿野:うるせえ(笑)。でもさ、悲壮感があるかないかで言えば悲壮感はすごくあるよ。数えるとね、大型フェスの立ち上げに参加させていただいてから今年でちょうど20年目なんですよ。

―初回の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』から数えて。

鹿野:『ROCK IN JAPAN』と『COUNTDOWN JAPAN』、『ROCKS TOKYO』と『ビバラ』を合わせて、自分が携わった大型フェスの開催が今回でちょうど15回目になるんです。20年間、15回目のフェスで、こんな仕打ちはもちろん一度もなかったしね。まあ、ないよね、未曾有って書きにくいし読みにくい漢字を引用したくなるようなことだよね、これは本当に。その15回の中で、台風には2回も見舞われたし、割と様々な経験値はあるほうだと思うけど、これはないわ。

―想定外の天変地異というかね。

鹿野:本当に。正直、コロナの状況の臨界点がゴールデンウィークか、それ以降までズレ込んできてる実感があって。もちろん現時点では『ビバラ』を開催するつもりだけど──まず東京オリンピック・パラリンピックがどういう決断を下すかが大きなポイントになってくると思う(この後、開催延期が発表された。この時点ではまだ延期も延期日程も決まっていなかった)。「自分勝手だな」と思われるのを承知であえて言いますけど、昨日、3月19日の専門家会議の会見の時点では民間の判断に全部委ねられましたよね。「みなさんが苦しいのはわかってます。感染拡大のリスクも含めてイベントを開催するって言うのであればやればいい。やるのであれば、これは絶対的な事項NGですよ」っていうふうに僕はあの会見を捉えました。若干、梯子を外された感じ。そもそも人のハシゴに頼ってもしょうがないし、それはいいんですけどね。

でも、我々のライブ業界はそのNG事項を踏まえて完璧な形で実行するのは本質的にとても難しいし、ロックフェスはその極み。参加者の方々の自律に委ねる部分が多い『ビバラ』は特に難しいけど、僕らなりに準備をして、来てくれる人たちに問いかけて開催する可能性が今の時点ではあります。もう一度言うけど、昨日の会見で僕は「あ、委ねられたな(笑)」と思った。だから梯子を外される会見ではあったんだけど、逆に極論を言えば管理されることはない。……でも五輪は無理だよね、日本の問題ではなく世界の問題として。

―そうでしょうね。

鹿野:我々のフェスは、ざっくり言えば7億円ぐらい使って開催している、規模としては大事業ですよ。そうなると、今日申し上げている通り開催の有無に向けていろんな話し合いがあるんだけど。でも、ありがたいことに関係者やアーティストの方たちからは「やるのか、やらないのか」というヒアリングよりも、むしろエールを日々いただけていて。本当にありがたいことだと思ってます。

―それはこのフェスや鹿野さんに可愛げがあるからじゃないですか。『ビバラ』はそういうストーリーを描いてもきたと思うし。

鹿野:もっと完璧なフェスでありたいけど、愛嬌と好奇心が、時に完璧を求めることの最大の邪魔になるよね(笑)。

アリーナ外に開かれた入場無料エリアVIVA LA GARDEN。『ビバラ』唯一の屋外エリアとなり、例年、フェス開催に先駆けてオープンする 撮影:小杉歩 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved

鹿野:たとえばウチのフェスは非常にNG事項が少ないこともそう。腹を括って、責任を持って開催しているので。

―モッシュやダイブの容認とかもそうだし。

鹿野:容認というか禁止していないだけだけどね。推奨しているわけじゃないし、何しろロックフェスなんだから、個々に降りかかってくる面倒な不自由は掲げたくないんです。……でも、それも今回に限ってはイチから考えなくちゃいけない。密室空間での濃厚接触という意味で、なんらかの、むしろたくさんのルールを持ち込まないといけないよね。その上でやるべきか否か…………難しいです。

アーティスト主催フェスが増えたということは、ある意味でワンマンライブ時代に戻っているとも言えると思っていて。フェスの淘汰が実証され始めているとも感じる。

―前回のインタビューで鹿野さんは「2020年はいろんなフェスが淘汰される1年になる」と言っていて。あの発言がこんな感じで予言めいたものになるとは思わなかったですね(苦笑)。

鹿野:それ、意味が根本的に違うから(笑)。今日の取材で初めてコロナと関係のない話をするけど、今年のフェスの準備やブッキング、プロデュース作業をしながら去年のインタビューを反芻していたのね。それで思ったのは「やっぱりフェスは淘汰されるんだな」ということで。

わかりやすく言うと、今どんどんアーティストフェスが増えてます。たとえばくるりの『京都音楽博覧会』、10-FEETの『京都大作戦』が始動したときくらいまでは、アーティストがフェスを開くのはすごくリスクがあったんですよ。どういうリスクかと言うと、曲の良し悪しによってアーティストの評価が上がったり下がったりすることは彼らにとって必然だよね。音楽創造を生業にしてるわけだから。でもさ、フェスは音楽そのものじゃなくあくまでも興行であって、それってつまりは音楽を乗っける器でしょ。ラーメンのどんぶりではあっても、ラーメンじゃないからさ。

―高菜でもないしね(笑)。

鹿野:高菜については未だに怒りがこみ上げてくるから、話を続けるわ。わからない方には「鹿野 高菜」で検索してもらうとして。

―押忍(笑)。

鹿野:で、もしアーティストが主催フェスを失敗すると、「運営がクソだ」とか、ネットでよく使われるような言葉が直接アーティストに投げられるじゃない。それによってアーティストの価値が下がるのは本意じゃないよね、きっと。本来フェスって、アーティストにとってはそういうリスクを孕んだ危険なものだったんですよ。もちろん今もそうなはず。なのにこの5年間でアーティストフェスがこれだけ乱立して増えているのには、それだけの理由があると思うんです。

まず、フェスそのものの敷居がすごく下がったこと。そして、2000年以降でフェスがビッグマーケットになったこと。さらに言えば、フェスという現場を通じてアーティスト同士の交流が深まったり増えたりした。そうなれば、アーティストは「最終的に僕たち自身がいないとフェスが成り立たないんだったら、自分たちでフェスをやります」となるよね。それはいたって正しい意見だし、正しい発想だと思う。

―昨年のインタビューでも言ったけど、アーティストが主役だからね。

鹿野:間違いない。で、アーティストの交流のあり方も一昔前とは変わってきていて、フェスのバックヤードでLINEを交換するところから、アーティストフェスのブッキングが始まるんだよね。それは僕のブッキングよりもダイレクトだし生々しい。

―それが一番早いしね。そのコミュニケーションの発展がフェスに着地するという。

鹿野:そう。あたりまえだけど、アーティストがアーティストにオファーされたらやっぱり断りにくいじゃん。前向きな言い方をすると、一緒に音楽は作らないけど一緒に現場を作るのは楽しいし、2マンや3マンの発展の場という、バンドマンにとっては自分たちらしい表現の場所になる。しかも、仲間のフェスに出演した後に自分たち自身でアーティストフェスを企画したとき、今度は出演オファーをしやすくなる。その結果を含め、必然的にこれだけアーティストフェスが増えてきた。しかも上記の理由で、そのフェスでは熱い想いが重なり合う。彼らにとって、それはフェスであると同時に、自分らのライヴの拡大版なんだよね、当たり前だけど。

―たしかに。

鹿野:もっと言うと、ワンマンライブの延長なんです。ということは、構造としてはワンマンからフェスへという流れをたどったシーンの時代感が、元に戻ってるとも言えるわけじゃない? フェスというものは最終的に、アーティストのワンマンとかライブハウスに行かせるシステムなんだから。

―それでいいと思うし、それがある意味一番健康的なことだと思いますね。

鹿野:そうだよね。そういう意味でも、アーティストフェス自体がフェスの中心になるということ自体が、フェスの淘汰を実証し始めてると思う。……ビバラはここまで暑苦しいフェスをやってますけど、あくまでフェスはカタログでいいと思ってるんですよ。だけど、どこよりも意味のある、そのカタログの中の音楽を求めたくなる暑苦しいカタログを作りたい。このカタログをきっかけにアーティストのワンマンに行って音楽にどっぷりハマってくれよという願いを持ってるんだよね。

だからね、ここが大事だと思ってるんだけど、『ビバラ』はとことんオールドスクールというか、オールドスタンダードないいフェスをやり続けたいし、今こそもう一度「フェスとはなんなのか?」という原点回帰をフェス自身がすべきだと思います。そういうフェスが残り続けるべきだと思うしね。ビバラは今年もそれを開催するために動いてます。

―アーティストフェスの話になった流れで訊きたいんですけど、3月1日にBAD HOPとNUMBER GIRLがライブの中止を受けて生配信を実施したじゃないですか。両方とも音響的にも映像的にもクオリティが高くて、アーティストがステージから発した熱量も含めて多くの人が高揚したと思うんですけど。

鹿野:そうだね、擬似ライブでもなんでもない、ただの最高のライブだったよね。

―BAD HOPに関しては、ライブ自体は無料配信したけど、中止で被った1億円の負債を受けてクラウンドファンディングを実施して、ライブ配信自体をそのプロモーションに活かした面もあったと思います(6833人によって78,834,022円が集まった)。今回のコロナを契機に、今後ライブ配信でマネタイズを図るアーティストは増えていくと思います。つい先日ceroが実施した有料のライブ配信のクオリティも本当に素晴らしかった。で、単独公演とフェスではライブ配信の受け止められ方や訴求力の差異があるのは前提として、鹿野さんは現時点でフェスのライブ配信をしてマネタイズをすることにどのような考えを持ってますか。

鹿野:そのことに関してはひとつ前の段階からの話をしたい。まずーーこれはCINRA.NETにケンカを売る話じゃないけど、僕は出版社の経営者として、WEBメディアを脅威とは思ってないんです。それはWEBメディアにWEBメディアとしての役割がある代わりに、『MUSICA』のような紙雑誌メディアがWEBメディアに侵されてることって実はそんなにないんですよ。

―本当にそうなんですかね?

鹿野:結果が物語っているしね。それはつまり、読者がWEBメディアで感じられることと、雑誌メディアで感じられることのベクトルが違うからで。

―そもそも棲み分けとして違うと。

鹿野:やっぱりWEBメディアでは「情報」がすごく重要だし重宝されていて、だからこそ、この15年くらいで紙の音楽情報系メディアはどんどん淘汰されていった。で、音楽メディアで生き残ってるものの多くは情報メディアではなくて、ジャーナリズムメディアなんですよ。

鹿野が発行人を務める『MUSICA』。2020年4月号 / ©FACT,inc

ライブ配信のマネタイズは当然アーティストにベットされるもので、フェスにベットしなくてもいいものだとも思う。逆にフェスは、みなさんにもっともたらすものを用意したいと思う。

―なるほどね。じゃあ音楽メディアにおけるジャーナリズムとはなんだって話にも飛び火できるけど、あまりにも長くなりそうなので今日はやめておきます。

鹿野:そうか(笑)。要は音楽リスナーたちにおけるセカンドオピニオンやサードオピニオンをとるメディアとして、我々音楽雑誌にはまだアイデンティティがある。それとさっき話した「メディアとしてのベクトル」で言うと、ビジュアル面も大きいよね。たとえば『MUSICA』では未だにフィルム撮影をカメラマンに対してOKにしていて。経費としてはデジタルより何倍にも膨らむんだけど、それは我々紙メディアが持つべきクリエイティビティ意識として、「撮影はデジタルだけにしてください」と言ったら終わりだと編集長や編集部が思ってるから、そうしてるんです。

―賛成です。

鹿野:大義名分とかヒロイズムで言ってるんじゃなくて、『MUSICA』は写真やビジュアルがいいから買うと言ってくれる人が実際にいっぱいいる。現時点で音楽批評とビジュアル面を両立している紙メディアのマーケットはまだまだ存在していて。だから音楽メディアって専門雑誌界の中でダントツにマーケット力が高いんだよね。ウチはその中でもトップメディアのエリアにいるから、そういう意味でWEBメディアが怖くなかったんです。否定しているんじゃなく、別だということ。

―はい。

鹿野:で、その上で本題。「ネットとスマホの時代だ」と言われてずいぶん時間が経過した中で、この2020年2月26日以降の世の中は今まで以上に圧倒的にネットに依存してるよね。音楽エンターテイメントにおいてもそう。生配信もしくは過去のライブのアーカイブを無料配信するのもこの流れの中にある。エンターテイメントがここまでインターネットに一極集中する状況は、かつてなかったと思うんです。

―そうかもしれないですね。

鹿野:だから、現実として今後一気にネットに色々なものが流れていくかもしれない。そうなった場合には『MUSICA』もどうしていくかを考えなくちゃいけない。もちろん、やめるとか終わるという話では全くなくて、むしろその逆。『MUSICA』の存続と進化のために、今この状況は大きな転換期かもしれないと思ってます。ひとりの音楽ジャーナリスト、音楽雑誌を刊行する出版社の代表としてそう考えていると表明したうえで、ライブ配信について語らせてもらうとーーたとえば先日無観客ライブを配信した打首獄門同好会も「我々はできるからやる。でも、他のアーティストに無料配信を強要しないでほしい、だって大変だしお金もかかるし」と言っていて。

―はい。

鹿野:でも、ここからライブ配信でマネタイズするアーティストが増えていくとしたら、これから2年間くらいの日本のフェスは本当に正念場だよね。本来のフェスが持つ役割を、そういったライブ配信が持ち得るかもしれないんだから。これだけ夏が暑くなり過ぎてしまった日本で、野外フェスの主催者の一部は「果たしてフェスのピークを夏にしていいのか?」と戦って試行錯誤してる。さらに今年は、どの季節に開催されるフェスもコロナの脅威と向き合わなければならない。さらに言えば、震災以降、去年の台風や今年のコロナを含めて、やはりおかしいじゃないですか、地球レベルで色々と。自然を楽しむハードルはこれからも上がってくるし、そのリスクを今まで以上に背負ってイベントをやるわけです。そうなってくると、この15年間でフェスによってもたらされていたライブエンターテイメントが今までと同じ状況では成立しなくなるリスクを多く抱えていて。今回のコロナの件はその決定打だと思います。

―まさに。先の見通しが不透明すぎるし。

鹿野:ライブエンターテイメントは今まで「現場感」を売りにしていたし、これからもそうだけど、現場感だけに依存しない体感エンターテイメントをビジネスにしていく発想が本格的に生まれたのは今回のコロナからだと思うし、マネタイズが急速に進むのも必然だよね。興行中止保険の免責事項にウイルスが含まれないことが明確化されたことと同じように、2011年3月11日の震災のときには地震ではシンプルな火災保険が下りないことがわかって、地震保険の加入量が一気に増加したじゃない。

そうなると、早ければ今年の夏フェスから興行ウイルス保険が登場すると思っていて(苦笑)。みんなこうして危機的な状況の中だからこそのマネタイズが進むわけです。音楽業界も配信のマネタイズが進むと思う。でも、それは当然アーティストにベットされるものだと思うのね。

―そう思う。だから主催者にラインナップも含めて明確なオピニオンのないフェスで配信のマネタイズは難しいと思うし、そこを聞きたかったんです。

鹿野:そう、フェスにはベットしないよね。するかもしれないけど、基本的にそこにフェス側が期待するのはどうなのかな?って思いながら自分はフェスをやってます。僕らがやってるフェスは人にベットしてもらうものじゃなくていいと思うし、逆に言うと、こちら側がみなさんにもたらすものをもっと明確に用意したいと思う。……さっきフェスは器だと話したけど、器がないと世の中に出せないわけだし、つまりは器であるフェスは可能性そのものなんだよね。だから、マネタイズの意味でも再構築すべき時がきているのかもしれないですね。

―でも、アーティストフェスにはベットする人は少なくないかもしれない。

鹿野:それはそれでいいじゃない。CDよりライブの時代なんだから。で、「アーティストフェスにあれだけベットしているのにウチのフェスにはベットされない」って嘆いてるオーガナイザーいたとしたら、それが一番愚かだよ。そんなフェスはないと思うけどね。我々には我々のやるべきことがある、それはビバラも『MUSICA』も同じだよね。

―今話しながら思い出したのは、去年『ビバラ』の2日目にSuchmosのライブを観てるときにKing Gnuの井口(理)くんが盛り上がってる姿がビジョンに映し出されていたことで(笑)。ああいうのはすごく『ビバラ』っぽくていいなと思ったんですよね。人によってはその一瞬をドラマティックにも感じただろうし。

鹿野:ありがとうございます。きっとスタッフ全員が、ここでは無邪気なままでいいんだって思える場所なんだろうね、良くも悪くも。……そういうご意見をいただいて思うけど、『ビバラ』はアーティストと一緒にストーリーを描くことをがんばった結果、いい意味でユルくもなってるよね(笑)。

―そこがすごく『ビバラ』っぽいし、このフェスのチャームになってるとあらためて思った。

鹿野:スタッフが「責任をちゃんと持った上で、このフェスは勝手にやっていいんだ」と思ってるユルさがある(笑)。去年からオープニングで綱引きを始めたんだけど、それもスタッフの多くがみんな前のめりであーしようこーしよう、完全に学祭状態で(笑)。いい場所ですよね、ここは…………だから、やりたいなあ。去年も三宅が指摘してくれた「ビバラの可愛げ」の部分はこの半年間考え続けたし、それはこの先も考え続けることなんだけど。でも、今年に関しては別の話になっちゃったね。開催できたとしたら、来てくれた人が来年絶対にまた来たいと思ってもらえるか、不安を頭の中からどう払拭察せれるか、フェスというものが嫌いにならない形で4日間を終えるためにどうしたらいいか? そこに全力を注ぎます。

鹿野:でもさ、万が一『ビバラ』を開催できないとなったときに自分が考えることはひとつしかなくて。当然だけど、『ビバラ』は今年で終わらないんですよ。あえて言いますけど、今年中止になったら単純計算で2億5千万くらいの負債が生まれるシミュレーションは出てきました。これ、書くよね?

―書くなと言われても書くでしょう(笑)。

鹿野:(笑)。その負債を2億5千万円以下にするためにどうすればいいかの調整もしてるけどさ、7億円ものお金がかかって7億1円から純利益が生まれるフェスって、事前に中止しても2億5千万の負債を被る危険を秘めているんです。で肝心なのは、その金額ももちろん痛いけど、それよりも来年以降にこのフェスの価値が下がったり、魂が抜け落ちた安物のフェスになったりしないように──もっと言えば、来年以降に参加者が集まらない、面白そうだと思われない、その結果開催できなくなるフェスになるほうがよっぽど痛いんです。それと2億5千万円を比べると、2億5千万のほうがきっと安いんですよね。それがビジネスとしても生き甲斐としても本当に厄介だなあって思います(笑)。だから、2021年以降の『ビバラ』が最高のフェスであり、音楽を好きになるきっかけの場所であり続けるために、この2020年の春に何をすべきか。そことちゃんと向き合ってカタをつけようと思ってる。

―わかりました。マジで応援してます。

鹿野:ありがとう、なんとかしたい。

撮影:古渓一道 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
イベント情報
『VIVA LA ROCK 2020』

2019年5月2日(土)~5月5日(火・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

5月2日(土)出演:
赤い公園
ANTENA
おかもとえみ
カネコアヤノ
Karin.
KEYTALK
キュウソネコカミ
Saucy Dog
SHISHAMO
SUPER BEAVER
そこに鳴る
the telephones
ニガミ17才
ネクライトーキー
Hakubi
Hump Back
ハンブレッダーズ
BIGMAMA
FOMARE
flumpool
popoq
UNISON SQUARE GARDEN
緑黄色社会
and more

5月3日(日・祝)出演:
Awesome City Club
岡崎体育
奥田民生
ORIGINAL LOVE
Creepy Nuts
ZOMBIE-CHANG
TENDRE
Tempalay
東京スカパラダイスオーケストラ
ドミコ
never young beach
Vaundy
パソコン音楽クラブ
BBHF
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
【Ba:亀田誠治 / Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ) / Gt:津野米咲(赤い公園) / Dr:ピエール中野(凛として時雨)】
藤井風
FLOWER FLOWER
フレデリック
フレンズ
Ryu Matsuyama
Rude-α
ravenknee
レキシ
and more

5月4日(月・祝)出演:
秋山黄色
打首獄門同好会
Age Factory
大森靖子
ORANGE RANGE
9mm Parabellum Bullet
クリープハイプ
GEZAN
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
セックスマシーン!!
chelmico
DJダイノジ
teto
XIIX
東京初期衝動
バックドロップシンデレラ
BLUE ENCOUNT
マカロニえんぴつ
マキシマム ザ ホルモン
宮本浩次
Mega Shinnosuke
ヤバイTシャツ屋さん
ユレニワ
and more

5月5日(火・祝)出演:
あっこゴリラ
WOMCADOLE
オメでたい頭でなにより
KUZIRA
kobore
さなり
Survive Said The Prophet
SiM
女王蜂
DJやついいちろう
Dizzy Sunfist
TETORA
10-FEET
とけた電球
Dragon Ash
ハルカミライ
the band apart
FAITH
HEY-SMITH
MONOEYES
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS
ROTTENGRAFFTY
and more

プロフィール
鹿野淳 (しかの あつし)

音楽ジャーナリスト。1989年に扶桑社に入社、翌1990年に株式会社ロッキング・オン(現:株式会社ロッキング・オン・ホールディングス)へ。98年より音楽専門誌『BUZZ』、邦楽月刊誌『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長を歴任。『ROCK IN JAPAN FES』は構想から関わり、企画 / オーガナイズ / ブッキングに尽力。2003年には『COUNTDOWN JAPAN 03 / 04』を立ち上げ、国内初のカウントダウン・ロック・フェスティバルを成功させた。2004に年ロッキング・オンを退社後、有限会社FACTを設立(現在は株式会社)。2006年に月刊『STARsoccer』を(現在は休刊中)、2007年3月には『MUSICA』を創刊させた。2014年に埼玉県最大のロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げ、2020年に7回目の開催を予定している。



フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • 鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

Special Feature

Habitable World──これからの「文化的な生活」

気候変動や環境破壊の進行によって、人間の暮らしや生態系が脅威に晒されているなか、これからの「文化的な生活」のあり方とはどういうものなのだろうか?
すでに行動している人々に学びながら、これからの暮らしを考える。

記事一覧へ

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて