国内6つ目の国立美術館「国立映画アーカイブ」、4月誕生

東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターが、4月に「国立映画アーカイブ」として独立。東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館と並ぶ、独立行政法人国立美術館の6番目の組織として生まれ変わる。本日2月6日に設置記者会見が行なわれた。

東京国立近代美術館フィルムセンターは、1952年の国立近代美術館設置時にフィルム・ライブラリーとして発足。1970年に京橋でフィルムセンターとして開館した。現在は相模原にも分館を持ち、8万本に近い映画フィルムやそれぞれ4万冊を超える映画関連資料、シナリオなどを収蔵している。

「国立映画アーカイブ」設置記者会見の様子 左から:東京国立近代美術館フィルムセンター主幹・とちぎあきら、先付け映像を制作した山村浩二、ロゴをデザインした鈴木一誌、東京国立近代美術館館長・神代浩、独立行政法人国立美術館理事長・柳原正樹
「国立映画アーカイブ」設置記者会見の様子 左から:東京国立近代美術館フィルムセンター主幹・とちぎあきら、先付け映像を制作した山村浩二、ロゴをデザインした鈴木一誌、東京国立近代美術館館長・神代浩、独立行政法人国立美術館理事長・柳原正樹

日本唯一の国立の映画専門機関が誕生 アドバイザーに山田洋次、河瀬直美ら

日本唯一の国立の映画専門機関となる国立映画アーカイブ。日本における映画文化振興のためのナショナルセンターとしての役割を強化すべく、俳優や監督、制作者らをアドバイザーとして迎えるほか、産学官の関係者やアドバイザーから構成される戦略会議などを行ない、運営方針に反映。また民間資金も活用していくという。

国立映画アーカイブ外観(現在の東京国立近代美術館フィルムセンター)
国立映画アーカイブ外観(現在の東京国立近代美術館フィルムセンター)

館長には現・東京国立近代美術館フィルムセンター特定研究員で、2009年から国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)第12代会長を務めた岡島尚志が就任予定。

アドバイザーには日本映画製作者連盟会長の岡田裕介、俳優・映画監督の奥田瑛二、映画監督の河瀬直美、日本映画製作者協会代表理事の新藤次郎、株式会社イマジカ・ロボット・ホールディングス代表取締役会長の長瀬文男、東京藝術大学名誉教授で映画館ユーロスペースの代表・堀越謙三、女優の松坂慶子、映画監督の山田洋次の8人が名を連ねる。

山田洋次は国立映画アーカイブの開館について「ぼくたちの国でようやく、日本映画が世界に誇るべき芸術であることが認められたのだと嬉しく思います。100年前のチャップリン映画が世界中で今も上映され、愛されているように、黒澤明、小津安二郎、溝口健二といった先輩たちや、ぼくらが創った映画のフィルムが、国立映画アーカイブで保存され、100年後も200年後も、今と同じように、スクリーンで『映画』として多くの人に見て貰えることを、そして映画芸術についての研究が活発に行われていくことを、心から願ってやみません」とコメント。

河瀬直美は「『映像』という文化遺産を国の保護のもと、国内外問わず活用されていくことはこれからの人類の発展の為にもとても有意義なことだと感じています」とのコメントを寄せた。

ミッションは「映画を残す、映画を活かす。」 3つの拠点機能

国立映画アーカイブが掲げるミッションは「映画を残す、映画を活かす。」。

東京国立近代美術館フィルムセンター主幹のとちぎあきらは「国立映画アーカイブになってからも多くの映画や資料を収集し、保存していくという方向性に変わりはない」としながら「これまで日本映画の多くの作品がなくなっている。映画は今ここにあるということが当たり前のことではない。また残っていたとしても多くの人に活用する道が開けていなければないも同然」。

「適切な保存に支えられることで映画や資料を資源として活用していく方法をもっと探していく必要がある。収集・保存・活用を一体として考え、強化・推進していく姿勢」とこのミッションに込められた思いを明かした。

東京国立近代美術館フィルムセンター主幹・とちぎあきら
東京国立近代美術館フィルムセンター主幹・とちぎあきら

国立映画アーカイブの役目としては「映画による国際交流拠点」「映画の文化・芸術振興拠点」「映画を保存・公開する拠点」の3つの拠点機能を持ち、具体的な事業としては特集上映や展示企画、施設の活用、若年層の観客育成、地域連携、多様な観客への鑑賞機会の提供、若手クリエイターの支援などを挙げる。

ロゴデザインは鈴木一誌、山村浩二による新たな先付け映像もお披露目

ロゴのデザインを手掛けたのはグラフィックデザイナーの鈴木一誌。

鈴木一誌によるロゴ

鈴木一誌によるロゴ
鈴木一誌によるロゴ

さらにこれまで静止画だった先付け映像が新たに10秒間のアニメーションとなる。この先付け映像は『頭山』『カフカ 田舎医者』などで知られるアニメーション作家・山村浩二が制作した。

山村浩二による先付け映像

山村浩二による先付け映像
山村浩二による先付け映像

またこれまで「大ホール」として使用されてきたスペースは4月1日から「長瀬記念ホール OZU」に改称。これは同館に民間から寄付を行なう長瀬映像文化財団の名を冠したと共に、海外では一般的だという敬愛する監督の名を付ける慣習にならって小津安二郎監督の名からとられている。

国立映画アーカイブの独立の背景について東京国立近代美術館・館長の神代浩は「映画文化がこれほど国内外で認められているにもかかわらず、それを収集・保存・活用する国立の機関が独立した形で存在していなかった。これは諸外国を見ても体制としては弱いのではないかという思いがあった」と説明。

東京国立近代美術館・館長の神代浩
東京国立近代美術館・館長の神代浩

また2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「映画だけでなく日本文化に対する興味関心が高まってくると思う。日本の映画文化をさらに発信していくニーズが高まると思うので、万全な態勢でこたえていきたい」と意気込みを語った。

4月からは開館記念の特集上映 黒澤明のポスター展も

同館では4月10日から開館記念として黒澤明監督『生きものの記録』や小津安二郎監督『彼岸花』をはじめとする作品を撮影風景映像などと共に上映する特集上映『国立映画アーカイブ開館記念 映画を残す、映画を活かす。』を開催。さらに無声映画の特集上映や黒澤作品のポスター展、『ロシア・ソビエト映画祭』といった海外作品の上映などを予定している。

※記事掲載時、一部表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。


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