マスドレ、w.o.d.ら、現代に多様なバンドサウンドのあり方を提示

身体的かつエモーショナルなサウンドで、観客を揺さぶったBearwear

10月25日、CINRAと音楽アプリ「Eggs」が共同主催する無料音楽イベント『exPoP!!!!!』が渋谷のライブハウスTSUTAYA O-nestにて開催された。

トップを飾ったのは、Bearwear。Kazma(Vo)とkou(Ba)の2人を中心として結成されたバンドが、3人のサポートメンバーを加えて登場。

Bearwear

演奏がはじまると、タイトな8ビートを刻む1曲目の“e.g.”から、キレと重みのあるバンドサウンドを響かせる。前日の10月24日にリリースされたばかりの音源『DREAMING IN.』は、そのタイトルが示すように、夢見心地な雰囲気が漂う甘美なアレンジが耳を引いたが、ライブではバンドの身体的な強さを見せつけるソリッドな演奏に、体を揺さぶられる。演者の心象風景を音像化したような、エモーショナルなメロディーやノイズが響くパフォーマンスだった。

Kazma(Bearwear)

自由で実験的な2人組・奮酉が鳴らした、知性と好奇心のポップス

2番手に登場したのは、高田蒔(Vo,Gt,Syn)と河西愛紗(Vo,Dr,Syn)から成るツインボーカルバンド、奮酉(ふるとり)。

奮酉
高田蒔(奮酉)
河西愛紗(奮酉)

ステージに立つ2人がともにメインボーカルであると同時にラップも披露。しかも、それぞれがギターとドラムに加え、シンセやパッド、ルーパーも駆使して音を重層的に重ねていく。その、とにかく自由で実験的、しかし徹底してポップなパフォーマンスに、一気にフロアも飲み込まれていく。

「既成概念からはみ出さないと、バンドやっている意味ないじゃん!」と言わんばかりのステージ上の2人の姿に、知性と好奇心で現実の閉塞感を突破する新世代ロックバンドの頼もしさを感じた。

ヒップホップやR&Bを背景に、熱さと激しさで観客と向き合うthe engy

3番手に登場したのは京都出身の4人組、the engy。

the engy

ヒップホップやR&Bのエッセンスをバンドサウンドに落とし込む、というスタイルは近年この日本でも珍しいものではなくなった。しかしthe engyの場合は、そこに明確に「トラップ以降」を思わせるモダンなビート感覚があったり、山路(Vo)の熱くアグレッシブなステージングを中心に、心地よくノらせることよりも、聴き手一人ひとりとより熱く、より激しく、感情を発露させながらコミュニケーションを取ろうとする姿勢を感じさせたりと、音にも姿勢にも、確実な「新しさ」を感じさせる。

山路(the engy)

ステージ上のほとばしる汗、しなやかなビートと突き刺すような激しさを、とても美しく感じるパフォーマンスだった。

突き刺すようなストレートさでロックを鳴らす3ピース、w.o.d.

4番手に登場したのは、神戸出身の3ピースバンド、w.o.d.。

w.o.d.

まるで自分の体をいじめ抜くことに快感を覚えたボディビルダーの筋トレの如く、一心不乱に重低音を鳴らし続けるKen Mackey(Ba)と中島元良(Dr)のリズム隊。そのヘビーなリズムの上を、乾いた笑みを浮かべながら闊歩するように、歌とギターを響かせるサイトウタクヤ(Vo,Gt)。

Ken Mackey(w.o.d.)
中島元良(w.o.d.)
サイトウタクヤ(w.o.d.)

ときに「新世代グランジバンド」というふうに形容される彼らだが、グランジのオリジネーターであるNirvanaや、その影響から生まれた髭のような国内のオルタナティブロックと明確に紐づきながらも、そのサウンドの質感は、明らかにそれら先達たちとは異なっている。

痛みと皮肉の煙の奥にある、万巻の喜びを求めて一直線に突き刺すようなストレートさがw.o.d.の大きな魅力になっていて、その屈託のないノイズとファンクネスに、爽快感すら感じさせるステージングだった。

11年ぶり2度目、研ぎ澄ました1音1音の凄みで圧倒したMASS OF THE FERMENTING DREGS

そして、この日のトリを飾ったのは、今年7月に8年ぶりとなるアルバム『No New World』をリリースし、『exPoP!!!!!』には11年ぶりの出演となったMASS OF THE FERMENTING DREGS(以下、マスドレ)。

MASS OF THE FERMENTING DREGS
宮本菜津子(MASS OF THE FERMENTING DREGS)

「せーの!」という宮本菜津子(Ba,Vo)のかけ声から、一気に会場を覆い尽くす轟音。そしてはじまった1曲目“Sugar”は、音圧は強烈ながら、淡々と刻まれるビートとリリカルな旋律が印象的な楽曲。

続いて演奏された“New Order”もそうだが、荒ぶるノイズやビートを傍若無人に放っていたかつてのマスドレとは、また違った種類の「激しさ」を、『No New World』収録曲からは感じさせる。喜びも優しさも怒りも、全てが研ぎ澄まされて、その1音に込められているような凄みが、今のマスドレにはある。

しかし、もちろん“She is inside, He is outside”や“かくいうもの”など2012年の活動休止前の楽曲は、その持ち前の爆発力とフリーキーさをいかんなく発揮していて、過去も今もマスドレの根幹にあり続ける普遍的な衝動の存在を、新旧楽曲が並んだこの日のセットリストから確かに感じさせた。

本編のラストを“スローモーションリプレイ”と“ワールドイズユアーズ”で締め、アンコールの“ベアーズ”では、宮本がフロアに降り立ってオーディエンスに囲まれながらベースを搔き鳴らす場面も。

時間を経たことの重み、変わったこと、変わらないこと――様々なものを抱えながら今、ステージに立っているであろうマスドレだが、「このバンドで音を鳴らすのが楽しくて仕方がない!」という想いがヒシヒシと伝わってくるようなステージ上の宮本の笑顔が、マスドレというバンドが生まれたこと、彼らが歩んだ足跡、そしてこの日、この場に集まった全ての人たちを祝福しているようだった。

形式もルーツもアイデアも、それぞれが異なる5組のバンドが揃ったこの日の『exPoP!!!!!』だが、しかし共通していたのは、この時代において、「バンド」という表現に真っ向から向き合い、形にしているということだろう。バンドによって鳴らされる音楽の未来が照らされたような気分になる夜だった。

Bearwear
奮酉
the engy
w.o.d.
MASS OF THE FERMENTING DREGS
イベント情報
『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume114』

2018年10月25日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
the engy
w.o.d.
奮酉
MASS OF THE FERMENTING DREGS
Bearwear
料金:無料(2ドリンク別)

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume115』

2018年11月29日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
eill
んoon
youheyhey
Rude-α
Quentin
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール
Bearwear (べあーうぇあー)

USのエモ・シーンと共鳴するサウンドが話題となった2人組インディ/エモプロジェクトBearwear。Bearwear は2016年に Kazma(Lyric/Vo)、kou(Music/Arrange/Ba)の2人を中心に結成されたインディ・ロック・バンド。サポート含めフレキシブルな体制で活動をしている。2018年春にリリースしたシングル「e.g.」がネット上のインディ・ファンの間で注目を浴びると、すぐにネット・レーベル Ano(t)raks のコンピレーション1曲目に選曲されるなど話題を呼んでいる。夏には Dead Funny Records と契約を交わし、過去作のシングルをデジタル・リリース。10月には初の流通作品『DREAMING IN.』をリリースする。

奮酉 (ふるとり)

ヴォーカル/ギター/シンセの高田蒔(まってぃ)とヴォーカル/ドラム/シンセの河西愛紗(あいしゃ)の2人による2ピースツインヴォーカルバンド。2012年、高校の同級生で結成、活動休止期間を経て、2015年に活動を再開。ライヴ、レコーディング共に、"2人にしか出来ない音楽"、"2人でしか出来ない音楽"を追究し、その独創的で唯一無二の楽曲スタイル、パフォーマンスが評判となり、2016年『RO69JACK』で入賞、2017年『出れんの!?サマソニ!?』ファイナリストとなり、『SUMMER SONIC 2017』に出演。月数本のライヴをおこないつつ、tvk『次世代ロック研究所』への出演、J-WAVE『SONAR MUSIC』での楽曲OAなどメディアでも紹介され、今、もっともチェックすべきニューカマーの1組として、注目を集める。2018年、初の全国流通盤となる1st EP『はじめのセンセーション』をLOVE PSYCHEDELICO、moumoon、OKAMOTO'S、福山雅治をはじめ数々のトップアーティストを手掛けるレコーディング/ミックスエンジニアの山田ノブマサ氏(amp'box Recording studio)を迎え制作。8月15日にさきどりレコーズよりリリースした。

the engy (じ えんぎー)

2014年秋に山路(Vo,Gt)と濱田(Ba)により結成。2017年春に現体制となる。2017年5月に自主制作盤の1stEP「theengy」を発売。未流通の自主制作ながら耳の早いバイヤーがyoutubeなどで楽曲をキャッチして、コアな専門店やアパレル店などで取り扱いされ関西を中心にジワジワと存在感を増していく。2018年5月に1st アナログ 7inch「Say it」、8月には2nd 7inch「All about」をリリース。楽曲のクオリティの高さからSpotifyなどを通じてそのバンドの認知度は急速に広がりをみせ、向井太一、FIVE NEW OLD、あっこゴリラ、OGRE YOU ASSHOLEなどと共演。現在も関西を中心に精力的に活動を続ける。ロックとR&B、ソウルなどを基調にシンプルながら緻密に組み上げられたモダンなサウンドスケープ。時にアッパーに時にブルージーに響くVo山路の日本人離れした歌声。昨今のチルなブラックミュージック礼賛の流れを汲みつつ、アッパーなカウンターとしても機能するという逸材。2018年10月24日に待望のミニアルバム「Call us whatever you want」をリリースする。

w.o.d. (だぶりゅー おー でぃー)

次世代グランジスター、神戸発3ピースバンド「w.o.d.(ダブリューオーディー)」。「RO69JACK 2015」入賞、「出れんの!? カミコベ!? 2016」グランプリ獲得&クリエイティブマン賞を受賞した神戸のワルガキたちがついに本格始動!グランジサウンドを爆音で鳴らし捻くれたポップセンスも有する、男子が惚れる新型オルタナサウンド。日々を気怠く歌い、感情的なシャウトを吐き出すヴォーカル。ヘヴィーかつタイトで攻撃的リズム隊。圧倒的なライブパフォーマンスが話題のw.o.d.、ファーストアルバムにしてセルフタイトルの「webbing off duckling」絶賛発売中!

MASS OF THE FERMENTING DREGS (ます おぶ ざ ふぁーめんてぃんぐ どれっぐす)

2002年、兵庫県神戸にて結成。ベースボーカルの宮本菜津子を中心に、女性メンバーのみの3ピースロックバンドとして活動をスタート。その後、メンバーチェンジを経て現在は宮本と小倉直也(Gt&Vo)、吉野功(Dr&Cho)の3人編成で活動をしている。轟音のすごみを押し出すオルタナティブなサウンドと宮本が描く叙情的な歌が融合したときに生まれるカタルシス。その音楽性と完全燃焼を信条とするライブパフォーマンは唯一無比の求心力に満ちている。2007年にEMIミュージック・ジャパン主催のオーディションで最優秀アーティストに選ばれ、その特典としてデイヴ・フリッドマンによるプロデュースでUSレコーディングを実施。同年7月には、FUJI ROCK FESTIVAL「ROOKIE A GO GO」に初出演を果たした。2008年1月に1stアルバム「MASS OF THE FERMENTING DREGS」、2009年1月に「ワールドイズユアーズ」、2010年10月に初のフルアルバム「ゼロコンマ、色とりどりの世界」をリリース。2012年9月の活動停止を経て、2015年12月に再始動ライブを行い、2017年3月に再始動後、初となる音源をFLAKE RECORDSより「スローモーション リプレイ」を7inch Vinylでリリース。そして、2018年7月4日にニューアルバム「No New World」のリリース。



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