「頑張らずに、好きな音楽を作れる時代にしたい」スサシの望み

スサシの宣言「波じゃなく、渦を作っていく」

6月20日、SPARK!!SOUND!!SHOW!!(以下、スサシ)が自主企画イベント『NU BLACK vol.2』を開催した。会場は、ライブハウス「渋谷WWW」。バンド史上最大キャパでの自主企画であったことや(チケットは見事、ソールドアウト)、ここで2ndアルバム『NU BLACK』のリリースが発表されたことも含めて、バンドにとってエポックメイクな夜だったと思うが、観ている側としても胸がすくようなライブだった。

私の皮膚感覚として、今年2月にShibuya Milky Wayにて開催された『NU BLACK vol.1』はスサシ初体験として衝撃的な夜だったが(レポート記事:SPARK!!SOUND!!SHOW!!、カオスと噂のライブを初めて観た)、今回は、彼らが自らの音楽を「外へ外へ」と作用させようとしている、その覚悟を強く感じることができたこと、そして「スサシは、デカい会場が似合うバンドなんだ」という手応えを得ることができたのが大きかった。この日、ステージ上でタナカユーキ(Vo,Gt)が「うちらは波じゃなく、渦を作っていく」と言っていたが、彼らは私たちをスイスイ心地よく泳がせる気はなく、ひたすら巻き込んでいく気なのだ。「状況」や「気分」としてではなく、独立した個体のバンドとして。

SPARK!!SOUND!!SHOW!! (すぱーく さうんど しょう)<br>タナカユーキ(Vo,Gt)、チヨ(Ba,Cho)を中心に大阪にて結成。幾度のメンバーチェンジを経て、タクマ(Key,Gt,Cho)、イチロー(Dr,Cho,169)が加入。4人組バンド通称スサシ。『FUJI ROCK FESTIVAL
SPARK!!SOUND!!SHOW!! (すぱーく さうんど しょう)
タナカユーキ(Vo,Gt)、チヨ(Ba,Cho)を中心に大阪にて結成。幾度のメンバーチェンジを経て、タクマ(Key,Gt,Cho)、イチロー(Dr,Cho,169)が加入。4人組バンド通称スサシ。『FUJI ROCK FESTIVAL"ROOKIE A GO-GO”』や『BAYCAMP』など大型フェスにも出演。9月18日にはニューアルバム『NU BLACK』をリリースし、同作の発売を記念するライブツアー『NU BLACK RELEASE TOUR』が開催される。

ゲストバンド・ENTHと見せた、サプライズパフォーマンス

ゲストとして登場したのは名古屋の3ピースバンド、ENTH。私はこの夜がENTHのライブ初体験だったが、「新鮮な風」そのもののようなバンドだと思った。メロディックパンクを基軸としたサウンドは激しく熱狂的だが、決して軽々しくはない。転調が多用されたリズムは決して難解にはならず、むしろビートのしなやかさと多彩さが曲全体に躍動感のあるダンスフィールを与えている。女性客が率先してダイブを繰り広げていくフロアの景色も印象的だった。

スサシのタクマ(Key,Gt,Cho)がフェイバリット曲に挙げていることから披露された、普段はなかなか演奏しないという“SOMEWHERE WE HOPE”や、タナカユーキがラップでコラボするサプライズも見せた“SUKI”など、スサシとの幸福な関係性も垣間見せるパフォーマンスだった。

ただ「カオス」なわけじゃない。「間」と「沈黙」も大切にする音楽

ENTHによって熱気に満ちた空間が作り上げられたのち、この夜の主役であるスサシが登場。初っ端は“BRUSH UP”、そして“OEO”と続き、3曲目“無愛愛”では早くもタナカユーキがフロアに飛び込んでいく。

渋谷WWWは、元々は「シネマライズ」というミニシアターだった場所がライブハウスになった場所であり、その名残としてフロアにいくつもの段差がある。そうしたフラットではないフロア構造は、スサシのようなオーディエンスとバンドがもみくちゃになっていく類のライブには不向きなんじゃないかと最初は思っていたが、そんな心配は一切無用だった。前方フロアは問答無用でもみくちゃになっていたし、ライブ後半にもなると、フロアに飛び込んだタナカユーキはとんでもない速度でフロア上段にまで到達していた(彼をそこまで運んだオーディエンスもすごい)。

そしてなにより、美しかった。劇場型のライブハウスで観るスサシの4人のステージ上での佇まいは、時折、激しさの奥から「静か」な美しさを垣間見せる瞬間があって、その刹那の景色にハッとさせられることが多々あった。彼らの音楽やパフォーマンスにおける「間(ま)」の存在が大きいのだろう。スサシの音楽にはベースミュージックやヒップホップからの反響も強く(この日の場内BGMでも、SeihoやSWINDLEが流れていた)、その音楽には独特のミニマリズムがある。そのミニマリズムによって「間」や「沈黙」が生み出される瞬間に、引き込まれてしまいそうな美しさを感じさせるのだ。大きな声で叫ぶことや、ステージ上を縦横無尽に動きまわる激しいパフォーマンスだけで、彼らはなにかを伝えようとはしない。「沈黙」の中からも「叫び」を伝えることができるのが、スサシというバンドなのだと思う。

タクマ
タナカユーキ
チヨ
イチロー

「頑張らずに、アーティストが好きな音楽を作ることができる時代にしていきたい」

冒頭にも書いたように、この日はアルバム『NU BLACK』のリリースも発表されたが、そこにも収録されるのだろうか、新曲も2曲披露。まず、“黒天使”(と書いて「ブラックエンジェル」と読む。暴走族の歌らしい)は、「ブンブンブン」というユーモラスなコーラスが新しいライブでの合言葉になりそうな1曲で、もうひとつの新曲“GO SPEED”は、獰猛に、しかしストレートに、バンドの持つポップネスを爆発させたような1曲。どちらもスサシの新しいモードを示唆する楽曲たちだった。

 

また、終盤のMCでは、タナカユーキが「頑張らずに、アーティストが好きな音楽を作ることができる時代にしていきたい」と語っていた。本当に音楽が好きなバンドなのだと思うだし、音楽と共に生きていくことを望んでいる4人なのだと思う。「ただひたすらに音楽を愛していたいし、純粋に、愛する音楽を作り続けていきたいんだ」という、無垢な理想。スサシにジャンルという概念は通用しないとわかったうえで、敢えてこの言葉を使わせてもらうが、現在の「パンク」バンドの精神性として、なにかに対する「カウンター精神」や「怒り」を超えた、その軽やかな理想主義がとても美しく、尊いもののように思えた。

スサシは今年、結成10年目を迎えるという。今のスサシには実現していきたいことが明確にあるのだろう。そしてそのために、私たちを「巻き込む」用意はできているのだということを、この日のライブでは確認することができた。最後にもう1度、タナカユーキのこの言葉を引用しておく。「うちらは波じゃなく、渦を作っていく」――望むところだ、と思う。

イベント情報
『SPARK!!SOUND!!SHOW!! presents NU BLACK vol.2』

2019年6月20日(木)
会場:東京都 渋谷 WWW

出演:
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
ENTH

リリース情報
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
『NU BLACK』(CD)

2019年9月18日(水)発売

イベント情報
『NU BLACK RELEASE TOUR』

2019年10月5日(土)
会場:千葉県 LOOK

2019年10月15日(火)
会場:岡山県 PEPPERLAND

2019年10月17日(木)
会場:福岡県 Queblick

2019年10月18日(金)
会場:熊本県 Django

2019年10月20日(日)
会場:大分県 club SPOT

2019年10月21日(月)
会場:香川県 高松 TOONICE

2019年10月22日(火)
会場:愛媛県 松山 Double-u studio

2019年11月9日(土)
会場:京都府 KYOTO MUSE

2019年11月11日(月)
会場:兵庫県 神戸 太陽と虎

2019年12月12日(木)
会場:茨城県 水戸 LIGHT HOUSE

2019年12月13日(金)
会場:新潟県 CLUB RIVERST

2019年12月19日(木)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

2020年1月5日(日)
会場:大阪府 Shangri-La

2020年1月7日(火)
会場:愛知県 名古屋 UPSET

2020年1月11日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW

プロフィール
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
SPARK!!SOUND!!SHOW!! (すぱーく さうんど しょう)

タナカユーキ(Vo,Gt)、チヨ(Ba,Cho)を中心に大阪にて結成。幾度のメンバーチェンジを経て、タクマ(Key,Gt,Cho)、イチロー(Dr,Cho,169)が加入。4人組バンド通称スサシ。過去に『FUJI ROCK FESTIVAL"ROOKIE A GO-GO”』や『BAYCAMP』など大型フェスにも出演し、2018年6月にキャリア初となる1stフルアルバム『火花音楽匯演』をリリース。唯一無二のこのサウンドはサウンドドラッグ!スサシが撒き散らすサウンドドラッグに中毒者続出中!2019年2月17日に会場限定シングル『SCAR』『感電!』を2枚同時リリース。9月18日にはニューアルバム『NU BLACK』をリリースし、同作の発売を記念するライブツアー『NU BLACK RELEASE TOUR』が開催される。

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