SPARK!!SOUND!!SHOW!!、カオスと噂のライブを初めて観た

開場中のBGMから、超カオス状態

大阪出身の4ピースバンド・SPARK!!SOUND!!SHOW!!(略して「スサシ」)が、2月17日、渋谷のライブハウス「Shibuya Milkyway」にて自主企画イベント『NU BLACK』を開催した。東名阪の3か所で行われる本イベントは、それぞれゲストを招いたツーマン形式で開催されており、東京公演には、スサシと同じく大阪出身の3ピースバンド・Hump Backが登場した(2月19日に行われた大阪公演のゲストはSHANK、23日に行われる名古屋公演のゲストはTHE THROTTLE)。

SPARK!!SOUND!!SHOW!!(撮影:fukumaru)

チケットはソールドアウトとなったこの日。開演15分前に会場の扉を開くと、すでに、そこには人の熱気で蒸し蒸しとした空間が広がっていた。場内のBGMには、カルヴィン・ハリスの“Slide Feat. Frank Ocean & Migos”が流れている。それが終わると、続いて流れたのはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの“デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ”。ライブ後にTwitterで確認したところ、この場内BGMの選曲はスサシのフロントマン、タナカユーキ(Vo,Gt)によるもので、Apple Musicにアップされた当日のBGMのプレイリストを見ると、他にもズットズレテルズやJPEGMAFIA、思い出野郎Aチーム、Cornelius、SPEED、BROCKHAMPTON、Vampire Weekend、JUDY AND MARY……などなど、見事にジャンルも世代もバラバラな楽曲が並んでいる。

このざっくばらんな、一貫性を持たない雑多な音楽の羅列が、まさにスサシというバンドの音楽性を表しているといっていいだろう。ロックもハードコアもEDMもヒップホップもベースミュージックもレゲエも飲み込んだ、もはや明確に定義づけすることが不可能なサウンド。スサシが鳴らすのは、「ミクスチャー」という言葉すら特別な意味を持たなくなった、この「ポストジャンル」時代だからこそ生まれ得たキメラポップなのだ。

ゲストはHump Back。リスペクトを繰り返し語る

この日のゲストとしてスサシの前にステージに登場し、エモーショナルなパフォーマンスを披露したHump Backにしても、音楽性においてスサシと「一部」では共振してはいるが、すべてが同じというわけではない。

MCでHump Backの林萌々子(Vo,Gt)は、繰り返し、スサシの音楽に向き合う姿勢に対しての共感と尊敬を語り、「タナカユーキの実家で、みんなで一緒に『M-1グランプリ』を見た」とか、「難波の橋の下でワンカップを飲みながら音楽談義をした」というエピソードを披露していたが、彼らの間にあるのも、表面的なジャンルや音楽性の共振などではないのだろう。姿形は違えども、根っこが繋がり合えるような関係。そんな「壁」を感じさせないアーティスト同士の繋がりはとても現代的かつ理想的なものと思える。音楽性の雑食さ、対バンとの関係性も、そのすべてにおける「自由さ」が、スサシというバンドの懐の大きさを表しているようだ。

スサシの「自由」に、オーディエンスは熱狂

本題となるスサシのパフォーマンスだが、「熱狂」というものが確かな手触りを持って感じられる、凄まじいものだった。冒頭、“BRUSH UP”や“OEO”といったヘビーかつダンサブルなサウンドでフロアを揺らし(文字通り、オーディエンスがジャンプするたびに会場の床が揺れまくっていた)、中盤、“ドカーン”“感電”の流れでは、タナカ、チヨ(Ba,Cho)、タクマ(Syn,Gt)による3MCで、キレッキレのラップを決めてみせる。

撮影:fukumaru

曲ごとに「音」そのものの表情を変えていくようなイチロー(Dr,Cho)のドラミングも、好奇心をそそられた。

撮影:fukumaru

“ミッドナイトサイダー”“アワーミュージック”“good sleep”といった、グッドメロディが光る楽曲の流れでは、「盛り上げる」だけでなく「聴かせる」バンドの力を示し、最後の“MARS”“スサシのマーチ”“南無”の流れでは、フロアになだれ込んだタナカを起点にモッシュが起こり、会場は強烈な熱気と、すべてを出しきったような心地いい空っぽさに包まれた。

撮影:fukumaru

「内輪ノリ」にはならず、誰にも閉塞感を感じさせない

「叫び」も「ユーモア」も「独白」も入り混じった、バンドの様々な表情を見せながら、ライブにひとつの物語を生み出すような流れ。オーディエンスは、ときに手を叩き、ときに共に歌い、ステージ上のバンドとまるで阿吽の呼吸のようにシンクロしていく。

この自主企画ツアーでは『感電』と『SCAR』の2曲がTシャツ付きシングルとして会場限定販売されているのだが、こうしたアイテムの存在も含めて、バンドと聴き手が確かな共犯関係を結んでいることを感じさせる。

しかし、フロアの空気に閉塞感を感じさせないのは、本質的に「閉じること」や「阻害すること」を拒むであろう、スサシの生み出す大らかな雰囲気によるところが大きいのだろう。この日、6月に開催されることが発表された自主企画の第2弾に向けて、アンコールはなし、という潔さもよかった。

撮影:fukumaru

スサシには、「どこにも属さない」ゆえの強さがある

ロックであり、パンクであり、ヒップホップであり、クラブミュージックであり、そのすべてではない。そんな明快な定義を持たないスサシの音楽だが、カテゴライズする言葉なんてなくとも、その音楽がもたらす「瞬間」の熱狂には確かな実態と実感があり、その「確かさ」を、バンドとオーディエンスが信じ切っている――そんな幸福な空気を感じることができるライブだった。

何かに憧れ、何かになろうと足掻く表現にも、それ相応の切実さは宿るものだが、何にもなれず、どこにも属せない表現者には、それゆえの強さがある。何故なら、「何にもなれない」ということは、「自分にしかなれない」ということだから。「どこにも属せない」ということは、「自分にしか属せない」ということだから。

SPARK!!SOUND!!SHOW!!は、そういうバンドである。僕はこの日、初めて彼らのライブを観たのだが、この野良犬のようなバンドのことを、かなり好きになってしまった。

イベント情報
『SPARK!!SOUND!!SHOW!! presents “NU BLACK”』

2019年2月17日(日)
会場:東京都 渋谷 Milky Way
出演:
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
Hump Back

2019年2月19日(火)
会場:大阪府 心斎橋 BRONZE
出演:
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
SHANK

2019年2月23日(土)
会場:愛知県 名古屋 R.A.D
出演:
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
THE THROTTLE

リリース情報
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
『感電!』(CD+Tシャツ)

2019年2月17日(日)発売
価格:4,000円(税込)
※会場限定シングル

[CD]
1. 感電!

SPARK!!SOUND!!SHOW!!
『SCAR』(CD+Tシャツ)

2019年2月17日(日)発売
価格:4,000円(税込)
※会場限定シングル

[CD]
1.SCAR

イベント情報
『SPARK!!SOUND!!SHOW!! presents NU BLACK vol.2』

2019年6月20日(木)
会場:東京都 渋谷 WWW

出演:
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
and 1 band
料金:3,000円

プロフィール
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
SPARK!!SOUND!!SHOW!! (すぱーく さうんど しょう)

タナカユーキ(Vo,Gt)、チヨ(Ba,Cho)を中心に大阪にて結成。幾度のメンバーチェンジを経て、タクマ(Key,Gt,Cho)、イチロー(Dr,Cho,169)が加入。4人組バンド通称スサシ。過去に『FUJI ROCK FESTIVAL"ROOKIE A GO-GO”』や『BAYCAMP』など大型フェスにも出演し、2018年6月にキャリア初となる1stフルアルバム『火花音楽匯演』をリリース。唯一無二のこのサウンドはサウンドドラッグ!スサシが撒き散らすサウンドドラッグに中毒者続出中!2019年2月17日に会場限定シングル『SCAR』『感電!』を2枚同時リリース。



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