バレーボウイズら、5組が共演。ピュアな音楽が鳴り響いた夜

切なさを含んだ歌声と疾走感のあるサウンドで駆け抜けたosage

去る4月25日、CINRAと音楽アプリ「Eggs」が主催する無料音楽イベント『exPoP!!!!!』が、渋谷のライブハウスTSUTAYA O-nestにて開催された。

この日のトップを飾ったのは、4ピースバンド、osage。

osage(おさげ)
Czecho No Republic、SUPER BEAVER、sumika、マカロニえんぴつ等が所属する、murffin discsによる新人オーディション『murffin discs audition 2018』でグランプリを受賞。2019年4月10日にmurffin discs内に発足された新レーベル、murffin Lab.より4曲入りCD『ニュートラルe.p』をタワーレコード限定全国リリース。
山口ケンタ(osage)
金廣洸輝(osage)

SUPER BEAVERやsumikaなどが所属するレーベル「murffin discs」の新人オーディション『murffin discs audition 2018』でグランプリを受賞し、このライブの数日前には『ニュートラルe.p』をリリースしたばかりの彼ら。「muffin discs」に所属するバンドはそれぞれが多様な個性を持ち、音楽的にも独立したバンドばかりだが、そんな中でosageが鳴らすのは、疾走感に溢れた、直情的ともいえるギターロックだ。

松永祐太朗(osage)
田中優希(osage)

アグレッシブな演奏の中で、山口ケンタ(Vo,Ba)と金廣洸輝(Gt,Cho)のふたりの声が重なり合う瞬間には、ロックバンドの得も言われぬカタルシスがあった。

柔和にたゆたうメロディで、Cairophenomenonsはフロアを優しく包み込む

2番手に登場したのは、去年の12月以来、早くも2度目の出演となったCairophenomenons。

Cairophenomenons(かいろふぇのめのんず)
CairoからCairophenomenonsに改名後、EPとなる『Cue-EP』をカセットにてリリース。オリジナリティ溢れる、心地よくも奇妙なアンビエンスとグルーヴに、クリスタルなギターノイズが響くサウンドを構築し、現代のサイケデリア、エレクトロニカ、シューゲイズなど様々に評されている、今注目の新世代バンド。日本各地の音楽ファンが集うレコードショップで発売され、注目を集めている。2019年にアルバムにリリースを予定している。
Yuichiro Araya(Cairophenomenons)
Shonosuke Nakamura(Cairophenomenons)

3月に“In The Pye”、そしてこの日の前日に“Prochet”という2曲を配信リリースした彼ら。去年の暮から精力的にリリースしてきた新曲群がセットリストの大半を占めていたからか、前回出演時以上に、バンドの「いま」を鮮烈に伝えるようなパフォーマンスを披露する。その儚く柔和な世界に、聴く者を飲み込んでみせた。

リンカイ(Cairophenomenons)

特に中盤に配置された“Prochet”と“In The Pye”の2曲は、陽光に照らされたあの娘の髪の毛のように柔らかく、美しく、そして生々しいメロディラインがとても印象的。それらは、吹きすさぶノイズの奥から発見された宝物をそっと手渡すように、丁寧に届けられた。

10代特有の複雑で普遍的な感情を歌い上げた17歳とベルリンの壁

3番手は、17歳とベルリンの壁。その名が示すように、喜びと怒りと恋と敗北と無知が混ざった、「10代特有のあれ」としか言いようのない普遍的な感情を表現する4ピースバンドだ。

17歳とベルリンの壁(じゅうななさいとべるりんのかべ)
「17歳、なにがすべてだった?」東京都内で活動中のロックバンド。シューゲイザー、ドリームポップ、ギターポップに影響を受けた音像に男女ツインボーカルによるどこか低体温なメロディーを乗せている。
Yusei Tsuruta(17歳とベルリンの壁)
Eriko Takano(17歳とベルリンの壁)

ライブは冒頭、“終日”~“表明式”の流れで聴く者を穏やかな白昼夢に誘うような流麗なサウンドで会場を包み込み……かと思えば、続く“六月”では一気にフロアをノイズの海に沈めるようなドープな展開へ。

Takuji Yoshida(17歳とベルリンの壁)
Junichirou Miyazawa(17歳とベルリンの壁)

シンセを使用した、新たなスケール感を持った新曲や、光のトンネルを疾走するような“プリズム”など、30分間のパフォーマンスを通して、繊細で豊かな色彩のグラデーションを音楽で描いてみせる。すべてが終わる頃には、「10代特有のあれ」が、決して10代だけのものではないことに改めて気づかされていた。

静かな熱量を見せるステレオガールは、新たなロックヒーローとなることを予感させる

4番手に登場したのは、ステレオガール。2014年に高校の軽音楽部で結成され、去年はオーディションを勝ち抜き『SUMMER SONIC』への出演も果たした5人組だ。

ステレオガール(すてれおがーる)
都内の高校の軽音部で結成。平均年齢19歳。2018年より本格的に活動を開始。2018年6月にミニアルバム『ベイビー、ぼくらはL.S.D』をリリースし、各CDショップで取り上げられ度重なる再入荷を繰り返すなど、一部の音楽ファンの間で話題を呼ぶ。同年8月に開催された『出れんの!?サマソニ!?』オーディションでは3000組以上の応募の中から『SUMMER SONIC 2018』RAINBOW STAGEへの出演や、10代限定フェス『未確認フェスティバル』にて準グランプリを獲得。
安寿(ステレオガール)
奏子(ステレオガール)

ステージを見れば、全員が黒の衣装に身を纏っている。フロアの前方には女性ファンが固まっていたが、それも納得の、禍々しくもスタイリッシュな立ち姿。そして、その佇まいから立ち昇る「これは何かあるぞ」という予感は、演奏が始まると確信へと変わった。この「黒の集団」が放つ音楽――1950~60年代の霊魂を手繰り寄せながら、それを「今」を生きる自分たちの心象表現へと消化したような荒々しいロックンロールは、重く、鋭く、そしてポップに、フロアを侵食していく。

chamicot(ステレオガール)
理玖(ステレオガール)
佑香(ステレオガール)

醒めた眼差しの先に歌を響かせる安寿(Vo)と、ダークな華やかさを纏い、見る者を魅了するchamicot(Gt)のタッグは特に、次世代のロックヒーローの登場を感じさせるカリスマティックな存在感に満ちている。

他人に踊らされるような馬鹿ではないし、自分を騙して踊らなきゃいけないほど飢えているわけじゃない。でも、冷めたまま生きるのは退屈だし、火種は確かに自分の中に残っている……そんな人の心を静かに燃やす力を持つロックンロール。惚れ惚れするほどにクールなパフォーマンスだった。

2年ぶりの出演。バレーボウイズが創り出した心も体も歌い踊る、幸福な時間

この日のトリを飾ったのは、こちらも2度目の『exPoP!!!!!』の登場となったバレーボウイズ。

バレーボウイズ(ばれーぼういず)
京都精華大学の学園祭『木野祭』出演のために2015年に結成。異端でありどこかスタンダード。ノスタルジックで歌謡ライクなメロディと歌のハーモニーを青春に封じ込め、男女混声7人7様のキャラクターが奇跡的なバランスをもって歌と演奏を聴かせる。2017年、ライブオーディション『TOKYO BIG UP!』でグランプリ、『FUJI ROCK FESTIVAL 2017』ROOKIE A GO-GO枠で初出演。今年4月3日には3枚目となるミニアルバム『青い」をリリース。全国の大型フェス、サーキットフェスにてその特異なLIVEで人気を集めている。
前田流星(バレーボウイズ)
オオムラツヅミ(バレーボウイズ)
ネギ(バレーボウイズ)

2年前に『exPoP!!!!!』に初登場したときのことは、今でも新鮮に思い出せる。当時は今ほど名前が知られている存在ではなかったが、ロックとポップとフォークとパンクと民謡が「祝祭」の名のもとに結晶化したような、その異形の音楽に度肝を抜かれた。

「衝動」がすべてを上回るような、危なっかしくも瑞々しく輝くパフォーマンスを見せた前回から2年。この日のバレーボウイズの演奏は、彼らがこの2年の月日で見事な成熟と進化を遂げたのだと感じることができるものだった。

高山燦(バレーボウイズ)
ムコ(バレーボウイズ)

2年前と圧倒的に違ったのは、その音楽が持つ「分かち合う」ことへの意志だろうか。音楽を通して、人は喜びや涙すらも他者と分かち合うことができる。メロディが、リズムが、歌が、そう語りかけてくるような演奏。力任せに巻き込むのではなく、そっと寄り添いながら聴き手を音楽の輪へと導く――そんな丁寧さと優しさが心地いい。

九鬼知也(バレーボウイズ)
武田啓希(バレーボウイズ)

今年の新作『青い』はハーモニーやメロディの美しさが際立つ作品だったが、この日のライブも同様に、とても「歌心」を感じるものだった。それでもバレーボウイズの音楽がすべて踊れるのは、音の細部が、いや細胞が躍動しているからだろう。こんなにも歌心を感じながら、同時に踊れるライブはそう体験したことがなかった。フロア全体が揺れたアンコールの“シアワセ”まで、心も体も歌い踊る、幸福な時間だった。

バレーボウイズ“シアワセ”を聴く(Apple Musicはこちら

5組それぞれが、それぞれの中から生まれる純度の高い音楽を披露した、今回の『exPoP!!!!!』。「何故、自分は歌を、ロックを、音楽を必要としたのか?」なんて根源的な問いを自分に吹っかけてみたくなるほどにピュアで、最高の夜だった。

osage
Cairophenomenons
17歳とベルリンの壁
ステレオガール
バレーボウイズ
イベント情報
『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume120』

2019年4月25日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
osage
Cairophenomenons
17歳とベルリンの壁
ステレオガール
バレーボウイズ

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume125』

2019年9月26日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
さとうもか
笹川真生
ぜったくん
ましのみ

プロフィール
osage (おさげ)

Czecho No Republic、SUPER BEAVER、sumika、マカロニえんぴつ等が所属する、murffin discsによる新人オーディション「murffin discs audition 2018」でグランプリを受賞。2019年4月10日にmurffin discs内に発足された新レーベル、murffin Lab.より4曲入りCD「ニュートラルe.p」をタワーレコード限定全国リリース。

Cairophenomenons (かいろふぇのめのんず)

CairoからCairophenomenonsに改名後、EPとなる"Cue-EP"をカセットにてリリース。オリジナリティ溢れる、心地よくも奇妙なアンビエンスとグルーヴに、クリスタルなギターノイズが響くサウンドを構築し、現代のサイケデリア、エレクトロニカ、シューゲイズなど様々に評されている、今注目の新世代バンド。 2018年には新曲"Water"を日韓アーティストによるコンピレーションに提供するなどその世界を深め、2018年12月に新たな7inchシングル"TIGER TIGER/SPRING"をリリース。日本各地の音楽ファンが集うレコードショップで発売され、注目を集めている。2019年にアルバムにリリースを予定している。

17歳とベルリンの壁 (じゅうななさいとべるりんのかべ)

「17歳、なにがすべてだった?」東京都内で活動中のロックバンド。シューゲイザー、ドリームポップ、ギターポップに影響を受けた音像に男女ツインボーカルによるどこか低体温なメロディーを乗せている。

ステレオガール (すてれおがーる)

都内の高校の軽音部で結成。平均年齢19歳。2018年より本格的に活動を開始。2018年6月にミニアルバム「ベイビー、ぼくらはL.S.D」をリリースし、各CDショップで取り上げられ度重なる再入荷を繰り返すなど、一部の音楽ファンの間で話題を呼ぶ。同年8月に開催された「出れんの!?サマソニ!?」オーディションでは3000組以上の応募の中から「SUMMER SONIC 2018」RAINBOW STAGEへの出演や、10代限定フェス「未確認フェスティバル」にて準グランプリを獲得。2019年3月にはアメリカ、テキサスで開催される「SXSW2019」に大抜擢されるなど大きな注目を集めている。

バレーボウイズ (ばれーぼういず)

京都精華大学の学園祭「木野祭」出演のために2015年に結成。異端でありどこかスタンダード。ノスタルジックで歌謡ライクなメロディと歌のハーモニーを青春に封じ込め、男女混声7人7様のキャラクターが奇跡的なバランスをもって歌と演奏を聴かせる。2017年、ライブオーディション「TOKYO BIG UP!」でグランプリ、「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」ROOKIE A GO-GO枠で初出演。昨年7月にアルバム「なつやすみ'18 猛暑」を発売。全国の大型フェス、サーキットフェスにてその特異なLIVEで人気を集めている。



記事一覧をみる
フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • バレーボウイズら、5組が共演。ピュアな音楽が鳴り響いた夜

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて