自覚なきアーティストたちによるコンペティションで「いいね!」を一番集めた作品は?

2つのヤマハが主催するデジタルにおける平面表現を対象にしたグラフィックコンペティション『Graphic Grand Prix by Yamaha』(以下『GGP』)。去る10月30日、『Tokyo Designers Week2013』内で開催された最終審査会にて、グランプリおよび審査員賞、オーディエンス賞が決定した。今年のテーマは「いいの?」「いいね!」。その言葉が象徴するように、世界中で多種多様な写真やビジュアルがあふれるSNS時代において、かつての「グラフィック」という言葉の概念を覆す新表現が生まれることを目指した、今までにないコンペティションだ。

左から:日比野克彦、スプツニ子!
左から:日比野克彦、スプツニ子!

彼らの『GGP』に込めた熱い思いは、過去のCINRA連載記事『GRAPHIC IS NOT DEAD.』のインタビューでも語られている。そこでは、単に作品の美しさやスキルの良し悪しを見出す従来のコンペに鋭くメスを入れ、「今、最も強いデジタル時代の視覚表現とは何か?」をテーマに論議が交わされた。スプツニ子!は埼玉の女子高生がSNSにアップし世界中で大流行した「マカンコウサッポウ」を例に挙げ、誰もがマネしたくなるようなバイラル性のある表現に着目。彼女の言葉を借りれば、あの女子高生たちは「自覚なきイノベーター」だという。すなわち、自覚なきアーティストやデザイナーたちが、まだまだ生まれてくる可能性に未来を見出したのがこの『GGP』なのだ。

グランプリ&オーディエンス賞『行ってきます』岡部望
グランプリ&オーディエンス賞『行ってきます』岡部望

この度、見事グランプリに輝いた作家は、まさしく「自覚なきアーティスト」の1人。グランプリ受賞作『行ってきます』は、毎朝家族に「行ってきます」と声をかけるときの景色を携帯カメラで4年間撮影した作品。作家の岡部望は、毎朝撮る家族の写真を携帯の待ち受け画面にしていたところ、会社の同僚に「いいね!」と声をかけられたことをきっかけに、その1,000枚以上におよぶ写真を1枚の「グラフィック」として編集し、応募した。非常にシンプルな作品だが、じっくり眺めていけば、小さな家族のつながりや、連綿と続いていく日常のあり方がダイレクトに伝わってくる。結果、本作品はグランプリにとどまらず、『Tokyo Designers Week2013』出展ブースで一般から集めた投票数と、公式ウェブサイトの「いいね!」カウント数で最も票を獲得したオーディエンス賞にも選ばれ、見事ダブル受賞となった。誰でもマネしてみたくなるような表現でもあり、岡部本人も「今日からあなたもやってみよう」と提案している。普通の家族のお父さんが、多くの人に感動を与えた象徴的な作品だ。

日比野克彦賞『こんな雲いかがですか。』松岡啓祐
日比野克彦賞『こんな雲いかがですか。』松岡啓祐

また、日比野克彦賞には、万里の長城の空に浮かぶ幻想的な雲をカメラでとらえた、松岡啓祐の『こんな雲いかがですか。』が受賞。特別なスキルがなくとも、人の心にスイッチを入れられる瞬間があることを気付かせてくれる作品として、日比野から高い評価を得た。

スプツニ子!賞『マイファッション』森拓馬
スプツニ子!賞『マイファッション』森拓馬

そして、スプツニ子!賞には、自画像をプリントしたTシャツを女の子たちに着せた1枚の写真、森拓馬『マイファッション』が受賞。かわいい女の子たちを集め、自身のプロジェクトに巻き込んだプロデュース力を見込み、クリエイターとしてのこれからに期待できるとスプツニ子!から賛辞が寄せられた。

テーマの一語として与えられた「いいの?」の通り、周囲の人々への小さな問いかけや対話の可能性を導き出した作品が登場し、受賞を果たした本コンペティション。2回目を無事に終えた『GGP』は、これからも時代を映す鏡のような存在となっていくことだろう。

『2013 Graphic Grand Prix by Yamaha』授賞式の様子
『2013 Graphic Grand Prix by Yamaha』授賞式の様子

イベント情報
『2013 Graphic Grand Prix by Yamaha』

応募期間:2013年6月3日(月)〜9月30日(月)
テーマ:「いいの?」「いいね!」
審査委員:
日比野克彦
スプツニ子!
ヤマハ株式会社 ヤマハ発動機株式会社 デザインセクションメンバー
川田学(ヤマハ株式会社 デザイン研究所 所長)
吉良康宏(ヤマハ発動機株式会社 デザイン本部デザイン・ディレクター)
竹井邦浩(ヤマハ株式会社 デザイナー)
並木育男(ヤマハ発動機株式会社 デザイナー)

プロフィール
『2013 Graphic Grand Prix by Yamaha』とは?

「感動につながるデザインとは何か」を互いに追求する2つの企業、ヤマハ株式会社とヤマハ発動機株式会社が総力を挙げて2012年より立ち上げた、グラフィックコンペティション。「デジタルデータの平面作品」であれば、どんな作品でも応募可というのが大きな特徴で、第1回目となった2012年度には、審査員長に日比野克彦を迎え、「存在。」をテーマに、1,585点の応募作品が集まった。2013年度は審査員にアーティストのスプツニ子!も加え、「いいの?」「いいね!」をテーマに、グラフィックの新しい可能性を探っている。



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