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夏フェスの予習に、90年代UKロックの流れとTRAVISの価値を学ぶ

夏フェスの予習に、90年代UKロックの流れとTRAVISの価値を学ぶ

『Hostess Club Presents Sunday Special』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影・編集:矢島由佳子

<俺たちは90年代に疲れたんだ。でも、90年代に愛着だってあるんだ>

しかしながら、デビュー時のTRAVISは決して「次の時代」を感じさせるバンドではなかった。当時のTRAVISは、OASISからの影響を感じさせるエネルギッシュなギターロックという側面を持っているバンドだったのだ。なにせ、デビューシングルのタイトルが“All I Want To Do Is Rock(俺がやりたいのはロックだけ)”である。だが、『Good Feeling』には、TRAVISがブリットポップに、そして1990年代に対して複雑な想いを抱いていたことがよくわかる、素直すぎるくらいの1曲が収められている。その名も、“Tied to the 90's”である。

We're tired of the 90's
We're tired of the 90's
We're tired of the 90's
But we're tied to the 90's

「俺たちは90年代に疲れたんだ。でも、90年代に愛着だってあるんだ」――ここで吐露されるTRAVISの心境は、その若さゆえに正直だ。ちなみに、この時期のTRAVISはOASISのノエル・ギャラガーからの寵愛を受けている。もしかしたらノエルの中には、自分が表立って言うことはできない90年代に対する複雑な想いを、若い世代が代弁してくれている――そんな感覚があったのかもしれない。なにせノエル・ギャラガーこそ、「Definitely(確かに)Maybe(たぶん)」(94年発売、OASISのデビューアルバムタイトル)、そんな曖昧な感情と共に90年代を走り抜けてきた男なのだ。

スターにならなくてもいい。消費されない曲を作り続ける姿勢

そうやって90年代に対する引き裂かれたアイデンティティーを伴って登場したTRAVISが、本当の意味で自分たちの存在を確立したのは99年の2ndアルバム『The Man Who』と、2001年の3rdアルバム『The Invisible Band』、この2枚の大ヒットアルバムによるところが大きい。代表曲“Why Does It Always Rain On Me?”を収録した『The Man Who』はUKチャートの1位に輝き、続く『The Invisible Band』も1位を獲得。00年代初頭において、TRAVISは「イギリスを代表するロックバンド」の座に就くこととなる。

ちなみに00年代初頭は、TRAVISの後続バンドともいえるCOLDPLAYもブレイク。他にもアメリカから現れたTHE STROKESも人気を博し、それに誘発される形でTHE LIBERTINESも登場。世界同時多発的に起こった「ロックンロールリバイバル」と呼ばれる動きがイギリスでも顕在化した。そうやって若い世代が台頭することで、TRAVISは「イギリスを代表するロックバンド」の立場をより強めていくのか……と思いきや、『The Man Who』や『The Invisible Band』というまるで無色透明なアルバムタイトルが示すように、楽曲と共に人々の生活に溶け込んでいくかの如く、TRAVISは次第にバンドとしての「エゴ」を消し去っていく。ここで、今に続くTRAVISというバンドの「特殊さ」が現れてくるのだ。

岡村:フラン(Vo)がインタビューで言っていたんですけど、『The Man Who』の曲を作っているとき、うるさいロックを鳴らすと隣に住んでいる人の迷惑になるから、抑えた曲調のものを作っていたらしくて(笑)。前作『Where You Stand』について話を聞いたときも、「ラジオで流れることを意識しながら曲を作っている」って言ったんですよね。彼は自分がリスナーの立場に立ったとき、「誰の曲かはわからないけれど、いい曲だな」って思いながらラジオで音楽を聴くらしくて。TRAVISって、ずっと「あくまでも曲が主役で、バンドはそこに花を添えることができればいいんだ」ということを言い続けてきたバンドなんです。

岡村有里子

バンドよりも曲が大事――TRAVISがこの楽曲至上主義的な価値観に行き着いたのは、きっと彼らが90年代の若い頃にブリットポップの栄枯盛衰を見てきたから、なのではないだろうか。スターのように持ち上げられては、次々と楽曲と共に消費されていくバンドたちを見てきたからこそ、TRAVISは、自分たちの何より大切な「音楽」と、それによって生まれる聴き手との「繋がり」だけは守り抜こうとしてきたのではないか。

「名声を得ることで変わってしまう人もいるかもしれないけど、TRAVISはずっと変わらない」(岡村)

00年代半ば以降のTRAVISの歩みは、決して派手なものではない。ARCTIC MONKEYSのようなネット世代のスターバンドも登場し、時を経るごとに次第に音楽の消費スピードが速まっていく中で、TRAVISの周りだけは、穏やかでゆっくりとした時間が流れているような印象を受ける。しかし、「ラジオでかかる音楽」として多くの人々に受け入れられるポピュラリティーを維持しながら、それでも安易に消費されることを望まない――これがどれほど難しいことか、今の時代に音楽を愛する人ならわかるはずだ。

TRAVISも闘ってきた。それは何かを打ちのめすための闘いではなく、人々にとって「音楽を聴く時間」が特別なものであることを守るための闘いだったのだ。

岡村:名声を得ることで変わってしまう人もいるかもしれないけど、TRAVISはずっと変わらない。会うたびに「この人たちは、なんて純粋に音楽をやっているんだろう」って思うんです。メンバーも変わらずにずっと仲良しだし、どんなに大きな会場でライブを観ても、彼らはステージと客席の垣根を感じさせない、本当にアットホームなライブをするんですよね。お客さんのことも含めて「ファミリー」と捉えているような、そんな印象を受けます。私は“Turn”も“Why Does It Always Rain On Me?”も何百回も聴いていると思うけど、聴く度に胸をギューっと締め付けられるような感覚がある。ここまで人の心を鷲掴みにするような楽曲って、そうないですよね? “Why Does It~”の歌詞に、大好きなラインがあって。<Why does it always rain on me? Is it because I lied when I was seventeen?>というところなんですけど、「なんでいつも雨が降るの? 17歳の時に僕が嘘をついたから?」という少年のような言葉に、「Fran」って書かれたセーターを着ていた、デビュー当時のフランの姿を思い出すんですよ(笑)。作品ごとに変化や進化を続けているけど、根本にあるメランコリックなメロディーと、パーソナルな歌詞が人の心に響くところは、ずっと変わらないですよね。

ずっと変わらない――もちろん、「変わる」ことは勇気のいることだ。でも、「変わらない」ことの勇気もまた存在する。TRAVISは変わらなかった。この20年間ずっと、最高のポップソングをあなたの傍で鳴らし続ける喜びを、彼らは手放さなかったのだ。

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イベント情報

『Hostess Club Presents Sunday Special』

2016年4月10日(日)OPEN 12:00 / START 13:00
会場:東京都 水道橋 東京ドームシティホール
出演:
Travis
Ben Watt Band feat. Bernard Butler
John Grant
Lapsley
料金:スタンディング8,500円 指定席9,500円(共にドリンク別)

リリース情報

Travis『Everything At Once』
Travis
『Everything At Once』初回限定日本盤(CD+DVD)

2016年4月29日(金)発売
価格:3,564円(税込)
HSU-12062/3

[CD]
1. What Will Come
2. Magnificent Time
3. Radio Song
4. Paralysed
5. Animals
6. Everything At Once
7. 3 Miles High
8. All Of The Places
9. Idlewild
10. Strangers On A Train
11. Sing (live)(ボーナストラック)
12. Closer (live)(ボーナストラック)
[DVD]
・フラン・ヒーリィが監督したアルバム収録曲に合わせた映像(合計約30分)を収録

Travis
『Everything At Once』日本盤(CD)

2016年4月29日(金)発売
価格:2,592円(税込)
HSU-12060

1. What Will Come
2. Magnificent Time
3. Radio Song
4. Paralysed
5. Animals
6. Everything At Once
7. 3 Miles High
8. All Of The Places
9. Idlewild
10. Strangers On A Train
11. Sing (live)(ボーナストラック)
12. Closer (live)(ボーナストラック)

プロフィール

TRAVIS
TRAVIS(とらゔぃす)

フラン・ヒーリィ(Vo)、アンディー・ダンロップ(Gt)、ダギー・ペイン(Ba)、ニール・プリムローズ(Dr)による、スコットランドはグラスゴー出身、レディオヘッドやオアシス、コールドプレイと並び英国を代表するロック・バンド。1997年『GOOD FEELING』でアルバムデビューを果たすと、99年ナイジェル・ゴドリッチをプロデューサーに迎えた2ndアルバム『THE MAN WHO』をリリース。この作品が全英チャートの1位を獲得し、全世界で約400万枚のセールスを記録。3rdアルバム『THE INVISIBLE BAND』(2001年)は全英チャート初登場1位、全世界で約300万枚を売り上げUKトップ・バンドとしての地位を確実なものとした。2015年11月に突如新曲“Everything At Once”のミュージックビデオを公開し、新作アルバムへ向けて動きだしていた。2016年4月10日に開催される『Hostess Club presents Sunday Special』にてヘッドライナーとして出演する。

岡村有里子(おかむら ゆりこ)

幼少時代をロサンゼルスで過ごす。1999年にラジオDJデビュー。「自分の目で、耳で体感したことを伝える」をモットーに年間約100本のライブへ足を運んでいる。また、台湾のポップミュージックにも情熱を傾けている。現在は、DJをはじめ、ナレーター、MC、ライター、通訳などとしても活動中。

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