コラム

音楽フェス出演者のジェンダー比、北欧で50対50の目標達成へ

音楽フェス出演者のジェンダー比、北欧で50対50の目標達成へ

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後藤美波

メイン画像:今年の『Iceland Airwaves』に出演するSoccer Mummy By Paul Hudson from United Kingdom (Rockaway Beach: Soccer Mummy) [CC BY 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

2022年までに音楽フェスラインナップの男女比50対50を目指す国際キャンペーン

音楽フェスティバルの出演アーティストのジェンダーバランスを2022年までに50対50にしようという国際キャンペーン『Keychange』が今年2月にスタートした。

『Keychange』と呼ばれるこのキャンペーンはEUからのサポートを受けており、現在までにヨーロッパを中心に109の音楽フェスティバルが署名している(日本を含むアジアのフェスティバルは未署名)が、アイスランドの『Iceland Airwaves』が参加フェスのうち初めて、今年のラインナップで50対50の目標を達成するとニューヨーク・タイムズが報じた。

今年で20周年を迎える『Iceland Airwaves』は、アイスランド・レイキャビクで11月7日から10日まで4日間にわたって開催。これまでに120組以上の出演者が発表されており、まだ発表になっていないアーティストもいるが、ラインナップの50%以上が女性アーティスト(男女混合バンドも含む)になるという。すでに発表されている女性アーティストにはFever Ray、Snail Mail、Soccer Mommyらが含まれる。

『Iceland Airwaves』のラインナップの一部

「50%を達成するのはそんなに難しいことではない」

同フェスティバルの運営代表ウィル・ラーナック・ジョーンズは、ニューヨーク・タイムズのインタビューに対して、50%のバランスを達成するのはそれほど難しいことではなかったと回答。自分たちの本当に好きなアーティストを並べてみたら、嬉しいことに50%に達成していた、と明かしている。

またラーナック・ジョーンズは、『Iceland Airwaves』がジャンルに制限なく、新進アーティストにフォーカスしたイベントであるのに対し、大きな音楽フェスティバルにはビッグネームが必要でブッキングの選択肢が限られることに理解を示しつつも、全てのフェスティバルはジェンダーバランスについて何か前向きなアクションを起こすべきだと話す。

『Iceland Airwaves』に出演するFever Ray。The Knifeのカリン・ドレイヤーによるソロプロジェクト

物議醸した英フェスのラインナップ。北欧では「シスジェンダー男性のいないフェス」も

今年1月に発表されたイギリスの『Wireless Festival』のラインナップでは、約40組中3組しか女性アーティストが含まれていなかったことからリリー・アレンやアニー・マックらが疑問の声を挙げ、ラインナップ発表ポスターから男性の名前を消した画像がSNSで拡散されるなど議論を呼んだ。

『Wireless Festival』はその後、批判を受けて女性アーティストのみが出演するステージの設置を発表したが、大型フェスティバルにおける出演アーティスト数の男女比率はまだまだ均衡がとれていると言い難いのが現状だ。

『Wireless Festival』のラインナップ発表時のポスター(上)と、男性アーティストの名前が削除加工されたポスター画像(下)

2018年のイギリス国内の大型音楽フェスのジェンダーバランスを、出演者ラインナップが掲載されたポスターをもとに調査したBBCのレポートによれば、9つの大型フェスのポスターに名前が載っている756組のアクトのうち、男性メンバーのみで構成されるアーティストの割合は77%にのぼる。

今年は開催されなかった『Glastonbury Festival』を除く、観客規模数上位9つのフェスの中で、女性だけで構成されるアクトの割合が一番多かったのは『Latitude Festival』と『Bestival』だが、それでも29%と30%である(調査対象はポスターに掲載されているアーティストのみ)。

一方でシスジェンダー(生まれた時に診断された身体的性別と自分の性自認が一致している人)の男性が一切参加できないフェスもある。今年スウェーデンで初開催される『Statement Festival』は観客・ラインナップ双方において女性、ノンバイナリー(男性でも女性でもない性別の状態)、トランスジェンダーの人のみが参加できるイベントで、スウェーデンの大型音楽フェスで性的暴行やレイプ事件が多発したことを受けて、クラウドファンディングで資金を集めて開催が実現したという背景がある。

『Statement Festival』のInstagramより

『Glastonbury』や『Coachella』はキャンペーンに参加せず

2022年までに男女比50対50を目指す『Keychange』には、上述の『Bestival』をはじめとする109の音楽フェスが賛同を示しているが、『Glastonbury Festival』や『Coachella』といった世界有数の大規模フェスは現在のところ参加していない(『Keychange』の男性アーティストに対する「50%」にはトランジェンダーやノンバイナリーの人も含まれる。あくまで「包括性」を推進するキャンペーン)。

『Keychange』のInstagramより

フェスの規模が大きくなればなるほどブッキングに制約が出てくるのは事実だとしても、スタジアムクラスのアクトを起用しようとした結果、男性アーティストばかりになるのだとしたら、それはまた別の問題だ。フェスのラインナップにおけるジェンダーバランスは音楽業界におけるそれのうつし鏡とも言えるだろう。『Keychange』のキャンペーンに参加しなくとも、より多くのフェスがこうした問題に意識的に取り組むことが現状打破への第一歩となるはずだ。

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