コラム

サマソニで初来日 チャンズ・ザ・ラッパーのニューチャプターを目撃せよ

サマソニで初来日 チャンズ・ザ・ラッパーのニューチャプターを目撃せよ

テキスト
青山晃大
編集:後藤美波

(メイン画像:By Julio Enriquez from Denver,CO, USA (Chance the Rapper ::: Red Rocks ::: 05.02.17) [CC BY 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons)

シカゴ発、新時代の旗手が待望の初来日

いよいよ開催が目前に迫った『SUMMER SONIC 2018』。今年の出演者の中で、最もエポックメイキングな存在は誰かと聞かれれば、まず間違いなくチャンス・ザ・ラッパーの名前を挙げなくてはならない。

何しろ、彼はこれまで一度もレーベルと契約することなく、ミックステープやシングル等の作品を無料ダウンロード/ストリーミングのみで発表し続けている、完全にインディペンデントなアーティスト。いまだメジャーレーベル信仰が根強く、旧来的なCD商法が一般的な日本に、彼のような新時代の旗手が訪れることそのものが画期的と言えるだろう。

もちろん、レーベルを通さず活動するアーティストの来日自体は決して珍しいことではない。しかし、チャンス・ザ・ラッパーが誰よりも特別である理由は、インディペンデントな活動を通じて、本国アメリカの記録・ルールを次々と塗り替え、メインストリームの根本的な在り方まで変えてしまった点にある。

レーベル契約なし、『グラミー賞』のルールまで塗り替えたインディペンデントな姿勢

2016年にリリースした3rdミックステープ『Coloring Book』は米ビルボードチャートに初めてランクインしたストリーミング限定作品となり、翌年の『グラミー賞』では最優秀新人賞を含む三冠を獲得。創設から58年もの間ずっと、『グラミー賞』の選考基準は「フィジカルリリースされた録音物」に限られてきたが、彼の活躍が呼び水となり、その対象がストリーミングにまで広げられたのである。

その『グラミー賞』授賞式のスピーチで、チャンス・ザ・ラッパーは以下のような言葉を語った。

「多くの人がインディペンデントであることを自分一人でやることだと思っているけど、インディペンデンスというのは自由を意味しているんだよ」

そう、彼のこれまでの活動は、常に自由と共にあった。しがらみや慣習に縛られないこと。ステレオタイプや偏見に抗い続けること。そんな自由な活動の結果として、彼は自分自身に、地元シカゴに、さらには音楽シーンやアメリカ全体にまでポジティブな変化をもたらし続けてきたのだ。

『Coloring Book』の収録曲“Angels”

チャンス・ザ・ラッパーの歩みを振り返る。父親はかつてオバマの補佐官

チャンス・ザ・ラッパーが生まれ育ったイリノイ州シカゴは全米第3位の人口を誇る大都市だが、同時に凶悪犯罪の発生率でも悪名の高い街として知られていた。2011年と2012年には、シカゴで起きた殺人件数がイラクやアフガニスタンに派兵された米兵の死亡者数を上回ったことから、「シャイラク(Chiraq)」という不名誉な蔑称が付けられるほど。そんな状況を反映した、サウス・サイド生まれの新たなギャングスタラップ=ドリルミュージックが話題を集めはじめたのも、ちょうど同じ頃だ。

1993年生まれのチャンス・ザ・ラッパーは、父親がバラク・オバマの補佐官を務めていたこともあり、貧しい家庭で育ったわけではなかった。とは言え、真面目で勉強熱心な優等生というわけでもなかったようだ。

チャンス・ザ・ラッパーと彼の父親。オバマ大統領によるホワイトハウスでの任期中最後の晩さん会に招かれ、父親と共に参加した

彼が2012年4月に公開したデビューミックステープは、高校でマリファナが見つかったため停学処分を受けていた時期にレコーディングされ、その日数にちなんで『10 Day』と名付けられている。リリックの主題は10代の悲喜こもごもの日常だが、中には暴力事件で命を落とした友人を想う“Missing You”のような楽曲も。シカゴの暴力に巻き込まれて亡くなっていった友人に捧げる深い悲しみは、この後もチャンスの作品に幾度となく登場する重要なトピックの一つとなっていく。

チャイルディッシュ・ガンビーノとの出会いと記念碑的作品『Acid Rap』

この『10 Day』がきっかけとなり、チャンスはチャイルディッシュ・ガンビーノのツアー前座に抜擢されることに。チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーは、現在では企画・製作・監督・脚本・主演を務めるテレビドラマ『アトランタ』の成功や“This Is America”のヒットで知られるグローバルスターだが、当時はコメディアンとしては有名だったものの、ラッパー=チャイルディッシュ・ガンビーノとしては活動をスタートさせたばかり。両者の友情は、その後お互いのミックステープへの客演を経て、現在にいたるまで良好なまま続いており、コラボレーションによるミックステープの製作も進行中という噂だ。

チャイルディッシュ・ガンビーの2014年のアルバム『Because the Internet』に収録されたチャンス・ザ・ラッパーとのコラボ曲

チャイルディッシュ・ガンビーノが客演した件のトラック“Favorite Song”も収録された2作目のミックステープ『Acid Rap』(2013年4月発表)は、チャンス・ザ・ラッパーの名前を全世界に知らしめた記念碑的作品となった。同作の客演とプロダクションには、チャンスが所属する地元クルー「Savemoney」のメンバーをはじめとするシカゴの若き仲間が集結。

ゴスペルに始まり、クラシックソウル、ブルース、ハウス等々を横断しながら、ラストをシカゴ発祥の最新ダンスミュージック=ジュークで締めくくる流れは、音楽都市シカゴの遺産を総ざらいするかのよう。また、ギャングバイオレンスと隣り合わせの日常を生きる青春譚という点で、同作は前年リリースのケンドリック・ラマー『good kid, m.A.A.d city』とも共振していた。

チャンス・ザ・ラッパーの2014年のミックステープ『Acid Rap』ジャケット
チャンス・ザ・ラッパーの2014年のミックステープ『Acid Rap』ジャケット

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イベント情報

『SUMMER SONIC 2018』東京公演

2018年8月18日(土)、8月19日(土)
会場:千葉県 ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ
料金:1日券16,000円 2日券29,000円 プラチナチケット30,000円
※プラチナチケットは専用ビューイングエリア、ラウンジ、クローク、グッズ売り場ファストレーン、ウェルカムドリンク、会場間専用シャトルバス特典付

『SUMMER SONIC 2018』大阪公演

2018年8月18日(土)、8月19日(土)
会場:大阪府 舞洲 SONIC PARK
料金:1日券14,500円 2日券25,500円 プラチナチケット25,000円
※プラチナチケットは専用ビューイングエリア、ラウンジ、クローク、グッズ売り場ファストレーン、ウェルカムドリンク付

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