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3.11を経て、舞台芸術は何を語ることができるのか? Vol.1 宮沢章夫(劇作家)と青山真治(映画監督)が語る3.11以降の演劇

3.11を経て、舞台芸術は何を語ることができるのか? Vol.1 宮沢章夫(劇作家)と青山真治(映画監督)が語る3.11以降の演劇

影山裕樹
撮影:小林宏彰
2011/10/07

『フェスティバル/トーキョー11』の数多くのプログラムから、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』(1945)にちなんだ野外劇『無防備映画都市』を、劇作家・演出家・作家の宮沢章夫さん、映画監督の青山真治さんにご覧いただき、作品をきっかけに舞台や映画について幅広く語り合ってもらった。原発問題に対する2人の姿勢を反映するかたちで、宮沢さんの新作『トータル・リビング 1986-2011』についても話が及んだ本対談。舞台と映画、ふたつの異なるジャンルが交差する地点で、身体のあり方とは何か、そして3.11以降の表現とはなど、深い考察が繰り広げられた。

PROFILE

宮沢章夫
1956年静岡県生まれ。劇作家・演出家・作家。90年、作品ごとに俳優を集めて上演するスタイルの「遊園地再生事業団」の活動を開始、『ヒネミ』(92年)で岸田國士戯曲賞受賞。10年間で10数本の舞台作品を発表後、2000年に3年間の休止期間に入る。03年、戯曲+映像+パフォーマンスのコラボレート作品『トーキョー・ボディ』、05年『トーキョー/不在/ハムレット』をそれぞれ発表し、第二期ともいうべき活動を開始。また、99年芥川賞候補にもなった『サーチエンジン・システムクラッシュ』(文藝春秋)などの小説、エッセイ、評論などの執筆活動や早稲田大学文化構想学部教授など、活動は多岐にわたる。
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青山真治
1964年福岡県生まれ。映画監督、小説家。96年、地元・福岡県の門司を舞台にした『Helpless』で長編映画デビュー、高く評価される。2000年、『EUREKA ユリイカ』が第53回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をダブル受賞。また今年は4年ぶりの最新監督作『東京公園』が公開され、ロカルノ国際映画祭で金豹賞(審査員特別賞)を受賞している。また自作を小説化した『EUREKA ユリイカ』で第14回三島由紀夫賞を受賞するなど、小説家としても著書があるほか、今年11月に上演予定の舞台『おやすみ、かあさん』(作:マーシャ・ノーマン)では演出を務めるなど、舞台にも活躍の場を広げている。

どこか毒を持った、舞台を脱臼させることの面白さ(宮沢)

―本日、ルネ・ポレシュさんの作品『無防備映画都市』をお二人にご覧になっていただいたのですが、まずはそのご感想から伺えますでしょうか。

青山:ヨーロッパの映画史をかなり深めに作品のなかに取り入れているから、知らない人にはわかりにくいだろうなぁと思いながら見ていましたけど、面白かったですよ。ドイツ人がイタリアのことを作品にするのって、ゲーテの頃からそうですけど、南への憧れというか、一種の倒錯というか…ロベルト・ロッセリーニとフェデリコ・フェリーニをごちゃまぜにして、ニーノ・ロータを流しとけばいいや、みたいな(笑)。

3.11を経て、舞台芸術は何を語ることができるのか? Vol.1 宮沢章夫(劇作家)と青山真治(映画監督)が語る3.11以降の演劇
『無防備映画都市―ルール地方三部作・第二部』 ©Thomas Aurin

宮沢:ドイツの演劇は実験的な作品が多いんです。翻訳されているドイツの現代戯曲を読む限りでは、難解なのが多い印象を受ける。『無防備映画都市』も、映画史や思想の用語が結構出てくるじゃないですか。ルネ・ポレシュは、そうしたテキストをどのように視覚化して魅せるかを徹底的に考えていったんじゃないかな。もうひとつポレシュは、大学時代にハイナー・ミュラー(ドイツの劇作家・演出家。代表作『ハムレットマシーン』)の授業を受けていて、その影響は強いでしょう。どこか毒を孕んでるし、作品の文脈を脱臼させるところがあって、それは以前観た、『皆に伝えよ!ソイレント・グリーンは人肉だと』という作品もそうだったけど刺激的でしたね。というか、こんな言い方していいかわからないけど、でたらめだな、これって(笑)。

青山:後半でセットの上を登っていくシーンがありますよね。ロッセリーニの『ドイツ零年』(1948)には子どもが飛び降りる有名なラストシーンがありますけれど、「あれ? 飛び降りないんだ」って(笑)、確かにあれには脱臼させられました。

宮沢:実際にカメラを使い映画の撮影クルーを描いていて、NGシーンも見せていくじゃないですか。構造としては洗練されていて、役者の身体も非常に鍛え上げられているんだけれど、映画監督である青山さんに伺いたいのは「あれって監督コントですよね?」っていうことなんです(笑)。というか、構造がね、演出家は意識してないと思うけど、「監督」という登場人物が出ると「監督コント」になってしまう危うさがある(笑)。

3.11を経て、舞台芸術は何を語ることができるのか? Vol.1 宮沢章夫(劇作家)と青山真治(映画監督)が語る3.11以降の演劇
『無防備映画都市―ルール地方三部作・第二部』 ©片岡陽太 ©Yohta Kataoka

青山:観ていて途中から「ドリフかよ」って思いました(笑)。それから、フランス映画やイタリア映画関係のタームが次から次とちりばめられていて、ルキノ・ヴィスコンティもフェデリコ・フェリーニも出てくるのに、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーとジャン=リュック・ゴダールの名前は絶対に出さないんだなぁ、と拘りを感じました。

人間を大きく見せるか、小さく見せるかという問題はあると思います(宮沢)

青山:僕は演劇って、本当はセットがいらないんじゃないかと妄想してるんです。映画の場合は、現実に似通った風景を作る必要があるためセットを考えなくちゃいけないけれど、演劇の場合は、古くは円形劇場からはじまって、身体と言語さえあれば、バックにセットがなくても成り立つはずだ、と。

宮沢:劇場の歴史を考えると、人間を大きく見せるか、小さく見せるかという問題はあると思います。神の時代のギリシャ悲劇は、人間が小さくてよかった。だから何もない空間で俳優が台詞を言うだけで成り立っていたけれど、近代以降、人間を大きく見せることが演劇の課題になってきた。しかし、人間はそれほど偉いかという問いも、その後の現代演劇には生まれたんでしょうね。

青山:俳優を等身大に見せるために、セットが必要になったということですね。ただそれはリアリズムかもしれないけど、リアルにはならない。

宮沢:確かに板でコンクリートを作っても、本物のコンクリートの重さは表現できないわけです。どこまでいっても板でしかない。リアルの表現は、舞台芸術につきまとう問題ではありますよね。蜷川幸雄さんのように舞台上でずっと雨を降らせるようなスペクタクルを作り出す姿勢は、単純にすごいと思いますけど。『無防備映画都市』もそうですが、野外劇ってすべてが装置になるじゃないですか。向こう側に見える東京タワーの夜景が、役者の身体や、劇の言葉をまた違った印象に見せてしまう。それはそれですごいことだなと思いました。

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