特集 PR

美術を揉みほぐす「大きな頭」ピーター・マクドナルド『訪問者』

美術を揉みほぐす「大きな頭」ピーター・マクドナルド『訪問者』

内田伸一
2012/01/10

美術館の役割とは? 観る側にとってそれは、刺激やインスピレーション、または安らぎをもたらすアートとの出会いをくれる場所。さらに、優れた美術品の収蔵とその研究や、大きな意味での地域貢献も大切な役目でしょう。でも、美術館にはもっと可能性があるかもしれない。そう思わせてくれる取り組みが、金沢21世紀美術館で2011年4月16日から2012年3月20日まで開催中の『ピーター・マクドナルド:訪問者』展です。約1年という長い期間、そこで何が行われているのか? そして「訪問者」とは誰なのか? アーティスト本人や関わる人々にも話を聞きながら、実際の展覧会場やワークショップの現場をレポートします。

メイン写真:『ピーター・マクドナルド:訪問者 – ディスコ』 展示風景 金沢21世紀美術館 撮影:渡邊修 提供:金沢21世紀美術館

美術館に「サロン」と「ディスコ」が出現!

まずは、美術館正面入口からすぐの空間へ。ピーター・マクドナルドさんの作品展示室のひとつ、今回『サロン(Salon)』と名付けられた部屋がそこにあります。小窓から覗くカラフルかつユーモラスな雰囲気に誘われて入室すると、そこには大小さまざまの絵画群が。そのほとんどに、アフロヘアーのような「大きな頭」の人物たちが生き生きと描かれています。

『ピーター・マクドナルド:訪問者 - サロン』 展示風景 金沢21世紀美術館 撮影:渡邊修
『ピーター・マクドナルド:訪問者 - サロン』 展示風景 金沢21世紀美術館
撮影:渡邊修 提供:金沢21世紀美術館

ピーターさんが、最初はソウルシンガーの姿にインスパイアされて生み出したという彼ら。ある絵では空港で佇み、別の絵ではバンドマンのような4人組として登場。さらに海辺での母子の散歩や、道着を着込んだ格闘家(?)、そして名匠マティスと思しき車椅子の画家も、やっぱり大きな頭です。鮮やかな頭同士が重なる部分は互いを混ぜ合わせた色になっているのも、会話をしているようで面白いですね。

『ピーター・マクドナルド:訪問者 - サロン』 展示風景 金沢21世紀美術館 撮影:渡邊修 提供:金沢21世紀美術館
『ピーター・マクドナルド:訪問者 - サロン』 展示風景 金沢21世紀美術館
撮影:渡邊修 提供:金沢21世紀美術館

『Shipping Salon』撮影:渡邊修 提供:金沢21世紀美術館
『Shipping Salon』撮影:渡邊修
提供:金沢21世紀美術館

さらに中央の空間には、やはりピーターさんによるドローイングが詰まったアクリルケースが。1枚1枚に「To ○○ / From Peter」と記されているので、誰かにあてた手紙のようです。何やら謎めいていますが、そのわけは後ほどアーティスト本人から明かされることに…。サロンの名のとおり柔らかいソファもあり、ピーターさんの絵画世界にじっくり浸りながら作品についておしゃべりが楽しめそうな空間です。ちなみにこの部屋は入場無料でもあります。

もうひとつの展示室は対照的に、その名も『ディスコ(Disco)』と命名されたギャラリー空間。入口に暗幕が垂れ下がり、往年のダンスミュージックが中から小さく聴こえてきます。サロンがゆっくり観賞できる空間だったので、こちらはディスコっぽい部屋? 巨漢のIDチェック係とかはどうやらいないので、いざ入室。すると…。

四方の壁、高さ6m×全長70m(!)を埋め尽くして描かれたのは、まばゆい光が交差する迫力のダンスフロア。お馴染みのアフロ人間(勝手に命名)たちが大きな頭を重ね合いながら、思い思いに踊っています。彼らがステップを踏むたびにスポットライトが彩りを変える光景さえ目に浮かぶよう。地平線まで続くフロアはちょっとSF的で、気分はもう未来派『Soul Train』(伝説のディスコテレビ番組)!? よく見ると、絵の中には老人や小さな子どもたちの姿も。このディスコは老若男女ウェルカムのようですね。

「ピーター・マクドナルド:訪問者 - ディスコ」 展示風景 金沢21世紀美術館 撮影:渡邊修 提供:金沢21世紀美術館
「ピーター・マクドナルド:訪問者 - ディスコ」 展示風景 金沢21世紀美術館
撮影:渡邊修 提供:金沢21世紀美術館

ディテールまで描き込まれたターンテーブルやPA機材にも、ピーターさんの思い入れが感じられます。フロア正面には実際のDJブースがあり、床のあちこちには自由に使えるクッションも。壁画と音楽に囲まれて、このユニークな空間に身を任せられます。しかしこの壁画、ひとりで描いたら相当たいへんそうですが…この謎も後ほど、解けることになります。

Page 1
次へ

イベント情報

『ピーター・マクドナルド: 訪問者』

2011年4月16日(土)〜2012年3月20日(火)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休場日:月曜、1月10日(3月19日は開場)
料金:
サロン(長期インスタレーションルーム)入場無料
ディスコ(展示室13)当日の特別展またはコレクション展の観覧券で入場可

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

BIM“Wink”

BIMの新作『NOT BUSY』より“Wink”の映像が公開。ゆるめに結んだネクタイは軽妙洒脱でも、背伸びはしない。どこか冴えない繰り返しのなかで<だって俺らの本番はきっとこれから>と、吹っ切れなさもそのままラップして次へ。BIMの現在進行形のかっこよさと人懐っこさがトレースされたようなGIFアニメが最高にチャーミング。(山元)

  1. 米津玄師“感電”が7月6日配信リリース 綾野剛×星野源『MIU404』主題歌 1

    米津玄師“感電”が7月6日配信リリース 綾野剛×星野源『MIU404』主題歌

  2. 「実際にあったクソリプ」をカードゲーム化した『クソリプかるた』発売 2

    「実際にあったクソリプ」をカードゲーム化した『クソリプかるた』発売

  3. 堺雅人と鈴木福がのび太役で登場 「ソフトバンクのドラえもん」実写化CM 3

    堺雅人と鈴木福がのび太役で登場 「ソフトバンクのドラえもん」実写化CM

  4. 蓮沼執太とRYUTist運営が語る、コロナ以降の「アイドルと楽曲」 4

    蓮沼執太とRYUTist運営が語る、コロナ以降の「アイドルと楽曲」

  5. 菅田将暉×小松菜奈 瀬々敬久監督映画『糸』の新たな公開日が決定 5

    菅田将暉×小松菜奈 瀬々敬久監督映画『糸』の新たな公開日が決定

  6. シャムキャッツが10年で作り上げた景色。気まぐれな旅路の途中で 6

    シャムキャッツが10年で作り上げた景色。気まぐれな旅路の途中で

  7. 『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される 7

    『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される

  8. サブスク型映像クリエイター養成コミュニティ「AOI Film Craft Lab.」始動 8

    サブスク型映像クリエイター養成コミュニティ「AOI Film Craft Lab.」始動

  9. 新垣結衣の初写真展を渋谷PARCO&オンラインで開催 未公開カットも展示 9

    新垣結衣の初写真展を渋谷PARCO&オンラインで開催 未公開カットも展示

  10. 柴田聡子の言葉の正体。油断せず、心して向き合った先で生まれる 10

    柴田聡子の言葉の正体。油断せず、心して向き合った先で生まれる