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『クリエイターのヒミツ基地』 Volume15 迫田悠(映像作家)

音楽と絶妙にリンクした映像が尋常でない興奮を呼び、熱狂する観客…。迫田悠さんがVJを務めるバンド・ROVOのライブ会場では、そんなシーンが幾度となく繰り広げられています。ほかにもDREAMS COME TRUE、EGO WRAPPIN'、クラムボン、大沢伸一など、数々のミュージックビデオやライブ映像演出を手がけ、さらにはグラフィックデザイナーとしても活躍する迫田さん。華やかなキャリアを積んできたように見えますが、活動を始めた当初は挫折の連続でした。しかし、それを乗り越えたのは柔軟な姿勢と飽くなき向上心。一体どんなクリエーター人生を送ってきたのでしょうか。

テキスト・タナカヒロシ
撮影:CINRA編集部

迫田悠(さこた はるか)
映像作家、グラフィックデザイナー。2001年からROVOのVJを務める。これまでにEGO WRAPPIN'、DREAMS COME TRUE、clammbon、ohana、大沢伸一、Kaoru Inoue等のミュージックビデオやライブ映像演出を手がける。2007年に森本晃司・渡部暁と共に結成したユニット「ムー℃マジック」ではSYSTEM7、GONGのMVを制作。

迫田悠(さこた はるか)

制作に半年かかった、初めてのPV制作

「高校を卒業して、最初は普通の大学に入ったんですけど、合わないと思って辞めて。それで映像やデザインをやりたいと思ってCGの学校に行ったんですけど、難しすぎて半年で辞めて…」

現在は音楽シーンを中心にその名を広く知られる迫田悠さんですが、クリエーターとしてのスタートは二度の中退からでした。映像やデザインを仕事にしたいと専門学校へ入学したものの、授業についていけずに挫折。そこで迫田さんがとった行動は、できることから学んでいき、少しずつやりたい仕事に近づいていくことでした。

「CGの学校を辞めてからは、テクノやハウスが好きでクラブに通い詰めてたんですけど、まわりにDJやVJの知人がたくさんいたので、私もVJをやろうと思って映像の作り方を勉強したんです。それが今から10年くらい前の話なんですけど、当時VJをするにはめちゃくちゃたくさんの機材が必要だったので、グループで活動をすることが一般的で。私もグループに入って、徐々にノウハウを学んでいきましたね」

さらには、「お金につなげやすかった(笑)」というWEB制作も独学で身に付け、徐々にデザイン仕事にシフトしていったそうです。しかしながら、驚くことに本格的に絵を描いたのは20歳を過ぎてから。

「10年くらい前は、デザイナーズ・リパブリックとかtomatoとか、そういうデザイナー集団が流行ってて、加工した写真にMacのタイポグラフィを追加するようなデザインをよく見かけたんです。私もそれをやりたいと思ったんですけど、みんなやってるから個性が出ないじゃないですか。すごくかっこいいものを作れる人がいっぱいいて、今の自分じゃ太刀打ちできないから、絵を描かないとダメだと思って」

デザインで仕事をするために、必要に迫られて絵を描き始めたという迫田さんは、もともと「絵は美術の授業が好きだった程度」。実際に迫田さんが描いた絵を見ると信じがたい話ですが、はじめは苦戦することも多かったそうです。

「2001年に作らせてもらったASLN(アスラン)というバンドのPVでは、1枚ずつ絵を描いて、それを動画にしたんです。初めて作ったPVで要領が悪かったっていうのもあるんですけど、制作に半年かかってしまって。もちろん締め切りもぶっちぎってしまい…」

迫田悠

ROVOとの出会いで訪れた大きな前進

転機になったのは、バンドサウンドによるダンスミュージックの先駆者として、大型フェスなどで活躍するROVOのライブでVJを担当したこと。

「ROVOのキーボードをやっている益子樹さんがDUB SQUADというバンドもやっているんですけど、リリースパーティーをするということでVJを探されてたんです。最初、違うVJに電話をしたらしいんですが、たまたま電話に出なかったらしく、メンバーの1人とつながりのあったうちのグループに話が来て(笑)。それがきっかけになって、益子さんからROVOでVJをやってみない?って」

1曲が10分を超えることも珍しくなく、さらに即興の要素もあるため曲の長さがその場で変わるROVOのライブで、スケールの大きな映像を抜群の反射神経で動かすVJは話題を呼び、一躍その名を知られるようになった迫田さん。特に、毎年恒例となっている日比谷野外大音楽堂(野音)でのライブでは、会場の巨大な壁をスクリーンとして使い、見る者の度肝を抜く演出を行っています。こうしたROVOとの仕事をきっかけに、迫田さんのもとにはさまざまな仕事が舞い込むように。

「印象深かったのは、2007年にイギリスのSYSTEM 7のPVをやらせてもらったことですね。手塚るみ子さんがプロデューサーになって、STUDIO4℃の森本晃司さん、3DCGを作られてる渡部暁さん、それに私が加わって共同作業をさせてもらったんです。るみ子さんはROVOの大ファンで、野音のライブにもいらしてたので、私に声をかけてくださって」

迫田さんも参加したSYSTEM 7のPVは、手塚るみ子さんの父・手塚治虫さんのマンガ『火の鳥』をテーマにした作品で、国内外から大きな反響を受けることに。そしてこの時、共同作業した森本晃司さん、渡部暁さんとは、「ムー℃マジック」という名義でその後もPV制作を行うなど、さらなるステップアップにも発展。これ以外にも、「音楽の仕事だけじゃなく、普通の企業の映像を作ることもあるんですけど、『ROVOのファンで』ということで仕事をいただくこともあるんです」とのこと。こうして迫田さんのクリエーター人生は、ROVOとの出会いによって大きく前進することになりました。

辿り着いたのは「楽しい仕事」

「振り返ってみると、まずはWEBで仕事をスタートして、ちょっとずつデザインに入っていって、だんだんPVに移行していった感じですね」

目標とする仕事をするために、ひとつずつ足りないスキルを身に付けてきた迫田さん。外から見ていると順調なステップアップを続けているように見えますが、実は最初からPVを作りたいと思っていたわけではなかったそう。

「最初は『広告批評』とか、『ブレーン』みたいなクリエイティブ系の雑誌をずっと読んでいて、CMとか、広告とか、もっと社会とつながりのある仕事を志向していたんです。WEBの知識を身に付けたのも、そういう方面への足がかりのひとつだったし。だけど、やっていくうちに、どうやらこっちは向いてないらしいってだんだんわかってきて(笑)」

いったい、迫田さんは何が原因で「向いてない」と感じるようになったのでしょうか?

「ある程度まで作ったところでクライアントへチェックに出して、『いいですね』って言われたものが、もうちょっと作り込んでいったら、『それはダメだ』と言われることがあって。私としては先を付け足したいのに、そこまで出すとNGになってしまう。そういうことが何度も続くうちに、楽しんで作れるPVの方に徐々に傾き始めたんです」

高い理想を追い求めるからか、作品を作り終わった時は、「はぁー、なんでこんなヘタクソなんだろう」と感じることも多いという。では、迫田さんが言う「楽しい」とは、どんな時に感じるもの?

「頭の中に描いているものを形にできた時なんだと思います。やっぱりいい曲に出会うと、この曲にはどんな映像が合うだろうって考えたくなっちゃうので、ミュージックビデオとか、音に対して映像を考えることは続けていきたいですね」

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