11月27日、ついに待望の最終シーズンが配信をスタートしたNetflix『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。まずは4話が配信され、これから12月26日に第5~7話が、そしてフィナーレの第8話が2026年1月1日に配信される予定だ。
スタートのシーズン1から約10年間にわたって、世界中で話題となった同シリーズの終幕を目前にして、製作総指揮・脚本・監督を務めた「ダファー兄弟」ことマット&ロス・ダファー、そしてキャスト陣がこのほど来日。「シリーズが終わってしまう現実をまだ受け入れられていないんだ」と語るマット&ロス・ダファーに、インタビューした。
世界からの反響を「予想外だった」としながらも、フィナーレの特に30分間については絶対的な自信と誇りをうかがわせた2人。シーズン5はシーズン4に比べてVFXのショット数も3倍といい、大規模なアクションシーンにも「期待してね」と微笑み、さらには時間がない人のために「とにかくこれだけ見て」という話のピックアップまで伝授してくれた。
シリーズの大ヒットは予想外。長い時間と精魂を込めたラスト30分「期待して」
シーズン5公開直前の11月21日には、キャスト陣とダファー兄弟が日本を訪れ、東京タワー近くや中野の『ジンガロ』をめぐるツアーが開催された。左端はツアーで対談した村上隆
ーまずは最終シーズンを迎えて、いまどんな心境でしょうか? また、物語の着地点は思い描いていた通りのものに至ったのか、それとも変更点があったのか、その旅路について教えてください。
ロス・ダファー(以下、ロス):正直に言うと、いまは少し現実を受け入れられない状態なんです。このシリーズを手放したくないという気持ちがあって、まだ最終話の編集作業中ですし、宣伝活動もしているので、終わったという実感がまだないんです。
撮影最終日はハードではあったんですが、いったん撮影が終わってからはとても感情的になっています。なるべく仕事に没頭することで、終わったという現実を考えないようにしていますね。
マット・ダファー(以下、マット):最初に描いていたビジョン通りになったかということですが、毎シーズン、想像していたのとは少し違うかたちで終わることが多いんです。でも今回の最終シーズンについては、本当に誇りに思える出来になっています。
もちろん、視聴者の皆さんがどう反応するかという不安はありますが、特に最後の30分間には自信を持っています。最後の30分で感動してもらえなければ、それまでの時間に意味がなくなってしまいますからね。長い時間をかけて、精魂を込めてつくったものです。私たちもキャストも満足のいくエンディングになっています。
マット・ダファー(左)とロス・ダファー
—大ヒットシリーズになりましたが、成功の秘訣は何だったと思われますか。
ロス:正直、ここまでのヒットになるとは予想していませんでした。せいぜい、私たちのように80年代の映画を見て育った映画ファンの間でカルト的な人気を得られればいいな、という程度に考えていました。
でも、予想以上に幅広い層に受け入れられた理由は、登場する子どもたちに多くの人が共感してくれたからだと思います。同年代の視聴者は、まるで自分の物語のように感じてくれたでしょうし、いまは大人になった視聴者も、自分の幼少期へのノスタルジーを感じてくれたのではないでしょうか。SFや80年代映画のファンでなくても、この子どもたちやキャラクターに愛着を持ってくれた。それが大きかったと思います。
VFXは3倍、アクションシーンは大規模。兄弟の絆やチームワークが作品の核に
—シーズンごとに、いろいろな仕掛けが施されていました。最終シーズンでは、これまでと違う撮影手法やVFXアプローチ、演出がありましたら、教えてください。
マット:最終シーズンはロジック的にとても難しい撮影でしたね。今回はVFXをたぶんに駆使していて、シーズン4では約2000ショットだったのが、今回は6000ショットと3倍になっています。大規模なアクションシーンも多いので、ぜひ期待してくださいね。
最終シーズンということもあり、撮影の最終日はやっぱりみんないろいろ思うところがあるんだろうと感じました。カメラに捉えられているキャストの感情は、そのとき彼らが感じていた生々しいものが出ていると思います。
—シーズン5では、兄弟のチームワークや絆が、ほかのシーズンに比べてより深く描かれていると感じました。双子の兄弟として作品をつくられていることに対する思いと、これまで一緒に作品をつくり上げてきたプロセスについて教えてください。
ロス:双子として映画をつくること以外を知らないんですよね。物心ついた時からずっと一緒に映画をつくってきましたから。最初はビデオカメラもなくて、おもちゃを使って遊んでいて。8歳か9歳の頃にビデオカメラを手に入れてからは、ずっと一緒に映画をつくり続けています。ビデオカメラは2人で1台、「Hi8」でしたね。
考え方もとても似ていますし、同じ幼少期を過ごし、同じ映画を見てきました。逆に、一人で監督業なんて、みんなどうやってやっているんだろう? 怖いったらありゃしない、と思ってしまいます。
映画制作はそもそも、非常にコラボレーティブな仕事だと思っていて。芸術形態のなかでは最も複数人による協力体制が要となるものであって、それが何よりも大事であるという精神は、このシーズンのなかにも反映されていると思います。
マット:ずっと2人で、あるいは周りの人に囲まれてやってきているので——だから、このシリーズのテーマは家族であり友人、だと思うんですよね。意識的ではないのですが、つまりは僕らの幼少期をそのまま反映したものだということ。いつも友人に囲まれていたので、ともに歩む人がいると、それはどんなにホッとすることか、ということが(作品に)出ていると思います。
忙しい視聴者に「とにかくこれ見て」の5話を兄弟がピックアップ
—さかのぼってシーズン4では、ヴェクナの犠牲になる子どもたちの多くが「トラウマ」を抱えていました。子どもたちのトラウマや悩みに焦点を当てて描いた理由を教えてください。
ロス:ヴェクナを登場させることで、子どもから大人に成長を遂げていくところの、ダークサイドを描いているつもりです。つまり、思春期って素晴らしいんだけれど、同時に怖いものでもありますよね。
シーズン4は、いよいよ高校生活ということで、それはどういう体験なのかということを描いているつもりですが、じつは僕らも同じような苦い体験をしてきているんです。孤立していたし、はじかれたような存在だったので、そういう高校生活を送ってきた僕らが考えたのがヴェクナだった。自分のなかに巣食うこの恐怖が悪用されたら、どんな存在になるのだろう——そういうふうにして想像力を膨らませていきました。
マット:これはやっぱりアウトサイダーたちの物語であって、人は幼少期からいろんなものを抱えて生きていますが、思春期に差し掛かるとそれが膨らんでいきますよね。それをヴェクナというヴィランを媒介にして、思いっきり膨らませていったという意図がありました。
—最終話が1月1日に配信されますが、ホリデーシーズンにシーズン1からマラソン視聴するファンも多いと思います。そういった方々に向けて、おすすめの楽しみ方やメッセージをお願いします。
マット:全話を見直すのは、皆さん時間がないかもしれないので……という観点から旧シーズンで観直してもらいたいエピソードのアドバイスをするなら、まずはもちろんシーズン1の第1話。それから、シーズン2の第2章「賢者ウィル」、第6章「スパイ」。そしてシーズン4の第7章「ホーキンス研究所の虐殺」と第9章「潜入」。とにかくこれを見てください。
もちろん本当は、すべてを見ていただきたいですけど、本当に時間がないなら(笑)。特にシーズン4はとても長いですから。
- 作品情報
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Netflixシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界5』
VOL1(第1~4話):独占配信中
VOL2(第5~7話):12月26日(金)10時、
フィナーレ(第8話):1月1日(木)10時より世界独占配信
- プロフィール
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- マット&ロス・ダファー
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1984年生まれ。アメリカの映画・テレビの脚本家、監督、プロデューサー。双子の兄弟で、すべてのプロジェクトを2人で行っている。Netflix『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を制作し、製作総指揮を務めている。ほかにも、2015年公開のサイコロジカルホラー映画『Hidden』脚本と監督、フォックスのシリーズ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』の脚本とエピソード制作を担当。
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