いい作品をストイックに作り続けるだけで、世界で活躍できるアーティストになれる――そんなふうに考えている人もいるかもしれない。それは半分正解で、半分誤りと言えるだろう。アーティストとして活躍するためには作品を制作するだけでなく、美術史における位置づけや作品コンセプトを、自らの言葉で明瞭に伝える力も重要になるからだ。
芸術活動を支援する「アーツカウンシル東京」による若手アーティスト支援事業『Tokyo Artist Accelerator Program(トーキョー・アーティスト・アクセラレーター・プログラム)』が、第3期支援アーティストを募集している。
通称「TAAP(タープ)」と呼ばれるこのプログラムは、映像・美術分野での活躍を希望する若手アーティストと伴走する、「プレゼンテーション」に焦点を当てたプログラムだ。
支援アーティストには制作支援金が支給されるほか、8か月にわたるメンタリングプログラム、アート関係者へのプレゼンテーションの機会が設けられる。現代アートのさまざまなスペシャリストであるメンターとの意見交換を通じて、「作品を語る力」を磨くことができる。
プログラムの集大成として実施されるのが『TAAP Live』。8か月の成果として制作のプロセス、アートを通して伝えたいことを10分間オーディエンスに向けてプレゼンテーションするステージと、作品制作のプロセスを展示するワーク・イン・プログレスなどが実施される。
世界を目指すアーティストも集まる『TAAP』。応募してほしい人材や、プログラムを通して目指すものは何か、担当者へのインタビューを交えて紹介する。
「作品を語る力」が不可欠。世界を見据えたアーティスト育成プログラム『TAAP』とは?
 
                             2023年にスタートした同プログラムは、10月中旬から第3期生を募集している。書類選考を通過したアーティストは、プレゼンテーションによる選考に進む。「自分の言葉で作品を語ること」が、このプログラムでは重要となっているのだ。
作品そのものだけではなく「語る力」を重要視している理由は何か? アーツカウンシル東京TAAP担当者は以下のように語った。
「自立した継続的な活動を目指すアーティストにとって、日本のアート市場はまだまだ発展途上。そのため、芸術分野で海外に留学する方や、海外を目指す方も増えています。
海外では作品について語る機会や議論する機会が圧倒的に多く、『作品を語り、コンセプトを伝える力』は不可欠なんです。
一方で、日本では美大在学中は講評会などで作品をプレゼンする機会がありますが、卒業するとそういった機会は減ってしまう。TAAPではプレゼンテーションやメンタリングを通して『作品を語る力』を伸ばすことで、アーティストの国内外での活躍をサポートしていきたいと思っています」
 
                             8か月間にわたりメンタリングを担当するのはアーティストをはじめ、編集者、ギャラリストなどさまざまだ。多様なバックグラウンドを持ったメンターとのコミュニケーションを通して、「自分の言葉」が磨かれていくのだという。
メンターを務めたのは、天野太郎(東京オペラシティアートギャラリー チーフキュレーター)、粟田大輔(美術批評)、江幡京子(アーティスト)、小林真比古(biscuit gallery 代表)、藤元由記子(株式会社ブックエンド代表取締役/NPO法人アート&ソサイエティ研究センター理事)の5名。
支援アーティストを選ぶ選考委員のなかにはコレクターや経済のフィールドで活躍する人物もいるなど、まさにさまざまな視点から意見を取り入れる機会がそろっている。
プレゼンテーションへのアドバイス、メンタリングが繰り返され、作品を語る力とコンセプトが強化されていく。
メンタリングの過程で国内外の関係者とのネットワーキングもサポートするという。実際に、これまでに海外のアーティスト・イン・レジデンス参加の助成を受けた者もいるといい、2023年に開始したプログラムでありながら、支援アーティストはすでに活躍の場を広げている。
8か月の集大成を自らの言葉で発表する『TAAP Live』
プログラムの集大成として、イベント『TAAP Live』も実施。
今年は第2期生として選ばれた12名のアーティストが参加する『TAAP Live 2025』が、11月8日から11日にかけて東京・京橋のTODA HALL & CONFERENCE TOKYO ホールAで開催される。
 
                             当日はステージ上でアーティストによるプレゼンテーションとメンター、選考委員によるフィードバックが行われるほか、会場には作品や活動のコンセプト、制作のプロセスも展示される。
同イベントは一般の来場者も参加可能。キャプションだけではわからないアート完成までの道のりや、アーティスト自身の思考、バックグラウンドについても知ることができる。
第1期生の発表の場となった『TAAP Live 2024』の様子は以下の通り。
これまで発表の機会がなかった人にも応募してほしい。アーティストの成長の場となる『TAAP』
プログラムに応募してほしい人材について、担当者は以下のように語った。
「アーティストとして活躍していきたいという熱い思いを持ちつつも、今まで発表の機会が得られなかったような方にも応募していただきたいです。
『次の階段を登りたいけれども、その階段がどこにあるかわからない』という悩みを抱えている方はたくさんいると思うんですね。そういう方にとっても、このプログラムが発表の場となり成長の場となることを目指していきたいです」
 
                             第3期の支援アーティストの公募が10月から開始
第3期の支援アーティストのエントリーは現在受付中。
応募条件は、日本在住で東京での自立した継続的な活動を目指していること、2026年に実施する交流会やメンタリング、成果発表(TAAP Live)に参加可能であること、都内で作品を公開(個展・グループ展など)する活動を初めて実施してから3年以上10年未満、または活動実績が5回以上10回以内であること、など。
応募の締め切りは2025年11月26日(水)17:00まで。選考委員は以下のとおり。
上田杏菜(公益財団法人石橋財団 アーティゾン美術館 学芸員)
鷹野隆大(写真家 / 東京造形大学 教授)
田口美和(タグチアートコレクション 共同代表 / サンパウロ・ビエンナーレ インターナショナル アドバイザリーボード メンバー)
細井眞子(TARO NASUギャラリー ディレクター)
木村弘毅(株式会社MIXI代表取締役社長 上級執行役員 CEO / 公益社団法人経済同友会 スポーツ・文化による社会の再生PT 委員長)
申し込み方法など、詳しい情報はTAAPの公式サイトに掲載されている。
- 『TAAP Live 2025』実施概要
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                                                                 2025年11月8日(土)~11日(火) 2025年11月8日(土)~11日(火)
 ※11月10日(月)は招待者のみ、11日(火)は『ワーク・イン・プログレス』展示のみ
 会場:TODA HALL & CONFERENCE TOKYO ホールA
 東京都中央区京橋一丁目7番1号 TODA BUILDING 4階
 登壇者:『Tokyo Artist Accelerator Program(TAAP)』第2期支援アーティスト
 池添俊、折田千秋、久保田荻須智広、窪田望、黒田恭章、小林颯、近藤智美、斎藤英理、司馬宙、日原聖子、三野新、脇田あおい(予定)
 ◼プレゼンテーションの日程
 2025年11月8日(土)、11月9日(日)13:00〜17:30
 ※詳細なタイムスケジュールは公式サイトに記載
 ※プレゼンテーションは日本語で実施
 ◼ワーク・イン・プログレス展示の日程
 2025年11月8日(土)、11月9日(日)12:00〜19:00 最終入場18:30
 2025年11月11日(火)12:00〜15:00 最終入場14:30
- 「Tokyo Artist Accelerator Program(TAAP)」第3期支援アーティスト募集
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                                                                 応募受付期間:2025年10月15日(水)10:00~11月26日(水)17:00 応募受付期間:2025年10月15日(水)10:00~11月26日(水)17:00
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