up coming artist

福岡発4人組バンド・aldo van eyck上京インタビュー。その実験的で独特なサウンドの源に迫る

音楽ライター、金子厚武の連載コラム「up coming artist」。注目の若手アーティストを紹介し、その音楽性やルーツを紐解きながら、いまの音楽シーンも見つめていく。第15回目にフォーカスするのは、福岡発の4人組バンドで、ジャンルを越境する実験的なサウンドで耳目を集めるaldo van eyck(アルドファンアイク)だ。

黒で統一された衣装に身を包んだ4人組。ジャズかと思いきや、さまざまなジャンルをボーダレスに超えていく——福岡市中央区に位置するライブハウスUTEROで2021年に結成、以降は福岡を拠点にライブを重ね、約4年間で3枚のフルアルバムをリリースするなどハイペースに活動。今年5月に上京し、10月には渋谷・WWWでのワンマンがすでに決まっているなど、いまぐんぐん注目度を上げている。

「『ロックバンドがフリージャズをやる、みたいなコンセプトでやってみたらかっこよくね?』っていう、それがこのバンドの大元のアイデアになってます」(onoue)

今回は、そんな4人にロングインタビュー。その独特なサウンドはどうやって生まれるのか? 今年東京に拠点を移したこと、そして福岡のシーンとの相互作用はあったのか? aldo van eyckのすがたと楽曲を、じっくり紐解いていく。

音楽は好きだけど、最近、新しいアーティストに出会えていない……情報の濁流のなかで、瞬間風速的ではない、いまと過去のムーブメントを知りたい……そんな人に、ぜひ読んでほしい。

本稿で紹介したアーティストの楽曲をプレイリストにまとめました。ぜひ!

今年5月に福岡から東京へ。出てくるアイデアが逆にニッチな方向へ?

ー今年の5月にメンバー全員で上京したことを発表しましたね。

onoue:僕は以前からずっと東京に行きたいと思っていて。ファーストを出してすぐくらいに単身上京して、1年弱くらい住んでたこともあって、もう東京で生きていくつもりだったんです。でも、そこからバンドが若干注目され始めて、もうちょっとちゃんとやりたいと思ったので、一回福岡に戻って、アルバムを2枚つくって。でもやっぱり東京には行きたかったから、サードができて、入稿したその日に飛行機に乗ったくらいのテンションで、28歳のときに東京に来ました。

ーaldo van eyck(以下、アルド)はもともと福岡のライブハウス・UTEROに出演していた人たちが集まって結成されていて、過去のインタビューでもfolk enoughやPANICSMILEといった福岡の上の世代から大きく影響を受けたと話していますが、なぜ東京に惹かれたのでしょうか?

onoue:憧れはずっとあったんです。福岡である程度活動をして、もっといろんな世界を見たいと思ったっていうか……。東京は人も多いし、情報も多いから、そっちでいろいろやりたいなと思って、結果的にバンドのみんなと来ることになった感じですね。

ーonoueくん以外の3人は、上京に対してどんな想いがありますか?

dischaaageee:まあ、せっかくやしなあっていう感じですね。福岡ではある程度遊んだから、最低3年は東京におろうかな、みたいな。

yamashita:僕は今年40歳になったんですけど。

ーyamashitaくんだけ他のメンバーより10個くらい年上なんですよね。

yamashita:なので、周りからは結構心配されたんですけど、でもキリがいいんじゃないかなって。僕はもともと山口出身で、30歳で福岡に来て、ちょうど10年過ごしたので、今度は40歳で東京に行くっていう、それも面白いかなって。

sakaguchi:僕も「せっかくだし行ってみるか」みたいな感じですね。ライブで東京に行くことがめっちゃ増えて、月に3往復するときもあったので、もうこっちで家賃払った方がいいなって。

ーsakaguchiくんはマクマナマンとかうみのてとか、福岡でいくつかバンドを掛け持ちしてましたよね。ほかのメンバーもそうだと思うけど、福岡のシーンと密なつながりがあったと思うから、上京を決めるまでには迷いもあったのかなと思うんですけど。

sakaguchi:いままでやってたバンドに上京の話をすると、みんな「もう行ったほうがいいんじゃない?」って言ってくれて。もちろん申し訳ないとは思いつつも、「ありがとう、じゃあ行ってきます」みたいな感じになりましたね。

個人的には、もともと福岡のシーンを盛り上げたい気持ちがあって、だからいろいろサポートもやって、最大7バンドぐらい掛け持ちしてたときもあるんです。佐賀や熊本にも地元で頑張ってるバンドがいて、そういうバンドもすごくかっこいいんですけど、やっぱりめっちゃ大変そうなんですよ。なので、地元を盛り上げるにしろ、自分たちが上手くいくにしろ、一回東京でなんとかなってからのほうがスムーズに行くのかなと思ったりもしました。

onoue:福岡には素晴らしい人たちがたくさんいて、最初はその人たちに憧れて、昔は「自分も福岡で活躍しなきゃならない」みたいなふうにもちょっと考えてたような気もして。でもいまは別にそうじゃなくてもいいだろうとも思うし、せっかく東京でライブをいっぱいさせてもらえるなら、もう東京に行ったほうがいいんじゃないかっていう感じですね。

ーここ数年のUTEROにはfolk enoughやPANICSMILEの系譜に連なるようなオルタナとかアンダーグラウンドのバンドって、同世代もしくは下の世代に結構いるんですか?

sakaguchi:あんまりいないですね。

onoue:最近はデカりぼんとかが出てきて、「おお!」みたいな感じですけど、でもやっぱり少ないと思います。いまの時代はやっぱりYouTubeとかXとか、そういう情報の発信が先になってると思うんですよ。昔はライブハウスっていうフィジカルの箱を中心に情報を広げて、そこでバンドの交流があったり、新しい音楽がそこから生まれてきたと思うんですけど、いまはどうしてもインターネットがベースになってる。

だから、東京からちょっと有名なバンドが(福岡に)来たら、「いままでどこにいたんですか?」っていう人たちがバーってライブに来て、福岡の地元のバンドが前座をやっても全然反応なくて、「何これ?」みたいな。でも自分もライブハウスに行く前は若手のバンドを発信するアカウントで情報を知ったりもしていて、インフラがそうなってるから、それはもうしょうがない。

ーアルドもHoliday! Records(※)の発信で知られた側面があったりするわけですよね。

onoue:そうなんですよね。そこから僕らのやり方も変わったというか、だったらその情報の海に僕らも食らいついていこう、みたいな感じでやってて。お客さんを増やすのって、ただいいライブをやればいいわけじゃなくて、嫌な言葉ですけど、マーケティングみたいなことも必要で、とにかくライブハウスに出て、チラシ配りを頑張るだけだともう誰も来なくて、潰れていく……みたいなことが地方では露骨にあるんです。

そんななかでも「いや頑張ってやろうぜ」っていう先輩方がいっぱいいて、それがかっこいいなと思ってたんです。ただ、せっかく東京でやれるような機会が増えたから、「俺らちょっと頑張ってきます」みたいな、上京に対してはそういう意識もありますね。

※大阪を拠点に活動する個人運営のインディーズ音楽セレクトショップ。実店舗はなく、通販とライブハウスでの出張販売を中心に活動している。

ー実際に東京に出てきてからの変化をどう感じていますか?

onoue:ちょっと探せばすごいプレイヤーが近場でライブをしてるっていう環境は福岡とは全然違いますね。最近、ふと「今日メイちゃん(Mei Simones)とMen I Trustのライブあるやん」って気づいて、チケットがまだあったから、仕事終わりにそのまま観に行ったことがありました。そうやってパッと外タレを見るなんてことは福岡だと絶対なくて。フリージャズのライブとかも福岡だとどこでやってるかわからないけど、東京ではいろんなところでやってて、ピットインとかに時々行ったりもできる。このあいだもDos MonosのZepp Shinjukuのライブで「トランペット吹いてくれんか?」みたいな感じで言われて、そんなのも東京に住んでないと絶対ない話で。

ーそれこそSNSで動画を見るのは地方のどこにいてもできるけど、実際にそこに行ったり、出会ったりっていうのは、東京は絶対数が違いますからね。

onoue:そういうのはやっぱり全然違うなと思いますね。

ー次の作品からは上京による影響も入ってくるでしょうね。

sakaguchi:あると思います。対バンとか見て、いい曲があったらずっと頭のなかで流れてて、パクリじゃないですけど、そういう曲をつくりたくなりますよね。福岡にいてもそれはそうでしょうけど、東京だとそういう機会が増えるというか。

ー東京は絶対数が多いから、何か流行ったり、ムーブメントが起こったりすると、みんなが影響され合って、平均化されちゃう。それが飽和してくると、札幌や福岡からシーンに影響されてない人たちが出てくる、みたいなことが歴史として繰り返されてる印象です。最近はNOT WONKとかテレビ大陸音頭とか、北海道からのバンドが目立ってた印象があるけど、アルドはアルドのまま、福岡らしさも保ちつつ、東京からも上手く吸収してほしい。

onoue:僕はもう東京に1年住んでるんですけど、つくる曲がどんどん売れない方向に向かってるというか、出てくるアイデアがどんどんニッチなほうに向かってて。東京に住んだらもっと洗練されたアイデアがパッて出て、バカ売れする曲ができるんじゃないかと思ってたんですけど……人間って面白いなって感じです。福岡のときの方がもっとポップな人間だったなって(笑)。

—そこは根っからのカウンター気質なのかも。

フリー / フェイクジャズがキーワード。実験的なサウンドはどこから生まれるか

ーバンドのスタートとしてはマイルス・デイヴィス的な「フリージャズ」、もしくはラウンジ・リザーズ的な「フェイクジャズ」がキーワードとしてあったのかなと思うんですけど、あらためてバンドの最初の構想について教えてください。

onoue:「ロックバンドがフリージャズをやる、みたいなコンセプトでやってみたらかっこよくね?」っていう、それがこのバンドの大元のアイデアになってます。

アルドでは“Nada”っていう曲を一番最初にスタジオでやったんですけど、この曲のコンセプトが、それぞれロックバンドをやってきた僕らでも、ジャズっぽい構成でフリーにやったら、クールで難しくてかっこいい音楽になるんじゃないか、みたいなことで。

菊地成孔のDC / PRGとか大好きなので、それをめちゃめちゃ単純化したようなベースとドラムとギターのカッティングだけをそれぞれが持ち寄って、それを合わせてできた曲なんです。

ーフリージャズとか、ニューヨークのアヴァンギャルドなシーンについても、福岡のライブハウスに出るようになってから知ったわけですか?

onoue:そうかもしれないですね。もともとジョンスペ(ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン)みたいな、ガシャガシャして、シンプルでもかっこいいのがいいなと思ってたんです。そこから遡って、ジェームス・チャンスとかDNAを知るタイミングと、地元のライブハウスでfolk enoughやPANICSMILE、ナルコレプシンを知るタイミングがほぼ同時期で。

folk enoughには“lindsey”っていうアート・リンゼイに対しての曲があって、「これかっけえ!」って思って。そうやってニューヨークパンクと、福岡の先輩バンドが僕のなかでリンクして、自分もそういうことがやりたいと思いました。

ー曲によってトランペットやサックスなど楽器を持ち替えることもありますよね。トランペットとサックスを誰かに頼むのではなく、自分たちで吹いてしまうというのはバンドの性格をすごく表してると思うんですけど、いつから始めたんですか?

sakaguchi:サックスは3年前ぐらい。

onoue:トランペットはもうちょっと前からで、5年くらいです。フェイクジャズのフリージャズなので、俺が吹くことに意味があると思ってて。で、ブックオフで5000円ぐらいで買いました。

sakaguchi:始めたきっかけは覚えてないんですけど、サックスにめっちゃ興味が出たんですよね。で、ちゃんとやるかわからないけど、とりあえずほしいかも、みたいになって、みんなで練習終わりに車でハードオフを巡って、15000円ぐらいで見つけて。いまもそれをずっと使ってて、できればずっとこれでいきたい(笑)。

僕はもともとピアノをやってて、そこからベースもギターもドラムもやってきたので、サックスに関しても誰かに頼むっていうのは考えてなくて、「自分がやるか」みたいな感じでした。

ーリズム隊の2人にしても、ジャズを通ってきてるわけではないんですよね。

dischaaageee:僕はパンクロックとかガレージロックがルーツですね。

ー名前もハードコアバンドのDischargeから取ってるわけですよね?

dischaaageee:そうです。ボアダムスとかも好きで、そこからジョン・ゾーンとか、ニューヨーク周りのアーティストも知っていった感じです。

ーyamashitaくんはソウルやヒップホップがルーツなんですよね。

yamashita:僕は自分がやるにしても聴くにしても、「かっこよければすべてよし」みたいな考え方なので、アルドもシンプルにかっこいいなって。実際やってみると難しいですけど(笑)。

ーサードアルバムの『das Ding』に収録されている“A”では〈this is fake, fake is cool.〉というリリックがあって、フリージャズやフェイクジャズがキーワードであるというような、まさにバンドの精神性が表れていますよね。

onoue:“A”はryunosukeがつくったんですけど、それこそサックスを買った当日くらいにできたリフなんですよ。それがめっちゃかっこいいなと思ったので、アルドでやりたいって言って、いかにも「フェイクジャズをやります」みたいな歌詞にしたんです。

建築家の名前を冠した理由は?建築と音楽の関係

ーonoueくんは高専の建築科出身で、aldo van eyckというバンド名もオランダの建築家の名前から取られている。onoueくんのなかで建築と音楽はどのように結びついているのでしょうか?

onoue:いや、そこはぶっちゃけあんまり関係ないかな。

ー建築の技法と作曲の技法に自分のなかでリンクがある、みたいなことではなく?

onoue:リンクしていくもんかなと思ったんですけど、日に日に「いや、全然ちゃうわ」って。もっと頭のいい人ならそういうこともできるのかもしれないですけど。建築はすごく好きなので、歌詞にする内容とか、曲を説明する言葉とかは、建築に関係する言葉が引用される部分もあるんですけど、根本的には全然違うなって。

音楽は空中を漂ってるもので質量がないけど、建築は芸術的な鑑賞が可能なジャンルのなかで一番重いものなので、質量の観点でいくと真逆だと思ってて。

sakaguchi:最初の頃は建築の話とかも言ってた気がするんですけど、最近は聞かなくなりました。まあ、聞いてもあんまりわかんなかったけど(笑)。

ー一連の楽曲シリーズ「L S Drive Apartment」はドイツの建築家であるルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの作品「Lake Shore Drive Apartment」がモチーフなんですよね。

onoue:あれもほぼジョークみたいなもんで。最初が「LSD」になるから面白いなって。バンド名も単純に綴りがかっこいいなと思ったんですよ。音楽家って好きなものとか敬愛するものをいい意味で軽率に引用元にしたりするじゃないですか。

ーさっきのfolk enoughの“lindsey”もそうかもしれないし。

onoue:ほんとそのノリですね。 高校のときは安藤忠雄がカート・コバーンぐらいかっこいいと思っていて。安藤忠雄の顔写真の Tシャツとかあったら買ってたぐらい、めちゃめちゃかっこいいと思ってたから、いまもそのノリで引用してる感じです。

3rdアルバム『das Ding』、最新リリース『Gilles Nerv / smooth “dead” fallin’ line』のこと

ー去年リリースされたサードアルバム『das Ding』は、ジャズはジャズでもR&Bやヒップホップが融合した現代ジャズ的な作風に寄っていたり、これまでよりも歌が前に出て、ポップス的な側面が強くなった作品でしたが、どんな青写真がありましたか?

onoue:あのアルバムで一番最初にできたのが“Dahlia”なんですよね。あの曲ができたのは僕らのなかで結構デカくて。

ーアルド流のポップスの名曲だと思います。

onoue:あれはryunosukeがギターのリフとコード進行と全体の大まかな構成を持ってきて、「めっちゃ歌うやん」みたいな感じで。セカンドに入ってる“last dance”って曲があって、あれはちょっと半笑いでやってたんですよ。「歌ものやってますね」みたいな。

“Dahlia”も俺的には最初そのノリがあったというか、「こういう曲やっちゃうんだ」みたいな感じだったけど、でもすごくいい曲だと思ったから、“Dahlia”を軸にできたアルバムがサードだった感じですね。

sakaguchi:僕のなかではさっき話に出た「L S Drive Apartment」のシリーズの延長みたいなイメージで、コードのなかにもうちょっとメロを入れられないかな、みたいなところから始まって。で、進行をつくってみたら切ない感じになって、スタジオでリフだけ弾いてみて、みんなの顔色をうかがってたら、「いいね!」みたいになって。最初はあまりにもポップネスが強かったので、試しにちょろっと弾いてみて、ダメだったら自分のインスタにギター動画として上げて終わりでも全然いいと思ってたんですけど。

ーでもいざ持っていってみたら、メンバーの反応も良かったし、リリースしてみたら、お客さんの反応も良かった。

yamashita:“Dahlia”はいまだにほぼ毎回ライブでやってるんですよ。だいぶ曲も増えてきたので、なかにはやらなくなった曲もあるんですけど、“Dahlia”はほぼ毎回やるので、やっぱりそれぐらい大事で、お客さんも待ってるし、名刺代わりの一曲かなって。

dischaaageee:俺はこういう曲すごくテンション上がります。“last dance”ができたときも、それまでで一番くらいうれしかったんですよ。俺はこのバンドの歌ものが大好きだから、“Dahlia”もずっとやっていきたいですね。

ー現時点での最新作は今年5月にリリースされた『Gilles Nerv / smooth “dead” fallin’ line』。“Gilles Nerv”はジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)がモチーフですか?

onoue:いや、ジャイルス・ピーターソンって誰ですか?

ーイギリスのDJで、アシッドジャズをはじめ、ロンドンのジャズとクラブシーンをつなげてきた人で。“Gilles Nerv”にはクラブミュージック的な色があるから、意識してつけたのかなと。

onoue:このタイトルは哲学者のジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze)から取りました。タイトルを決めるときに、ryunosukeが「Nerv=神経みたいな感じがいい」って言ったんですよ。

それで、ジル・ドゥルーズが提唱した概念のなかに「リゾーム」っていう用語があって——「分散していく」みたいな意味なんですけど——いままでの社会はツリー状で、トップダウン式の社会構造であり、人間関係だったのが、ジル・ドゥルーズはリゾーム的に世界を構築していくべきで、ノマド的な、定住しない生き方を提唱していて。そういう思想に憧れてた時期があったから、神経って言われたときに、じゃあリゾーム的な歌詞にしようと思って、それでタイトルに「Gilles」をつけて。

ーなるほどなあ。

onoue:歌詞はちゃんと公開してないですけど、「レッツダンス」とか言いながら、「このクソの曲で踊れ」と言ってたり、「一緒に行こう」って言ってるのに、最後は「ちょっと一人にしてくれ」って言ったり、ずっと何を言ってるのかわからない、前後が食い違ってる、みたいな感じにして。

そもそもの曲が展開に展開を重ねる感じだったので、それに合わせて歌詞とメロも回収されないというか、「どこに行くの?」っていう、スキゾ的に、逃走していくような感じで作って。

ー“Gilles Nerv”について、sakaguchiくんは「朝4時に家に帰ってベッドに倒れ込んだらドラムンベースにお辞儀しながらR&Bソウルと握手してました」とコメントしていました。

sakaguchi:最初はドラムンベースがつくりたくて、だから結構速くて、ドラムも手数多くて……みたいなところから考えたんですけど、でもそうならなくて。リフもすごい曖昧で、キーもよくわからない。2Aとかはちょっとソリッドになってるけど、あとは霞みたいな感じにできたらいいなと思ってつくりました。リズムは最初ジャングルっぽい感じで考えてたけど、デモは僕が叩くので、上手く叩けなくて、無理やりやったらあんな感じになって、でもこれはこれでいいかと思って。

dischaaageee:ドラムンベースをやるんだったらもうちょいBPMを上げないといけないなと思ったんですけど、でも僕は“Dahlia”と同じくらい好きな曲です。

sakaguchi:“Dahlia”ほどポップにはしないというか、自分たちの暴れたい感じとポップネスをもっと両立させたいなと思ってました。最終的には結構R&Bになったというか、個人的にはカーティス・メイフィールド的になったなと思ってます。

yamashita:僕はこれでもテンポ速いなと思うので、まだプレイに余裕がないんですけど、でもこの曲もライブの定番になってきましたね。

ー“smooth “dead” fallin’ line”はonoueくんの作曲で、5分以上ある長めの曲は基本的にonoueくんって感じですよね。

onoue:長くしちゃうんですよね。

sakaguchi:僕はできるだけ短くしたい。

onoue:この曲はウォーキングベースと、クリス・デイヴやネイト・スミス的なタイトなドラムを組みわせたら、ありそうでない感じが面白いんじゃないかなって。

yamashita:この曲はすごく繊細な曲で、神経使いますね。

dischaaageee:ドラムもむずいんですよね。基本的にonoueの曲の方がレコーディングは難しいかな。ryunosukeは基本がロックなので、自分としてはやりやすい。

sakaguchi:(onoueのつくる曲は)結構ゆるやかな曲が多いなと思ってて。なので、ちょっと意識的に速めの曲をつくろう、みたいなことは思ったりします。

ーテンポ感にしろ尺にしろ、2人の作曲のキャラクターもはっきりしてきましたよね。シングル以降、現在のバンドのモードについてはいかがですか?

onoue:次のアルバムは、僕的にはもうめちゃめちゃ尖って、またわけのわからないのをつくりたいなと思いつつ、どうしようかなって感じですね。ポップなのも好きだし、尖るなら上質な尖り方をしないと見てられない感じになっちゃうんで、それもまたむずいなって。来年にはアルバムを出したいと思うんですけど、どうまとめるかを考えつつ、スタジオに入りつつ、みたいな感じです。

10月はWWWでワンマン。これからの野望は?

ー10月にはワンマンライブが決まっていますが、どんなライブになりそうですか?

onoue:5月から7月に「into the ash」っていう企画を各地でやらせてもらって、毎回1時間半以上のライブをやって、長尺でやるのにも若干慣れてきたかなって感じで。なので、この半年間で鍛え上げた集大成的なものが見せられたらなって感じですね。

yamashita:「into the ash」で毎回1時間半ぐらいやってたら、最近それが長く感じなくて、気づいたら終わってるみたいな感じなんですよ。それぐらい長丁場に適応してきてるから、ワンマンでもまた違ったいい感じのライブができたらなって。

dischaaageee:“Dahlia”でシンガロングさせたいな。俺がクアトロの深夜でソロをやった後、 DJが“Dahlia”を流して、お客さんがメロディーをシンガロングしてくれて、それがめっちゃ気持ちよかったから、「あれバンドでできんかな?」みたいな。俺はシンガロング大好き男だから、いまのところそれが目標です。

sakaguchi:新曲も何曲かやれたらいいなと思ってます。

ー上京以降の一つの集大成であり、きっとここから先も見せるようなライブになるでしょうね。東京にも来たし、この先の野望もあったりするんですか?

onoue:大事なのはいい音源をつくって、いいライブをすることだけなんですけど、でもやっぱり、でかいところでやれたらいいんでしょうね。

sakaguchi:海外とかね。

onoue:「え、こんなにもらっていいんですか?」ってくらいお金をもらえるようにもなりたいです。

sakaguchi:もらったらいろいろやりたいことができるかも。新しいサックスを買ったり(笑)。

ー果たして売れない方向に向かっていいのか(笑)。

onoue:そうなんすよ。だからいまちょっと葛藤してて。

ーでもポップス的なものをつくったとしても、変にセルアウトにはならない人たちだと思うし、アングラなほうにも振り切れることはなさそうな気がするので、自分たち的に「こんなことやっちゃっていいの?」ぐらいのことをやっても良さそうな気はします。

sakaguchi:ぐちゃぐちゃなやつやりたいわ。

onoue:それはそれで難しいよね。

sakaguchi:それにも技術がいる。

ーでも技術がつきすぎても、それはそれで失われるものがあったり。

sakaguchi:謎の筋肉がついていったらいいですよね。綺麗な筋肉じゃなくて、「ここだけ何に使うの?」みたいな、歪になってたらいいですね。

ーaldo van eyckみたいなバンドはほかにいないから、すでにアルド筋みたいなのがついてそう(笑)。

sakaguchi:肺活量はだいぶ鍛えられましたね(笑)。

onoue:特にライブに関しては、やっぱり音源と違って、フィジカルで、叩き上げ的に上手くなるしかないところもあると思うので、10月のワンマンではそれが伝わればうれしいですね。

ライブ情報
『aldo van eyck solo concert “Deconstruction of the Blues”』

日時:2026年10月15日(木)19:30〜21:30(予定)
場所:東京 渋谷WWW
プロフィール
aldo van eyck (アルドファンアイク)

2021年福岡結成の4人組バンド。オランダの建築家をその名の由来に持つ。ブルース、ガレージ、ポストパンク、ジャズ等を飲み込んだ実験的かつ狂気的なサウンドで、唯一無二のグルーヴを紡ぎ出す。2nd Album『dead shot dan』でのCDショップ大賞2024九州ブロック賞受賞を経て、2025年には71分に及ぶ大作3rd Album『das Ding』をリリース。 香港公演の敢行や国内フェスへの出演に加え、主催公演のソールドアウトを連発するなど、ライブバンドとして破竹の勢いでシーンを席巻している。



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