音楽ライター、金子厚武の連載「up coming artist」。注目の若手アーティストを紹介し、その音楽性やルーツを紐解きながら、いまの音楽シーンも見つめていく。第13回目にフォーカスするのは、たしかな演奏技術と破天荒なパフォーマンスで注目を集めているテレビ大陸音頭だ。
2023年に高校の軽音学部で結成され、初めてリリースした“俺に真実を教えてくれ!!”がSpotifyのバイラルチャートで3週連続1位を記録。「噂の高校生バンド」として地上波デビューすると、突然歯を磨き始めるなど破天荒なパフォーマンスが話題を呼んだ。スマホで音楽を聴き、SNSでライブ映像を眺めることが当たり前になった現代。そんな時代のなかで、強烈な「身体性」を感じさせるバンドだ。
どこか懐かしいようでいて、しかしたしかに新しい。それはなぜか? テレビ大陸音頭からは、1990年代のハードコアからの流れを受け継いだ、アンダーグラウンドなオルタナシーンの系譜も感じる。そのうえで、現代ならではの環境だからこそ生まれた独自性があるのではないか。周辺のシーンも紐解きながら、語っていきたい。
音楽は好きだけど、最近、新しいアーティストに出会えていない……情報の濁流のなかで、瞬間風速的ではない、いまと過去のムーブメントを知りたい……そんな人に、ぜひ読んでほしい。
「噂の高校生バンド」で話題に。ポストパンクの系譜から爆誕したオリジナリティ
テレビ大陸音頭は2023年に高校の軽音学部で結成され、北海道札幌市を拠点に活動する4人組。2024年3月に初めてリリースした“俺に真実を教えてくれ!!”がバズを生み、Spotifyのバイラルチャートで3週連続1位を記録した。
テレビ大陸音頭
2023年、北海道札幌市にて結成。千代谷竜司(Vo)、鈴木隆太郎(Gt)、戸借晴亜(Ba)、ヤナガワヒロト(Dr.)からなる。6月10日には初のアルバム『VS Tairiku Ondo』を発表している。
「噂の高校生バンド」として、日本テレビ「DayDay.」やTBS「情報7daysニュースキャスター」といった地上波の番組に出演し、メンバー同士が蹴り合ったり、ボーカルの千代谷竜司がなぜか歯を磨き始めたりという、破天荒なパフォーマンスも大きな話題を呼んだ。
Televisionと暗黒大陸じゃがたらからバンド名をつけたというエピソードが示している通り、彼らの音楽的なルーツにあるのは1970〜1980年代のニューウェイヴやポストパンク。エッジーかつダンサブルな楽曲からはTalking Heads、Joy Division、Gang of Four、DevoからのPOLYSICS、ZAZEN BOYSといったバンドの名前が次々と思い浮かぶし、もちろんただの懐古趣味というわけではなく、2020年前後に盛り上がったサウスロンドンのポストパンクシーンともリンクし、実際に“俺に真実を教えてくれ!!”はblack midiとの同時代性を感じさせるものだった。
彼らはYouTubeやサブスクがすっかり当たり前になった世代であり、自らの興味のままに時代も知名度も関係なく音楽を掘り進め、「テレビ大陸音頭」としてのオリジナリティを獲得してきた。
スマホを捨てて、バンドやろうぜ。6月解禁の初フルアルバムから感じる「身体性」
“俺に真実を教えてくれ!!”を1曲目に据えた『VS Tairiku Ondo』は、ここまでの歩みを詰め込んだ最初の集大成。彼らの曲のなかでは最もヘヴィで、うっすらダブの影響も感じる“異次元の暮らし”、鋭角的な2本のギターが絡む“直撃世代”、歌詞に出てくる「祭り」というキーワードが直接的に向井秀徳を連想させつつ、途中からテクノに変化する“hentai”など、どの曲も面白い。
なかでも最近外見が一時期の坂本慎太郎化してきたギターの鈴木隆太郎のリフメイカーとしての才能は素晴らしく、新たなギターヒーローの出現を感じさせる。ミニマルかつプログレッシブな展開がマスロック的でありながら、メロディアスな側面も持ち合わせる“超常現象を信じてみる”は過去一の仕上がりで、曲のムードこそ違うものの、black midiの代表曲の一つである“John L”にも劣らないインパクトだ。
アルバムのラストに収録され、シーケンスを用いたポップな曲調が異質な“夜について”はバンドを結成して最初につくった曲だそうで、「これまでの集大成」という作品の位置付けをより強めている。
歌詞は語感重視のナンセンスなものが多く、尖りつつもチャーミングなバンドのイメージをかたちづくっているが、〈ドーパミン中毒にはならない… スマホを捨てて、サッカーしようぜみんなで シュート決めすぎたくなーい? ゴール守ってみたくないかーい!〉と歌う“直撃世代”は文字通り彼らの世代観を表しているように感じる。
SNSのショート動画やスマホゲームなどの刺激の強いコンテンツを消費し、つねに新たな快感や刺激を求め、集中力が続かない若者を指す「ドパガキ(ドーパミン+ガキ)」がネットミームとして広がるなか、彼らはフィジカルなサッカーの……ではなく、バンドの快感や刺激を提示する存在であり、それはライブ映像をもとにした“超常現象を信じてみる”のミュージックビデオからもよくわかる。2026年という年は、いずれワールドカップで日本代表が活躍した年……ではなく、テレビ大陸音頭がバンドシーンを盛り上げた年として記憶されるかもしれない。スマホを捨てて、バンドやろうぜ。歪み踏んでみたくない? スネア叩いてみたくないかい?
2020年代の新たなオルタナ——象徴としてのテレビ大陸音頭とkurayamisaka
この連載では「2020年代の新たなオルタナ」として、2000年代の下北沢ギターロックや残響レコードからの影響を受けたいまのバンドシーンを紹介し、その象徴がkurayamisakaであることを書いてきた。そして、テレビ大陸音頭もまた、異なる系譜で2000年代のバンドシーンとのリンクを強く感じる。
僕は2024年の「ROOKIE A GO-GO」でkurayamisakaのライブを見て、楽器陣が暴れ回りながら、ちゃんと歌ものでもあるそのステージから、9mm Parabellum Bulletやcinema staffといった残響レコード出身のバンドを連想した。その一方、2025年に同じく「ROOKIE A GO-GO」でテレビ大陸音頭のライブを見たときは、そのハードコアかつダンサブルで、ポップなのにアングラ感もあるステージから、ともに2000年代半ばにLess Than TVからデビュー作を発表したデラシネやYOLZ IN THE SKYといったバンドを思い出していた。
Less Than TVは1992年に設立され、今もパンク / ハードコアのシーンを支え続けている老舗のレーベル。テレビ大陸音頭は昨年8月にLess Than TVのイベント『小メテオ』(看板イベントである『METEO NIGHT』の派生イベント)に出演していることからも、たしかに親和性が感じられる。
下北沢ギターロックや残響レコードが日本のバンドシーンにおけるオルタナのオーバーグラウンド化の象徴だったのに対して、2000年代には1990年代のハードコアからの流れを受け継いだよりアンダーグラウンドなオルタナシーンも活性化していたことは重要で、テレビ大陸音頭はこの後者の系譜を2020年代に受け継ぐバンドだという言い方もできるだろう。
風穴を空けるのは、いつだって札幌(もしくは福岡)からの刺客だ
テレビ大陸音頭が受け継ぐ2000年代のアンダーグラウンドなオルタナシーンとは、どんな様子だったのか?
少し個人的な思い出を振り返ると、2000年代半ば頃の渋谷O-nestや秋葉原CLUB GOODMANといったライブハウスは非常に刺激的だった。渋谷O-nestは海外のポストロックのバンドなどをいち早く招聘し、それに呼応するような日本のバンドが数多く出演していたし、秋葉原 CLUB GOODMANでは向井秀徳の盟友であるPANICSMILEの吉田肇がブッキングを担当し、ハードコアもポストパンクもフリージャズも混ぜ合わせたような個性的でぶっ飛んだバンドが頻繁に出演していた。
「時代の寵児」というイメージで言うと、今のテレビ大陸音頭に近いのはnhhmbaseだっただろうか。オーバーグラウンドに進出していくバンドの一方で、アンダーグラウンドではより多彩なバンドが揃い、表裏の関係だったのが2000年代のオルタナシーンだったように思う。
そもそも現在に至るシーンの礎を築いたのが1990年代に海外のハードコアからの影響をいち早く取り入れた、bloodthirsty buthcersやeastern youthといった札幌のバンドだったということも、テレビ大陸音頭を語る上では重要なポイントだ。今年の2月にeastern youth主催の『極東最前線』に出演していることは、まさにその系譜を感じさせる。
インターネット / SNSの浸透によって地域の情報格差は薄まったと言われるが、それでも平均化したシーンに風穴を空けるのはいつだって札幌からの(もしくは、福岡からの)刺客なのだ。2010年代に入るとNOT WONKの登場によって再び北海道の、札幌のオルタナシーンが注目され、現在もthe hatchからタデクイ、sheersückerに至るまで、個性的なバンドが次々登場し、テレビ大陸音頭に刺激を与えている。
2000年代のバンドとのシンクロも感じさせつつ、テレビ大陸音頭があくまで2020年代の、現在進行形のバンドであることはあらためて強調したい。YouTubeやサブスクでいくらでも音楽を掘れて、誰でもGarageBandでデモをつくれる環境は当時とは全然違うし、楽曲制作に関する解像度の高い情報を知ることができる。実際に彼らはまだ20歳ながら、ライブを見れば演奏も音づくりも非常にレベルが高いことがよくわかる。
こういった特徴はkurayamisakaも同様であり、ある種のY2Kリバイバルとして、2000年代のシーンの一側面を受け継ぐ存在として、テレビ大陸音頭もまた、2020年代のオルタナを象徴するバンドだと言っていいのではないだろうか。
- イベント情報
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FUJI ROCK FESTIVAL ’26
テレビ大陸音頭出演日:7月24日(金)11:10〜11:50
場所:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
ステージ:RED MARQUEE
- プロフィール
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- テレビ大陸音頭
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2023年、北海道札幌市にて結成。千代谷竜司(Vo)、鈴木隆太郎(Gt)、戸借晴亜(Ba)、ヤナガワヒロト(Dr.)からなる「今も最もライブハウスシーンで注目される四人組バンド!」。2024年にリリースした“俺に真実を教えてくれ!!”は、Spotifyチャート「バイラルトップ50」で1位を記録。さらに2025年には国内最大級の音楽フェス『FUJI ROCK FESTIVAL』の登竜門ステージ「ROOKIE A GO-GO」に出演。2026年7月24日(金) には『FUJI ROCK FESTIVAL ’26』RED MARQUEEにて出演が決定。
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