レルエが考える、世界に響く日本の音、日本人にしかできない表現

3ピースバンド・レルエが、メジャーデビュー作『Eureka』を3月4日にリリースする。「Eureka」とは、なにかを発見したときの感動を表現する際に使う、ギリシャ語由来の感嘆詞だという。その言葉をタイトルに関した本作は、より広い世界に、自らが「発見される」ことを求めるバンドのパッションが力強く刻まれた作品だ。

アニメ「モンスターストライク」最終章『エンド・オブ・ザ・ワールド』の主題歌にもなった“キミソラ”をはじめ、バンドが本質的に持つスケール感の大きさを存分に感じさせる楽曲たちが並んでいる。そもそも、EDMを昇華したダンサブルなサウンドを得意とするバンドでもあったが、本作には、よりゆっくりと流れるようなメロウネスとダイナミクスを持つ楽曲たちが収められているところにも、今よりも先へ先へと進んでいこうとするバンドの強い意志を感じさせる。

3ピースバンドといえど、ドラムレスでバイオリンも含むという、一風変わった編成によってバンドアンサンブルを構築する、レルエ。彼らが目指すのは、日本のカルチャーを背負い、世界のフェスの舞台に立つことだという。その大きな野心の根っこにある想いと衝動を、メンバー全員インタビューで聞いた。

僕らの目指すものはずっと一貫している。『コーチェラ』みたいな世界的フェスを目指してやってきた。(櫻井)

―新作『Eureka』はメジャーデビュー作となりますけど、心境としてはいかがですか。

櫻井(Vo,Gt):僕らは根本として、多くの人に自分たちの音楽を届けていきたいという気持ちがあるので、モチベーションは上がっています。もっと広いリスナーさんに届けたいという意識が強くなっていますね。

―レルエの音楽を広く届けていった先に目指す場所は、どこにありますか?

櫻井:僕らの目指すものはずっと一貫していて、『コーチェラ』みたいな、世界的なフェスを目指してやってきたんです。

saya(Violin,Synth):今までもずっと、「将来的には世界に出たい」という意識でやってきていて。世界に出たうえで、「日本の音楽」として認知されたいという気持ちが強いですね。

レルエ
左から:saya、櫻井健太郎、エンドウリョウ
2013年8月、櫻井健太郎(Vo,Gt)、エンドウリョウ(Ba)、saya(Violin,Syn)の3人で結成。透きとおるようなハイトーンボイスとエレクトロサウンド、ギター、バイオリンによる、個性的なメロディーが特徴の3人組バンド。『METROCK 2019』『JOIN ALIVE 2019』『PIA MUSIC COMPLEX』等の大型フェスへ相次いで出演。アニメ「モンスターストライク」最終章『エンド・オブ・ザ・ワールド』主題歌へ書き下ろした“キミソラ”を収録した1st EP『Eureka』を2020年3月4日にビクターエンタテインメントよりリリースすることが決定。

―世界で認知されている日本の音楽というと、たとえばPerfumeやBABYMETAL、あるいは初音ミクなどがあると思うんですけど、そういうところまでレルエという存在を持っていきたい?

saya:そうですね。「日本の音楽といえば、レルエっているよね」って、海外の人たちの会話に名前が出てくるような状況を作りたいと思っています。

櫻井:カルチャーの一種として、レルエが認知されればいいよね。

―自分たちの音楽のどのような部分が、世界的に見たうえでの「日本の音楽」としての面白さにつながると思いますか?

櫻井:メロディですね。具体的には「ペンタを多用している」とか、いろいろあるんですけど、旋律の部分が大きいかなと思います。

僕らの音楽はEDMとかインディーロックとか、海外の音楽の要素も取り入れているし、サウンド自体はどんな場所の人にも受け入れられるようにワールドスタンダードなものを意識しているんですけど、そのうえで「日本っぽさ」を残しているのは、メロディの作り方や音の構成に依るところが大きいと思います。

saya:日本の音楽のメロディには独特の哀愁があると思うんですけど、そういう独特さって、きっと世界の人たちにとっては、民族音楽みたいに聴こえるのかもしれないなって思うんですよ。

―確かに、すごく土着的なものとして受け取られている可能性は高いですよね。

saya:今はSpotifyとかで、海外のチャートも見ることができるじゃないですか。たまにインドのチャートとかを見てみたりするんですけど、やっぱり、日本人の視点から見ると独特なチャートなんですよね。で、実際に曲を聴いてみると、旋律も独特だったりする。

その国ではそれがメインとして受け入れられているけど、外から見ると独特に感じる……そういう状況って、日本も同じだと思うんですよ。特に日本のチャートは他の国のチャートと比べると特殊だったりするし、レルエの音楽もきっと、海外の人たちからすると、すごく独特なものに聴こえると思うんです。

―僕も、国ごとのSpotifyのチャートをたまに見比べてみたりするんですけど、日本のチャートは本当に特殊ですよね。

saya:そうなんですよね(笑)。

saya

―そういう部分は「ガラパゴス的」とも言われますけど、「文化が鎖国的なんじゃないか?」という疑問と共に、ネガティブに捉えられることもあると思うんです。そういう意見に対しては、どう思いますか?

エンドウ(Ba):ガラパゴス的だからといって悪い、ということはないと思います。そこから新しいものが生まれるかもしれないし。「いい / 悪い」以前に、もうそういう前提があるのであれば、それを突き詰めていくことで見えるものもあると思う。

saya:そうだね。それに、チャートの違いでいったら、インドも違いますからね……って、さっきからインドは例として挙げているだけなんですけど(笑)。

日本語の響き自体に、拒絶反応が持たれるわけではないと思うんです。曲がよければ、ちゃんと世界でも聴かれている。(saya)

―でも、そうなんですよね。基本的に国のチャートというのは、グローバルに聴かれているものと、ドメスティックに支持されているものが混ざり合って形成されていて。最近だったらビリー・アイリッシュやジャスティン・ビーバーのような、あらゆる国のチャートに入っている人がいるのと同時に、その国の土着的な要素を多く含んだ音楽が並んでいる。日本は、独自のものが占める割合が異様に高い、というのはあるんですけど。

Spotifyプレイリスト「日本 トップ50」

Spotifyプレイリスト「インド トップ50」

Spotifyプレイリスト「グローバル トップ50」

saya:やっぱり、言語が違うのが大きいとは思うんです。日本語は特に、言語の響き自体が独特なものなんだろうと思うんですよね。だからこそ、それに合うメロディも独自のものになっていくのかなと思う。

ただ、アニソンが世界的に聴かれたりするということは、日本語の響き自体に拒絶反応が持たれるわけではないということだと思うんですよ。曲がよくて、音楽がよければ、ちゃんと世界でも聴かれている。だからこそ、日本独自のメロディのよさを、いかに自分たちの音楽として発信していくか……そこに対して挑戦していく余地はあるんじゃないかなと思うんです。

―確かに、日本の音楽だから聴かれない、という状況ではないわけですもんね。

saya:それに、今は日本国内のシーンでも、根本が洋楽の素養を持っている人たちであったり、根本がクラブミュージックに接してきた、という人も多いと思うんです。でも、私たちは3人共、根本に、歌が主体の日本のギターロックやJ-POPがある。だからこそ、どれだけEDMや海外のインディーロックを消化しても、自然と出てくる日本的な要素があるんですよね。

最初に情景を思い浮かべて曲を作ることが多い。(saya)

―新作『Eureka』を作るに当たっては、事前に考えられていたことはありましたか?

櫻井:今回は、やっぱり2曲目の“キミソラ”が大きくて。この曲はアニメ「モンスターストライク」最終章『エンド・オブ・ザ・ワールド』の主題歌として書かせていただいたんですけど、今まで、僕たちは歌詞であんまり直接的な表現はしてこなかったんです。でも、“キミソラ”では<大丈夫さ ほら仲間がいるよ>って歌っている。それは、アニメを見ている人や、今まで以上に多くの人の感情を揺さぶるためには、直接的な表現も必要だなと思ったからなんですよね。そこは、今までと変わった部分だと思います。

レルエ“キミソラ”を聴く(Apple Musicはこちら

―“キミソラ”を作るうえでは、アニメ制作側の要望などもありましたか?

櫻井:ありました。事前に、かなり熱いことを言っていただきましたね。アニメのタイアップは初めてだったので、最初はちょっと心配だったんですけど、結果としてはスムーズにできました。

アニメで曲が流れているところを想像して作るのは、自分にとって楽しかったです。僕自身、アニメをよく見るんですよ。なので、単純に親しみがあるジャンルだし、こうやって、他の作品に寄り添ったうえで自分たちの表現をすることは、もしかしたらレルエは得意なのかもしれないなって思いました。

saya:櫻井は、最初に情景を思い浮かべて曲を作ることが多くて。そうしてできた曲が地図のようにあって、その地図を受け取った私たちもまた、その音から喚起される情景を思い浮かべながら、音を入れていくんです。なにかを考えて作るというよりは、音を聴いたときに思い浮かぶものを頼りに音楽を作っていく。なので、アニメという具体的な情景が初めからあるのは、私たちとしてもすごくやりやすかったんですよね。

『エンド・オブ・ザ・ワールド』第1話

―sayaさんが言う「情景を思い浮かべながら作る」という作り方は、まさに曲の魅力に表れているなと思います。レルエの音楽って、音で壮大な絵を描くようなスケールの大きさがあるんですよね。

saya:ありがとうございます。付け加えると、私たちの音楽を聴いた人に、私たちがその曲を作るときに思い描いたものと、同じものを感じてほしいわけではなくて。

求めているものは「共鳴」というか。私たちの音楽を聴いて、リスナーさんがその人のなかにあるものを揺らして、想起してくれればいいなと思うんです。結果として、それが、私たちが最初に描いたものと違っても、それはそれで正解だと思います。ただ、私たちは私たち自身で、情景を感じられる音を探しながら、音楽を作っていますよって。

僕は「バンド」が好きなんですよ。そこに、僕の美学がある。(櫻井)

―情景を感じられる音と、なにも感じられない音の違いというのもあるんですか?

saya:あります。でも、そこはもう、本当に無意識的な部分なんですよね(笑)。

櫻井:そうだね、それはもう感覚だと思います。結論として、音楽で、なにか色や映像を表現したいというのがあるんですけど、そこに辿り着くまでは本当に感覚的な選択になってくる。

櫻井健太郎

―バンドという共同体で、感覚的に見える情景を共有する難しさもありそうだなと思うのですが、どうですか? 特に、櫻井さんがメインコンポーザーとして存在している以上、櫻井さんが見たものや見せたいものと、sayaさんとエンドウさんが見たものが違ってくる可能性もあるのでは?

櫻井:ある程度は方向性を指し示したうえで2人に任せているし、信頼しているので、よっぽどのことがない限りは僕から「NO」を出したりはしないです。

それに、僕は「バンド」が好きなんですよ。そこに、僕個人の美学があると思うんです。バンドって、集合して音を出すじゃないですか。僕はアニメやゲームでもファンタジーものが好きなんですけど、パーティーを組んでRPGを攻略していくようなものが好きで。

―バンドも、RPGのパーティーのようなものである、と。

櫻井:そう、だから僕はバンドがいいんです。もちろん、ソロでも音楽を作ることはできるんでしょうけど、僕はやりたくないし、今、バンド以外の音楽の仕事をしたいか? と言われたら、別にやりたいとも思わないんですよね。

―それくらい、バンドに対してのロマンがあるんですね。

櫻井:そうですね。いろんな職業があるなかで、「バンドマン」をやっていることの意味は、自分のなかに強くあると思います。

―ちなみに、櫻井さんはどんなアニメが好きなんですか?

櫻井:もともと野球漫画とかスポ根系が好きだったんですけど、最近は、異世界転生ものが好きですね。『リゼロ(『Re:ゼロから始める異世界生活』)』とか。

―レルエの音楽にもファンタジックな要素はあると思うのですが、異世界転生ものや、ファンタジーを櫻井さんが好むのはどうしてなのでしょうか。

櫻井:なんでなんでしょうね? 現実逃避なのかな……。「サイバーパンク」的なものも好きなんですよね。そこにある非日常感を、自分は求めているんだと思います。そもそも、脳を空っぽにして見ることができるものが好きなんですよ。

―ファンタジーや非現実を求める感性という点、sayaさんとエンドウさんはどうですか。

saya:音楽もそうだけど、違う世界に行ける感覚を求めているっていうのは、私もあると思います。私も、ファンタジーは好きなんです。その世界に、感覚的に浸れるから。逆に、恋愛を歌う歌とか、直接的な歌が苦手だったりするんですよね。浸ることのできる世界観があるものが好きなんだろうと思います。

エンドウ:僕も、アニメは好きで。そもそもは『攻殻機動隊』みたいなものが好きだったんですけど、ああいうのも、SFとかサイバーパンク的なものに近いですよね。

エンドウリョウ

やっぱり作り手としては、命が入っている音を鳴らしたいという気持ちが強くあるんです。(saya)

―話を聞いていて、「感覚的」であることが、レルエの音楽を聴くうえでも、みなさんが実際に曲を作るうえでも、重要なのだろうということがわかってきました。

櫻井:それはあると思います。「感覚」、あるいは「感情」と言ってもいいのかもしれないですけど、そういうものは大事にしていますね。もちろん、創作をやっているので、作る工程として論理的に考えることは必要ですけど、最終的なアウトプットにおいては、僕らは感覚的な部分を大切にしていると思います。その方が、自分たちにとって自然なものが出せると思うので。

―今って、とにかく情報が多い時代じゃないですか。その情報の多さのなかで、みんな迷ったり疲れたりしてしまうこともあると思うんですけど、レルエの音楽が持つスケールの大きさは、「1回、自分の感覚でこの音楽を感じてみろよ」と訴えかけているような気もします。

櫻井:音楽って、根本的にそういうものだと思うんですよ。僕らは、音楽をエンターテイメントとして作っているので、そういうシンプルな部分は、いつも大事にしておきたいですよね。

―「エンターテイメント」というのは、レルエにとって大切な言葉かもしれないですね。

櫻井:やっぱり、日常の音楽というか、お茶の間の音楽として、選択肢のひとつでありたいと思うので。それに、聴いている人のノスタルジーや懐かしさに訴えかける音楽でありたいな、とも思います。なにかを「懐かしい」と思う感情って、どんな人にもあると思うんですよ。たとえ、その景色を見ていなくても、人が「あ、懐かしいな」と思うものってあると思うので。

―「懐かしさ」と「大衆性」というのはとても密接にむすびついているんだろうなと、僕も思います。最後に改めてなんですけど、そうした「エンターテイメント」としての音楽を今、バンドミュージックとして作ることの意味は、どんな部分にあると思いますか?

saya:やっぱり作り手としては、生きている音、命が入っている音を鳴らしたいっていう気持ちが強くあるんです。今はコンピュータを通して、いくらでも生きている「ような」音を作ることができるし、上手に演奏された「ような」音を作ることができるじゃないですか。でも、私たちはバンドをやっている以上、自分たちの手で、声で、音楽を作っている。

それなら、なにかしら「生」の感情が入った音楽として、なにかが「動いている」ことが伝わってほしいなと思うんですよね。そこに、自分たちがバンドである意味はあるのかなと思います。

櫻井:ミュージシャンって、やりたくなければ、やらなければいいことじゃないですか。でも、僕らはやりたくて音楽をやっている。「それでも、やっている」ということの意味は、自分たちのなかに絶対にあると思っています。

レルエ『Eureka』を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報
レルエ
『Eureka』初回限定盤(CD+DVD)

2020年3月4日(水)発売
価格:2,530円(税込)
VIZL-1733

[CD]
1. あふれる
2. キミソラ
3. 深海
4. pulse
5. 白

[DVD]
・キミソラ Music Video
『LELLE live tour 2019 “Alice” at Shibuya WWW』
・Stockholm
・時鳴りの街
・クローバー
・火花

レルエ
『Eureka』通常盤(CD)

2020年3月4日(水)発売
価格:1,650円(税込)
VICL-65330

1. あふれる
2. キミソラ
3. 深海
4. pulse
5. 白

イベント情報
『インストアツアー「LELLE acoustic in-store tour “Eureka”」』

2020年3月28日(土)
会場:大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース

2020年4月4日(土)
会場:東京都 タワーレコード渋谷店 5F イベントスペース

プロフィール
レルエ
レルエ

2013年8月、櫻井健太郎(Vo,Gt)、エンドウリョウ(Ba)、saya(Violin,Syn)の3人で「レルエ」結成。透きとおるようなハイトーンボイスとエレクトロサウンド、ギター、バイオリンによる、個性的なメロディーが特徴の3人組バンド。『METROCK 2019』『JOIN ALIVE 2019』、2年連続となる『PIA MUSIC COMPLEX』等の大型フェスへ相次いで出演。2019年9月18日に初のフルアルバム『Alice』をリリース。収録曲“時鳴りの街”がTBS系テレビ『CDTV』9月度エンディングテーマへ抜擢。アニメ「モンスターストライク」最終章『エンド・オブ・ザ・ワールド』主題歌へ書き下ろした“キミソラ”を収録した1st EP『Eureka』を2020年3月4日にビクターエンタテインメントよりリリースした。



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