特集 PR

脱退?休止? 快快が迎えた分岐点をメンバーが語る

脱退?休止? 快快が迎えた分岐点をメンバーが語る

インタビュー・テキスト
杉浦太一
土佐有明
撮影:小林宏彰
2012/02/03
  • 0
  • 43

座談会に入る前に、少し長めな前置きを書かせていただきたい。

2004年の年末の西荻で、快快(ファイファイ)は旗揚げ公演をした(当時は「小指値(こゆびち)」という劇団名)。多摩美術大学の卒業制作として彼らが行なったその公演は、一言で表せば青臭くて、モラトリアム全開。でも当時から、決して整ってはいないけど、かんたんに「演劇」という枠組みを越えてしまう、求心力としか言いようがない不思議な力を放っていた。そしてこれをきっかけに、たまたま集まった彼らは、卒業後も劇団として活動を続けていった。

演劇でも何でも、普通はこの辺りから、色んなことをまとめにかかる。技巧的に、ソツなく仕上げることに満足していく。それなのに彼らはその後、全開だったモラトリアムっぽさをさらに突き抜けさせていった。それは、ただの無茶やハプニングではなく、もしかすると誰もが持っていたかったけど、知らぬ間に置いてきてしまった「世界や人間に対するどうしようもない好奇心」のようなものを、ただ純粋に追求し続ける姿だった(少なくてもぼくにはそう見えていた)。

そうこうしているうちに、今や国外にも活動を広げ、ひっぱりダコの彼ら。スイスの舞台芸術のフェスティバルで最優秀賞を穫ったりと、イケイケ感が漂っていた。そんな折、今年、快快から演出の篠田千明を含む、主要メンバーがぬけるとの知らせが……。2月16日からは、公演『アントン、猫、クリ』を控えている。「どういうこと?」と思った。まさか30歳を迎えた彼らが、ありがちな「結婚したから」とか「そろそろ普通に働きたい、かな」みたいなことを言いだすとは到底思えなかったからだ。そこで、快快を脱退・休止するメンバーを含む7名による座談会を実施。話しを聞いて浮かび上がってきたのは、誰もが人生の分岐点で遭遇しうる、とても発展的な「これから」の選択だった。

自立するために辞めたほうがいいと思った。(中林)

―快快が今、劇団として大きな転機を迎えていると聞きました。まずはリーダーの北川さん、快快の今後について教えてもらえますか?

写真左から:中林舞、山崎皓司、天野史朗、北川陽子
写真左から:中林舞、山崎皓司、天野史朗、北川陽子

リーダー:北川陽子(通称:ヨンちゃん)
リーダー:北川陽子(通称:ヨンちゃん)

北川:公演予定としては、2月に『アントン、猫、クリ』をやって、5月にバンコクで『SHIBAHAMA』をやって、9月に横浜のKAATで新作をやります。で、9月以降に辞める人と休む人がいるから、9月はこのメンバーでやる最後の作品になりますね。

―辞める人と休む人っていうのは誰ですか?

北川:篠田(千明)と、やし(中林舞)は辞める。天野(史朗)と(大道寺)梨乃は休む。9月以降は、それ以外のメンバーで快快を続行します。

―辞めるとか休むっていうのはそもそもどういう経緯で?

篠田:私は、今年の4月からバンコクを活動の拠点にするんですけど、それが快快をやりながらだと、両方とも片手間になっちゃうなと思って。だったら、キリのいいところで1回辞めたらどうか? って考えたら、色んな可能性が見えてきた。でもそれは私個人の話で、ちょうど全体の体制を変えようっていう時期だったんだよね。話が出たのが去年の10月くらいだったかな。

中林:私は前から役者としてやっていきたかったんだけど、ここ1年くらいでその気持ちがより強くなってきて。それが快快をやりながらだと結構無理が出てきたんです。快快って、非合理的に作ってるところがいいと思うんですよ。誰かが仕切ってプログラムを決めて、今日はここのシーンをやるから役者はここまで台本を覚えて、という形ではやらない。その面白さもあるけど、時間を膨大に使うところもあったりする……。自分が本来やりたいことと快快がずれてきている感じが大きくなっていったんです。

あと、快快って、私個人よりずっと知名度もあるし、才能のある人が集まっているから、そこにいると頼っちゃったり、さぼっちゃったりする。荒療治じゃないけど、自立するために辞めたほうがいいと思ったところもありますね。

写真左から、演出:篠田千明、役者:中林舞(通称:ヤシ)
写真左から、演出:篠田千明、役者:中林舞(通称:ヤシ)

 
役者・アートディレクター:天野史朗

天野:僕の場合は、もっと実行力がある楽しいことしたい、っていうことかな。快快にいると楽しいのよ。でも、楽しいだけで世界何も変わってないじゃん? っていう気持ちもあった。ほんとはそれってもう楽しくないはずなんだよね。公演やって、ツアー周って、お金もらって、っていうサイクルができあがって、これ続けていってこの先どうするんだろう?って。

そんな時に震災があって。まー、前から思ってた事だから、それはキッカケに過ぎないけど。もっと明確に世の中を良い方向に変える事ができないかと思った。でも、これまで快快の中にいてずーっとそればかりだと何もできないなって。

北川:具体的にはどういうことをやりたいの?

天野:今まで自分がやってきた事で一番実行力があるのってやっぱりデザインで、デザインって店の売り上げ伸ばして経済回したり人の流れを変えたり、具体的なアクションにつなげられるじゃん。だからそこをもっと生かしたい。思想を持ってね。独立も含めて色々考えていったら自分の足で歩くのって楽しいなって思うようになった。快快との掛け持ちは出来ないと思ったから、とりあえず1年はデザインで、って感じ。

―あと、今ここにはいないけど、梨乃さんは?

篠田:梨乃はイタリアに行く。役者としてじゃないけど、演劇に関わるみたい。イタリアの古い駅を使ったフェスティバルの、実行委員のインターンをやるって言ってたよ。

Page 1
次へ

イベント情報

快快
『アントン、猫、クリ』

2012年2月16日(木)~2月20日(月)OPEN 19:00(20日のみ18:00開演)
※開場は各回開演の30分前 英語字幕あり
会場:神奈川 黄金町 nitehi works
作・演出 : 篠田千明
脚本:北川陽子
出演:
捩子ぴじん
大道寺梨乃
野上絹代
山崎皓司
舞台監督:佐藤恵
舞台監督助手:小原光洋
舞台装置:佐々木文美
照明:中山奈美
映像:
伊藤ガビン(ボストーク)
宮本拓馬(BOW)
天野史朗
音楽:安野太郎
音響:星野大輔
衣装:藤谷香子
宣伝美術:天野史朗
写真・ウェブ:加藤和也
記録映像: 鈴木余位
加藤秀則
川添 彩
甫木元空
字幕・翻訳:Sebastian BREU
制作:河村美帆香
料金:前売2,800円 当日3,000円(全席自由)

コメンタリー・レクチャー日替わりゲスト
『「アントン、猫、クリ」を100倍楽しく攻略する!』

2012年2月16日(木)
ゲスト:
米光一成(ライター、ゲームデザイナー)
伊藤ガビン(編集者、ゲームデザイナー)

『「ハジメテン」といっしょ』

2012年2月17日(金)
ゲスト:
梅佳代(写真家)
金氏徹平
川島小鳥(写真家)
小橋陽介
西光祐輔(写真家)
パトリック・ツァイ(写真家)

『りたーんず再集合!?』

2012年2月18日(土)
ゲスト:
白神ももこ(ダンサー、振付家、モモンガ・コンプレックス主宰)
杉原邦生(演出家、舞台美術家、KUNIO主宰)
中屋敷法仁(演出家、劇作家「柿喰う客」代表)

『「アントン、猫、クリ」キャストの保護者参観日』

2012年2月19日(日)

『あつまれ!メディアキッズ』

2012年2月20日(月)
ゲスト:
植田憲司(キュレーター)
安野太郎(音楽家)
山城大督(美術家、映像ディレクター、Nadegata Instant Party)

プロフィール

快快(fai-fai)

2004年結成(2008年に「小指値」から「快快」に改名)。集団制作という独自のスタイルで作品を発表し続ける、東京を中心に活動する劇団。2009年よりアジア、EUにも活動の場を広げ、2010年9月代表作『My name is I LOVE YOU』でスイスのチューリヒ・シアター・スペクタクルにてアジア人初の最優秀賞、『ZKB Patronage Prize 2010』を受賞。既存の概念を越境しては演劇という枠に揺さぶりをかけ続ける「Trash&Freshな日本の表現者」として国際的にも注目されている。2012年の活動としては、2月『アントン・猫・クリ』、5月バンコクにて『SHIBAHAMA』ファイナルツアー、9月には新作の発表を控えている。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

シャムキャッツ“Four O'clock Flower”

ただシャムキャッツの四人がフラットに存在して、音楽を鳴らしている。過剰な演出を排し、平熱の映像で、淡々とバンドの姿を切り取ったPVにとにかく痺れる。撮影は写真家の伊丹豪。友情や愛情のような「時が経っても色褪せない想い」を歌ったこの曲に、この映像というのはなんともニクい。(山元)