
インナーワールドの探求 TOWA TEIインタビュー
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
「2012年、音楽業界は好調か?」と聞かれて、はっきりと「YES」と答えられるほど状況は甘くないが、それでも以前に比べると、後ろ向きな話をする機会は減ってきた。その理由は、経済的な状況が好転したわけではなくとも、キャリアのあるミュージシャンがそれぞれのやり方で時代と向き合い、パワフルな姿勢を見せてくれているからのように思う。Deee-Lite時代から常に日本のダンスミュージックをリードしてきたTOWA TEIもまさにその1人であり、一昨年に自身が店長を務める電子セレクトショップMACH(マッハ)をオープンし、音楽を中心に、映像やアートワークなどの販売も行っている。MACHで配信されていたリミックスと新曲による『MACH 2012』は、タイトル通りMACHをプレゼンテーションする作品であり、ジャケットを飾るTTの手によるコラージュ作品が象徴するように、TTのモノ作りに対する愛情が詰め込まれた作品でもある。5月4日からはMACHに参加しているアーティストを中心とした展覧会も開催するなど、多岐に渡る活動の背景にある想いを聞いた。
40年以上生きて人生の折り返し地点を向かえると、若いときには考えなかったことを考えるようになる。
―普段も朝早くから活動されてるんですか?(※この取材は午前10時から行われた)
TOWA TEI:いつも5時ぐらいに起きてるから、そろそろ疲れる頃です(笑)。ここ(TOWA TEIの事務所)の向かいがお寺で、6時ちょうどに鐘が鳴るんですけど、大体その前に起きてますよ。
―でも、DJをたくさんやられてた頃は夜型だったんじゃないですか?
TOWA TEI:いや、夜型だったのはニューヨーク時代までで、子供ができたのと同時に帰国してからはずっと朝型なんです。今思うと、夜型だった頃っていうのは何らかのソサエティに属していたい気持ちが強かったんでしょうね。
―それはどうしてですか?
TOWA TEI:やっぱり、ニューヨークでダンスミュージックという大きなソサエティに出会って、それが自分にとっての引き出しだったから。で、日本に帰ってきてから朝型になったんだけど、戻ってきてから作ったセカンド(97年)とかサードアルバム(99年)は、R&Bやドラムンベースといった、そのときの興味の対象を自分なりに消化して、そういうソサエティを面白がっていたところがありますね。
―属すのではなく、消化するようになっていったんですね。その文脈で言うと、今回の『MACH2012』はどんな作品だと言えますか? 半分は既発のリミックス音源ですね。
TOWA TEI:リミックスの目的って、オリジナルと違うバージョンを作って、違う層の人たちにアピールすることですよね。でも実は今、違った層にアピールしたいとはあんまり思っていなくて(笑)。以前はアルバムを作ったら、そのリミックスアルバムを企画してリリースしたりしてたんだけど、今はフルボリュームのリミックスアルバムじゃなくていいかなと思ってるんです。だから今回収録しているリミックスは、DJとして、ただ単に自分が楽しみにしてたっていう面が強いのかもしれない。
―違う層にアピールすることへの興味が薄まったのは、もうソサエティを意識していないからなんでしょうか?
TOWA TEI:確かにソサエティよりは、自分の中での「新しいこと」に興味があるかな。昔からそうだったけど、今はその傾向がより強まったように思います。アルバムを作った後もよく「コンサートやらないの?」って言われるんですけど、早く次の興味を追求したいし、そもそも練習とか嫌いだから(笑)、やらないんですよ。作ったら終わり、DJで気が向いたらかけるぐらいで。
―最初の早起きの話もそうですが、今は自分の中の興味とか、時間軸に忠実なんですね。
TOWA TEI: 40年以上生きて人生の折り返し地点を向かえると、若いときには考えなかったことを考えるようになるんでしょうね。たとえば老いとか死みたいな話が、現実味を持ってくる。だから今はすごく、自分のインナーワールドに興味があるんです。
―なるほど、そういう変化があったんですね。
TOWA TEI:もちろん今だって「何とかなる」とは思っているけど、若い頃はブライトフューチャーというか、本当に「何とかなる」って信じていたと思うんです。その時その瞬間が楽しければよかったから、「明日は朝から取材だけど、朝まで楽しく遊んでたい!」っていう(笑)。まあ、さすがにそういうのは減りましたよね。面白くないかもしれないけど(笑)。
2/4ページ:今はもう自分より年下のスタッフしかいないから、誰からも何も言われない(笑)。そして、だれもおごってくれない(笑)。
リリース情報

- TOWA TEI
『MACH 2012』 -
2012年5月2日発売
価格:2,012円(税込)1. WUNDERLAND
2. ALPHA(DORIAN REMIX)
3. WORDY
4. BALTIC
5. UPLOAD
6. EXPO 2012
7. MELANCHOLIC SUNSHINE(DJ UPPERCUT with SAHTEENE HOLIDAY DUB)
8. MARVELOUS(SPRING)
9. THE BURNING PLAIN(TOSHIYUKI YASUDA REMIX)
イベント情報
- 『MACHBEAT EXHIBITION』
-
2012年5月4日(金・祝)〜5月13日(日)
会場:東京都 BA-TSU ART GALLERY参加アーティスト:
TOWA TEI with
AIKO
AYUMI OBINATA
CHIKASHI KASAI
HIRO SUGIYAMA
KAZUNALI TAJIMA
KEIJI ITO
MIKITO OZEKI
SANO☆YUTAKA
SEIJI NAGAI
SHIN OKISHIMA
YASUMASA YONEHARA
and more
- 『マッハ&デイジーワールドこどもの日の集い@ MBE』
-
2012年5月5日(土・祝)OPEN / START 18:00
会場:東京都 BA-TSU ART GALLERY
ゲスト(ミニライブ):
細野晴臣
鎮座DOPENESS
青葉市子
DJ:
TOWA TEI
DJ FUMIYA
VJ:ENLIGHTENMENT
料金:当日3,000円(1ドリンク付き)
※中学生まで子供無料
- 『MACH 2012 DJ TOUR!!!!!』
-
2012年5月5日(土・祝)
会場:東京都 BA-TSU ART GALLERY2012年5月12日(土)
会場:秋田県 JAM HOUSE2012年5月18日(金)
会場:大阪府 JOULE2012年5月20日(日)
会場:長野県 りんご音楽祭2012年5月25日(金)
会場:東京都 HOTEL H montoak2012年6月2日(日)
会場:未定2012年6月8日(金)
会場:東京都 代官山 AIR2012年6月10日(日)
会場:沖縄県 石垣島 会場未定2012年6月15日(金)
会場:福岡県 HOTEL H MBE OPENING TBA2012年6月21日(木)
会場:フランス パリ 会場未定2012年6月30日(土)
会場:群馬県 高崎 WOAL2012年7月7日(土)
会場:石川県 金沢 会場未定2012年7月8日(日)
会場:神奈川県 音霊 OTODAMA SEA STUDIO
プロフィール
- TOWA TEI
-
1990年、"ディー・ライト"のメンバーとして米エレクトラよりデビュー。1994年、『FutureListening!』でソロ・デビュー。楽曲プロデュース、映画音楽制作、CM楽曲制作などのほか、コラボレーション・アイテムのブランディングなど活動は多岐に渡る。DJとしても、東京、京都での「MOTIVATION」、選曲重視の新パーティ「HOTELH」など人気レギュラー・パーティや、国内外のクラブ、企業イベント、ビッグ・フェスへ出演している。4th.アルバム『FLASH』、5th.アルバム『BIGFUN』に続く三部作完結編6th.アルバム『SUNNY』も2011年5月に発売され好評を得た。また2010年に開始された本人が手がける電子セレクトショップMACHでは、ここでしか手に入らない音楽や映像、電子書籍など鮮度の高い商品を随時配信販売している。