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ボーカロイドからリアルボーカルへ 古川本舗インタビュー

ボーカロイドからリアルボーカルへ 古川本舗インタビュー

撮影:田中慎一郎
2012/11/09

どことなく懐かしさを感じる人もいるかもしれない。みずみずしい心地よさを感じる人もいるかもしれない。どちらにしろ、聴き手を優しく包み込むような、ゆっくりと染みていくような、良質なポップソングが詰まっている。それが古川本舗によるセカンドアルバム『ガールフレンド・フロム・キョウト』だ。透明感のあるアコースティックサウンドをボーカロイドに活かした作品群でニコニコ動画で一躍話題になったサウンドクリエイターだが、もともとエレクトロニカやポストロックをルーツにしたバンド畑出身。本作ではすべて実在のボーカリストを起用している。ネットミュージックシーンなどによりDIYで世に出る才能が珍しくなくなってきた昨今だが、そのまっただ中で活動する彼と、音楽の話から「好きなことを仕事にすること」という普遍的なテーマまで、幅広く語り合った。

プロデューサーのコアな音楽要素をポップアイコンに乗せて出すという、そのバランスがすごく好き

―まずは、今回の『ガールフレンド・フロム・キョウト』というアルバムをどういう意識で作り始めたのかというところからお聞きしたくて。前作の『Alice in wonderword』とは違うモチベーションで作ったものだと思うのですが?

古川本舗:前回のアルバムは、それまでに作っていた曲を一枚のアルバムにパッケージしたものです。個別の世界観を持ったそれぞれの曲を、ひとつのコンセプトのもとに一枚のアルバムにまとめたという、いわばベスト盤的なものだったんです。それで今回、何を作ろうかを考えたときに、今度はちゃんとコンセプトを立てて、一枚の流れを作るようなやり方でアルバムを作りたくて。

古川本舗
古川本舗

―前のアルバムではカヒミ・カリィさんと野宮真貴さんをフィーチャーしていましたよね。このアルバムでも、advantage Lucyのアイコさんや、空気公団の山崎ゆかりさんをピックアップしていて、そこにひとつの価値観を感じるんです。渋谷系というものにひとつの筋を通しているというか。

古川本舗:そうですね。ただ、前回と今回では、ちょっと違う理由があるんです。前回は声の魅力だけでなく、ある意味パーソナリティーや存在の魅力も含めて、その人に歌ってもらうことが重要だったんです。“ピアノ・レッスン”っていう楽曲を、エレクトロニカ的な元バージョンと、もうひとつの軸として作ったジャズアレンジバージョンをカヒミさんと野宮さんに歌っていただいたんですが、それはまさに渋谷系的なものを体現してるお二方に歌ってもらえたら、すごく引き締まるんじゃないかと思ってお願いさせてもらいました。それに対して今回は、まずアルバム単体での大きな流れを作りたいという意識があったので、あくまで声の魅力でお願いしました。何曲目にはこういう曲があって、そこにはこういう声がハマってほしいという感じですね。まあ、多分に自分の好みも入ってるんですけど(笑)。

―そもそもは、ボーカロイドを使ってニコニコ動画への投稿を始めたというのが、古川本舗として曲を作り始めた活動の始まりですよね。

古川本舗:そうですね。その頃は自分の作った曲がCDになるかどうかすら考えてなかったです。もともとバンドをやってたんですけど、辞めてしばらく普通に働いていて、たまたま地元の先輩からボーカロイドのソフトを貰ったんですね。それでインストールして使ってみたら、「ああ、女の子の声出るんだ」と思って。自分が昔に作ってた曲を女の子の声で歌ったらどうなるんだろう? みたいな好奇心で使い始めたのが始まりでした。

―それで意外といけるなと?

古川本舗:ニコニコ動画もよく観ていたので、投稿してみたんです。バンドをやっていたときなんて全然お客さんいなかったですから、「1日で100人とか200人が見てるんだ!」と思うと、やっぱりちょっと楽しくなっちゃって。当時は「やべぇ、俺すごいんじゃね!?」と興奮しながらやってました(笑)。


―古川さんのサウンドはエレクトロニカやポストロックと言われますけど、どんな音楽に影響を受けてきたんでしょう?

古川本舗:大学のときに聴いてたのがDinosaur Jr.とかWeezerあたりのオルタナだったんですが、そのあたりの影響は大きいですね。攻撃的だったりアグレッシブなんだけど、でもよくよくメロディーだけを聴くとめちゃくちゃポップ、そういうものが好きですね。どこか異質なものが入っていたり、メロディーはポップなのにドラムがうるさかったり、歪んだギターが入ってたり。そういうものが微妙なバランスで成立しているものに、影響を受けてきてると思います。

―ちなみに、My Bloody Valentineは好きでした?

古川本舗:好きですね。

―mumは?

古川本舗:大好きですねぇ!

―アルバムを聴いて、90年代のマイブラと00年代のmumを経由してここに至ってる感じがしました。

古川本舗:まったくその通りです。かつJ-POPも大好きです(笑)。

―J-POPはどの辺りが好きでしたか?

古川本舗:1990年代後半から2000年初頭のJ-POPにめちゃくちゃ影響を受けてると思います。たとえば小林武史さんですとか、渡辺善太郎さんとか、プロデューサーがコアな音楽要素をポップアイコンに乗せて出すという、そのバランスがすごく好きで。ああいうところに今でもやっぱり憧れも感じます。

―そのポップアイコンというところで、ボーカロイドから実在のボーカリストに歌ってもらうことに音楽表現が移行していったのはなぜですか?

古川本舗:移行したっていう感覚はないんです。ボーカロイドが自分の中で終わったわけではまったくないんですよね。僕は声を楽器として捉えていて、実在の人の声がアコースティックボーカルだとするならば、ボーカロイドの声はエレキボーカルというような。そういうニュアンスで使い分けているんです。

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リリース情報

古川本舗<br>
『ガールフレンド・フロム・キョウト』(CD)
古川本舗
『ガールフレンド・フロム・キョウト』(CD)

2012年11月7日発売
価格:2,500円(税込)
PECF-3031

1. 魔法 feat.ちょまいよ
2. 月光食堂 feat.acane_madder
3. グレゴリオ feat.ちびた
4. ルーム feat.花近
5. KAMAKURA feat.古川本舗
6. IVY feat.歌うキッチン
7. KYOTO feat.アイコ(from advantage Lucy)
8. 春の feat.大坪加奈(from Spangle call Lilli line)
9. はなれ、ばなれ feat.ばずぱんだ
10. 恋の惑星 feat.拝郷メイコ
11. family feat.YeYe
12. girlfriend feat.山崎ゆかり(from 空気公団)

プロフィール

古川本舗

10代の頃より作曲活動を始め、数々のバンド活動を経て宅録に目覚める。同人盤としてEPを発表する傍ら、多数コンピや楽曲提供、アレンジ提供などメジャーインディー関わらず幅広いフィールドで活動。2011年にインターネット発祥の音楽レーベルBalloomの立ち上げに参加。同レーベルよりアルバム「alice in wonderword」を発表。ゲストボーカルに野宮真貴、カヒミ・カリィ、マスタリングにはテッド・ジェンセンを招いた本作発表後、その活動が認められ、2011年ビルボードジャパンの優秀インディーズアーティストにノミネートされる。2012年、SPACE SHOWER MUSICより1年半ぶりのセカンドアルバム「ガールフレンド・フロム・キョウト」を発表。山崎ゆかり(空気公団)、大坪加奈(Spangle call Lili line)らをボーカルに迎えた本作で、新たな世界観を確立。作詞作曲編曲だけでなく、アルバムのアートディレクション等、作品の世界観を多岐に渡る方法で表現するマルチアーティスト。

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