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引きこもった自室から飛び出して 椎名もたインタビュー

引きこもった自室から飛び出して 椎名もたインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2013/03/08

弱冠16歳ながら、驚くべきクオリティーを誇るデビュー作『夢のまにまに』を昨年発表したボカロP、椎名もた。その早熟な才能はニコ動を飛び出し、南波志帆への楽曲提供や、渋谷慶一郎のリミックスを手掛けるなど、椎名を取り巻く環境はこの1年で大きく変化していった。しかし、現在17歳の椎名は、この状況に戸惑いを隠せないでいる。無理もないだろう。近年サウンドプロデューサーとして幅広い分野で活躍を始めたボカロPの多くは、元々バンドマンだったり、音楽的な下地や経験がしっかりある人ばかり。一方、ボーカロイドが音楽のルーツである椎名にとっては、今は経験することすべてが新鮮であり、驚きの連続なのだ。そして、だからこそ椎名の音楽には他では味わえない独自の感触があり、未知なるものに触れる興奮がある。18歳を目前に控えた現在の自分をそのまま詰め込んだというEP『コケガネのうた』からも、そんな瑞々しさがしっかりと伝わってくるはずだ。そう言えば、17歳のときの南波志帆は、椎名の尊敬するサカナクションの山口一郎が作曲を手掛けた“こどなの階段”を歌っていた。今まさに、椎名もその階段を一歩一歩着実に昇っていると言っていいだろう。

(社会と接点を持つのは)非常に恐ろしいことでもありますね(笑)。楽しみだけど、怖気づいちゃう。

―前回の取材からちょうど1年ぐらい経って、もたくんの周りの状況も、ボカロシーン自体も、大きく変わりましたよね。

椎名:今年17から18になるんで、そこからさらにまた大きく変わっていくんでしょうね。

―3月で18歳になるんだよね?

椎名:みんな車の教習所とか通い始めて、そういう歳なんだなって思います。

―去年『夢のまにまに』を発表して、同世代の中でいち早く社会に出たような感じがあるんじゃないですか?

椎名:どうだろう……なんていうか、僕は引きこもりですから(笑)。あんまり社会とか実感したことないかもしれないです。

―でも、『夢のまにまに』を出して以降は、南波志帆さんへの楽曲提供だったり、渋谷慶一郎さんのリミックスだったり、活動の幅は一気に広がりましたよね?

椎名:そうですよね……激動でした。ありきたりの言葉ですけど。

―特に、どの仕事が一番印象的でしたか?

椎名:南波志帆ちゃんに曲提供したのはかなりでかかったかな。そこから他のレーベルとのつながりもできたので。でも……現場ではすごいあたふたしてたんですけど(笑)。ボーカルディレクションとか初めてだったから、何を言ったらいいかわかんなくて、(レコーディングのブースと会話をするための)ボタンを押したはいいけど、「ええっと……」みたいな(笑)。

椎名もた
椎名もた

―ボカロで曲を作るのと、実際のボーカルにディレクションするのは全く違う作業でしょうからね。

椎名:ボーカロイドの歌って、物理的に人間には歌えなかったりするんですよね。ボーカロイドって、息継ぎとか必要ないから(笑)。だから南波志帆ちゃんも歌うのがすごい大変そうで、申し訳ないことをしてしまいました。

―そもそもレコーディングスタジオで仕事をすること自体、あまり無い経験ですもんね?

椎名:いつもは自分の部屋だけで完成出来ちゃいますからね。スタジオであんなボタンを押したりとか、紙にペンを走らせて「ここはこうで」って言ったりとか、一人じゃ絶対できない経験でした。

―引きこもって曲作りだけをしてる状況から、社会との接点を持ち始めたってことじゃないですか?

椎名:非常に恐ろしいことでもありますね(笑)。楽しみだけど、怖気づいちゃう。

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リリース情報

椎名もた『コケガネのうた』(CD)
椎名もた
『コケガネのうた』(CD)

2013年3月6日発売
価格:1,400円(税込)
GINGA / WRCR-9

1. 3年C組14番窪園チヨコの入閣
2. 7から8へ
3. うたをうたうひと
4. インマイヘッド
5. ましろの色
6. さよならアストロノーツ -cokegane no uta mix-(ボーナストラック)

プロフィール

椎名もた

幼少の頃よりギター、ドラム、エレクトーンなどの楽器を嗜んでおり、中学2年(14歳)のときよりDTMを始める。その後、動画共有サイトに自作曲の投稿を始め、投稿開始後より人気を博し、ストロボシリーズによりその地位を確固たるものへとする。再生数10万を超える幾多の楽曲、多数のメジャーコンピレーションへの参加などするも、2011年初頭、突然の活動休止。半年後、GINGAとの邂逅により活動を再開し、ネクストステップへと歩を進める。ある一定のイメージを与える作風ではなく、どんな状況でもちょっぴり以上良くする類まれなるサウンドメイキングと、天性のグルーブ感、心の隙間にスルッと侵入するどこか人懐っこい詩世界を合わせ持つ。VOCALOIDシーンから生まれ、電子音楽シーンに舞い降りた、弱冠17歳の驚異である。

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