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suzumoku×渡辺潤対談 逃げ出した過去さえもさらけ出して

suzumoku×渡辺潤対談 逃げ出した過去さえもさらけ出して

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望
2013/05/16

街角に貼られた犯罪者の手配書をきっかけに、自身の存在意義を問い直す、シンガーソングライターsuzumokuの楽曲“モンタージュ”。三億円事件を題材に、「自分の父親が事件の真犯人だ」と知らされた青年の運命を描く、渡辺潤のミステリー漫画『モンタージュ』。「現実から目を逸らさず、生きることから逃げない」というテーマ、新しさとノスタルジーを兼ね備えた作風を持つ、このふたつの「モンタージュ」を手掛かりに、ミュージシャンと漫画家それぞれの視線を探っていく。それが、今回の対談の目的だった。

とはいえ、この日が初対面という両者だけに、果たして話がどんな方向に向かうのかは、対談が始まるまで正直見当もつかなかった。ジャンルも世代も異なるだけに、話がかみ合わない可能性も、ゼロとは言えない。しかし、それぞれの歩みを順を追って紐解いていくと、意外なほどに共通点が多いことに驚かされた。それぞれが似た悩みを持ち、つらい経験をし、今も試行錯誤を続けながら、自身の表現と本気で向き合っているのである。音楽でも漫画でも、もしくはそれ以外であっても、やはり根底にあるものを作る熱には変わりがない。そんなことを改めて再確認させられる対談となった。

自分のことで本気で泣いたのはその晩が初めてでしたね。自分が本気でやろうと思ったことから逃げ出しちゃったんだから。(渡辺)

―渡辺さん、普段音楽はよく聴かれますか?

渡辺:僕の場合、仕事的に同じ場所にずっといるんで、音楽を聴くことは多いです。昔バンドをやってたこともありますし。ただ、日本語の歌詞のものは仕事中に聴いちゃうと、耳が持って行かれちゃうんですよね。そういう意味で、suzumokuくんの曲は言葉が強いから、絶対聴けない(笑)。

―ちなみに、バンドではどのパートをやっていたんですか?

渡辺:僕はベースをやってました。趣味レベルのコピーバンドですけどね。

―suzumokuくんはやっぱりこれまでギター1本なんですよね?

suzumoku:そうですね、中学2年からずっとやってます。それまで音楽ってそこまで好きじゃなくて、小学校の授業の合唱とかすごく苦手だったんですよ。ただ、中学に上がって、思春期なんで何かしら女の子に注目されたいと思い始めた頃に、幼馴染の男友達が教室でギターの弾き語りをしてて、男子も女子も「すげー!」ってなって。僕はそれを遠巻きに見てたんですけど……。

suzumoku
suzumoku

渡辺:でも、「これだ!」と。こういう話を聞くとホッとしますね(笑)。

―渡辺さんも小さい頃から漫画を描いてらっしゃったんですか?

渡辺:描いていましたが、漫画でもてるとは思ってなかったですけどね(笑)。どちらかというと、描いてるのを隠してたぐらいで。僕が中学校ぐらいのときは、まだ「オタク」っていう言葉もなかったし、その言葉が出てきても、どっちかっていうと敬遠されるような、「恥ずかしい」っていうイメージだったから。ただ、小さい頃からとにかく漫画が好きで、中学時代から雑誌に投稿とかしてて、将来的にもこれ以外の職業は考えてなかったです。

suzumoku:その当時からですか?

渡辺:当時は自分のこと天才だと思ってたから(笑)。

suzumoku:ああ、僕も高校のときとか「絶対俺がこの高校で一番ギターが上手い」と思ってました(笑)。

渡辺:そういう勘違いも必要ですよね。ただ、今思うととんでもない勘違いで、実際にプロの現場に入って、ホントにショックを受けましたけどね。化けもんばっかりいらっしゃるんで(笑)。音楽業界もそうだと思うけど。

渡辺潤
渡辺潤

suzumoku:東京に来てビックリしましたね。ずっと名古屋で音楽活動をしてて、いざ東京に出て、知り合いが紹介してくれたライブハウスに行ったら、みんなすごいテクニックで、歌も上手いし、「こんなのが何十倍、何百倍いるんだよな」って思うと途方に暮れるというか……そんな感覚でした(笑)。

―渡辺さんは中学以降どのように漫画家の道に進んだのですか?

渡辺:それまでずっと投稿を続けてて、高3ぐらいからもっとちゃんと活動をした方がいいと思って、編集部に持ち込みに行くんですけど、最初は5分ぐらいで玉砕しちゃうわけです。ただ、それで道に迷うってことはなくて、受験勉強もしてなかったし、親には「3年間時間をください」って約束した覚えがあります。結局高校を卒業して、アシスタントについて、そこでプロの洗礼を浴びました。逃げ出しちゃったりとか、そういうこともありましたし。

suzumoku:プロの現場はそんなに厳しかったんですか?

渡辺:ホームシックもあったかもしれないし、彼女にふられたとかもあったと思うんですけど、今じゃ考えられないくらい厳しい仕事場だったんですよ。泊まり込みで、1か月に2日くらいしか休みがなくて、ずっと丁稚奉公のような感じで。特に僕は一番ペーペーだったから、その先生の奥さんの手伝いもしなきゃで、「渡辺くん、きゅうり買ってきて」とか、そういう世界で。

suzumoku:ただ漫画を描いていればいいわけじゃなかったんですね。

渡辺:それはそれで楽しくもあったんですけど、突然日常から切り離されたからだんだんつらくなっちゃって、先生に「悩みあるのか?」って聞かれて、つい「親が離婚しそうで……」なんて嘘をついちゃったんですよ。それで先生に「じゃあ、帰っていいぞ」って言われて、そのままホントに帰っちゃって、自分のことで本気で泣いたのはその晩が初めてでしたね。自分が本気でやろうと思ったことから逃げ出しちゃったんだから。

―その後はどうしたんですか?

渡辺:一晩寝て次の日に帰りましたけど、結局そこは1年もしないで辞めちゃって、その後はいろんな先生のところでアシスタントをしながら、自分の作品を描いてました。僕が20歳前後の頃って、『ヤングマガジン』がすごく勢いがあって、「どうしてもこの雑誌に載りたい」と思ってたんです。そうしたら運良くというか、そこで認めてもらえて、そこから仕事としてやれるようになったんです。

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イベント情報

『「生声弾語りSolo Live」 aim into the sun 〜day to day〜』

2013年5月15日(水)
会場:岩手県 盛岡 Bar Cafe the S

2013年5月17日(金)
会場:宮城県 仙台 SENDAI KOFFEE CO.

2013年5月18日(土)
会場:栃木県 宇都宮 マツガミネコーヒービルヂング

2013年5月19日(日)
会場:福島県 矢吹町 ヤブキヤサカエ

2013年5月23日(木)
会場:千葉県 千葉 cafe STAND

2013年5月26日(日)
会場:神奈川県 鎌倉 COBAKABA

2013年6月1日(土)、6月2日(日)
会場:沖縄県 那覇 さんご座キッチン

料金:全公演 前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

『SHIMOKITAZAWA SOUND CRUISING Vol.2』

[DAYTIME]2013年5月25日(土)OPEN 16:00 / START 17:00
[NIGHT TIME]2013年5月25日(土)OPEN / START 23:00
会場:東京都 下北沢周辺(以下同)
GARDEN、SHELTER、DAISY BAR、ReG、
BASEMENT BAR、THREE、ERA、FEVER、ReG Café、MOSAiC、富士見丘教会、風知空知、altoto、MOREほか
料金:DAYTIME前売3,800円 NIGHTTIME前売3,500円 DAY/NIGHT通し券6,000円(全てドリンク別)

『WA WORLD APART MOVEMENT -EXTRA STAGE-』

2013年6月19日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 下北沢CLUB Que
出演:
suzumoku
MONSTER大陸
Nemotroubolter
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

2013年6月22日(土)
会場:大阪府 シャングリラ梅田
出演:
suzumoku
MONSTER大陸
Nemotroubolter
料金:前売3,500円 当日4,000円(共にドリンク別)

『僕らのささやかフェスvol.4』

2013年7月7日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:静岡県 富士吉原 cafe sofarii
出演:
ノグチサトシ
安部たかのり
ゲスト:suzumoku
料金:2,500円(2ドリンク付、限定50枚)

『JOIN ALIVE』

2013年7月20日(土)OPEN 9:00 / START 11:00
2013年7月21日(日)OPEN 9:00 / START 11:00
2013年7月27日(土)OPEN 9:00 / START 11:00
2013年7月28日(日)OPEN 9:00 / START 11:00
会場:北海道 岩見沢 いわみざわ公園
※suzumokuの出演日は7月27日

リリース情報

『モンタージュ(11)』
『モンタージュ(11)』

2013年4月5日発売
著者:渡辺潤
価格:580円(税込)
発行:講談社

suzumoku<br>
『キュビスム』初回限定盤(CD+DVD)
suzumoku
『キュビスム』初回限定盤(CD+DVD)

2013年3月27日発売
価格:3,000円(税込)
APPR-3007/3008

1. モンタージュ
2. 蛹―サナギ―
3. ノイズ
4. 鴉が鳴くから
5. メンドクセーナ
6. 平々−ヘイヘイ−
7. ブルーブルー
8. どうした日本
9. 真面目な人
10. 真夜中の駐車場
11. 僕らは人間だ
12. リエラ
[DVD収録内容]
・モンタージュ
・リエラ
・真夜中の駐車場
・蛹―サナギ―
・真面目な人

プロフィール

suzumoku

静岡県出身のシンガーソングライター。楽器製作の専門学校で、ギターやベースの制作を行いつつ、自身もさまざまなジャンルの音楽に影響を受けた音楽を制作。2007年10月にアルバム「コンセント」でデビュー。音楽と文章における感性、一貫したメッセージ性には定評がある。2013年3月に自身初のフルアルバム「キュビスム」をリリースし、2度目となる全国47都道府県生声弾き語りツアーを慣行するなど、精力的に活動中。

渡辺潤

漫画家。三億円事件が起きた日、1968年12月10日生まれ。そのことから三億円事件に興味を持ち、事件を題材にしたクライムサスペンス『モンタージュ』を2010年からヤングマガジンにて執筆。常時ヤングマガジン本誌にてTOP5の人気を誇る。他にも、単行本累計2400万部突破したヤクザ漫画の金字塔『代紋(エンブレム)TAKE2』(原作/木内一雅、全62巻)、リアルボクシング漫画『RRR(ロックンロールリッキー)』(全10巻)を執筆。

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