特集 PR

鬱屈と解放のトリックスター 清竜人インタビュー

鬱屈と解放のトリックスター 清竜人インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也
2013/10/22
  • 0

清竜人のことを少しでも知っている人であれば、まずはその外見の変化に驚きを隠せなかったに違いない。これまでも長かったり短かったり、ストレートだったりパーマだったりと、髪型の変化が多いタイプではあったが、彼がフェイバリットに挙げる漫画『本気!』に出てきそうなチンピラ風のルックスは、「……何かあった?」と思わず聞かずにはいられない。例えば、くるりの岸田繁がクラシックに大きく傾倒したアルバム『ワルツを踊れ』の制作時に、ベートーベンのような作曲家風の長髪にしていたのは、心身ともに作品に捧げているかのような印象があった。そう考えれば、清も新作『WORK』においてラップを披露したりしているし、そのイメージに自分を近づけたのかも……なんてことを考えながら取材に臨んだのだが、清の答えはたった一言、「いや、気分転換です」だった。

清がこういった変化をする予兆がなかったわけではない。2009年のデビューアルバム『PHILOSOPHY』以降、彼はソウルやジャズを基調としたポップスに乗せて、「人間とは?」もしくは「愛とは?」といった哲学的な自問自答を繰り返していた。しかし、昨年発表の『MUSIC』ではそこから一転、ゲームやアニメ界のクリエイターとのコラボレーションによるド派手なミュージカルアルバムを作り上げたのだ。そして、限定販売された『KIYOSHI RYUJIN』に続く『WORK』では、打ち込みだった『MUSIC』と同等の情報量を生楽器で再現し、あらゆるジャンルを飲み込みながらも、10曲30分ほどのコンパクトなポップアルバムとして聴かせるという離れ業をやってのけている。こんな音楽を僕は他で聴いたことがない。

以下の対話の中で、清の内面に起こったであろう変化の背景を何とか聞き出そうとする僕と、「今はすごくナチュラルで、音楽を作ることが楽しいんです」と繰り返す清竜人とのやりとりは、基本的に最後まで平行線をたどっている。これが音楽家としてある種、達観の境地にたどり着いたということなのか、それともトリックスター的な清なりのエンターテインなのか、その判断は後に譲ることにしよう。まずは『WORK』という圧倒的な作品を味わい尽くし、またいずれ、インタビューの機会があることを願いたい。

今回は今まであったメッセージ性を排除して、単純に音楽を音楽としてだけ捉えようと思って。

―清さんはデビューアルバムのタイトルが『PHILOSOPHY』だったように、特に初期の作品において、哲学的な思考が表現の基盤になっていたと思うんですね。そういった清さんなりの哲学観が、どのような影響を受けて形成されたかというのをまずお伺いしたいのですが。

:音楽は単純に音として聴いていたので、音楽家から思想や哲学を吸収したのは少ないかもしれないですね。ただ、5枚目のアルバム(『KIYOSHI RYUJIN』)のジャケットを描いてくださった立原あゆみ先生の『本気!』という漫画がすごく好きで、それは人生の1冊と言えるような作品なので、そこからいろんなものを得てるとは思います。

清竜人
清竜人

―どんな部分での影響が大きいですか?

:すごくメッセージ性の強い漫画なんですけど、人間愛的な考え方にすごく感銘を受けることが多くて、歌詞に影響してるかもしれません。長編なので、主人公が成長していく様に、いろいろなことを考えさせられる作品ですね。

―清さんの最初の2枚のアルバムは、自分だったり、自分と相手だったり、狭い人間関係を歌っていて、3枚目の『PEOPLE』のときはもっと開かれた、大きな人類愛をテーマにしていたように思います。今はそういった人間愛に対して、どんな目線を持っていますか?

:最近は何も考えてないですね。ホントにフラットに、今日のことだけを考えて生きてる感じです。2枚目(『WORLD』)や3枚目のアルバムを作ってる頃は、頭の中でモヤモヤ考えたり、思春期みたいな時期を過ごしてましたけど、今はフラフラ生きてる感じですかね。

―確かに、今回のアルバムの歌詞は、意味よりも言葉の響きを重視して書かれているように思いました。

:そうですね。今回は今まであったメッセージ性を排除して、単純に音楽を音楽としてだけ捉えようと思って。まずはメロディーラインをどうきれいに聴こえさせるかっていうことを考えながら、音に言葉を乗せたので、歌詞は二の次っていう感じでした。

―今は意味性よりも、音楽そのものにより興味があると。

:1つ前のアルバム(『KIYOSHI RYUJIN』)はすごくメッセージ性が強いというか、言葉が強いものだったので、今回はそういうのはいらないかなと思って。

Page 1
次へ

イベント情報

『清 竜人「WORK」TOUR』

2013年12月2日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 心斎橋 BIG CAT

2013年12月4日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋 BOTTOM LINE

2013年12月6日(金)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 SHIBUYA-AX

料金:各公演 前売5,000円

リリース情報

清竜人<br>
『WORK』(CD)
清竜人
『WORK』(CD)

2013年10月23日発売
価格:2,800円(税込)
TYCT-60003

1. Zipangu
2. Katie
3. All My Life
4. LOVE&PEACE
5. UNDER
6. The Movement
7. Microphone is…
8. Championship
9. Disclosure
10. I Don't Understand

プロフィール

清竜人(きよし りゅうじん)

1989年生まれ、大阪府出身。15歳からオリジナル曲を作り始め、16歳の夏に自主制作した音源が、後に多くの業界関係者の耳に留まる。17歳の夏、全国高校生バンド選手権『TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2006』グランプリを受賞、同年のROCK IN JAPAN FESへの出場を果たす。さらにデビュー前にも関わらず映画『僕の彼女はサイボーグ』への挿入歌の提供を行うなど話題を呼び、2009年3月、シングル『Morning Sun』を発表、続いてデビューアルバム『PHILOSOPHY』をリリース。この作品は後に「第2回CDショップ大賞」準大賞を受賞。赤裸々でストレートな歌詞が口コミで多くの人の共感を集めながら、近年では、声優・堀江由衣に楽曲“インモラリスト”を提供し、オリコンチャートトップ10入りするなど、活躍の幅を広げている。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

思い出野郎Aチーム“ダンスに間に合う”

思い出野郎Aチームが6月30日にリリースする7inchシングルのPVは、オフィスの中で描かれるドラマ仕立ての映像。歌詞にもあるように、散々な日でもひどい気分でも、そのどこかに潜む祝福すべき一瞬を、メロウなグルーヴで捕まえる。(飯嶋)