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大切なものは、いつまでも続かない 古川本舗インタビュー

大切なものは、いつまでも続かない 古川本舗インタビュー

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影協力:cent trente -neuf
2013/10/29

温かな日常も、大切な人も、幸せな時間も、いつまでも続くものじゃない。それはいつか、きっと失われてしまう。そんな「喪失」の儚さと、だからこそこみ上げてくるような愛しさを描いたのが、古川本舗の3枚目のアルバム『SOUP』だ。

ポストロックやエレクトロニカ、オルタナティブロックなどをルーツに、これまで2枚のアルバムでは、野宮真貴、カヒミ・カリィ、山崎ゆかり(空気公団)、YeYeなど数多くのボーカリストを迎えて独自の音楽性を追求してきた彼。しかし、今回は弱冠21歳の歌い手・キクチリョウタが全曲のメインボーカルを担当し、一つの世界観をもとにしたアルバムを制作。独自の柔らかく包み込むようなメロディーをもとに、じわりと心に染みこむような叙情性を持った作品に仕上がっている。

先日には2年ぶりのワンマンライブも開催し、今後は意欲的にライブも行っていくことを表明している彼。アルバムに込めた思いについて、そして既存のフォーマットに縛られない彼の音楽表現へのスタンスについて、語り合った。

想像のつくことをやっていても、面白くない。

―前の2枚のアルバムはいろんな歌い手をフィーチャーしたアルバムでした。でも今回はその作り方ではなく、キクチリョウタさん一人を起用しています。まず、こういう作り方でアルバム1枚作ろうというのはどういった経緯だったんでしょう。

古川:セカンドを作り終わって、当然「次はどうしようか?」という話になりますよね。そのときに、周りの人たちもお客さんも、自分自身でさえも、「次のアルバムでは誰と誰が歌うんだろう?」ということを自然に考えた。それが「つまらないな」と思ったんです。当然のように歌い手を集めてアルバムを作る、それがフォーマットになった感じが自分の中であって。それが面白くなくて、じゃあ今回は1人でやろう、と決めたんです。「マジすか!?」ってみんなに言われましたけど(笑)。

―方法論として新しいことをやろうというのが、最初にあったんですね。

古川:そう。今までやってないことをやろうということですね。想像のつくことをやっていても、面白くない。自分の中の発展性もなくなるし。歌い手を1人にすると、今までとは当然やり方も変わるし、曲の作り方だって絶対変わってくるわけで。賛否両論あることは予想してましたけど、むしろ賛否が両方あったほうがいいなと思ってました。

古川本舗
古川本舗

―どういう賛否があると予想しています?

古川:キクチくんは前回のアルバムにも参加してもらっていて、自分の曲との相性がわかっているので、その方向性を掘り下げたときに、ハマる人にとってはかなり喜んでもらえる音楽になるだろうという予想はしていました。一方、否のところでいくと、これまで入っていた女の子の声は一切ないので、「野郎かよ!」みたいなのがあるかな、と(笑)。

どうしても、どこかに自分が出ちゃうんです。

―キクチリョウタさんは前作、ばずぱんだ名義で“はなれ、ばなれ”という曲に参加されていますよね。彼の歌い手としての魅力はどういうところにあると感じてましたか?

古川:決定的なことは、自分の声と全く声質が違うというところですね。自分の声って、暗い曲や悲しい曲を歌うとジメジメしちゃうんです。でも、彼の声はハスキーだけど明るさがある。底抜けに明るいというわけではないけれども、絶望的に救われないということにはならないと思って。で、次はちょっと明るいものを作りたいという話もしていたので、声にポジティブな成分を持っている彼にお願いしました。まあ、アルバムは結果的に明るいものにはならなかったですけどね。

―そういえば前の取材のときにも話していましたね。次は明るいものを作りたいって。

古川:でも、全然そうならなかったです。2曲目くらいで無理だって思った。

―どう無理だったんですか?

古川:自分の性格ですね。「明るいのもいけるだろう」と思ってたんですけど、やっぱりダメだった。もともと持っている生き方とか考えがすんごいネガティブなんだと思います。モノ作りなんだからそれをそのまま投影する必要はないんですけど、それができなかったんですよね。だから、最終的に歌い手にポジティブな要素を入れてもらおうと思いました。明るいものをわざわざ狙って作るより、自分に素直になろうと考えた。その方がやりやすかったんです。

―そういう風になるのは、古川本舗というプロジェクトの本質かもしれないですね。誰かに曲を提供するのと違って、自分自身の内面が前面に出てくるものにならざるを得ない。

古川:自分をクライアントとして、自分に対して発注して「ちょっと明るいの作ってよ」って言えばできたのかもしれないですけど、まあ、それができなかったってことですね。どうしても、どこかに自分が出ちゃうんです。

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リリース情報

古川本舗<br>
『SOUP』(CD)
古川本舗
『SOUP』(CD)

2013年11月6日発売
価格:2,500円(税込)
Head.Q.music / PECF-3062

1. SKIRT
2. あいのけもの
3. HOME
4. 東京日和
5. orbital
6. emma brown
7. 枯れる陽に燃える夜は
8. ストーリーライター
9. アン=サリヴァンの休日
10. SOUP

プロフィール

古川本舗(ふるかわ ほんぽ)

作詞・作曲・編曲・プロデュース。2009年、自身のセルフプロジェクト「古川本舗」として音楽活動を開始。2011年にインターネット発祥の音楽レーベル「Balloom」の立ち上げに参加し、同レーベルより2年間の活動の集大成をパッケージしたアルバム「Alice in wonderword」を発表。ゲストボーカルに野宮真貴、カヒミ・カリィ、マスタリングにはテッドジェンセンを招いた本作で、まさに唯一無二と言えるポジションを獲得し、同年のビルボードジャパン「優秀インディーズアーティスト」にノミネートされる。2012年、SPACE SHOWER MUSICより一年半ぶりのセカンドアルバム「ガールフレンド・フロム・キョウト」を発表。山崎ゆかり(空気公団)、大坪加奈(Spangle call Lili line)、アイコ(advantage Lucy)、YeYeらをボーカルに迎えた本作で独自の物語世界を確立し、大きな注目を集める。作詞作曲編曲だけでなく、アルバムのアートディレクション等、作品の世界観を多岐に渡る方法で表現するマルチアーティスト。

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