
いい子からの叛逆的音楽 ミユキ(ハルカトミユキ)×安原兵衛
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:豊島望
歌人の穂村弘を迎え、ハルカの言葉の魅力に迫った1回目、本人たちの言葉から、破壊衝動の源泉を探った2回目に続く、ハルカトミユキの連載最終回は、キーボード / コーラス担当のミユキをフィーチャーしてお届けする。ときにカラフルなサウンドで楽曲を華やかに彩り、ときにフォーキーなメロディーに寄り添ってピアノを奏で、ステージ上では気の向くままにダンスをするミユキのイメージは、マイペースな天才肌といったもの。しかし、性格的には人見知りな面もあり、多くのスタッフとのやり取りをしながらのアルバム制作は、決して楽なものではなかったようだ。そこで、今回はハルカトミユキをデビュー前から見守り続けてきたサウンドプロデューサーの安原兵衛を迎え、ミユキが何を大切にし、どんな変化を遂げ、自身初作曲のインストナンバー“7nonsense”をはじめとした、アルバム『シアノタイプ』の収録曲を作り上げて行ったのかを、じっくりと語ってもらった。
3回の取材を通して、僕がハルカトミユキの一番の魅力だと感じたのは「純度」という部分だ。これは連載の初回で穂村弘がハルカに対して使った言葉でもあるが、ミユキに対する取材でも、「嫌なことは絶対にやりたくない」という言葉をはじめ、この「純度」がはっきりと伝わってきた。しかし、人は必ず何かを失いながら生きていくもの。『シアノタイプ』は<一番嫌いだったものに もうすぐなりそうな気がしている>という歌い出しの“消しゴム”から始まっているが、これはおそらく失われていく「純度」に対する歌だろう。そう、彼女たちはこの「純度」が少しずつ失われていくことも、はっきりと自覚をしている。そして、だからこそ、僕はこれからの活動の中で、彼女たちが代わりに何を手にしていくか、それがとても楽しみなのだ。未来への青写真が、遠くまで広がっていることを願って。
自分が正しいと思うことをしていれば、周りにどう思われてもいいっていうのはずっとあります。(ミユキ)
―まずは、ミユキさんの音楽歴を改めておうかがいしたいのですが、ピアノはいつから始めたのですか?
ミユキ:ピアノは3歳から始めて、小学校に上がるまではバイエルを週1回教わってたんですけど、途中でそれが嫌になっちゃって。それで、小1から高3までは違う先生に来てもらって、今度は1時間自分の好きな曲を習ってました。先生が演奏するショパンやリスト、ドビュッシーを全部耳で覚えて弾いていたので、私は今も楽譜が読めないんです。
―前回の取材で、小さい頃はわりと親が厳しかったという話がありましたが、習い事は他にもいろいろやっていたのですか?
ミユキ:月曜から土曜まで毎日何かしらやってました。英会話、水泳、書道、公文式、体操クラブ……。でも、「お腹が痛い」って言って休んだり、行ったはいいけど泣き出してしまったものもあって、最終的に残ったのがピアノと書道でした。
―大学ではハルカさんとNIRVANAの話で意気投合したそうですが、クラシック育ちというところから考えると、結構ギャップが大きいですよね。
ミユキ:両親が二人とも仕事で忙しくて、私はおばあちゃんの家に住んでいたんですね。最初の頃は、お母さんが習い事をちゃんとやってるか確認しに来てたんですけど、中学生ぐらいになるとそういうこともなくなって、それまで禁止だった漫画やアニメを見られるようになって。その反動で真逆のものに行ったんだと思います。
―NIRVANAのどんな部分に惹かれたんですか?
ミユキ:ホントに憧れから入ったっていう感じなんですけど、その頃から「自分に自信があります」っていう人はちょっと苦手だったので、心の中では「誰にも負けない」って思ってるんだけど、表面には出さないところに共感を覚えていた気がします。
―ミユキさんは、ご自身のどんな部分に関して「誰にも負けない」という自信を持っていたのでしょう?
ミユキ:例えば学生時代に、いじめられて黒板に落書きされてた人がいたんですけど、その人に非がないと思ったら、絶対助けるんです。黒板の落書きを消したりしてると、今度は自分が標的になったりもするんですけど、自分が正しいと思うことをしていれば、周りにどう思われてもいいっていうのはずっとあります。
イベント情報
- ハルカトミユキ ワンマンライブ
『シアノタイプ』 -
2013年12月10日(火)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 新代田 FEVERイベント情報
ハルカトミユキ ワンマンツアー『青写真を描く』
2014年2月1日(土)
会場:大阪府 Music Club JANUS2014年2月2日(日)
会場:愛知県 名古屋 ell.FITS ALL2014年2月8日(土)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTROリリース情報
- ハルカトミユキ
『シアノタイプ』(CD) -
2013年11月6日発売
価格:3,150円(税込)
AICL-25981. 消しゴム
2. マネキン
3. ドライアイス
4. mosaic
5. Hate you
6. シアノタイプ
7. 7nonsense
8. 振り出しに戻る
9. 伝言ゲーム
10. 長い待ち合わせ
11. ナイフ
12. Vanilla
プロフィール
- ハルカトミユキ(はるかとみゆき)
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2012年終盤に突如現れた、新生フォークロックユニット、ハルカトミユキ。詩人・ハルカ(Vocal / Guitar)と奇人・ミユキ(keyboard / Chorus)のデュオ。1989年生まれの二人が立教大学の音楽サークルで知り合い、唯一「同じ匂いがする」とひかれあう。森田童子、銀杏BOYZ、ニルバーナを同時期に聴いていた「言わない」世代が静かに奏でるロックミュージック。2012年11月14日、『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』(H+M Records)でデビュー。iTunesが選出する2013年ブレイクが期待新人アーティスト「newARTIST2013」にも選ばれる。2013年3月13日、2nd e.p.『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』(H+M Records)を発売。2013年11月6日に待望のメジャー移籍第1弾となる1stフルアルバム『シアノタイプ』を発売予定。
- 安原兵衛(やすはら ひょうえ)
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音楽プロデューサー。1998年、七尾旅人のデビューアルバムにサウンドプロデューサーとして参加。 これを機にオルタナティブ、エレクトロアーティストの音源制作にサウンドプロデューサーとして参加。2000年には自身のユニット、LOVE DEVICE名義でパイオニアLDC音源をリリース。 2003年、GUITAR VADERと共にレーベル「PLUGS HOUSE」を始動。同レーベルより「安原兵衛」名義で「青春のOutline」をリリース。ハルカトミユキ『シアノタイプ』では、全曲に渡りサウンドプロデュースを手がける。
- ハルカトミユキ
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