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ブラックカルチャーの聖地で殿堂入りした男 TAKAHIRO

ブラックカルチャーの聖地で殿堂入りした男 TAKAHIRO

インタビュー・テキスト
浦野芳子
撮影:相良博昭
2014/02/21

ブラックカルチャーの聖地とも言われる、ニューヨーク「Apollo Theater」。数々のミュージシャンやアーティストを生み出してきたこの劇場で、1930年代にスタートしたイベント『Amateur Night』は、今も昔も世界最高峰を目指すアーティストの登竜門として知られている。観客の拍手の大きさがその日の優勝者を決める、というこのイベントの覇者には、The Jackson 5、スティービー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、ダイアナ・ロス、ビリー・ホリディ、エラ・フィッツジェラルド……スターの枚挙にいとまがない。その『Amateur Night』を勝ち抜いた者だけが、プロとして臨むテレビ版のショーイングで、2006年に史上初の9連覇、殿堂入りを果たしたのが、TAKAHIROこと上野隆博だ。

子どもの頃からダンスに親しみ、その技を磨いてきたのかと思いきや、ダンスに夢中になった経緯には意外な物語が。しかし、そこには人生の転機を巧みに掴み取る柔軟さとおおらかさがあった。その魅力的な人柄にインタビューを通して少しでも触れてみてほしい。

初めてダンスを観たとき、「僕だったら、もっとこうするのに」というアイデアが自然と湧き出てきたんです。そしてなんとなく自分でも「できる」気がした。

―TAKAHIROさんは、『SHOW TIME AT THE APOLLO』を9連続優勝して殿堂入りを果たし、マドンナのワールドツアーに専属ダンサーとして参加されるなど、輝かしいキャリアの持ち主です。今日はそこに至るまでのお話なども伺えたらと思います。

TAKAHIRO:わかりました。よろしくお願いいたします。

―じつは取材にあたって、少し調べさせていただいたのですが、小学校から高校まで、財界人や文化人などのご子息が多く通っている有名私立男子校のご出身なんですよね。

TAKAHIRO:はい。小・中・高を通して「紳士教育」という授業があるようなエスカレーター式の学校に通っていて、僕自身もわりと親の言いつけを守るような「良い子」でした。着る服も学校の制服か親が与えてくれた服のどちらか。家に帰ってくつろぐときもワイシャツに着替えていましたし。

TAKAHIRO
TAKAHIRO

―現在のダンサーのイメージからはまったく想像できないのですが(笑)。ではダンスやブラックミュージックに出会われたのはいつ頃だったんですか?

TAKAHIRO:ダンスに興味を持ち始めたのは高校生の終わり頃で、大学生になって初めて踊り出しました。それまでは、渋谷や原宿へ出かけたこともなかったんです。大学生になって自分で服を買うようになってからも、コーディネートというのは、頭からつま先まで一色で揃えることだ、くらいに考えていました。しかもそれを自分の好きな色で統一しちゃうから、今思うと奇妙なことになっていましたよ。全身緑とか(笑)。

―ちなみにお父様はどんなお仕事をされていたのですか。

TAKAHIRO:親族で会社を経営していました。僕は3人兄弟の長男として生まれたので、大人になったらその会社の経営陣に入るものだと言われていましたし、それを当然のように考えていました。学校の友人を見渡しても、それぞれの家業を継ぐのが当たり前、決められたレールの上を進むのが自然、という人が多かった。しかもみんなそれぞれのレールの上を楽しみながら前進している感じだったので、当時は将来の夢なんて考えたこともありませんでした。

―学生の頃は、会社経営に興味があったんですか?

TAKAHIRO:ある種のイメージはありましたが、そこに情熱を持っていたかといえば違うように思います。僕の人生はその頃までずっと、あらかじめ設定されていた答えに向かって進んでいたようなものでした。自分から枠を超えてリスクを背負うことはなく、必ずたどり着けるゴールに向かって、より安全で楽な道を選択していく。目の前に分かれ道が現れたときは、できるだけ早く、手軽に行ける道を選んでいたと思います。すでに答えは用意されているのだから、大きなマイナスにさえならなければいい……。でも、そういう生き方に結果はついてこないですよね。

TAKAHIRO

―結果?

TAKAHIRO:ビリにはならないけれど、ずば抜けたところがあるわけでもない。勉強もスポーツもそこそこで、ぱっとしない、わりと地味な存在でした。けれども、クラスには必ず一番になる人、目立つ人っているでしょう? そんな存在に対して、憧れに近いコンプレックスを抱いていました。

―じゃあ、ダンスに目覚めたのは、「モテたい」とか「目立ちたかった」とか、そういう単純なことから?

TAKAHIRO:高校生の頃、初めてテレビでダンス番組を観たり、他校の文化祭でストリートダンスを観たとき、「僕だったら、もっとこうするのに」というアイデアが自然と湧き出てきたんです。それまではなにを観ても人ごとで、「わあ、すごいなー」とかしか感じなかったのが、ダンスを観たときだけはなぜか批評家になっている自分がいた。そして、なんとなく自分でも「できる」気がしたんです。

―具体的な振付のアイデアみたいなものが湧いてきたんですか? それまで踊ったこともなかったのに?

TAKAHIRO:そうなんです、僕も不思議でした。子供の頃からの憧れの人の1人がトーマス・エジソンなのですが、身体を通してなにかを作りだす感じに、発明的な「エジソン感」を感じたのかも知れません。たぶん「作る」ということに憧れていたんでしょうね。

―生まれて初めて、用意されたレールから飛び出そうとした瞬間ですね。

TAKAHIRO:そうです。今でもはっきり覚えています。大学に入ってダンスを自分で作りだすようになったある日、「これが自我の目覚めだ……」って、自分につぶやいたんです。それまでリスクのあるボールに触れもしなかった僕が、いきなりハイリスクのボールをつかんだ、そんな感じでした。

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リリース情報

『世界が認めるスーパーダンサーTAKAHIROが考案! アニソン・エクササイズ』(DVD)
『世界が認めるスーパーダンサーTAKAHIROが考案! アニソン・エクササイズ』(DVD)

2014年1月31日(金)発売
価格:3,990円(税込)

出演:
TAKAHIRO
柳谷登志雄
加治みなみ
元気☆たつや(げんきーず)
航多

プロフィール

TAKAHIRO(たかひろ)

本名、上野隆博。プロダンサー / 大阪芸術大学客員准教授 / トップフィールドダンスセンター主宰。2005年全米「Apollo Theater」のコンテストで年間ダンス部門第1位に輝く。翌年同コンテストテレビシリーズで番組史上初の9大会連続優勝を果たし殿堂入りし、米国プロデビュー。07年『ニューズウィーク』紙「世界が尊敬する日本人100人」に選出。09年マドンナの世界ツアーやPVに参加。12年イスラエルと日本の国交60周年記念式典、13年にはハリウッド映画に出演するなど、世界的に活躍。日本では、『大阪世界陸上』開会式、FIFA公式大会・閉会式の振付、総合演出などを手がけ、自身のプロデュース公演他、テレビ、CM、舞台、映画他、多方面で活動中。

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