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音楽家・やけのはらと考える、自分を知るための方法

音楽家・やけのはらと考える、自分を知るための方法

撮影:豊島望
2014/03/24

リミックスアルバムの取材というのは難しい。もちろん、音楽的な特徴を解析することは重要だし、幅広い年代の楽曲が収められている作品であれば、そこからアーティスト自身の歴史を振り返る事もできるだろう。とはいえ、そこに込められる意図という意味では、オリジナルアルバムのときほど明確でないことも多い。今回「やけのはらのリミックスアルバムの取材」が決まったときも、最初は「どんなアプローチで取材をしようか?」と考えたのだが、作品のタイトルが『SELF-PORTRAIT』であると知って、すぐに「これはオリジナルアルバムと同等の意味がある作品なのでは?」という考えが頭をよぎった。

他者とは自己を映す鏡である。自分が思う自分の姿よりも、他者を通じてみる自分こそが本当の姿であるというのは、真理に近いと言っていいだろう。やけのはらはこれまでの作品で「自分」を全面に押し出すことなく、その代わりに、常に何らかの提案を作品に込めてきた。そんな彼が他のアーティストのリミックス集に「自画像」というタイトルをつける意味とは? それはまさに、他者を通じて自己を知るということの作品化なのでは? そんな予想を持って取材に臨んだわけだが、結論から言えば、この予想は半分当たりで半分はずれ。しかし、やけのはらとの対話を通じて、『SELF-PORTRAIT』という作品が持つ意味合いをはっきりと浮かび上がらせることはできたのではないかと思う。

リミックスって、歌や歌詞といった中心軸に対して、自分なりの衣を着せるような作業で、シンプルに音楽と向き合えるんです。

―リミックスアルバムに『SELF-PORTRAIT』というタイトルをつけるというのが、非常にやけのはらさんらしいと思いました。

やけのはら:そうですか? 実はこれ、ボブ・ディランの『SELF PORTRAIT』というカバーアルバムがあって、そこから取ったシャレなんです。オリジナルアルバムは何らかの意思のもとにまとめているので、それをタイトルにすればいいんですけど、今回はそういうはっきりとしたコンセプトがないので、ボブ・ディランの方法をそのまま拝借して『SELF-PORTRAIT』にしました。

やけのはら
やけのはら

―ただ、やけのはらさんはご自身の作品ではあまり「自分」っていうものを出さないじゃないですか? 一方で、リミックスアルバムというのは、他者を通じて自分を見つめる作業でもあって、むしろそういう作品にこそ自分が反映されやすいから、『SELF-PORTRAIT』っていうタイトルをつけたのかなって思ったんですよね。

やけのはら:確かに、普通の暮らしの中でも、他者と接したときこそ自分がよく見える場面は多いですし、タイトルにはそういうニュアンスも含まれていると思います。今、気がついたんですけど、せっかく『SELF-PORTRAIT』なんだから、今回はジャケットに自分の顔を出したほうがよかったかな……。オリジナルでは自分の顔を出していないので。

―それこそ、ホントに自画像を描くという手もありますよね。

やけのはら:そういう案も出たんですけど、僕は絵が描けないので、一応これが僕の自画像ということで……(笑)。

やけのはら『SELF-PORTRAIT』ジャケット
やけのはら『SELF-PORTRAIT』ジャケット

―そもそも、このタイミングでリミックスアルバムを出そうと思ったのは、やけのはらさんご自身のアイデアなんですか?

やけのはら:そうです。5年ぐらい前から出したかったというか、出せる量がたまっていたんですけど、今ひとつきっかけがつかめなかったんです。でも、前のアルバム『SUNNY NEW LIFE』を出して、次のアルバムが出るまでに、きちんと整理してから次に進みたいなと。

―音楽活動にもいろいろな作業がありますが、中でもリミックスはお好きなんですか?

やけのはら:好きですね。リミックスって、歌や歌詞といった中心軸に対して、自分なりの衣を着せるような作業で、それがすごくやりやすいというか。自分の曲を作るときに一番苦しいのは、その「軸」を作る作業だったりするんですけど、最初から中心軸があるものの形を整えたり、変えたりする編集的な作業というのは、シンプルに音楽と向き合えるので楽しいですね。

―この作品は、いわゆるダンスミュージックよりも、歌や歌詞が軸にあるバンドやシンガーソングライターの曲が多いですよね。

やけのはら:自分でも改めて、ロックやポップスの人が多いなって思いました。逆に思ったのは、もっと全然違うオファーも欲しいというか(笑)。ラップの人のリミックスや、トラック提供って、知っている人ぐらいにしかしてないんです。

―あくまで予想ですけど、きっとやけのはらさんのポップス的な側面、シンガーソングライター的な側面に惹かれて、リミックスを依頼しているんでしょうね。

やけのはら:変にこじつけるのも恥ずかしいですけど、今はこういう感じの音楽の人が自分に興味を持って聴いてくれてるのかなって、見えてきたところはありましたね。

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リリース情報

やけのはら<br>
『SELF-PORTRAIT』(CD)
やけのはら
『SELF-PORTRAIT』(CD)

2014年3月19日(水)発売
価格:2,415円(税込)
felicity / PECF-1093

1. THEME of SP1
2. 中村一義 / 希望(やけのはら Remix)
3. 奇妙礼太郎 / サン・トワ・マミー(YAKENOHARA LOVER'S TRAP MIX)
4. シグナレス / ローカルサーファー(やけのはらREMIX)
5. Aira Mitsuki / High Bash(Yakenohara Version)
6. SKIT of SP part1
7. YAKENOHARA / oolong dub
8. YAKENOHARA / BABY DON'T CRY
9. idea of a joke / オースティン(やけのはら younGSoul REMIX)
10. SKIT of SP part2
11. ランタンパレード / ひとりの求愛者 立春編(やけのはら LOST DATA MIX)
12. アナログフィッシュ / TEXAS(やけのはらバージョン)
13. Spangle call Lilli line / dreamer(YAKENOHARA DUB)
14. メレンゲ / フィナーレ(やけのはらMIX)
15. SKIT of SP part3

プロフィール

やけのはら

DJ、ラッパー、トラックメイカー。『FUJI ROCK FESTIVAL』、『METAMORPHOSE』、『KAIKOO』、『RAW LIFE』、『SENSE OF WONDER』、『ボロフェスタ』などの数々のイベントや、日本中の多数のパーティーに出演。年間100本以上の多種多様なパーティでフロアを沸かせ、多数のミックスCDを発表している。2009年に七尾旅人×やけのはら名義でリリースした「Rollin' Rollin'」が話題になり、2010年には初のラップアルバム「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」をリリース。2012年には、サンプラー&ボーカル担当している、ハードコアパンクとディスコを合体させたバンドyounGSoundsでアルバム「more than TV」をリリース。2013年3月、新しいラップアルバム「SUNNY NEW LIFE」、2014年にリミックス集「SELF-PORTRAIT」をリリース。

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