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音楽ビジネスには何が足りない? 高野修平×THE NOVEMBERS

音楽ビジネスには何が足りない? 高野修平×THE NOVEMBERS

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望
2014/12/22
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大手インディーレーベル「UK.PROJECT」を離れ、2013年10月に自主レーベル「MERZ」を設立したTHE NOVEMBERS。「自分たちにとって大事なものは何か?」をミニマムな形で模索しながらスタートしたレーベルの物語は、『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング』の著者である、トライバルメディアハウスの高野修平の参加によって、一気に加速していった。大切な人に「だけ」共有できるよう、同内容のCDが2枚収録された「シェアCD」仕様のシングル『今日も生きたね』に始まり、10月に発売されたアルバム『Rhapsody in beauty』に関しては、媒体の特色にあわせた雑誌広告の出稿、期間限定の1曲フリーダウンロードやアルバム全曲試聴、Spotifyでの世界先行配信、見る環境やネットワークによって映像が変化するミュージックビデオ、「対価」の意味を問うシングルの発表など、アルバムのテーマである「パラレルワールド」という言葉を軸に、さまざまなプロモーションが展開され、大きな注目を集めた。

そして、アルバムをめぐるサイクルのひとつの終着点である新木場STUDIO COASTでのツアーファイナルを終えた今、THE NOVEMBERSのフロントマンである小林祐介と高野の二人に、一連の活動の背景にあった想いと、その手応えをじっくりと語ってもらった。もちろん、そのすべてが上手くいったわけではなく、今も彼らはメリットとデメリットを慎重に天秤にかけながら、試行錯誤を続けている。しかし、一人ひとりが主体性を持ち、並列の関係で議論を交わし、常に既成概念を疑いながら、その状況をいかに楽しむかという「MERZ」の精神性からは、学ぶべきところが多いことは間違いない。これはもちろん音楽そのものの話でもあり、人生の豊かさについての対話でもある。

音楽の世界って「コミュニケーションをデザインする」という概念がもっと増えたら、きっと素晴らしい物語が作れるんじゃないかと思ったんですよね。(高野)

―そもそもお二人はどうやって知り合ったのですか?

高野:あるラジオ番組から「(小林と)対談をしませんか?」って誘ってもらったんです。それで初めて小林くんと話したときに、すごく驚いたんですよ。THE NOVEMBERSの世界観から考えて、アーティスティックに偏った人かと思いきや、小林くんはマーケティングの思考を素晴らしく持っていたんです。それで意気投合して……と、僕は思ってます(笑)。

―実際に、小林さんはマーケティングというものに対して、以前から強い関心があったのでしょうか?

小林:「マーケティング」っていう言葉は全然意識してなかったんですけど、作ってるものが自分にとってとても大事で、その大事なものをどう人に届けたら素敵なのか、美しいのか、楽しいのかっていうことはずっと考えてて、それが言葉を変えると「マーケティング」だったのかなって。修兄(高野)の本を初めて読んだときに、今まで言語化できなかった感覚が一つひとつ自分の中で紐解かれていって、いざお話してみたら、その考えがさらに深まったんです。

左から:高野修平、小林祐介(THE NOVEMBERS)
左から:高野修平、小林祐介(THE NOVEMBERS)

高野:僕は仕事柄アーティストと直でやり取りすることは少なくて、レーベルさんとか事務所さん、音響メーカーさんとかと仕事をすることが多いんですけど、音楽の世界って「コミュニケーションをデザインする」という概念がもっと増えたら、きっと素晴らしい物語が作れるんじゃないかと思ったんですよね。

―できあがった作品の情報や内容、そしてアーティストの想いをどうリスナーに伝えるのか、その道筋をデザインする概念が薄かったと。

高野:もちろん、それって当たり前のことなので、みなさんやっていらっしゃると思うんです。でも、音楽って、お茶を売ることとはまた違うわけじゃないですか? 物には感情がないけど、音楽には感情があって、作った本人の心が動かない限り、マーケティングもできない。そこが面白くもあり、難しいところでもあるんですけど、THE NOVEMBERSとならいろんな化学反応が起きると思ったし、実際に起きたと思ってます。今、メジャー、インディーを問わず、売れているアーティストって、絶対に物語を作る能力やマーケティング、つまり音楽の届け方や伝え方までの思考を持ってる方だと思うんです。

―実際には、高野さんはシングル『今日も生きたね』(2014年5月発売)からMERZに参加されてるわけですが、最初から継続的な関係性を見据えていたのでしょうか?

高野:そうですね。個人的に思っていたのは、1回限りで入っても意味がないっていうことだったんです。ただTHE NOVEMBERSから出てきた音楽を世の中に広める仕掛けを考えるだけだと、コミュニケーションをデザインし切れないだろうなって。バンドの物語は作品が完成するもっと前から始まってると思うし、それこそライブをまわる場所はどうするかとか、セットリストはどうするかとか、一見僕は関係ないところまで深く共有して包括的にバンドと関わっていくことで、コミュニケーションをデザインすることができると思ったんです。つまり、新作が出るからコミュニケーションをデザインするのではなく、THE NOVEMBERSの活動すべてのコミュニケーションデザインを描いていくというか。なので僕の場合は、継続的な関係性の中で、楽曲単位ではなく、THE NOVEMBERSの全体的な物語の作り方を考えられたのだと思います。

―「物語性」っていうのは今キーワードとしてよく目にする単語ですが、小林さんは作り手としてそこに対してどの程度意識的だと言えますか?

小林:歌っていうのは、自然とその人の物語の果てにあるものだから、それを形として物語にしてくれるのは、僕以外の人たちだと思うんです。僕はよく修兄がやってくれていることを「翻訳」と言うんですけど、物語には語り部がいるわけで、その役目を僕がやっても、ストレートすぎたり、大事な情緒が伝わらないかもしれない。なので、間にそれを上手く翻訳してくれる人がいると、より伝わりやすくなるのかなって。

―アイデア先行ではなくて、あくまでその作品の物語や作り手の想いが出発点になっている。そこは非常に重要な部分ですよね。

小林:修兄は、僕が話したキーワードや情報の中から、かいつまんだり、結びつけたり、順番を入れ替えたり、まさにコミュニケーションをデザインすることによって、僕の想いと誤差がない状態で物語を人に伝えてくれるんです。

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書籍情報

『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング 戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法』
『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング 戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法』

2014年4月18日(金)発売
著者:高野修平
価格:1,944円(税込)
発行:リットーミュージック

リリース情報

THE NOVEMBERS 
『Rhapsody in beauty』(CD)
THE NOVEMBERS
『Rhapsody in beauty』(CD)

2014年10月15日(水)発売
価格:2,500円(税込)
MERZ / XQMP-1001

1. 救世なき巣
2. Sturm und Drang
3. Xeno
4. Blood Music.1985
5. tu m'(Parallel Ver,)
6. Rhapsody in beauty
7. 236745981
8. dumb
9. Romancé
10. 僕らはなんだったんだろう

プロフィール

THE NOVEMBERS(ざ のーべんばーず)

2005年に結成した日本のオルタナティブロックバンド。2007年にUK PROJECTから1st EP『THE NOVEMBERS』をリリース。国内の大規模なロックフェスティバルでは『FUJI ROCK FESTIVAL』『ARABAKI ROCKFEST』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』『COUNTDOWN JAPAN』などに出演。2012年からはiTunes storeで世界62か国への楽曲配信を開始。海外バンドの来日公演のサポートも増えTELEVISION、NO AGE、BORIS、 BO NINGEN、Wild Nothing、Thee Oh Sees、ULTERIOR等とも共演。そして、台湾の『MEGAPORT FESTIVAL』にも出演し、国内だけでなく海外からの注目も高まる。2013年9月末までにUK PROJECTから計8枚の音源をリリース。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、2014年10月15日に独立後早くも3作目となるフルアルバム『Rhapsody in beauty』をリリース。

高野修平(たかの しゅうへい)

デジタルマーケティング会社トライバルメディアハウスにてシニアプランナー / サブマネージャー / 音楽マーケターとして所属。音楽業界ではレーベル、事務所、放送局、音響メーカーなどを支援。音楽業界以外にも様々な業種業態のコミュニケーションデザインを行っている。日本で初のソーシャルメディアと音楽ビジネスを掛けあわせた著書『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代-』、『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』を執筆。メディア出演、講演、寄稿など多数。2014年4月18日に3冊目となる『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング-戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-』を出版。また、THE NOVEMBERS、蟲ふるう夜に、Aureoleのマーケティングコミュニケーション、クリエイティブディレクターも担当している。M-ON番組審議会有識者委員。

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